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さあ、扉をひらこう。Jammin’2022 interview vol.1

大企業の精鋭たちが秘めたポテンシャルを最大限解放するのがJammin’の使命だ〈Jammin’2022企画者インタビュー〉

  • 公開日:2022/11/28
  • 更新日:2024/05/16
大企業の精鋭たちが秘めたポテンシャルを最大限解放するのがJammin’の使命だ〈Jammin’2022企画者インタビュー〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、4年目のJammin’2022がスタートした。現在は、40社・273名の次世代リーダーが、約半年にわたって事業案の立案に取り組んでいる最中だ。また同時並行で、オーナー(人事)の皆さんが参加するオーナーセッションも開催している。 第1回のJammin’2019の参加企業は20社、参加者は約150名だった。この4年で参加企業数は倍増し、参加者数も倍近くに増えている。プログラムの魅力や意味が認められた、何よりの証しだろう。では、Jammin’の魅力や意味はいったいどこにあるのか。具体的にどのような工夫がなされているのか。Jammin’プログラム設計の中心に立つ人材開発トレーナー・吉田達とプロジェクトリーダーの千秋敦彦が、そのメカニズムや意図について語った。  

Jammin’とは、多様な次世代リーダーがチームで新価値創造を目指す「リーダーシップ開発プラットホーム」だ
Jammin’参加者のポテンシャルを解放すれば、日本社会はすばらしいイノベーションを次々に起こせるようになる
あえてお膳立てをせず、丁寧にガイドしないようにしている
専門家の熱い励ましや遠慮ないダメ出しが、参加者たちのアイディアを飛躍的に良くする
今後は職場接続、職場実践をさらに強化したい

Jammin’とは、多様な次世代リーダーがチームで新価値創造を目指す「リーダーシップ開発プラットホーム」だ

吉田達さんの写真

吉田 達

人材開発トレーナー。大手都市銀行でキャリアをスタートさせ、22年在籍。そのうち17年は本社の業務開発セクションで商品開発や新規業務開発に従事し、合併にともなう商品統合プロジェクトなども経験した。2002年にリクルート(現リクルートマネジメントソリューションズ)のトレーナーとなり、現在に至る。次世代リーダー育成やイノベーション促進の領域で豊富な経験を持つ。米国CCE,inc.認定GCDF-Japan キャリア・カウンセラー、CRR Global認定 組織と関係性のためのシステムコーチ。

千秋敦彦さんの写真

千秋 敦彦

大手電機メーカー系列会社に新卒入社し、採用・人材開発・人事企画業務に従事した後、現職。現在は主に、人材開発プログラムの開発やコンサルティングに取り組む。経験プロジェクトは、次世代経営人材育成プログラムの設計、新規事業開発支援、キャリア・ディベロップメント・プログラムの設計、組織調査・診断など。


――最初に、Jammin’の概要をあらためて簡単に説明してください。

千秋:Jammin’とは、VUCA時代に持続的に価値創出できる日本企業を増やすための「異業種参画型リーダーシップ開発プラットホーム」です。各企業の次世代リーダーの皆さんに、半年間の「新価値創造セッション」を通して社会課題を解決する新規事業提案をしてもらい、一人ひとりのリーダーシップを開発することをねらったプログラムです。社会課題ごとにコースが分かれており、Jammin’2022は15コースを用意しています。どのコースでも、多様な企業の次世代リーダーが4~5名でチームを組み、力を合わせて新規事業案を創り上げていきます。

※より詳しい概要を知りたい方は、Jammin’2022セッションレポート1コース紹介の記事をご覧ください。

▽ Jammin’2022全体像

▽ Jammin’2022全体像

▽ 15のコースと専門家

▽ 15のコースと専門家

吉田:最初に理解していただきたいのは、Jammin’はあくまでも「リーダーシップ開発プラットホーム」であって、新規事業提案はその手段であるということです。

ただ実は、リーダーシップ開発と新規事業提案の力関係は、ここまで常に揺れ動いてきました。Jammin’プログラム開発チームでは、「新規事業提案に振り切ろう」という議論になったことが何度もあります。ただ、その場合は、事業開発や立ち上げを本気でサポートすることが欠かせません。プログラムの形を大きく変える必要があります。一方で、私たちリクルートマネジメントソリューションズの強みは、研修による人材育成です。最終的には、私たち自身の強みを生かして、リーダーシップ開発に主眼を置くことに決めました。

とはいえ、もちろん参加者には、社会課題を解決するための新規事業アイディアを本気で考えてもらっています。また、協力者を募る際には、「これは研修ですが、私たちは本気で取り組んでいます」と伝えたうえで、力を貸してくださる方々と協働してもらっています。その結果、「SEAWALL MUSEUM OGATSU」のように、本当に事業化されたアイディアも出てきました。

Jammin’参加者のポテンシャルを解放すれば、日本社会はすばらしいイノベーションを次々に起こせるようになる

――いまなぜJammin’が求められているのでしょうか?

千秋:一言で言えば、Jammin’では「大企業では決して積めない経験」が積めるからです。

吉田:日本の大企業では、いまも多くの方々が、「細分化された正解のある仕事」に就いています。そうした方々は、同じ価値観を持つ仲間たちと共に、ゴールに向かって着実に進んでいくことを得意としています。日本の大企業には優れたリーダーが多く、ゴールが明確なら、高い能力を発揮します。Jammin’の参加者の皆さんも、大半がそうした訓練を積んできています。多くの日本企業ではその種の働き方が求められているわけで、それ自体が悪いことだとは思いません。むしろ、それは先人たちの尽力のうえに成り立っているのですから。

問題は、そのタイプのJammin’参加者が、総じて強い不安を抱えている、ということです。2022年、3年振りにJammin’参加者と対面で話が出来るようになったのですが、、私はそのような場で何名かの方から「先行きが見えません」という悩みを打ち明けられています。大企業のリーダーたちが、口を揃えて、いまの正解のある仕事を続けていても、その先に明るい未来が全然見えない、というのです。しかしだからといって、どうしたらよいかはわからない。それで困っているわけです。

▽ セッション2「働き方コース」の様子(1)

▽ セッション2「働き方コース」の様子(1)

そうした皆さんにこそ、Jammin’が必要です。なぜなら、Jammin’では「正解がない環境で、自分たちでゴールや進め方を決めて、自分たちの足で進んでいく経験」を積めるからです。しかも、価値観や見方の違う4~5名で力を合わせなくてはなりません。大企業では、まずあり得ない状況です。

千秋:これこそが良質な越境経験だ、というのが私たちの考えです。

吉田:さらに言えば、「社会課題と正面から向き合う」ことも、彼らにとって新鮮な体験です。細分化された仕事をしている限りは、ビジネスや社会課題の全貌に目を向けなくても生きていけます。ところがJammin’では、そうはいきません。社会課題を直視する必要があります。例えば、格差コースでさまざまな格差について調べると、「自分はこれまで、たまたま格差を感じずに済んできたけれど、ある日突然、自分自身が格差を痛感する可能性が十分にある」という切実な心情に行き着くわけです。そこで初めて、「実は日本社会はヤバいんじゃないか」と感じ取って、自分たちの手で日本社会を良くしなければ、と考え始めるんですね。この気づきに大きな意味があります。

もっと大きな話をすると、私はJammin’参加者がこうした気づきを得ることが、日本社会全体にとって大きな意味を持つ、と考えています。なぜなら、アメリカでは優秀な若者はスタートアップに入りますが、日本では、優秀な若者は大企業に就職します。彼らは、新価値創造の大きなポテンシャルを秘めているのに、それを発揮しづらい環境に身を置いてしまうわけです。だからこそ、Jammin’が、彼らの秘めたポテンシャルを最大限解放しなくてはならない、と思っています。

彼らが自らのポテンシャルを解放すれば、日本社会はきっと、すばらしいイノベーションを次々に起こせるようになります。おおげさに聞こえるかもしれませんが、いま私は「日本を変えるのはJammin’だ」と真剣に考えています。そのくらい、日本社会に必要な場になってきている、と感じているんです。

あえてお膳立てをせず、丁寧にガイドしないようにしている

――Jammin’参加者のポテンシャルを解放するために、どのような工夫を凝らしているのでしょうか?

千秋:いろんな工夫をしています。象徴的なことからお話しすると、私たちは2年目から、リーダーに求められる行動として「ひきつける」「いかしきる」「やってみる」の3つを掲げています。平易な言葉にしたことで、みんながこの3つのキーワードを使って話し合い、振り返る習慣がつきました。この言語化は、良質な越境経験につながっています。

吉田:全体的に大事にしているのは、「お膳立てをしない」ことです。例えば、Jammin’2022のセッション1では、最初の自己紹介を省いて、事前の宿題をいきなりチーム内で共有してもらいました。チームビルディングは、自分たちでやってもらうことにしたんですね。こうやって、「あえて丁寧にガイドしない」ことを心がけています。ゴールだけでなく、ゴールに至る道筋もできるだけ自分たちで考えてもらいたいからです。

千秋:宿題のフォーマットなども自由度を高くしていますね。

吉田:プログラムの細部も意図的にきっちり決めていません。セッションの切り盛りも、参加者たち自身にしてもらいたい、と思っているからです。各コースには専門家が付いていますが、専門家とのコミュニケーションも、参加者の皆さんに主導してもらうのがベストだと考えています。さらには、各コースの専属トレーナーたちが状況をリアルタイムで観察しながら、参加者の自主性を高めるような工夫をそれぞれ凝らしています。

千秋:ただ一方で、開始前のレディネスは強化しています。セッション1で仲間たちに会う前に、十分な心構えをしてきてほしいからです。具体的には、Jammin’の特徴を伝える動画やガイドブックを用意したり、事前課題に取り組んだりして、心の準備をしてもらっています。「Jammin’には正解はありません」「すべて自分たちで考えて行動する場です」「社会課題、他社との協働、新規事業の3つの越境を経験してください」「ひきつける・いかしきる・やってみるを大事にしましょう」といったことをきちんと理解したうえで、参加してもらっています。

また、どうしてもコースごと・チームごとのコミュニケーションに閉じてしまうことが多いので、全体の一体感を持ってもらいたい、とも思っています。そのために、例えばJammin’2022では、セッション1で全員に「目玉焼きはソース派? しょうゆ派? それとも〇〇派?」と質問を投げかけるなど、小さいことでも全体で参加できる工夫を行っています。

専門家の熱い励ましや遠慮ないダメ出しが、参加者たちのアイディアを飛躍的に良くする

▽ セッション2「働き方コース」の様子(2)

▽ セッション2「働き方コース」の様子(2)

吉田:2021年からは、コース間交流にも力を入れていますね。

千秋:具体的には、プログラム実施期間の後半に「ピッチセッション」という場を用意しました。その時点で各チームとも、ある程度は事業アイディアをつくり込んでいます。その事業案を何も知らない相手に対して簡潔に説明して、率直に意見交換するのがピッチセッションです。Jammin’2021のピッチセッションでは、コースとチームを完全にシャッフルして、ほぼ初対面の4名が一緒になる場をつくりました。別コースの参加者と出会える機会を用意したんです。

吉田:さらに、Jammin’2021からは「興味・関心があれば、他コースのセッションをオブザーブしたり、他コースのディスカッションに加わったりしてもかまいませんよ」と呼びかけています。なぜなら、「介護×食料」「働き方×教育」「インバウンド×地方創生」のように、複数の社会課題に関わる事業アイディアを思いつくチームがけっこうあるからです。Jammin’2022では、オンラインの特性を生かして、他コースとの交流がもっと盛んに起こると嬉しいです。

千秋:それから、何といってもJammin’2022の最大の変更点は、セッション2を「対面」にしたことです。2020年以降は全セッションがオンラインでしたが、ようやく対面のセッションを組み込むことができました。

吉田:私も対面のセッション2に参加しましたが、多くの参加者が対面でのコミュニケーションに飢えていたことがよく分かりましたね。実際に顔を合わせたことで、その後の運営が軌道に乗ったチームも多く、やはり前半に一度リアルで集まることが大事だ、と感じました。

千秋:もう1つ強調しておきたいのが、「専門家」の存在です。社会課題とビジネスに精通した専門家が全コースに存在していることが、参加者の皆さんの越境経験を促進し、Jammin’の価値を大きく高めています。専門家の皆さんには、単に参加者にアドバイスをするだけでなく、コース全体やセッションを一緒につくり込んだり、ときには各チームに協力者やヒアリング先を推奨してもらったりと、さまざまな形で協力してもらっています。本当に頼りになる存在です。

吉田:私は、専門家の皆さんは「同志」だと思っています。彼らの熱い励ましや遠慮ないダメ出しが、参加者たちのアイディアを飛躍的に良くしていくさまを、私は何度も見てきました。専門家の志が、参加者の心に火をつけるんです。

今後は職場接続、職場実践をさらに強化したい

――最後に、オーナーと参加者の皆さんにメッセージをお願いします。

吉田:これから参加する皆さんにも、ぜひ「不」のリアリティを現場で感じ、「不」の代弁者になっていただきたい、と思います。そして、Jammin’を通して、自らの世界観や価値観を変えていってください。楽しみにしています。

千秋:最後にオーナーの皆さんにお伝えしたいのですが、私たちは職場接続、職場実践を大事にしています。そのため、Jammin’終了後には、フォローインタビューやポストアンケートを実施したり、個人別報告書をお渡ししたりしています。今後は職場接続をさらに強化したいと考えていますので、参加者の皆さんがJammin’での学びをもとに職場でさらに活躍できるよう、オーナーの皆さんにもぜひご協力をお願いします。やはり、職場での効果を出すことが研修の本当の目的ですから。



【text:米川 青馬、illustration:長縄 美紀】

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