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連載・コラム共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’2020新価値創造セッションレポートvol.5

新たな視点で「本当に成し遂げたいこと」を考える1日〈新価値創造セッション4回目〉

新たな視点で「本当に成し遂げたいこと」を考える1日〈新価値創造セッション4回目〉

2019年度からスタートした共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」。2020年9月からJammin’2020新価値創造セッションがスタートした。今回は、セッション1(共通キックオフ)セッション2セッション3に続いて11〜12月に行われたセッション4のなかから、「グローバル」「地方創生@上勝」「文化」「食料」の4コースの様子を紹介する。

Jammin’は社会課題を解決する新規事業案の検討を通して、新たな価値を創出するプロセスを学び、リーダーシップを磨くプログラムだ。参加者は、社会課題のテーマごとに、10のコースに分かれて、3〜5名ずつのチームで事業案を作る。事業案の検討にあたっては、世のなかの「不」を基点にして事業を検討することを重視している。不とは、不安・不満・不公平など、「世のなかにある誰かのお困りごと」を指す。特定のステークホルダーの不を解消しながら、そのインパクトを広げ、社会課題の解決につながるよう事業をデザインすることが、Jammin’流の新価値創造プロセスだ。なお、Jammin’2020では、全セッションをオンラインで実施している。

今回はセッション4の内容を紹介する。

「ミニマル」「インパクト」「本気度」を重視した実行計画を作る

まず、あらためて新価値創造セッションでの事業検討ステップの流れを見てみよう。

セッション1の開始時に、参加者には「事業検討ハンドブック」が手渡される。参加者たちは、ハンドブック内にある「不を基点にした事業検討ステップ」をベースにして事業検討を進めている。
不を基点にした事業検討ステップは、「STEP1:不を捉える→STEP2:ソリューションを考える→STEP3:ソリューションを検証する→STEP4:実行計画を立てる」の順に進む。
STEP1では、不を巡る状況を「構造化」したり、一番に価値を届けたい相手に絞り込んで考えたりする。漠然とした「誰か」ではなく、特定の1人を描いてその人の感じているリアルな不を掘り下げ(n=1)、「手触り感」を大事にしながら不を捉えていく。次のSTEP2では、「構造変化」のシナリオを描き、「提供価値」を意識して、事業のコンセプトを「概念に昇華」させながら、ソリューションを考える。
STEP3では、事業案が成立するために不可欠なポイント=「ボトルネック」に注意しながら、想定顧客の「生の声」に耳を傾け、「試行サイクル」を大事にしながら、ソリューションを検証する。そして、STEP4では、「ミニマル」なプラン作り、事業案の「インパクト」、事業に懸ける「本気度」をアピールしながら、実行計画を立てていく。

セッション4が開催された頃、受講者たちはSTEP3とSTEP4の間あたりにいた。つまり、「ボトルネック」「生の声」「試行サイクル」と「ミニマル」「インパクト」「本気度」を意識しながら、実行計画を考えている最中なのである。

セッション4では「チームシャッフル」をして事業計画を共有

3〜5名で構成される参加者チームはそれぞれ、セッション3で事業仮説を共有した後、仮説を見直しながら事業計画を練り直してきている。詳しい調査やインタビューを重ね、試行錯誤しながら事業計画を具体化するフェーズだ。
セッション4は、そうして形になった各チームの事業計画を共有する場だ。ただし、セッション4では、全チームのメンバーが入り交じる「チームシャッフル」を行う。1つのチームがプレゼンテーションをした後、コース全体でチームメンバーをシャッフルし、発表された事業計画について質疑や意見を交わすのだ。
セッション1からセッション3までは、予め決められたチームに分かれてそれぞれ事業案を検討してきた。各チームはセッション以外でも自主的なオンラインミーティングやメールのやり取りを重ね、コミュニケーションを密に取りながら事業案を固めてきている。セッション4では初めて、元のチームメンバー以外のいわば「部外者」の目から見て、その事業案がどう見えるのかが明らかになる。
共に検討を重ねてきたメンバー以外の目から見た、素朴な疑問や率直な感想(「そもそもこれってどういうこと?」「そんなニーズ、本当にあるの?」など)と向き合うことで、あらためてその事業案の本質的な価値が何なのかに立ち返ってもらえるような仕掛けになっている。

全チームのプレゼンテーションとシャッフルチームでの対話が終わったら、最後に元のチームに戻って「作戦会議」を行い、メンバー一人ひとりがシャッフルチームでのディスカッション内容を持ち合って、最終案に向けた話し合いを行う。セッション4は、事業案の最終プレゼンテーション前の貴重なフィードバックの場で、各チームとも決して無駄にはできない(なお、セッション4には専門家は参加していない)。

ではここから、「グローバル」「地方創生@上勝」「文化」「食料」の4コースの事業計画の共有の様子を紹介する。

ディスカッションを英語で行う「グローバルコース」

グローバルコースの公用語は英語だ。受講者もトレーナーも専門家も、英語を使って議論している。専門家の佐藤晶恵氏は、アフリカ・中東・東南アジアの発展途上国開発支援に長く携わってきた方で、現在はラオスを拠点に、ビジネスアドバイザー・ファシリテーターとして活動している。参加者たちは、佐藤氏が世界各地で経験してきたエピソードを参考にしながら、独自に調査を進め、世界にインパクトをもたらす新事業の開発にチャレンジしている。

佐藤 晶恵氏の写真

佐藤 晶恵氏
異文化理解・レジリエンス強化を踏まえた人材育成と組織開発に関するコンサルタント。京都大学工学部卒業、SIT Graduate Institute異文化リーダーシップ・組織管理学修了。1999年より株式会社リクルートにて、求人広告営業・組織開発支援に従事。2009年、青年海外協力隊としてウガンダに滞在。2010年から2019年まで都内コンサルティング会社にて発展途上国開発支援に従事。アフリカ・中東・東南アジアにおける国際協力事業や日本企業の海外進出支援に携わる。2015年から4年間はラオス現地法人KMC LAO Sole Co., Ltd.の所長を務める。


グローバルコースは、サービスの詳細はもちろんのこと、成長計画まで考えているチームがあり、発表内容は充実していた。セッション3まで英語で進行してきていることもあり、参加者の英語でのプレゼンテーションもスムーズだ。グローバルコースが立案するのは海外ビジネスだから、生の声を聞くのは難しいのだが、そうしたハンディもあまり苦にしていないようだった。インターネットで入手できる情報をベースにしながら、各チームとも特徴のある事業アイディアを形にしつつあった。

シャッフルチームでの検討も、他チームのメンバーからのフィードバックが刺激となって、議論が深まった様子だった。

セッション終了時のチェックアウトコメントには、
「In order to make business proposal, to simplify what we think is very important.」
「I learned how much important communicating with team members a lot is to make sure we have the same and clear vision.」
「By getting feedbacks from other teams, we were able to notice the next step to focus on.」
などの言葉が並び、参加者が多くの気づきが得られた様子がうかがえた。

上勝町のことを教え合い考え合う「地方創生@上勝コース」

地方創生@上勝コースは、徳島県上勝町のまちづくり事業を考えるコースだ。専門家・野々山聡氏はインテリジェンスのHR事業を経て、上勝町の地域おこし協力隊となり、現在は上勝町でサスティナブルツーリズム事業を展開している。参加者たちは、野々山氏の「パンゲア流サスティナブル・デベロップメント」を学んで、上勝町を元気にする事業、上勝町を通して新たな価値を創出する事業の立ち上げを進めている。



野々山 聡氏
pangaea,LLC. (合同会社パンゲア) 最高経営責任者CEO。高校生時代にNASAにてスペースキャンプに参加。宇宙飛行士を目指すべくアメリカの大学に留学する。その後帰国、2003年より株式会社インテリジェンスにてHR事業に携わる。2013年より総務省管轄上勝町地域おこし協力隊を経てpangaea,LLCを2016年に立ち上げ、サスティナブルツーリズム事業を上勝町にて展開。


セッション4で特徴的だったのは、各チームが別々の事業を考える一方で、コース全員が一緒になって上勝のことを教え合い、考え合う姿勢だ。上勝町の事業者にどこまでなら手伝ってもらえそうか、上勝町にはどのようなニーズがあってどのようなニーズはないのか、どうやって販路を開拓したらよいのか、といったことをシャッフルチームで対話し、知恵を出し合う姿が印象的だった。

「シャッフルで事業案のフィードバックを受けられたことで、新たな視点での気づきを得ることができました」
など、シャッフルチームでの話し合いに効果を感じるコメントが多くあった。
また、「自身のチームの目的意識やエンゲージメントが高いことがあらためて感じられた。皆様から頂いた内容を踏まえて、自分たちもワクワクできる事業案に仕上げていきたい!」
といったコメントもあり、最終案の作成に向けてチームの団結が強まったようだった。

「需要はある?」「どんな豊かさを提供したい?」本質的な問いが飛び交う「文化コース」

文化コースでは、日本の伝統を次世代につなぐことを目指し、株式会社和えるを立ち上げた矢島里佳氏を専門家に迎えて、文化を活性化させる事業や、新たな文化を生み出すような事業の創出を目指している。

矢島里佳氏の写真

矢島 里佳氏
1988年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。大学4年時の2011年3月、「日本の伝統を次世代につなぐ」株式会社和えるを創業。日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す“0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、東京・京都に事業拠点を立ち上げる。「ガイアの夜明け」(テレビ東京)にて特集される。その他、日本の伝統を暮らしのなかで生かしながら次世代につなぐさまざまな事業を展開。


文化コースの第一の特徴は、自由度が高いことだろう。文化の領域には、多種多様な事業の形があり得る。また、文化を今の形のまま残すのか、形を変えて発展させていくのか、あるいは新しい文化をつくり出すのか。そこに正解はないが、実現したい未来の姿を魅力的に描くことが求められる。それだけに、各チームとも迷いがあり、絞り込みがなかなか進んでいないように見えた。そうした状況に対して、トレーナーや他チームのメンバーが、「需要はどこにありますか?」「どんな豊かさを提供したいのですか?」「魅力的な不がたくさんあるから、1つを選んでフォーカスしたほうがよいのでは?」「私はこうしたい! という思いをもっと入れた方がよいのでは?」といった、本質的な問いを次々に投げていた。問いを真摯に受け止めることで、多くの参加者の刺激となっていた。

セッション終了時のチェックアウトコメントには、
「プレゼンのポイントはシンプルに魅力的に! 身銭をきってでもやりたいと思う、ワクワクする案件を目指す!」
「なぜ私たちがやるのか? 社会をどうしたいのか?という一番の目的を突き詰めていなかったことを実感しました」
「文化という、白黒はっきりしない、正解のないテーマのなかから1つの答えを探し出すのは大変だけど、考えを巡らせるのは楽しい」
などのコメントが並んだ。幅広いだけに難度の高い文化コースだが、かえってやりがいを感じている受講者が多く、最終事業案に向けた巻き返しが楽しみである。

あらためて「不」に向き合おうとする「食料コース」

食料コースでは、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物のサブスクリプションサービスなどを展開する専門家・小野邦彦氏(株式会社坂ノ途中)の協力を仰ぎ、日本の食料や農業にまつわる新事業を創出しようとしている。

小野邦彦氏の写真

小野 邦彦氏
1983年奈良県生まれ。京都大学総合人間学部では文化人類学を専攻。外資系金融機関での“修行期間”を経て、2009年株式会社坂ノ途中を設立。「100年先もつづく、農業を。」というメッセージを掲げ、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物の販売を行っている。提携農業者の約9割が新規就農者。少量不安定な生産でも品質が高ければ適正な価格で販売できる仕組みを構築することで、環境負荷の小さい農業を実践する農業者の増加を目指す。東南アジアの山間地域で高品質なコーヒーを栽培することで森林保全と山間地での所得確保の両立を目指す「海ノ向こうコーヒー」も展開している。


誰にとっても身近な問題ということもあって、食料コースの事業計画は地に足がついていた。一方で、日常に欠かせない領域だからこそ、「不」の発見や探索に悩んでいるチームも見られた。また、面白いアイディア、斬新なアイディアを出すことに難しさを感じているようでもあった。各チームとも、食料コース特有の難しさを感じ取っており、「不」の探索や、楽しさの演出などに腐心していた。

セッション終了時のチェックアウトコメントには、
「どういう世のなかを実現したいかという質問は、あらためて自分たちのやることの意義や取り組む内容を考え直す良いきっかけになりました」
「事業案を具体的にしていくなかで、不ではなく、ニーズに意識が向いている自分に気がつきました。もっと、どんな不をどのように解消していくのかを考え抜かなければならないと思いました」
「『一言で言うと何?』という問いに対する納得感のある回答にたどり着きたい」
などの言葉が並び、あらためて「不」に向き合おうとするメンバーが目立った。

目的に立ち返り、あらためて事業案で「本当に実現したいこと」を問い直す

事業計画の共有とシャッフルチームでの検討が終わると、元のチームに戻ってあらためて事業案の「作戦会議」が行われた。自分たちの事業案にある程度自信を持って発表に臨んだチームも、シャッフルチームでの検討を経て、その自信が揺らいでいる様子が見て取れた。

ここまで一緒に検討を続けてきたチームメンバー同士では当たり前になっていた「前提」――こういう不がきっとあるはずだ、これを解決したい、そのためにはこのソリューションがいいはずだ――に対して、第三者の素朴な問いが突きつけられたからだ。
「具体的にどんな人がこのサービスにお金を出すのか?」
「その不が生まれる構造にはもっとほかの要因があるのではないか?」
「本当にそのソリューションで問題の解決につながるのか?」
などとあらためて問われたことで、作戦会議ではチーム全員が頭を抱えるような場面も見られた。

しかし、最終プレゼンテーションに向けて、根本的に事業案を見直すタイミングはもうここしかない。各チームはあらためて、それぞれの事業案で「本当に実現したいことは何なのか」を考え、メンバー一人ひとりが事業案に対する自分の思いを語った。それを互いにすり合わせながら、目的の再確認、再設定を行っていった。

以上で、セッション4の紹介を終える。次のセッション5では、各チームが事業案の最終プレゼンテーションを行い、最も優れた事業案1案を選出する。そして、2021年2月のJammin’Awardでは、各コースの優秀事業案のなかから、グランプリを決める。次の記事では、Jammin’Awardの様子を紹介する予定だ。お楽しみに。


【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。


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