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連載・コラム共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’2020新価値創造セッションレポートvol.6

社会的意義もニーズもポテンシャルも大きな事業案がグランプリに輝いた〈Jammin’ Award〉

社会的意義もニーズもポテンシャルも大きな事業案がグランプリに輝いた〈Jammin’ Award〉

2019年度からスタートした共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」。2020年9月から始まったJammin’2020新価値創造セッションも、いよいよゴールだ。2021年2月12日(金)、「Jammin’ Award」が開催された。各コースの代表チーム・9チームが、約5カ月にわたって作り上げてきた事業案をプレゼンテーションした。

Jammin’は社会課題を解決する新規事業案の検討を通して、新たな価値を創出するプロセスを学び、リーダーシップを磨くプログラムだ。参加者は、社会課題のテーマごとに、10のコースに分かれて、3〜5名ずつのチームで事業案を作る。事業案の検討にあたっては、世のなかの「不」を基点にして事業を検討することを重視している。不とは、不安・不満・不公平など、「世のなかにある誰かのお困りごと」を指す。特定のステークホルダーの不を解消しながら、そのインパクトを広げ、社会課題の解決につながるよう事業をデザインすることが、Jammin’流の新価値創造プロセスだ。なお、Jammin’2020では、全セッションをオンラインで実施している。
今回は、Jammin’2020の最後を飾った「Jammin’ Award」の模様を紹介する。

Jammin’2020 Awardはフルリモートで開催

ちょうど1年ほど前に開かれた昨年のJammin’ Awardは、会場に総勢150名以上が集う対面イベントだったが、Jammin’2020のJammin’ Awardはフルリモートで開催された。会場にいるのは、司会の藤野里衣(弊社Jammin’責任者)、井上功(弊社Jammin'プロデューサー)を含めたスタッフ十数名と、ゲスト審査員のお二人だけだ。各コースの新価値創造プロセスを伴走したトレーナー・専門家陣もリモート参加となった。

東京ミッドタウン日比谷の「BASE Q」からオンライン配信された「Jammin’ Award」。司会の井上(写真右・右)、藤野(写真右・左)

今回のゲスト審査員は、国内でもトップクラスの実績を誇るスタートアップと企業・自治体によるオープンイノベーションプログラムを手掛けるCreww株式会社で代表取締役を務める伊地知天氏(Creww株式会社 代表取締役CEO)と、国内外の企業で新規事業に携わり、現在はリクルートグループの新規事業創出のプランニングなども手がける渋谷昭範氏(インキュベーション・プランナー)だ。伊地知氏には昨年に続いてご参加いただいた。また、アワードのプレゼンテーション内容は、長縄美紀氏がグラフィックレコーディングとして随時まとめていった。

なお、Jammin’2020には10のコースがあったが、「地方創生・雄勝コース」は代表チームが選出されなかった。残る9コースの代表チームが、オンラインで画面を共有しながらプレゼンテーションを行った。発表時間は10分。全チームの発表後に、審査員特別賞とグランプリを選出。グランプリは、審査員だけでなく視聴者も投票して決定する。

優れた事業アイディアだからこそ、もう一段上が要求された

まずは前半5コースのプレゼンテーションで、先頭を切ったのは「ヘルスケアコース」の代表チームだ。子どものヘルスケアに関する事業アイディアだった。このチームがすばらしかった点の1つは、今日のプレゼンテーションのために、事業案の内容やあふれる想いを紹介する「特設サイト」を用意したことだ。リモート時代らしいプレゼンテーションの工夫と言えるだろう。審査員からは、「ニーズは間違いなくあるけれど、よく耳にする『不』です。なぜ実現されていないかを解明するとよいのでは」(伊地知氏)というアドバイスが飛んだ。

次の「働き方コース」代表チームの提案は、若者のキャリアの選択肢を増やすための事業アイディアだ。「事業提案のストーリーには共感しましたが、若者に興味を持ってもらう仕掛け作りが難しいかもしれません」(伊地知氏)。「私も同感で、若者が使いたくなる工夫が必要です」(渋谷氏)。審査員は揃ってアイディアを称賛する一方で、若者の意識を変えるハードルの高さに触れていた。

働き方コースのプレゼンテーション(写真右は発表者の皆さん)

「地方創生・上勝コース」の代表チームは、徳島県上勝町を良くしたいという想いを強く感じられる事業案だ。町内で担う役割や収益プランなどはしっかり詰めていたが、審査員からは「想いや考えはよく分かりましたが、事業案の抽象度が高く、具体的に何をどうするのかが見えにくいところがありました」(渋谷氏)とのコメントがあった。想いを意気に感じるからこその厳しいアドバイスだ。

「食料チーム」は、野菜の流通の「不」を変えようとする事業案だ。印象的だったのは、プレゼンテーションがメンバーのラップ披露から始まったことだ。ぐっと惹き込まれる演出に、チャット欄も盛り上がりを見せた。「コアバリューをしっかりコントロールできたらうまくいくはず」(伊地知氏)と高い評価を得たが、一方で「農業は流通構造を変えるのが難しい。そこを乗り越えるアイディアがもう1つあれば」(渋谷氏)と、優れた事業アイディアだからこそ、もう一段上の検討が要求された。

前半最後は「インバウンドチーム」だ。新しいタイプの旅行アプリを提案し、「アイディアは面白い」(伊地知氏)と好評だったが、「外国での認知度アップが鍵になるはずで、外国でのマーケティングアイディアがあると、さらにすばらしかったと思います」(渋谷氏)と、実現までのより具体的な道筋を描くことを期待されていた。

ゲスト審査員の伊地知氏(左)、渋谷氏(右)

前半5組を終えた後、伊地知氏は中間講評で、「新規事業は継続がすべてです」と、続けることの大事さを語った。「当初は苦戦していたスタートアップ企業のビジネスが、大手企業と協働することで予算と人員が一気に増え、軌道に乗っていくケースをいくつも見てきました。アイディアが優れていれば、突然伸びることが十分にあり得るのが、新規事業の面白いところです」(伊地知氏)。

「実際にサービスが立ち上がったら使いたいと思いました」(伊地知氏)

休憩後、代表チームなしとなった「地方創生・雄勝コース」について、コースに伴走した吉田達トレーナーから紹介があった。「代表チーム選出には至りませんでしたが、彼らは雄勝町のリアルに向き合い、住民の皆さんの心をおおいに揺さぶっています」(吉田トレーナー)。

続いて、残る4組の発表が行われた。「教育コース」の代表チームが提案したのは、都市と地域の学び格差という「不」を解決するための事業案だ。このチームが秀でていたのは、アワード前に、すでに2回のトライアルを行っていた点だ。両審査員ともアイディアと行動力を称えていたが、一方で「子どもたちの興味を引く仕掛けは必要です」(伊地知氏)、「トライアル先行で仮説がしっかりしていない印象を受けました」(渋谷氏)と注文も忘れなかった。

教育コースのプレゼンテーション(写真右は発表者の皆さん)

「グローバルコース」代表チームの構想は、インドネシアの女性たちの「不」に向けられた事業アイディアだ。早くも現地パートナーを獲得してシステム開発に着手しており、実現に向けた進捗度はJammin’2020で一番かもしれない。審査員も前のめりで、「具体的な『不』で発想もすばらしいです。ただ、提案の可能性は他にもいろいろとあるのではないか、と感じました。もっと面白くできそうです」(伊地知氏)というコメントが印象的だった。

「人口コース」は、高齢者の「不」の解決を目指すサービスを提案した。「着眼点はとても面白いと感じました」(渋谷氏)、「技術的には実現可能です」(伊地知氏)というプラスコメントと、「利用に向けた心理的ハードルは高いでしょう」(伊地知氏)、「誰がお金を払うのかを練り直した方がよいと思います。シニアの負担が少しでも増えるのは厳しいでしょうから」(渋谷氏)といったアドバイスの両方が目立った。

最後の「文化コース」は、伝統工芸品に着目したサービスのアイディアだ。「めちゃくちゃいいアイディアです」(渋谷氏)、「コンセプト・ロゴ・WEBサイトのすべてがすばらしく、実際にサービスが立ち上がったら使いたいと思いました」(伊地知氏)と、お二人から称賛された。ただ、「認知度アップと集客は相当難しいでしょう。実際に始めるなら、認知度アップ戦略をきちんと考えてからの方がよいと思います」(渋谷氏)という指摘もされた。

文化コースのプレゼンテーション(写真右は発表者の皆さん)

全員で選出したグランプリは「文化コース」!

以上で全チームの発表は終了だ。休憩を挟んで、いよいよ審査員特別賞とグランプリが発表された。

前述のように、審査員特別賞は審査員のお二人が選ぶが、グランプリは視聴者の投票で選ばれる。ただし、9件すべてのプレゼンテーションを視聴した人だけが投票に参加できるルールになっている。

審査員特別賞・伊地知賞は「教育コース」! 「日本の地域の子どもたちに必要な事業アイディアでしょう。私自身、自分の子どものために利用したいサービスです。事業案をもっと細かく詰めて、ぜひ実現に向けて進んでいってください」(伊地知氏)。

審査員特別賞・渋谷賞は「働き方コース」! 「先ほどは厳しいことも言いましたが、あらためて振り返って、日本の未来にとって重要な取り組みだと思いました。というのも、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグは大学時代に起業しており、中高生のときにはすでに覚醒していたはずなのです。日本から優れた起業家を生み出すには、高校生をターゲットとした皆さんの事業アイディアが必須です。ぜひ形にしてください」(渋谷氏)。

そして、視聴者投票から選出されたグランプリは「文化コース」! 「ニーズはかなりあると思います。認知度アップが難しいだろうと言いましたが、提供価値にあらためて立ち返ると、良いヒントが得られるかもしれません」(渋谷氏)。「社会的意義もビジネスポテンシャルもすばらしい。必ず実現してください」(伊地知氏)。受賞メンバーたちは、「多くの時間を割いてアイディアを練り、直前までみんなで話し合ってプレゼンも磨きました。いまはシンプルに嬉しいです。残された課題はまだまだありますが、実現させたいと思います」と話してくれた。

新規事業開発はワイン作りに似ている(渋谷氏)

最後に、2人の審査員からコメントをいただいた。「皆さんの半年間の話し合いのプロセスにこそ、大きな価値があります。この体験が次につながるはずです。個人的には、ウェルビーイングに関心があります。例えば、健康経営や幸福度、安心感、ワクワク度などを数値化するサービスがますます注目されるでしょう。今後はそうしたアイディアにも期待しています」(伊地知氏)。

「新規事業開発は、ワイン作りに似ています。ワイン作りは、もちろん毎年のぶどうの出来も大切ですが、並行して土壌作りにも力を入れていきます。長い時間をかけて良い土を作り続けると、10年に一度くらい、すばらしいぶどうとワインができるのです。新規事業開発も一緒で、新規事業創りとリーダー育成を同時に行う必要があります。大当たりする新規事業アイディアは1/1000ですが、良いリーダーを増やせば、そのうち抜群のビジネスアイディアが出てきます。ですから皆さん、本業に戻っても、『不』をチャンスと捉え、事業アイディアを生み出す習慣をなくさないようにしてください」(渋谷氏)。

最後に、司会を務めた井上功(Jammin’プロデューサー)の挨拶があった。「Jammin'は開始してまだ2年だが、渋谷さんのおっしゃる『いいワインができる土壌づくり』をやり続けたい。今回、私もコースに伴走し25名のリーダーの方にインタビューした。皆さんインタビューのなかで『新規事業を創るのってめちゃくちゃ大変なんだな』とおっしゃっていた。そのご経験を、それぞれの会社のなかでぜひ生かしてください。『ひきつける・いかしきる・やってみる』の3つを忘れずに、共創リーダーとしてガンガン活躍してください。オーナーの皆さんは、リーダーの方々をサポートしていただけたらと思います。2021年度も秋にスタートする予定です。お楽しみに!」


【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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