イノベーション研究 第33回 GEN 本物の価値を「繋ぐ」ことで知らしめ人間のキャパシティを広げたい

執筆者情報
HR企画統括部
リサーチ&デザイン部
シニアコンサルタント
井上 功

本研究では、組織の中でのイノベーション創出のヒントを得るために、イノベーターの方々にインタビューを実施しています。

第33回は、GENの齋藤由佳子氏のご登場です。齋藤氏は、食を通じて世界を繋いでいます。イタリアのピエモンテ州と富山市、ミラノと三重県などを繋ぎ、新しい価値、本物の価値の創出を試みているのです。世界を繋ぐ? イタリアと日本? 価値の創出? これだけでは、いったい何のことかよく分かりません。

しかし、読み進めていくと、齋藤氏の壮大な構想が明らかになっていきます。キーワードは、味覚・キャパシティ(許容度)・寛容・繋ぐ、です。「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、2015年5月から10月まで開催されている『ミラノ国際博覧会』が、齋藤氏の舞台の1つです。

大胆にして繊細。熟慮しながらも行動的。俯瞰的かつ仰視的。インタビューアーを独自の世界に巻き込む齋藤氏のイノベーションストーリー、是非ご覧ください。


エゴマ油で健康に貢献する
和食文化を科学し世界へ

シソ科、1年草の薬用植物、エゴマ。その種からとったエゴマオイルには、ダイエットや生活習慣病予防に効果が高い成分が多く含まれており、健康食品として大きな注目が集まっている。

その特産化に取り組んでいるのが、北陸新幹線開通で沸く富山市だ。古くからの薬の町、富山の新たな特産品として世界にアピールしていきたい、と関係者は意気込む。

日本ではなく世界へ。その言葉は嘘ではない。この5月、富山市はイタリア・ピエモンテ州にある食文化の総合研究機関「イタリア食科学大学」と協定を締結。150年の歴史をもつミラノ商工会油脂研究所の協力もとりつけ、エゴマオイルの効能や新たな活用法に関する共同研究を行う。

エゴマとイタリア。このまったく関係がなかった両者を繋ぎ合わせる仲介役となったのが、イタリアはミラノに本社があるジェニュイン・エディケーション・ネットワーク(Genuine Education Network=GEN)社。日本語に直すと、「本物教育ネットワーク」だ。源(ゲン=みなもと)という意味も込められているGEN社の代表をつとめるのが齋藤由佳子氏だ。

なぜ「教育」なのか。なぜ「本物」なのか。

実は、同社はイタリア食科学大学を卒業した齋藤氏が2014年におこしたイタリア政府公認のベンチャー企業で、現在6名いる社員も卒業生ばかり。

食科学大学は1980年代半ばのイタリアで生まれたスローフード運動と密接なかかわりをもつ。食生産地域との繋がりが希薄な、安価で画一的なファーストフードに対抗し、土地に根差した伝統食材や食文化を大切にする運動のことだ。その提唱者、カルロ・ペトリーニが総学長をつとめるのが食科学大学なのである。

齋藤氏が話す。「工場で作られる大量生産品ではない、人の手が確実に入っている食材、生産活動自体がその地域の環境保護に繋がる食材、スローフード運動が大切にするのがそういう本物の食材です。そうした食材を中心に、地球上にある本物の価値を知らしめ、その作り手と多様な人々との交流を推進する教育活動を行っています」

新卒でリクルートに入社
シリコンバレーで「繋ぐ人」に出会う

そんな齋藤氏の経歴は、現在の仕事からするといささか変わっている。2000年に新卒で入った会社がリクルートなのだ。最初の配属は採用広告の制作部署だったが、2年目、アメリカのシリコンバレーにあるサンノゼ大学に1年間社費留学。学生時代、イギリスに留学したことがあったので、英語はお手のものだった。「この経験は大きかったです。といっても、大学自体ではなくて、働かせてもらった現地のベンチャー企業での経験ですが」

リクルートの人事が話をつけ、留学組3名の丁稚奉公をその企業の社長に依頼し、快諾してもらっていたのだ。「企業といっても社長の家、いわばガレージオフィスでした。その社長が近隣の中小企業の経営者を繋ぐ組織を運営しており、収益を生む立派な仕事になっていました。社長自身が非常に魅力的な、いわばリアルSNSといった人物でした。当時のリクルートは法人向け事業が主でしたが、個人がこういう形で情報力をもつと企業並みの影響力をもてるんだと興奮したのを覚えています。帰国後、その経験をもとに、SNSに似た個人向けの事業を考え、社内の新規事業企画コンテストに提案、グランプリを獲得したのですが、結局、形にはなりませんでした」

その後、結婚情報誌『ゼクシィ』事業部での新規事業プロジェクトリーダー、ヤフーとリクルートの提携事業の事務局などを担当。2010年に退職する際には新規事業開発の専門組織にいた。目玉案件はゲームだった。「そのとき、違和感を抱いたんです。人が内へ内へと入り込み、そのことでお金をもらうゲームのようなものをリクルートが開発すべきなのだろうか、と。そうではなくて、個を開き、別の個と繋いでいく新たなプラットフォームを作るのがリクルートの仕事だと信じていたのです」

ワインサービス会社を立ち上げるも
東日本大震災で運命が変わる

退職したのは2010年だが、齋藤氏はその前年、「もっと泥臭い仕事がやってみたくなり」、ノムリエというワインのサービス会社を個人で立ち上げている。「消費者がワインを選ぶとき、参考にするのが値段やブランドです。でもワインといっても口に入れるものですから、味覚の要素があってしかるべきじゃないか、と考えたのです。味覚を仲介にして、ワインや生産者と消費者を結びつけられたら面白いと」

そのサービスがユニークだった。それぞれの顧客向けに、質問に答えると判明するワインの味の好みを記したプロファイルと30本のワインが入ったセラー一式を最初に提供。富山の薬売りよろしく、毎月好みのワインを届けては代金をいただくセラー管理サービスだ。ワインは卸値段なので他で買うより安い。レストランとも契約し、料理のケータリングサービスもあわせて用意した。

走り出しは順調だった。リクルートに入ってちょうど10年、結婚して2児の母親ともなっていた齋藤氏は「これを次の10年、続けられる仕事にしたい」と同社を退社する。

翌2011年も事業は拡大していた。マンションデベロッパーと契約し、外国人エグゼクティブや芸能人が暮らす都心の高級マンションで、毎週金曜日の夜、試飲会とワインバーを主宰するサービスも展開していた。

そこにおこったのが東日本大震災だ。外国人エグゼクティブは原発の放射能被害を恐れ、一目散に帰国してしまった。自身も子供を抱え、一時、東京から大阪に避難したほどだ。セレブ感たっぷりのワインビジネスは再開の見込みも立たなかった。なおも悪いことに、私生活でも離婚という試練が待っていた。

齋藤氏は決断した。味覚の大元になる食について、一から勉強してみようと。

子連れでハンガリーへ
英語で一から科学の勉強

ただ、調べていくうち、ハードルがとんでもなく高いことに気付く。食を突きつめるとサイエンスになるが、齋藤氏は学生時代から化学や物理が大の苦手だったのだ。でもそこで諦めるような齋藤氏ではなかった。「10年後にものになっていればいいと思ったんです。離婚という辛いこともあったので、人生をやり直すつもりで、今まで苦手だったことに取り組もうと」

向かった国は何とハンガリー。しかも子連れだ。仲の良い日本人女性が、世界的投資家、ジョージ・ソロスが生まれ故郷ハンガリーのブダペストに創設した中央ヨーロッパ大学のMBAコースに留学することになり、「一緒に行かない?」と誘われたのだ。

調べてみると、ハンガリーは何より物価が安い。そして、国立の医学部教育が充実しており、そこへ進学する若者向けに、英語で講義されるサイエンスの準備課程があることを知った。ここだ! 齋藤氏は一つ屋根の下、友人と2人の子供と共にブダペストで暮らすこととなった。2011年9月のことだ。

18歳から20歳の若者にまじって猛勉強し、規定通り、1年でコースを修めると、今度はイタリアに渡った。冒頭で説明した食科学大学の大学院に入るためだ。2012年9月に入学。こちらも学部はともかく、大学院の講義は英語なので言葉のハンディはなかった。「世界60カ国から約500人の学生が集まる国際的な大学です。農業や調理を学ぶ場ではなく、社会的課題として食を捉える場でもありました。科学や生物学はもちろん、社会学や人類学、哲学、美学を駆使しながら、食という豊穣な世界を多角的に研究しました」

大量摂取で分かったこと
高品質の本物ほど味が複雑

在学中、印象に残った授業が2つある。

1つは、1週間かけて、スローフード食材の生産現場に密着する体験学習だ。「そういう食材は、最初の一口はおいしくないと感じるものも多いのですが、食べ続けると、何ともいえないおいしさに気付く。そうした食材の生産を守ることが地域の環境保護に繋がっていることを学ぶのです。それを知ってから、味覚のよしあしで食べ物の価値を決めるのが人間のとんでもないエゴであることに気付いたんです」

もう1つは、テイスティングの授業だ。ワインやビール、チーズを朝から晩まで、飲みかつ食べ続け、最後、最も高品質なものを選び出す。それを言葉でどう表現するのか。「液体であれ、固体であれ、コンプレックス、つまり複雑味があるということです。高品質なものほど複雑なんです。大量生産のファーストフードの味は逆に単純明快ですから、舌の肥えていない子供ほどおいしいと言う。本物は複雑なんです」

2014年3月、食科学大学大学院を修了すると、同年5月、ミラノでGEN社を設立。最初にターゲットにした「本物」は故国、日本のそれだった。

三重県を舞台に行われた
和食文化講師の視察研修

2015年5月から始まり、10月末まで、「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、ミラノで開催されているミラノ国際博覧会で、GEN社は、日本館の公認イベントとしてユネスコの無形文化遺産に登録された和食に関する講義を行うことになった。登壇するのは外国人の「和食文化講師」。かといって、適任者がすでにいるわけではない。そこで、奨学金制度を設け、希望者を日本に派遣し、本物の和食文化を学んでもらう視察研修を企画した。

募集を始めると世界中から100件以上の問い合わせがあった。結局、イタリアを筆頭に世界11カ国出身の、総勢16名が研修生に決まった。年齢は20代から50代の、ジャーナリスト、料理人、社会学者、フードコンサルタント、日本酒に詳しい研究家、食科学大学卒業生などだ。

彼らが向かったのが三重県。なぜ三重県なのか。

実はこのプロジェクトは2013年の冬から動いていた。当時、食科学大学院の学生だった齋藤氏は知人の紹介で三重県知事の鈴木英敬氏を訪問し、2年後、ミラノで行われる国際博覧会で一緒に何かやりませんか、と持ちかけていた。それは同県の出展という形で実を結んだが、それとは別で動いたのがこのプロジェクトだ。「三重県は何より伊勢神宮に象徴される歴史と伝統があります。しかも、その食文化は海の幸あり、山の幸ありでバラエティに富み、江戸と京、どちらの影響も受けている。三重県を選んだのは、私の直感でした」

選ばれた人に得難い体験を
研修生はどこでも大歓迎

齋藤氏は三重県各地に足を運び、受け入れ先の選定と交渉を行う。最終的に、三重県のほか、県内5つの市、2つの商工会議所、さらに中小企業との手厚いネットワークをもつ百五銀行の協力を取り付けることができた。「世界中からどれだけの観光客を呼び込めるか。これが日本各地の課題になっています。でも、来てもらえるなら誰でもいいわけではない。センスがよくて理解力もある人を厳選して呼び込み、現地でしかできないことをじっくりと体験してもらい、そこで得たことをそれぞれの地元に帰って丁寧に発信してもらう。それを形にしたのがこの研修でした」

一行16名は2015年3月10日から11日間、県内各地に滞在した。神饌として献上される食材を伊勢神宮で試食したり、現役の海女と食卓を囲んだり、手すきの海苔加工や味噌づくりに挑戦したり、地元の人でもできない貴重な体験を重ねた。「研修生はどこに行っても大歓迎され、時間が足りなくなるほどでした。受け入れ側がこれ食べな、あれも食べな、と次々に出してきて、なかには糠床の糠まで食べた研修生もいたくらいです(笑)。皆さん、大喜びで帰国の途につきました。生産者にとっても、すべてボランティア活動ということではありません。研修生を受け入れることで、商品の購入や授業料を得られるという経済的なメリットもある。自分たちの食材を世界に発信してもらえるきっかけづくりになると共に、空いている時間にできるサイドビジネスというわけです」

食べることは生きること
味覚のキャパシティを広げたい

味覚探究の世界に飛び込んで6年。なぜ自分は味覚に興味が湧いたのだろうか、とずっと考え続けてきて、最近、ようやく答えが出たという。キーワードはキャパシティ(許容度)だ。「人間のキャパシティを広げること。これは個々の人間のみならず、人類にとって非常に重要なことではないでしょうか。優秀な人であればあるほど、過去の成功体験に固執し、なかなかキャパシティを広げることができません。一見、やりたくないことでもまずはやってみる。どんな環境でも喜びを見いだし取り組んでみる。それが思わぬ成果に結びつく。それはキャパシティが広い人間でなければできないことだと思うのです」

そのキャパシティがなぜ味覚と結びつくのか。「子供の頃はおいしいと思えるものが偏っています。端的にいえば、甘いものです。それが大人になるにつれて、辛いもの、酸っぱいもの、苦いものもおいしく感じられるようになっていく。キャパシティが広がるわけです。私の見るところ、心の狭い人は味覚のキャパシティも狭くなりがち。食べることと生きることは繋がっていますからね。逆にいえば、味覚のキャパシティを広げ多様な食文化を学ぶことが人間の寛容さを培うことに繋がり、最終的には異なる人種や価値観を受け入れるという世界平和にも繋がっていくのではないでしょうか」

人と人を繋ぐ。ビジネスとビジネスを繋ぐ。舌と食を繋ぐ。いずれも国境を越えて。齋藤氏の「繋ぐ」仕事は緒についたばかりだ。

総括

齋藤氏のイノベーション創出ストーリー、いかがでしたか?

では、さっそくイノベーション研究モデルを踏まえながら齋藤氏のイノベーションを振り返ります。

齋藤氏が実現しようとしているのは、イノベーションを生み出す人と人との間を繋ぐことです。いわば仲介役です。イノベーション研究モデルでいうと、【組織外の情報、知識】と【思いつく】の間の領域です(図表01参照)。

現在は、主に人と人とを、味覚という基盤を軸に繋ごうとしているのです。その特徴は、修正主義ともいえる行動力です。とにかく動く。実践的に活動する。そして、もう1つの特徴が、鳥の目と虫の目ともいえる思考実験の繰り返しでしょう。自分自身がなぜ味覚の世界に没頭しているのかについて、いわばもう1人の別の人格が冷静に考えているのです。俯瞰して、冷静に、客観的に自分の来し方を考える。仰視して、実際のビジネスを仕立てていく。なかなかできることではありません。そして、大きな理念を実現しようとしているのです。

それでは、さっそく、齋藤氏の行動を振り返っていきましょう。

図表01 イノベーション研究モデル

開くことで繋がる
繋がることで新結合をおこす

イノベーションは新結合から生み出されます。新結合とは、何かと何かを繋げるということ。人と人。人とモノ。モノ同士。企業と企業……。繋げられそうなものは、数多ありそうです。異能同士のぶつかり合いでイノベーションがおこり、企業が生成・発展していきます。本田宗一郎氏と藤沢武夫氏。井深大氏と盛田昭夫氏。日本の、いや世界のイノベーションをおこしている企業は、そのほとんどが人と人との繋がりから興っています。

最近よく耳にするIoT(Internet of Things)は、いわばモノとモノの繋がりといっていい。そして、事業提携やM&Aなどを経て企業と企業が繋がると、異質なもの同士の創発がおき、イノベーションの可能性が広がります。新結合はイノベーションの前提であり、必要条件といってもいいでしょう。

齋藤氏は、イタリアのピエモンテ州と富山市、ミラノと三重県を繋ぎました。それは、イタリアと日本を繋いでいるといっていい。繋ぐ媒体はエゴマであり、海苔や味噌、糠であり、食です。

繋ぐには、繋がるもの同士が開かなければいけません。閉じていては繋がることはできません。お互いが開いていくために、齋藤氏は研修生を日本に派遣することを実施します。11カ国16名のダイバーシティに富んだ研修生が、三重県内各地を訪問し、11日間滞在しながら日本の食の真髄を体感することになるのです。彼らが味覚を核とした五感で感じたことを、イタリアを中心としたヨーロッパにフィードバックして、食や文化を通じた新結合をおこしているのです。

閉じているものを開く
開くことで受け入れる

では、閉じているものとはいったい何でしょうか? 鎖国では、国が閉じています。200余年の閉じていた時代が、明治維新という爆発的なエネルギーを生んだともいえます。そして、国は開かれ、現代に至っています。

企業や組織はどうでしょうか? 閉じていることによって、生じることがあります。構成員が限定され、知の停滞がおきます。組織の中での作法が常態化し、組織内でのみ通用する常識が育まれていきます。その結果、利権や独占がおこり、内向きのベクトルで物事が加速していきます。関係している集団以外の声が聞こえなくなり、利害や利益が物事の意思決定の中心になっていきます。

人が閉じているとどうなるのでしょうか? 実話かどうかは諸説ありますが、オオカミに育てられた少女の話が象徴的です。人が人に対して閉じていると、それは社会的な人とはいえないのかもしれません。社会があってこそ、人ということができます。開いていることが、人の根底を支えているのです。

開くことは、価値の受容であり交換です。そして、違いの認識をすることです。自分とまったく同じ価値観・考え方の人、完全に同じ行動をする人は世界に一人としていません。一人ひとりに違いがあるのです。齋藤氏は、リクルートの新規事業開発組織にいた際に、人が内へ内へと入り込んでいくゲームの開発に違和感を覚えます。それが閉じていくことに思えたからでしょう。人の本質は開いていることにある。人は社会的存在であることが自然だ、という考えが、齋藤氏の根幹にあるのかもしれません。

開くことで受け入れ、価値の交換という相手との新結合からイノベーションが生まれる。そのことを、齋藤氏は経験的かつ実践的に理解・行動し、本物の価値をヨーロッパと日本に浸透させているのです。

自身のキャパシティを広げる
寛容さが培われる

齋藤氏はこう言っています。「優秀な人であればあるほど、過去の成功体験に固執し、なかなかキャパシティ(許容度)を広げることができません」。もちろん、成功体験がすべて悪といっているわけではないでしょう。成功体験は自信に繋がり、行動を促し、成長をもたらすことも多々あります。

一方、成功体験が壁となり、新しいものの見方や考え方を阻むことがあるのも事実です。そうならないために、味覚を通じてキャパシティを広げ、人間の寛容さを培うことが重要と考えているのです。

リチャード・フロリダ氏が『クリエイティブ資本論』のなかで、地域経済成長や創造的都市のポイントとして3Tを提唱しています。それは、Technology(技術)、Talent(才能)、そしてTolerance(寛容)です。フロリダ氏のToleranceとは、地域の寛容性を示しています。その地域の同性愛者の数から割り出すゲイ指数や、芸術家などの数から導くボヘミアン指数などを用いて、地域の寛容性を算定していきます。そして、アメリカの各都市でのそれらの数値と、地域の経済性や発展状況に強い相関性があると説いています。それは、多様な人たちにとっての居心地のよさ、ともいえます。そこに、Talent(才能)が集まり、Technology(技術)が基点となり都市や企業が発展すると考えたのです。

齋藤氏は都市ではなく、人間自体の寛容に着目しています。味覚というキードライバーを軸に、人間のキャパシティを広げ、寛容を培い、人と人を繋げ、地域や都市、国を開いていき、新結合から世界平和を実現しようというのです。この壮大な構想は、当初からあったものではないでしょう。しかし、走りながら考える、修正しながらも目的を失わない。そんなやり方で、今日も世界のどこかで、齋藤氏は活動を続けているのです。

【総括(文):井上功 /インタビュー(文):荻野進介】

PROFILE

齋藤 由佳子(さいとう ゆかこ)氏
東京都渋谷区出身。2010年にリクルートを退職後、ワイン会社を経営。2011年、子供を連れて、ハンガリー、イタリアに移住し、スローフードの発祥の地といわれるイタリア食科学大学の大学院にて1年半食科学を学ぶ。卒業後、GEN(源)を立ち上げ、現在はヨーロッパ人に向けて、アジアを中心とした食文化教育プログラムの発信をテーマに会社経営を行っている。
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