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さあ、扉をひらこう。Jammin’2022 session report vol.1

Jammin’2022始動! 40社273名が早速「不」に関する対話をスタート〈リーダーセッション1〉

  • 公開日:2022/10/24
  • 更新日:2024/05/16
Jammin’2022始動! 40社273名が早速「不」に関する対話をスタート〈リーダーセッション1〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、4年目のJammin’2022がスタートした。 9月9日(金)にオンラインで開催された第1回リーダーセッションには「40社273名」の次世代リーダーが一堂に会した。参加者たちは、これから約半年にわたって取り組む「事業案の立案」に向けて、基調講演やレクチャーを受け、チームビルディングを始めた。その様子をレポートする。 なお、今回は第1回オーナーセッションも同時並行で開催。この日、オーナー(人事)の皆さんも、次世代リーダーたちと共に基調講演に耳を傾け、オーナー同士の交流をスタートした。

Jammin’2022 開催概要
3つの「越境経験」と3つの「行動」を通じて知の創出に挑んでもらう
日本の未来はスイスか、海士町か
あらゆる社会問題をコンバージェンスで解決していけばよいという見方もある
早くもチームごとの個性が見えてきた

Jammin’2022 開催概要

■ Jammin’とは?

VUCA時代に持続的に価値創出できる日本企業を増やすことを目指す、異業種参画型リーダー開発プラットフォーム。参画企業から派遣された若手リーダーが異業種のチームを組み、約半年間かけてさまざまな社会課題を解決する新規事業案の検討・立案に取り組む。

■ 2022年度 開催期間

2022年9月9日(金)~ 2023年2月17日(金)

■ 2022年度 参加者数

273名(40社)

■ 2022年度 参画企業(五十音順)

味の素 株式会社/伊藤忠商事 株式会社/エーザイ 株式会社/SMBC日興証券 株式会社/エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ 株式会社/株式会社 エヌ・ティ・ティ・データ/オムロンソーシアルソリューションズ 株式会社/花王 株式会社/株式会社 埼玉りそな銀行/株式会社 JERA/株式会社 島津製作所/清水建設 株式会社/株式会社 スタッフサービス・ホールディングス/大日本印刷 株式会社/武田薬品工業 株式会社/中部電力 株式会社/株式会社 デンソー/東京海上日動火災保険 株式会社/東京電力ホールディングス 株式会社/トヨタ自動車 株式会社/西日本電信電話 株式会社/日産自動車 株式会社/日本電気 株式会社/株式会社 ネクスコ東日本トラスティ/野村證券 株式会社/株式会社 阪急阪神ビジネスアソシエイト/株式会社 日立アカデミー/富士通 株式会社/本田技研工業 株式会社/株式会社 本田技術研究所/株式会社 みずほフィナンシャルグループ/三井不動産 株式会社/三菱重工業 株式会社/三菱商事 株式会社/株式会社 村田製作所/株式会社 メタルワン/株式会社 リコー/株式会社 りそな銀行

■ 取り組みの全体像

リーダー向けの「新価値創造セッション」(全15コース)と、オーナー(リーダーを派遣する企業の人事担当者や上司の方)向けの「オーナーセッション」で構成。「アワード」で新規事業案のグランプリを決する。

▽ Jammin’2022全体像

▽ Jammin’2022全体像

■多彩なコースと専門家

新価値創造セッションは、前回の12コースからさらに増えて、過去最大の全15コースを開講。それぞれが異なる社会課題をテーマにしており、2022年度からは新たに「エネルギー」「格差」「ジェンダー」のテーマが登場。各コースに参加するリーダーたちは異業種でチームを組み、そのコースのテーマとなっている社会課題を解決する新規事業案を考える。各コースには、そのテーマの専門家が伴走し、事業案への助言やフィードバックを行っていく。

▽ 15のコースと専門家

▽ 15のコースと専門家

3つの「越境経験」と3つの「行動」を通じて知の創出に挑んでもらう

Jammin’2022も、過去2年と同様にオンラインで始まった。進行役は、トレーナーの吉田達、毛利威之と企画責任者の井上功だ(いずれもリクルートマネジメントソリューションズ)。

新価値創造セッションの目的は、273人の参加者一人ひとりが、自己と組織を継続的に変革できる「共創リーダー」として成長していく支援だ。新価値創造セッションのゴールは3つある。参加者の皆さんは、今この瞬間、ゴールに向けて走り始めた。


< 新価値創造セッションのゴール >

● 世の中の「不」を基点に新価値を生み出すプロセスを学び、自社で実践できるようになること
● 多様な価値観を持つ人々の知恵やエネルギーを結集し、新しい価値を創造するための力を、経験を通して獲得すること
● リーダーとしての今後のありたい姿を描き、動き出すこと

※「新価値創造セッションの特長」と「これからの時代に求められるリーダー」の詳しい説明については一昨年の開催レポートを参照

Jammin’では、「異業種」「社会課題」「新規事業案」という日常業務から離れた3つの越境経験のなかで、「ひきつける」「いかしきる」「やってみる」というリーダーに求められる3つの行動を通じて、新たな知の創出に挑んでもらう。

▽ Jammin’で挑戦する3×3

▽ Jammin’で挑戦する3×3


Jammin’の全体像と新価値創造セッションの説明の後、プログラムは「社会課題の全体像共有」へと進んだ。一人ひとりが事前に調べてきた「社会課題全体マップ」をチームで共有し合う時間だ。ここで40社273名は、チーム内で簡単な自己紹介をした後、早速「不」に関する対話をスタートした。各自が社会課題全体マップを使って事前に集めてきた情報を共有し、立ててきた社会課題仮説を共有するところから始めたのだ。例えば地方創生コースなら、それぞれのまちがどういうまちなのかを各自が調べたうえで、まちの「不」を探究し始めた。当然ながら、いきなり「不」を絞り込むことなどは不可能だ。各チームとも、メンバーの1人が全員の意見を書き出しながら、意思決定を模索していった。なお、グローバルチームは初日から、資料も対話もすべて英語を使っている。

時を同じくして、「オーナーセッション」も開講した。オーナーセッションとは、Jammin’参画企業の人材開発責任者・担当者(オーナー)向けのプログラムだ。Jammin’の活動に賛同するオーナーたちも自ら学びながら、リーダーの成長を一緒になって応援していく。

▽ 並行して開催されたオーナーセッションでの交流の様子

▽ 並行して開催されたオーナーセッションでの交流の様子

日本の未来はスイスか、海士町か

午後は「ゲストによる基調講演」から始まった。今回のゲストは、記念すべき初回Jammin’2019の基調講演ゲストでもあり、Jammin’2021ではJammin’アワード審査員を務めた高津尚志氏(IMD北東アジア代表)だ。高津氏は「Jammin’は、IMDのパーパスや私の願いと共鳴するプロジェクトです。私もまた、組織を変革し、社会に貢献するリーダーを育みたい、と願っているのです」と、強力に応援してくださっている。

基調講演のテーマは「越境するリーダーシップ」だ。高津氏は最初に、「動かない日本、自閉する日本」の現状に触れた。「IMD世界競争力ランキングでは、2022年に日本は過去最低の63カ国中34位となりました(図表1)。なかでも、『ビジネスの効率性』が51位と著しく低くなっています。また2014年と2022年を比較すると、ビジネスの効率性に含まれる『生産性と効率性』『姿勢と価値観』のサブ因子で、日本の経営者・管理職の日本に関する評価が最低ラインまで落ちていることが分かります。つまり簡単に言えば、日本企業はこの10年ほどで、単に価値創造の競争力を落としただけでなく、自信をも失ってきたのです」.

<図表1>IMD世界競争力ランキング2022

<図表1>IMD世界競争力ランキング2022

「しかし、そこで私が思ったのは、『私自身も日本企業と同じではないか?』ということでした。私も俊敏さや起業家精神を失い、変化に鈍感になり、アイディアに閉鎖的になっていたのではないか、と感じたのです。特に2020年以降、越境を重ねてきた私が動けなくなりました。そこで2022年、私は越境を再開し、加速しました。2022年前半は、国内のさまざまな人たちに会い、話をして、経験・体験を重ねました。今何が起こっているのか、どのような課題と可能性があるのか、私は何をすべきか、何ができるのか、何をしたいのか、を追求しました」(高津氏)

高津氏はさらに海外へ越境する。「2022年6月、私は3年ぶりにスイスIMDに越境し、経営幹部育成プログラム『OWP』に参加しました。興奮と恐怖、喜びと不安が行き来する2週間でした。スイスで分かったのは、日本はすでに崖から落ちていること、世界が過酷で奇妙な壊れ方をしていること、それでもスイスは前進しているということでした。例えば、スイスIMDはVRリーダーシップワークショップをはじめとするテクノロジーで、経営幹部教育を変えていました。スイスのグローバル企業は、先進的ですばらしいオフィスを用意して、最高の人材を集め、最高の成果を徹底的に追求していました。しかし一方で、彼らは経営が悪化すれば躊躇なく大規模リストラを敢行します。日本のウェルビーイング経営とは本質的に違うのではないか、と感じました。QRコードだけの名刺など、レガシーに束縛されないイノベーションにも数多く出会いました」

帰国後、高津氏は島根県隠岐諸島の海士町に向かった。「海士町で3日間、まちを感じ、副町長や町民や地元高校生の皆さんと対話を重ねました。海士町はコミュニティが生きているまちで、食べるものには困らず、地元民と島外からの移住者とのすばらしいコラボレーションが起きています。海士町のGDPはスイスよりも明らかに低いのですが、ある種の豊かさがあります。ただし一方で、海士町が地方交付税に依存していることもまた確かなのです。さて、日本の未来はスイスでしょうか、海士町でしょうか。私にはどちらも愛でたい気持ちがあります」

あらゆる社会問題をコンバージェンスで解決していけばよいという見方もある

では、どうしたら日本の「不」を解決できるのだろうか。高津氏はいくつかの見方を提示してくれた。「『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社)を書いた広井良典さんによれば、抜本的な行動と発想の転換をしないと、日本はジリ貧です。そこで広井さんは、地方分散シナリオと都市集中シナリオの2つの転換シナリオを作りました(図表2)。1つ目の地方分散シナリオでは、日本は2050年に出生率・格差・健康寿命・幸福感がプラスに向かいますが、政府の財政だけは悪化します。対する都市集中シナリオでは、政府財政だけは持ち直しますが、他のすべてが悪化します。広井さんは2027~29年までにどちらかを選択しなければならないと言っているのですが、皆さんはどちらがよいでしょうか?」

<図表2>2050年、日本は持続可能か?

<図表2>2050年、日本は持続可能か?

「他方には、減速や減少ではなく『加速』に注目する人たちもいます。テクノロジーのコンバージェンス(融合)によってすべてが加速するのだから、あらゆる社会問題をコンバージェンスで解決していけばよいではないか、と考える加速系の見方です。コンバージェンスが進めば、例えば最高のバーチャル教育システムを構築し、ヘッドセットと共にすべての人に無料配布できる世の中が来る、と彼らは主張するのです。また、私はつい先日、京都・退蔵院で『NFT×宗教』の対話の場に参加してきました。宗教者たちはテクノロジーをよく勉強しており、ある人はNFTをグーテンベルクの活版印刷以来の革命的テクノロジーだと考えていました。世界には、そういう見方をしている人たちもいるのです」

高津氏は最後に参加者へエールを送った。「皆さん、ぜひミクロの社会課題の背景にあるマクロにも目を向けてください。好奇心とフットワークを発動させてください。ニーズとシーズを往復してください。テクノロジーの可能性を把握してください。そして、Jammin’を楽しみ、越境を楽しみ、モヤモヤを受け入れ、進化する自分を楽しんでください。Jammin’そのものをイノベーションの機会にしましょう。では、頑張ってください!」

早くもチームごとの個性が見えてきた

基調講演の後は、「事業検討ステップのレクチャー」に移り、井上が新規事業案の要件、アワードなどの具体的な説明や、今後の指針となる「事業検討ノート」のレクチャーを行った。

次の「自分にとってのJammin’を考える」では、まず個人ワークとして、自分はJammin’をどのような機会にしたいのか、そのためにどんなことを意識して行動するのかを考え、事前課題「自分にとってのJammin’を考える」を加筆・修正した。次に、「コース内共有」へと進んだ。一人ひとりが「自分にとってのJammin’」を語ることは、自己紹介につながる。多くの参加者がこの時間でチームメンバーについて知ることができたようで、終了後には「切れ者が集まっている」「バランスがいいチーム」「スポンジのようなチーム」など、チームごとの個性が見えてきた、という感想が多く聞かれた。

一日の最後は、「フィールドワークの実施に向けて」の案内だ。次回までの課題の紹介と、「不の構造化シート」をどのように活用すればよいか、フィールドワーク課題をどうやって進めればよいかの説明があった。その後はチームごとにどうやって進めるかを話し合った。

こうして長い一日が終了したが、キックオフは最初の一歩にすぎない。これから各チームとも、約6カ月間の長い道のりのなかで何度も話し合い、フィールドワークを一緒に進め、自分たちが解決したい「不」を見定めて新価値創造へ向かっていく。本連載はこれからJammin’2022をさまざまな角度から紹介していく。

 

※なお、昨年、一昨年のJammin’新価値創造セッションの様子についてはJammin’特設サイトでもご紹介しています。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

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