連載・コラム
さあ、扉をひらこう。Jammin’2022 owner interview vol.2
Jammin’受講者が将来きっと野村を変えてくれる〈オーナーインタビュー2・野村グループ様〉
- 公開日:2024/01/06
- 更新日:2024/05/16
共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」は4年目のJammin’2022を行っている最中だ。40社・273名の次世代リーダーが、約半年にわたって事業の立案に取り組んでいる。同時並行で、オーナー(人事)の皆さんが参加するオーナーセッションも開催している。セッションの中では、各社におけるJammin‘の活用方法、関連した取組などに関して意見交換される場面も多い。 そこで、そうしたことを詳しくお伝えするために、オーナーインタビューを行った。第2弾は、初年度のJammin’2019から、継続して数多くの受講者を送り出している野村グループ人材開発部網谷氏にお話を伺った。
- 目次
- 社内で研修が評判となり、Jammin’ 2022に27名を送り出した
- Jammin’を受講して、経営目線で考えられるようになったという参加者が多い
- 「NNGサミット」を次々に開催して、希望者のモチベーションを維持している
- 会社を超えてフラットに情報を共有できるのが人事同士の良いところ
社内で研修が評判となり、Jammin’ 2022に27名を送り出した
PROFILE
網谷 秀夫氏 人材開発部 ヴァイス・プレジデント
――野村グループは初年度から多くの方をJammin’に派遣していますが、なぜでしょうか?
網谷:私たち野村グループは、Jammin’の総合プロデューサーである井上功さんの考えに賛同し、初年度のJammin’2019に20名、2020年には5名の社員を派遣しました。その後、2020年のコロナ禍に入って、海外研修などで海外に人材育成施策に送り出せなくなったこともあり、私たちは人材育成全体の枠組みを刷新しました。毎年100名規模で、国内で越境学習を経験してもらう「野村新世代育成プログラム(NNG)」を新たに用意したのです。現在、Jammin’はその中核プログラムとなっています。Jammin’2021には16名、Jammin’2022には27名を送り出しました。なぜなら、事後アンケートやプログラムの内容が好評で、社内で研修実施拡大の承認が得られていたからです。
私自身も、Jammin’に期待を寄せています。野村グループの仲間たちに「外の世界」を経験してほしいからです。私たちは、良くも悪くも金融営業のプロフェッショナルに特化しており、価値観や考え方が固定化されていると感じています。そのため、若手社員たちが持つポテンシャルを考えるともっと成長できる、というのが私の率直な感想です。だからこそ、他企業のリーダーたちと競い、力を合わせることで、自分の実力がどこまで通用するか、自分に何が足りないかを感じてほしい。そして、外の世界にはさまざまな価値観や社会課題があることを知り、社外にもっと目を向けてほしいと思っています。
<図表1>「新世代育成プログラム」の全体像
私は2015~2016年に、海外修練制度で1年間フィリピンに滞在しました。そこで目にしたのは、日本円にして月2万円程度で一生懸命に働く、優秀なフィリピン人ベンチャー企業社員の姿でした。彼らはプレゼンテーションが上手で企画力も情報収集力もあり、2016年の時点で当時まだマイナーなブロックチェーンにいち早く目をつけていました。「日本の自分たちは、このままでは彼らに仕事を奪われる」という強烈な危機感を覚えたことが、いまだに私のモチベーションのひとつになっています。越境学習をすることは、このように個人の意識を変革するのです。Jammin’のような場が、受講者の意識を変えてくれると期待しています。
また、「課題発見力の向上」という面でもJammin’に期待しています。私たちが最も多くの社員を派遣しているのは、地方創生コースです。それは、社員に「地域課題の発見力」を高めてほしいからです。野村グループは、日本全国の各支店が地域密着型で営業しており、地域ごとの課題を見極めて解決することがビジネスにつながります。Jammin’の「不」を発見する方法論はすばらしく、これを学んで課題発見力を高めることは、私たちのビジネスに適っているのです。
なお、参加コースと人数は、私たちの経営課題とSDGsの両方の観点から決めています。応募は手挙げ制で、入社4年目以上の非管理職社員が対象です。応募の際、事前の上司承認は必要ありません。また、最近はJammin’を含む野村新世代育成プログラムの認知度が高まり、上司や周囲がむしろポジティブに送り出してくれる事例が増えています。応募いただいた社員を私たちが面接して受講者を選んでおり、グローバルコースは英語面接を行っています。応募する社員たちは、井上功さんが熱く語りかけるPRビデオを事前に見ており、研修がどのような場なのかを十分に理解したうえで参加しています。
Jammin’を受講して、経営目線で考えられるようになったという参加者が多い
――受講者の皆さんの感想や効果を教えてください。
網谷:「経営目線」で考えられるようになった、という卒業生が多いです。例えば、営業社員の場合、「クライアント経営者の視点に立って考えられるようになった」という変化を語ってくれることがよくあります。金融営業は多くの物事を数字で判断するため、クライアントのこともどうしても数字中心から捉えがちです。もちろんその数字で見るプロであるわけですが、その彼らが、Jammin’で自ら世の中の「不」を発見して、事業案を考えることで、経営者の思考・行動プロセスを疑似体験するわけです。その結果、受講後には「社長はなぜ会社を創業したのだろう?」とか、「社長は今どんな課題を抱えているのだろう?」といったことまで考えるようになり、対話の内容が変わったというのです。
数字だけで判断しないことは、金融営業にとって大切な学びです。数字は分かりやすい指標ですが、それだけで測れないものもたくさんあるからです。例えば、マネージャーが部下を営業成績だけで見て、一人ひとりの考えや性格、変化に目を向けなかったら判断を誤ります。数字以外の判断基準を学ぶというのは、まさに私たちが望む変化の一例なのです。他にも、海外のグループ経営陣との折衝をしている者は、この研修を通して経営陣の考えをより深く理解できるようになったと言っています。
また、「野村證券の社員は個人業務が中心だから、プロジェクトの進め方がうまくない」「自分のスペックの低さが分かって愕然としました」という感想が聞かれるように、自分や組織の弱点に気づく社員も多くいます。これも成長につながる嬉しい気づきです。
「NNGサミット」を次々に開催して、希望者のモチベーションを維持している
――人事開発部からはどのような働きかけをしているのですか?
網谷:参加者にはJammin’受講前に、「自己の学びに終始せず、学んだことを社内に持ち帰って発信してほしい」とお願いしています。例えば、数字で判断しないことの大切さを知ったら、それを周りに語ってもらいたいのです。そうすれば、1人の学びが10人の学びになります。実際にお願いの効果が出てきており、学びを部内に発信するメンバーが増えています。
また、人材開発部が中心となって、Jammin’に関係したさまざまな社内イベントを開催しています。例えば、「NNG中間セッション」は、受講中の社内メンバー同士で、コースの枠を超えて情報を共有し合い、気楽に話し合える場です。それとは別に「NNGサミット」もあります。こちらは受講者や卒業生だけでなく、Jammin’を受講したいと手を挙げた社員全員が参加できる、オンラインの社内座談会・対談イベントです。コースごとに開催しています。
これらのイベントには、多彩な社内ゲストを呼んでいます。先日、2022年のNNG中間セッションを行いましたが、そこには、アグリビジネスの調査・提言・コンサルティングを行い、自分たちでもアグリビジネスをしているグループ会社「野村アグリプランニング&アドバイザリー」のメンバーに来てもらい、アグリビジネスの現状や課題について話してもらいました。地方創生コースやエネルギーコースなどとつなげたいと考えて呼びました。
また、地域創生コースのNNGサミットでは、「下関市と野村證券の包括提携」を実現した下関支店の支店長に、地域課題発見・解決の楽しみや苦労、目標や思いを存分に語ってもらいました。ジェンダー×働き方のサミットで、社内DEI推進ワーキンググループの担当者とJammin’受講者の対談を行ったこともあります。グローバルコースのサミットでは、海外拠点で活躍する社員の座談会を実施しました。
全コースを網羅すべく、こうしたNNGサミットを次々に企画・実行しています。その第1の目的は、受講者・卒業生の交流やモチベーション向上です。学習効果を最大限に高めるために、このような場を設けています。自分が受講した以外のコースを知ることで、コース越境の効果もあると考えています。多くの社会課題は多面的で、さまざまな世界を知ることがより優れた事業アイディアにつながりますから。
第2に、このプログラムを受けたいと手を挙げたけれど受講できなかった社員に、来年もまた手を挙げてもらうための施策でもあります。サミットに参加することで、次年度は受講したいというモチベーションを維持してほしいと願っています。
第3に、サミットを「インナーサークルを広げるチャンスにしてほしい」と考えています。社内にはいろいろな部署があり、各人がさまざまなプロフェッショナリティや知見を獲得しています。社員のなかにはそのことをよく知っており、自らインナーサークルを広げ、社内のプロフェッショナリティや知見を上手に活用しています。私は、そうしたことができる社員を増やしたいのです。そのためにはサミットのような場を通じて、社内にどんな人がいるかを知ることがまず大事です。
▽ 育成・越境を熱く語ってくれた網谷氏
会社を超えてフラットに情報を共有できるのが人事同士の良いところ
――オーナーセッションはどのように活用されていますか?
網谷:経営者同士や営業同士などの集まりでは、話せないことがたくさんあります。それに比べると、人事同士は、フラットかつオープンに情報共有しやすいという特徴があると感じています。同じような人事課題を抱えていることが多く、お互いに成功事例やポイントを知りたい、と思っているからです。また、日本企業の人事がみんな一緒に変わっていこう、という意思を持って、情報をオープンにしている人事の方も多くいます。そのため、オーナーセッションは情報共有の場としておおいに機能しています。私は今、オーナーセッションをきっかけに、他社の人事の方から人的資本経営のモデルを教えてもらっている最中です。今後はオーナーセッションを通じて、地方企業との人材交流などができると嬉しいです。
――今後、Jammin’をどのように活用したいですか?
網谷:今年と同程度の活用を継続していきたい、と考えています。サミットなどの取り組みはさらに強化していきます。事前説明の1on1などにも力を入れる予定です。
中長期的には、この研修卒業生の経営をリードする人材を輩出できたらと願っています。なぜなら、外の世界のさまざまな社会課題や価値観を知った人たちが、きっと野村グループを変える、と思うからです。野村證券は、人の能力で業績が大きく変わる会社です。だからこそ、Jammin’のような場が必要なのです。
【text:米川 青馬、illustration:長縄 美紀】
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
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