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THEME 経営人材/次世代リーダー

連載・コラム共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’インタビューvol.4

Jammin’参加社員の多くが自らの業務を社会課題とつなげて考えるようになった

Jammin’参加社員の多くが自らの業務を社会課題とつなげて考えるようになった

2019年からスタートした共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」。2020年に第2回を実施するにあたって、第1回の参加企業人事の方にインタビューを行った。今回は、NECグループの人材開発を担当する逢坂浩一郎氏(NECマネジメントパートナー)にインタビューした。NECグループでは「社会課題体感型人材開発プログラム」の一環としてJammin’を活用しており、第1回のJammin’2019には、10名を超えるNECグループ社員に参加していただいた。第2回にも参画していただく予定だ。そこで逢坂氏に、Jammin’の感想や長所、今後の要望などを伺った。

PROFILE

逢坂 浩一郎氏の写真

NECマネジメントパートナー株式会社
人材開発サービス事業部 主任

逢坂 浩一郎氏

2000年にNEC入社。以来、人事部門一筋。最初の10年はHRBPとして、複数の事業部門人事を担当。2011年より人材開発担当として、タレントマネジメントやサクセションプランニングに携わった後、2014年にNECマネジメントパートナーへ移り、幹部人材育成をはじめとした選抜型研修プログラムの企画・運営を手がける。2018年から越境学習を担当することになり、NECグループの社会課題体感型人材開発プログラムを企画。

NECグループ社員が社会課題の現場に赴き、五感で社会課題を体感する

――「社会課題体感型人材開発プログラム」とは、どのようなものですか?

逢坂:NECグループ社員が社会課題の現場に赴き、五感で社会課題を体感する機会をともなうリーダーシップ開発プログラム群です。階層や状況に応じた「越境学習」のプログラムをいくつも用意しています。2018年にまず、数カ月間新興国のソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)やNPOにジョインし、現地の社会課題解決に取り組んでもらう、NPO法人クロスフィールズさんの「留職プログラム」を全社的に導入しました。そして、2019年からは、いくつかの共創パートナーと共に若手・中堅社員向けの越境学習プログラムを複数開発し、そこに社員に飛び込んでもらっています。「Jammin’」もその1つです。

図表1 社会課題体感型人材開発プロフラムは、NEC社内で「Sense」の名称で展開されている

 
――社会課題体感型人材開発プログラムを立ち上げた経緯を教えてください。

逢坂:私は2000年にNECに入社し、ずっと人事領域で経験を積んできました。最初の10年はHRBPとしていくつかの事業部門の人事を担当したのですが、その際、特に経営人材を育てるにあたっては、他部署・他社との交流が必要だと感じていました。なぜなら、当時は社員を「その領域の専門家」として育てる意識が強く、隣の島のチームがどのような開発をしているか、自分が担当する製品が社内でどう位置づけられているか、といったことをよく知らない社員が増えていたからです。

もちろん、優れたスペシャリストは欠かせませんが、専門家育成だけでは他チーム・他部署をマネジメントしたり、知の新結合を実現したりする社員を育てるのは難しい。他部署や社会を知ってもらう研修も同時に必要だ、と感じていたのです。その想いは、2011年に人材開発部門に異動し、タレントマネジメントやサクセションプランニングを担当するようになって、ますます強くなりました。

そんなとき、私はある人に出会いました。先ほども触れた留職プログラムなどを展開するNPO法人クロスフィールズの小沼大地さんです。2012年、NECの若手社員たちが小沼さんと共に、NEC中央研究所長にプレゼンテーションする場があり、そこに私も同席したのです。当時の中央研究所では、新興国市場のHVOC(Hidden Voice of Customer、隠れた顧客の声)を理解することが重要だと叫ばれており、小沼さんと若手社員たちはその方法として留職をプレゼンしたのです。中央研究所長は、その日のうちに留職プログラムを活用すると意思決定し、私は翌日から小沼さんと早速打ち合わせを始めました。そして、2013年に中央研究所の独自施策として、2名の社員が半年間の留職に赴きました。これがNECの越境プログラムの始まりです。

その後、私は2014年からNECマネジメントパートナーに移り、いったんは「越境」から離れました。しかし、(1)NECがICTを活用して社会課題を解決する「社会ソリューション事業」に注力し「社会価値創造」を推進するようになったこと、(2)同じ頃設立された「NEC社会価値創造塾」という幹部人材向けのリーダーシップ開発プログラムのなかで実施された「ラーニング・ジャーニー」(国内外のさまざまな社会課題の現場に出向き、社会の変化や課題に向き合ってもらうというもの)が非常に高い評価を得て、社会課題の現場を知ることの重要性があらためて幹部クラスに認識されたこと、(3)中央研究所の留職経験者たちが留職プログラムを全社導入してほしいと経営トップに直訴したこと、などが運命的に重なって……私が再び「越境」を、今度は全社の仕組みとして立ち上げることになったのです。これが、NEC全社施策「社会課題体感型人材開発プログラム」の始まりです。

図表2 NECグループが掲げる7つの社会価値創造テーマ

「7つの社会価値創造テーマ」について詳しくはこちら(※外部サイト)

Jammin’はまさに私たちが求めていたサービスで、完成度が高かった

――なぜJammin’を利用しようと考えたのですか?

逢坂:すでにお話ししたように、部長以上の階層に対しては、すでに「ラーニング・ジャーニー」を用意できていました。しかし、若手・中堅社員向けの越境プログラムはほとんど何もありませんでした。そこで、2018年に留職プログラムの全社展開を始めた後、2019年からは中間支援系NPOや人材系ベンダなどの共創パートナーと共に越境学習プログラムを開発し、そこに若手・中堅社員に飛び込んでもらう活動を始めました。そのパートナーの1社がリクルートマネジメントソリューションズであり、プログラムの1つが「Jammin’」でした。

さまざまな可能性を模索したなかで、Jammin’を選んだ理由は明確で、一言で言えば「完成度が高かった」からです。そもそも、日本でこれほど大規模に越境プログラムを運営しているところは、おそらく現状Jammin’以外にほとんどありません。また、私たちが活用している他のプログラムは、すべて自分たちが企画・開発にも携わっているのですが、Jammin’はすでに完成しており、私たちが企画・開発に関わる必要が一切ありませんでした。社会の「不」を体感できるテーマが多様に揃っているだけでなく、ファシリテーション・アセスメント・レポートなどの、人材開発プログラムとして欲しい要素もきちんと揃っていました。さらに言えば、越境する社員たちには、マインドセットや志を変えたり深化させたりしたうえで、新事業創出に取り組んでもらいたい、というのが私たちの願いなのですが、まさにその流れでプログラムが組まれているのも大きな魅力でした。つまり、私たちが求めていたサービスがそのまま存在し、最初から安心して活用できたのです。Jammin’を外す選択肢はなかったと思います。

図表3 逢坂氏の考える成長プロセスとそれに適した越境プログラムのタイプ

 
――Jammin’2019の感想を聞かせてください。

逢坂:今回、Jammin’2019に参加してもらったのは、30代中盤を中心とした社員たちです。新事業の立ち上げや新価値創造への関心が高く、社外のことをもっと知りたいという意欲を持ったメンバーを選びました。

総じて言えば、Jammin’参加者の社会の「不」への感度や理解は間違いなく高まりました。そして、参加社員の多くが、自らの業務を社会課題とのつながりを考えるようになりました。「自分/担当業務/事業部/NEC/社会」を、一本につなげて見る新しい視野を獲得したのです。別の言い方をすると、「社会課題を自分ゴトとして考えるようになった」わけです。これこそ、いままさにNECが社員に求めていることの1つ。そのことだけでもJammin’の効果を実感しています。

また、他社の方々と協働する面白さを体感して帰ってきてくれたのも確かです。NEC社内にはいないような方々とチームを組み、NECとは全く異質な考え方、行動の仕方に触れたことで、考え方や物の見方が大きく変わった社員も少なくありませんでした。Jammin’の特徴の1つは、多様な企業から集まる方々のレベルが総じて高いことです。レベルの高い皆さんと切磋琢磨しながら一緒に難しい課題に挑んで事業企画案を作りきることで、自信がつくと同時に、「あの人凄い」「変わりたい」という気持ちが高まる社員が多くいました。強い刺激を受け、触発されたわけですね。

プログラム終了後に勇気を持って一歩を踏み出す社員も出てきています。例えば、Jammin’受講後、異動希望を出した社員がいました。また、別の何名かは社内の有志活動を始め、Jammin’で体験したことや感じたことなどを主体的に社内ブログに書いて経験をシェアしてくれました。こうした行動が次々に起こってきています。

社会課題解決のパッションやマインドセットを醸成する最も良い方法が越境学習

――今後、社会課題体感型人材開発プログラムをどのようにしていこうと考えていますか?

逢坂:第1に、越境学習の質を落とさずにプログラムの種類を増やして、もっと多様な社会課題にアプローチできる環境を用意したいと考えています。第2に、越境学習を行った社員たちをこまめにフォローしながら、彼・彼女らの活動を積極的に社内に広めて、越境に憧れる社員を増やしていきたいと考えています。第3に、中長期的視点で越境学習の効果を評価する仕組みを構築して、「越境学習は社員の成長に意味がある」ことを証明できるようにしたいと考えています。

私自身は、越境の可能性を確信しています。社会課題解決のイノベーションを生み出す人材には、社会の「不」に注目するマインドセット、そして、その社会課題を何とかしたいという強いパッションが欠かせません。それらがなくては、多くのステークホルダーの利害を調整して、大きなイノベーションを起こすような困難なプロジェクトを成し遂げることはできないのです。そのパッション、マインドセットを醸成する最も良い方法が、越境による学習だと私は信じています。実際、2013年に「留職プログラム」でインドに渡航したある社員は2020年、7年越しの想いを結実させ、インドの健康問題を解決する全く新しい事業の立ち上げに成功しました。私は、このような人材を増やしたい。そのためには越境学習を社内に広めることが必須です。しかし、パッションやマインドセットは、明日からいきなり直接的に役に立つわけではありません。ですから、社内の理解を得るには、越境学習の効果を評価する仕組みが必要なのです。

そして近い将来、優秀人材の多くが自ら手を挙げ、どんどん進んで越境学習に臨むような状況をつくりたいと考えています。それがNECをもっともっと強くするはずです。

越境学習のイメージ画像

 
――これからのJammin’に何を期待していますか?

逢坂:先ほどもお話ししたとおり、基本的にはJammin’は完成していると思うのですが、あえて言えば、最後に自分たちの成長を振り返るリフレクションの場を充実させていただけると嬉しいです。それにより、社員たちが帰ってきた後の成長をさらに加速させていきたい。それからもう1つ。Jammin’は参加者たちが社会の「不」の構造を捉えたうえで、自ら顧客を設定する仕組みになっていますが、社会課題を頭で理解する部分がやや強い。「社会課題の深刻さ」をリアルに実感するため、心から「何とかしなければ」という想いを持つための「現場を体感する、現場に接する」部分がやや疎かになってしまっている面もあるように感じます。参加者が現場により深く入っていけるようにするための工夫があるとよいと感じています。

【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。


※共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」とは
異業種交流を通じた次世代リーダー育成を望む複数企業が集い、先が見通せない混迷の時代に活躍できる次世代リーダーを、他社の人材との交流を通じて育成するプログラム。プログラムの核となるのは、「地方創生」「AI」「ドローン」などテーマごとにコース(※)に分かれて行う新規事業案の立案。最終的には全コースから選ばれた事業案の中からグランプリを決する。
別途、人材を送り出す側である各社の人事(オーナー)向けのプログラム(オーナーズセッション)も組まれている。(※2019年度)

バックナンバーvol.1 もし自分を変えたくないのなら、Jammin’に参加しない方がよいと思う
vol.2 Jammin’に参加して、「経営リーダー」の道を一歩踏み出してみようと決めた
vol.3 1つの企業に勤め続ける方も、Jammin’を通して「外」とつながれる社会にしたい
関連記事■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’オーナーズセッションレポート
vol.1 イノベーションとリーダーシップを考える
vol.2 イノベーションと人事の役割を考える
vol.3 続・イノベーションと人事の役割を考える
vol.4 イノベーションにおける人事の役割を共創する

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’セミナーレポート
vol.5 VUCA時代に求められるリーダーとは

■共創型リーダーシップ開発プログラムJammin’ Awardレポート
vol.6 37の切磋琢磨の頂点に輝く新規事業案とは

Jammin’参加社員の多くが自らの業務を社会課題とつなげて考えるようになった
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NECグループ社員が社会課題の現場に赴き、五感で社会課題を体感する
Jammin’はまさに私たちが求めていたサービスで、完成度が高かった
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