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THEME 経営人材/次世代リーダー

連載・コラム共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’2020オーナーセッションレポートvol.1

23社・46名の人事が「人材戦略の進化」について語り合う

23社・46名の人事が「人材戦略の進化」について語り合う

2019年度からスタートした共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」。いよいよ第2期のJammin’2020がスタートした。9月7日(月)にオンラインでリーダーセッションのキックオフを開催したが、それに先立って、9月4日(金)に第1回のオーナーセッションを行った。オーナーセッションとは、Jammin’に人材を送り出している人事(オーナー)向けのプログラムだ。なお、2020年は、リーダーセッションもオーナーセッションもすべてオンラインで実施する予定。第1回は、ボストンコンサルティンググループの竹内達也氏(Managing Director & Partner)に「これからの10年を見据えた人材戦略の進化」について講演していただき、その後に参加者で対話を交わしていった。その模様を紹介する。

リーダー開発や組織変革の知恵と共感を交換する場

金曜日の17時、23社・46名の人事(オーナー)の皆さんがオンラインで集った。Jammin’2020オーナーセッションに参加するためだ。オーナーセッションでは、これから6回にわたり、ゲストの講演と異業種の人事同士の対話を通して、リーダー開発や組織変革の知見をお互いに交換しながら考えを深めていく。特に考えを深めたいのは、「自社に共創型組織へのシフトを起こすために何ができるか?」という問いである。リーダーだけでなく、オーナーが、こうした問いに自分なりの答えを出し、自らを変え主体的に行動を起こしていくことで、組織は変革される。だからこそ、オーナーセッションはリーダーセッション同様に重要なのである。

進行役の井上功(弊社エグゼクティブプランナー)と藤澤理恵(弊社主任研究員)が、以上のような説明をした後、3〜4名ずつに分かれて自己紹介をしていただいた。そして、いよいよ講演である。

竹内達也氏講演「これからの10年を見据えた人材戦略の進化」

第1回目のゲストは、ボストンコンサルティンググループの竹内達也氏だ。金融業界向けコンサルティングのプロフェッショナルであり、人材戦略にも詳しい竹内氏に、「これからの10年を見据えた人材戦略の進化」について語っていただいた。


竹内 達也氏の写真

ボストンコンサルティンググループ(BCG) Managing Director & Partner
竹内 達也氏

ドイツ銀行を経て、2004年にBCGに入社。BCG組織・人材グループの日本リーダー、金融グループ、保険グループ、およびテクノロジーアドバンテッジグループのコアメンバー。
銀行、証券、保険、ノンバンクなど等幅広い分野の金融機関に対し、デジタル戦略、営業改革、事業戦略などのプロジェクトを手掛けている。また、幅広い業界の企業に対し、人材マネジメントに関わる支援経験が豊富。

竹内氏によれば、主に2つの理由から、人材戦略策定の難度は格段に高まっている。理由の1つは、いま多くの企業が「人材ポートフォリオの再構築」の必要に迫られていることだ。その背景には、グローバル化やデジタルの進化、新型コロナウィルスの影響、地政学リスクなどによって、いま多くの企業が、短期間で事業ポートフォリオを書き換えていることがある。そのため人事部は、経営が事業ポートフォリオを書き換えるたびに、自社がフォーカスする領域や付加価値にリンクさせて人材要件を再設定したり、テクノロジーを前提とした人材の役割を再定義したりする必要があるのだ。また、働く担い手の多様化に合わせて、ダイバーシティを確保するために人材ポートフォリオを変える要請も強まっている。

もう1つの理由は、「多様な人材の獲得と活性化」が難しくなっていることだ。変化の時代に必要な「個の力」とは、洞察(インサイト)、ヒューマンタッチ、方向づけ・意味づけの能力が高く、能動性・好奇心・リスクテイク・オープンネス・レジリエンスといった行動特性を備えることだ。また、個人独自の強みや価値観と、顧客・社会が個人に求めるニーズを重ねて、自らの「パーパス」を定める力だ。しかし、そうした個の力を持つ人材を採用したり、育成したりするのは決して簡単ではない。特にデザイン・アナリティクス・デジタルエンジニア領域で、優れた人材の獲得競争が激化している。

では、そのなかで、人事はいったいどうしたらよいのだろうか。竹内氏は、人材戦略の進化のポイントとして5つを掲げた。

●自社の事業戦略や組織戦略をよく理解して、再構築された事業ポートフォリオのもと、人材ポートフォリオを練り直すこと
●会社と個人の関係を対等にした上で、多様な採用形態を用意して、社内外に開かれた多様なキャリアパスを人材に提示すること
●デジタル時代に人に求められるスキルを再定義すること。それによって、人材をより高次の役割にシフトさせること
●新時代にふさわしい評価制度を構築し、人材育成を加速すること
●ジェンダー・ダイバーシティなどの人材の多様性を促進し、経営の複雑性に対応すること

人事部視点での人材戦略の進化のポイント

 
また、人材戦略を進化させるには、経営レベルが次の5点にコミットすることも欠かせない。

●経営が人材戦略の実現に強くコミットすること
●経営主導で人事部と他部門の有機的な連携を強めること
●経営が率先して挑戦と試行錯誤を促す組織カルチャーをつくること
●従業員と経営者間の相互理解を促進すること
●トップダウンで人材戦略と組織・働き方改革を一体で進めること


以上を実現することが、人材戦略の進化につながっていくと竹内氏は語った。なお、ここで言う「組織・働き方改革」とは、例えば次のようなことだ。

●組織を中央集権・ヒエラルキー重視からエンパワーメント・自律性重視に変えること
●組織をサイロ(風通しが悪く気密性が高い穀物貯蔵庫)の呪縛から解放し、組織の壁を超えた協業を進めること
●仕事の進め方をウォーターフォールからアジャイルに変えること

経営者のレベルで考えるべき人材戦略の5つの要諦

社員一人ひとりに自らのパーパスを発見してもらうことが人材育成の中核

この講演を受けて、オーナーから「ミドルマネジャーの専門性は今後どうなるのだろうか?」という投げかけがあがった。竹内氏はそれに「ミドルマネジャーの重要性も難度もさらに高まる」と答えた。なぜなら、例えば、今後増えると思われるアジャイルプロジェクトでは、専門性軸とプロジェクト軸の両輪でマネジメントしなくてはならないからだ。これからのミドルマネジャーは、単にプロジェクトマネジメントに強いだけでなく、専門領域にも詳しくなくてはならないのだ。

仕事の進め方をアジャイルに変えていくとき、人事権はどうしたらよいか?」という問いも投げかけられた。竹内氏は、「人事部から現場へ人事権を移譲するのがオーソドックスなやり方だ。特に専門家は、現場がアサインするしかなくなるはずだ。ただし、より難度が高くなるが、人事部とは別に、現場を熟知した人材を結集して、チームの組み合わせだけを考える特別な部署を作る方法もある」と述べた。

こうした応答の後いくつかのグループに分かれて、これから10年を見据えた人材戦略として取り組んでいること・やれていないことについて、オーナー同士話し合った。その後、グループで話した内容を共有し合いながら、興味ある話題について参加者全員で話し合った。

全体対話の大きな話題の1つ目は、多くの企業が興味を持っている「ジョブ型雇用への移行」だ。参加企業のいくつかが、いままさにジョブ型への移行を進めており、それらの事例について詳しい事情や苦労が語られた。ジョブ型への移行を実現するには、強くコミットする経営トップとイノベーティブな人事トップが必須だ、という考えに共感が集まり、竹内氏も、「トップダウンで素早く意思決定を行うことが重要で、人事部だけでジョブ型への移行を完遂することはほぼ不可能」と語った。また、まさにジョブ型への移行を実施している人事の方によれば、トップダウンで推進する一方で、現場を巻き込みながら、上層部から徐々に移行していくプロセスが欠かせないという。

2つ目は、「人材ポートフォリオの定義」である。竹内氏によれば、「実務的には、これからの人材ポートフォリオは何度も書き換える必要が出てくるため、リバイズする前提で大きな方向性を決めることが大切だ。粗くてもよいから、いったん定めることが、新たな人材ポートフォリオを構築する推進力になる」という。

全体対話で本編は終了となり、チャットにひと言感想を述べて解散となった。「講演内容もブレイクアウトセッションもとても興味深かったです。皆さん同じ悩みを抱えていることも分かりました。次回も楽しみにしています」「自社状況を客観的に見る機会となり良かったです」など、充実した時間を思わせるコメントが画面に流れた。
その後、「アフタートーク」として余韻の時間が設けられ、話し足りないメンバーが残ってさらに対話を重ねた。アフタートークではさまざまな話題が展開されたが、最も注目されたキーワードは「パーパス」だった。なぜなら、社員一人ひとりに自らのパーパスを発見してもらい、取り組んでいる業務や会社のミッション・ビジョン・バリューを自分ごと化してもらうことが、これからの人材育成の中核にあるからだ。「どの会社にも変化したがらない社員が一定数いるものだが、そうした社員を変えられる可能性があるとすれば、自らパーパスを発見することだ」と竹内氏は語る。具体的には、マネジャーがメンバーの働く意義を聞き出したり、メンバーの短期的な成長にフォーカスしたりすることが、パーパスの発見、ひいては個人のモチベーション向上につながるチャンスになるという。

また今後は、ビジネスエコシステムのなかで、他社・他部署の専門家とコラボレーションする機会が増えていく。それに合わせて、阿吽の呼吸を重視する日本企業の文化を変革し、外部とも柔軟に協働できる社風を築かなくてはならないが、どうしたらよいか、ということも話題に上がった。竹内氏は、「企業文化を全面的に変えていくには、やはり強力なトップダウンの施策が必要だ。しかし、現実的にはそれが難しいケースも多いだろう。その場合、協働の必要に迫られている部署から少しずつ変えていくのが現実的ではないか」とアドバイスしていただいた。

【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

※共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」とは
異業種交流を通じた次世代リーダー育成を望む複数企業が集い、先が見通せない混迷の時代に活躍できる次世代リーダーを、他社の人材との交流を通じて育成するプログラム。プログラムの核となるのは、「地方創生」「ヘルスケア」「インバウンド」などテーマごとにコース(※)に分かれて行う新規事業案の立案。最終的には全コースから選ばれた事業案の中からグランプリを決する。人材を送り出す側である各社の人事(オーナー)向けのプログラム(オーナーズセッション)も組まれている。

バックナンバー■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’インタビュー
vol.1 もし自分を変えたくないのなら、Jammin’に参加しない方がよいと思う
vol.2 Jammin’に参加して、「経営リーダー」の道を一歩踏み出してみようと決めた
vol.3 1つの企業に勤め続ける方も、Jammin’を通して「外」とつながれる社会にしたい
vol.4 Jammin’参加社員の多くが自らの業務を社会課題とつなげて考えるようになった
vol.5 テーマの枠を超えていく新規事業案がさらに増えたら嬉しい
関連記事■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’オーナーズセッションレポート
vol.1 イノベーションとリーダーシップを考える
vol.2 イノベーションと人事の役割を考える
vol.3 続・イノベーションと人事の役割を考える
vol.4 イノベーションにおける人事の役割を共創する

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’セミナーレポート
vol.5 VUCA時代に求められるリーダーとは

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’ Awardレポート
vol.6 37の切磋琢磨の頂点に輝く新規事業案とは

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