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共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’インタビューvol.5

テーマの枠を超えていく新規事業案がさらに増えたら嬉しい

  • 公開日:2020/10/19
  • 更新日:2024/06/07
テーマの枠を超えていく新規事業案がさらに増えたら嬉しい

2019年からスタートした共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」。2020年の第2回Jammin’では、地方創生・働き方・インバウンドなど、10の社会課題をテーマとしたコースを用意する予定だ。各コースではチームに分かれて新規事業案を作成するが、コースごとにその道の「専門家」が伴走する。専門家の方々には、各領域の深い知見や最新動向をレクチャーしてもらったり、事業案のアイディアにアドバイスしてもらったりしている。その専門家のお1人、ヘルスケアコースを担当いただく島村実希氏に、ヘルスケアビジネスの最新動向、第1回Jammin’の感想、第2回への抱負などを伺った。

PROFILE
新型コロナによって新たなヘルスケアビジネスの可能性が出てきた
面白いアイディアを生み出すチームをできるだけ多くしたい
ヘルスケアの枠を超えて考えることを後押ししたい

PROFILE

一般社団法人WELLEME 代表理事
島村 実希氏

島村実希氏の顔写真

京都大学医学部人間健康科学科卒、看護師・保健師。船井総合研究所にて企業の福祉業界への新規参入案件を中心に経営コンサルティングに従事。退職後、看護師として老人福祉施設に勤務。国連、海外医療機関でのインターンを経て、NPO法人ミラツクで執行役員に就任。ヘルスケア部門を立ち上げ、産官学金に医療福祉業界を含めたプラットホームを創出。現在は独立コンサルタントとして、地域や企業が持つ既存資源を活用したヘルスケアビジネスの立ち上げを支援している。

新型コロナによって新たなヘルスケアビジネスの可能性が出てきた

――自己紹介をお願いします。

島村:私の仕事は、ヘルスケアビジネスの立ち上げを支援する独立コンサルタントです。ただ私自身は、自分のことを「ビジネスをツールとして活動する保健師」と捉えています。保健師の皆さんは、保健所・保健センター・企業などで地域看護・健康教育・保健指導などを行い、地域や企業の皆さんの疾病予防や健康増進を目指しています。一方の私は、新たなヘルスケアビジネスを生み出して軌道に乗せることによって、医療従事者が本来の業務に集中できるような環境を整えて病院の収益性や生産性を高めることや、患者や市民のヘルスリテラシーが上がることを目指しています。なぜなら、それがより良質な医療・看護につながり、ひいては健康社会の実現につながっていくと考えているからです。行っているのはヘルスケアビジネスの立ち上げ支援ですが、最終的な目標は、保健師の皆さんとほぼ一緒なのです。

新型コロナによって新たなヘルスケアビジネスの可能性が出てきた1

ヘルスケアビジネスの立ち上げ支援といっても、仕事は多岐にわたります。例えば、人事の皆さんに近いところでいえば、ヘルスケアの新規事業を生み出せる人材を育てる若手人材育成プログラムなども実施しています。Jammin’企画責任者の井上功さんとは数年前からお付き合いがあり、井上さんが行ってきた「i-session(R)」(新価値創造を促すイノベーション研修)に専門家として関わって、受講者の皆さんに、ヘルスケアビジネスの最新動向やビジネスアイディアを考える際の注意点などをお伝えしてきました。その流れで、第1回Jammin’にもヘルスケアコースの専門家として参画し、第2回の専門家も務めます。

――ヘルスケアビジネスの最新動向を教えてください。

島村:経済産業省にヘルスケア産業課が新設され、ヘルスケアビジネスを支援する動きが強まった影響で、2016~2018年頃は、ヘルスケアビジネスの全体像を教えてほしいといった講演依頼が数多くありました。2019年はスポーツ関連の引き合いが目立った年です。そして2020年、新型コロナウイルスによって状況が大きく変わってきています。リモートワーク下での社員の健康管理をどうしたらよいか、健康管理システムのクラウド化を進めたいのだがどうすればよいか、といった相談が急速に増えています。また、人々の健康意識が高まったことで、新たなヘルスケアビジネスの可能性が出てきたとも感じています。なお、AI・ロボット・医療系データなどの活用は、もはやヘルスケアビジネスになくてはならないものになりました。私の仕事も、ほとんどは何らかの形でこれらが絡んでいます。

新型コロナによって新たなヘルスケアビジネスの可能性が出てきた2

面白いアイディアを生み出すチームをできるだけ多くしたい

――第1回Jammin’の感想を教えてください。

島村:さまざまな会社の方々と一緒になって新価値創造のアイディアを生み出す機会は、やはりとても貴重だと思います。視点や感覚の違う人たちとチームを組むことでコミュニケーション力が鍛えられますし、自社とは異なる商品・サービス・ビジネスモデル・考え方などを知るなかで、新たな発見もたくさんあるはずです。意外かもしれませんが、他社を知ることで、かえって自社の強みが見えてくるケースも少なくないようです。Jammin’のような場がなければ、他社と比較して、自社の長所・短所を知るのが難しいのだと思います。

これからは、どの企業でも外部と協働する機会が増えるでしょうから、Jammin’のような場で他社人材との協働の仕方、関わり方を学んでほしいと思っている会社は多いのではないでしょうか。また、普段の仕事でタイムリーな提案を企画したり、PDCAの高速回転をしたりする良い練習にもなっていると思います。

それから、「最終プレゼンテーション」の場(Jammin’ Award)が用意されていることが、いろいろとプラスに働いていると感じます。みんなの前で発表しなくてはならないことが、プログラム全体の緊張感を高めているのです。最終プレゼンテーションは、各コースから選ばれた1チームだけが参加するのですが、ヘルスケアコースから選ばれたチームはその後本当に頑張って、最終プレゼン時には事業案の完成度を飛躍的に高めていました。こうやって本気になれるプログラムなのも、Jammin’のいいところだと思います。

面白いアイディアを生み出すチームをできるだけ多くしたい

――課題だと感じていることはありますか?

島村:これは専門家である私の責任も大きいのですが、どのように面白いアイディアを生み出すかが、やはり難しいと感じます。
難しさの原因はいくつかあります。1つ目は、ヘルスケアという枠にとらわれすぎてしまうと、十分に発想をジャンプさせられない可能性があります。2つ目として、一見斬新なアイディアや明確な意見が出ると、それに満足してしまいそれ以上発展しないという場合があります。3つ目は反対に、チーム全員の意見のバランスを取りすぎたために、角が取れて「どこかで見たような」案になってしまうこともあります。

こうした落とし穴を避けて、面白いアイディアをいかにたくさん生み出すか。これが、第2回Jammin’に向けた個人的な課題です。面白いアイディアを生み出すチームをできるだけ多くしたいと思っています。

ヘルスケアの枠を超えて考えることを後押ししたい

――第2回Jammin’をどのような場にしたいと思っていますか?

島村:面白いアイディアを生み出すチームを増やすためにはどうしたらいいのか、何ができるのかを考えているところです。

1つ大事なのは、チームメンバーがちょうどよい具合に混ざり合うことだと思います。誰か1人だけが強く引っ張るのではなく、バランスを取りすぎるのでもなく、全員の強みや良さを生かし合いながら、お互いを理解し合って議論を進めていけるチームになってほしい。そのために、専門家の私ができることがあるだろうと考えています。

もう1つは、ヘルスケアというテーマの枠を超えて考えていただくことです。これは専門家のリードの仕方次第で、かなり変わるのではないかと思っています。例えば第1回では、あるチームが「地域出会い系ヘルスケアコミュニティバス」という企画アイディアを出しました。地域内に高齢者向けのコミュニティバスを走らせるのですが、そのバスは「高血圧」や「がん」など、日によって会話のテーマが変わるのです。そして、バス内では、そのテーマに沿って自由に会話していただく。そうすると、各々が興味のあるテーマのバスに乗るようになり、共通の話題で盛り上がって仲良くなれる人が増えるのではないかというアイディアです。私はかなり面白いと感じたのですが、そのチームは「これはヘルスケアビジネスではないのではないか」とブレーキをかけてしまい、最終的な事業案には採用されませんでした。

第2回は、このような「これがヘルスケアビジネス?」と感じるアイディアがもっと増えたら嬉しい。なぜなら今後は、いくつもの課題を一気に解決するビジネスが重宝されると思うからです。例えば、地域出会い系ヘルスケアコミュニティバスは、地域の疾病予防や健康増進に役立つだけでなく、地域内の移動手段やつながりやコミュニケーションも増やせるからこそ、面白いのです。こうしたアイディアは、必ずテーマの枠を超えます。そのときに講師陣が、「どんどん枠を超えて、楽しく考えていこう」と言えるかどうかが、アイディアの質を左右すると思うのです。枠を超えることをどんどん後押ししていきたいと思っています。

それから、いま悩んでいるのは、新型コロナウイルスの影響をプログラムにどのように取り入れるかということです。新型コロナウイルスが今後、社会にどの程度の影響を与えるのか、はっきりとは分かりません。ですから、プログラムの詳細はギリギリまで詰めることになるでしょう。ただ、いずれにしても、新型コロナウイルスによって私たちの暮らし方や健康に対する感覚は、大きく変わりつつあります。そこに大きなビジネスチャンスが秘められているはず。ヘルスケアビジネスを企画するには面白いタイミングではないかと思います。

【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

※共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」とは
異業種交流を通じた次世代リーダー育成を望む複数企業が集い、先が見通せない混迷の時代に活躍できる次世代リーダーを、他社の人材との交流を通じて育成するプログラム。プログラムの核となるのは、「地方創生」「AI」「ドローン」などテーマごとにコース(※)に分かれて行う新規事業案の立案。最終的には全コースから選ばれた事業案の中からグランプリを決する。
別途、人材を送り出す側である各社の人事(オーナー)向けのプログラム(オーナーズセッション)も組まれている。(※2019年度)

バックナンバー

vol.1 もし自分を変えたくないのなら、Jammin’に参加しない方がよいと思う
vol.2 Jammin’に参加して、「経営リーダー」の道を一歩踏み出してみようと決めた
vol.3 1つの企業に勤め続ける方も、Jammin’を通して「外」とつながれる社会にしたい
vol.4 Jammin’参加社員の多くが自らの業務を社会課題とつなげて考えるようになった

関連記事

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’オーナーズセッションレポート
vol.1 イノベーションとリーダーシップを考える
vol.2 イノベーションと人事の役割を考える
vol.3 続・イノベーションと人事の役割を考える
vol.4 イノベーションにおける人事の役割を共創する

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’セミナーレポート
vol.5 VUCA時代に求められるリーダーとは

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’ Awardレポート
vol.6 37の切磋琢磨の頂点に輝く新規事業案とは

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