データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第7回 グローバル市場で技術力で勝つ日本企業を増やしたい

日本のIT/WEB エンジニアの働き方・雇用・転職の現実はどうなのか。将来的にどうなるのがよいのか。ハイスキルなIT/WEB エンジニアと企業をマッチングするプレミアム転職サービス「Findy」などを展開するファインディ・CEOの山田裕一朗氏に伺った。


世界で成功した日本企業は技術力で勝ってきた

入江:まずファインディのビジネスについて簡単に教えてください。

山田:私たちは「Findy」を中心に、フリーランス・副業エンジニア向けサービス「Findy Freelance」や、求人票採点サービス「Findy Score」などを展開しています。いずれも機械学習と自然言語処理の技術を使い、自分たちでアルゴリズムを開発しています。例えば、FindyやFindy Freelanceでは、世界最大級のソフトウエア開発者コミュニティ「GitHub」のデータを活用しエンジニアのスキルを偏差値化するアルゴリズムを開発したり、Findy Scoreではエンジニアの求人票を解析するアルゴリズムを開発しています。さらに「採用マーケティング研究所」「Findy Engineer Lab」という2つの自社メディアをもち、積極的な情報発信も行っています。

これらのビジネスによって実現したいのは、「働く個人の価値を見える化し、個人がもっと自由に働ける社会を創る」ことです。また、大きな目標として、「グローバル市場で、技術力で勝つ日本企業を増やす」ことも目指しています。

入江:そうした目標を掲げているのはなぜですか?

山田:私は新卒で三菱重工業に入社し、ボストン コンサルティング グループを経て、2010年にスタートアップのレアジョブに入社しました。ファインディ設立までに、ハード・ソフト両面のビジネスの現場を体験してきたのです。その体験から分かったのは、「日本人がマーケティング力で世界に勝つのは大変だ」ということです。ソニーのような素晴らしい例外はありますが、世界で成功した日本企業の多くは、技術力で勝っています。総体的に見て、日本人が得意なのはマーケティングよりも技術です。

より根本的なことを言えば、日本人は飛鳥時代や奈良時代から、遣隋使・遣唐使が中国から持ち帰った先進技術をリバースエンジニアリングし、より良いものを作って輸出する加工貿易を得意としていました。私たちは、長らく技術力で世界と戦ってきたのです。

しかし、今の日本には、特にソフトウエアの世界で技術力でグローバルに打って出る企業、エンジニアがグローバルでビジネスを強くリードするような企業は、決して多くありません。そうした「技術力で勝つ企業」を増やしたいのです。私たちは、個人がもっと自由に働ける社会を創ることを通して、それに貢献できると考えています。

IT/WEB エンジニアはジョブ型雇用の方がよい

入江:どうやって個人が自由に働ける社会を創ろうとしているのですか?

山田:具体的には、企業と個人の両面を変えていきたいと思っています。

企業に関して言えば、日本のIT/WEBエンジニアの「求人票=ジョブ・ディスクリプション」を変えたいという想いがあります。私はこれまで、数千社のエンジニアの求人票を読み込みました。それで確信したのは、「良い求人は細分化されている」ということです。細分化すると、仕事内容やスキルなどを明確に記すことができ、求職者が応募しやすくなるからです。例えば、機械学習のエンジニアなら、画像処理系と自然言語処理系の求人を分けた方がよいですし、同職種でも、マネジャー・シニアエンジニア・エンジニアといった形で、給与にすると200万円レンジくらいで分けた方が、採用確度が上がります。これは私がレアジョブ時代に試行錯誤して得た結論でもあり、ほぼ間違いありません。

しかし、私が見る限りでは、「良いエンジニア求人=ジョブ・ディスクリプション」を用意できている会社は、日本全体の5%ほどに過ぎません。

そこには2つの理由があります。1つは、人事の皆さんの多くがIT/WEBエンジニア出身でないため、エンジニア求人の作成が得意でない傾向があることです。Findy Scoreを使っていただければ、この悩みをかなり解決できます。

もう1つはより大きな問題で、そもそも個人の業務内容が不明瞭なケースが多いことです。日本企業の大半は、いまだに海外では当たり前のジョブ・ディスクリプションを用意していません。少なくともIT/WEBエンジニアに関しては、ジョブ・ディスクリプションをベースにした「ジョブ型雇用」を推し進めた方がよい、というのが私の意見です。

なぜなら第1に、働き方改革を行いながら生産性を上げるには、ジョブ・ディスクリプションを明確にして、個人のアウトプットを増やす他にないからです。

第2に、今後は、エンジニアが海外とやり取りする機会がこれまで以上に増えるからです。海外と協業する際、ジョブ・ディスクリプションがないと不都合です。グローバル展開には、ジョブ型の職務整理が不可欠なのです。

第3に、ジョブ型雇用にしないと、フリーランスや副業の人材を活用できないからです。これからは日本でも優秀なフリーランス・副業エンジニアが間違いなく増えます。実は今、ファインディでは正社員1名に対し、フリーランス・副業4名の割合で採用しています。その比率が、最も生産性が高まるからです。副業メンバーは大企業などの一流エンジニアばかりですし、フリーランスもプロが揃っています。ジョブ・ディスクリプションさえ明確にすれば、彼らは自律的に成果を上げてくれます。こうすれば、私たちのようなベンチャー企業でも、人件費のために大型資金調達をすることなく、優れたアルゴリズムを開発できるのです。ただしそれには、ジョブ・ディスクリプションの整備が必須です。

働く個人がもっと自由になれば日本企業の生産性は高まる

入江:個人側はどう変えるのですか?

山田:人口減社会の人材採用は、「ジャッジメント」よりも「アトラクト」が重要です。人口増社会では、企業は多くの候補者から優秀な人材を選べばよかったのですが、人口減の売り手市場では、企業に優秀な人材を惹きつける魅力が求められます。私たちは「採用マーケティング」というキーワードを前面に打ち出しているのですが、背景にはこうした日本社会の変化があります。採用も商品マーケティングと同じように、自社の魅力をどう打ち出すかを深く考えなくてはならないのです。

そうした現状を踏まえて、私たちは「カスタマーサクセス=企業の成功」だけでなく、「ユーザーサクセス=個人の成功」も重視したサービスを展開しています。具体的には、エンジニアの皆さんがどうしたら収入を上げられるのか、キャリアアップ・スキルアップできるのかといったことを最大限サポートする仕組みを用意しています。その指標が、私たちのアルゴリズムが算出する「スキル偏差値」です。個人の実力・経験を数値で示すことで、ユーザー一人ひとりの収入目安や、単価アップ・スキルアップの道筋などが明確になってくるのです。

この偏差値の信頼が高まれば、優秀人材により高い給与が支払われることも普通になるはずです。そうして個人が今まで以上に力をもち、自由に働けるようになることが、日本の生産性やGDPを高めていく。私たちはそう信じています。

【text:米川青馬】

Digital HR Competition 2018 のHRテクノロジーソリューション部門グランプリを受賞されたファインディの山田さんにお話を伺いました。日本企業や日本人の強み、ジョブ型雇用に関する見解など、いずれも非常に示唆に富むものでした。

データサイエンスの観点では、エンジニアのスキルの偏差値化、求人票の採点が興味深かったです。少なからず双方に「未知」がある求職・採用の場面で、より良い出会いを実現するための強力な手助けになると感じました。

そして、その仕組みを実現するためには、私も「ジョブ・ディスクリプションの明確化」が必要だと考えています。これからの働き方とデータサイエンス、両者の観点から、その実現方法について今後も考えていきたいと思っています。

【インタビュアー:HAT Lab 所長 入江崇介】

※HAT Labとは
正式名称HR Analytics & Technology Lab。リクルートマネジメントソリューションズが先進技術を活用して「個と組織を生かす」ための研究・開発を行う部門。中心テーマは、データサイエンスとユーザーエクスペリエンスの向上技術。所長は、2002年入社後、一貫して人事データ解析に関する研究・開発やコンサルティングに携わる入江崇介が務める。


※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.53連載「データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 連載第7回」より転載・一部修正したものです。
RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE
山田 裕一朗(やまだ ゆういちろう)氏
ファインディ株式会社 CEO

同志社大学経済学部卒業後、三菱重工業、ボストンコンサルティング グループを経て2010 年、創業期のレアジョブ入社。執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業、三井物産との資本業務提携などを担当。その後、ファインディを創業。また現在もHRBPとしてレアジョブに関わっている。


バックナンバー第1回 「統計モデリング」には人事のあり方を変える力がある(専修大学 岡田謙介氏)

第2回 これからの人工知能はパーソナル化して“感性”に最適化される(SENSY株式会社 渡辺祐樹氏)

第3回 ピープルアナリティクスで人財ポートフォリオの転換、社員の活躍促進を目指す
(株式会社日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ People Analytics Lab 主任 中村亮一氏)


第4回 人事部門に必要なデータ活用には特有の難しさがある(滋賀大学 河本 薫氏)

第5回 最後のフロンティア“脳”の計測技術が生活の質を向上させる(株式会社NeU〈ニュー〉長谷川 清氏)

第6回 人事系データの分析課題の多くは「可視化」で解決できる(株式会社イノヴァストラクチャー 三好淳一氏)

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