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連載・コラム人事になったら知っておきたい10のこと 第9回

「教育体系と研修の効果測定について知りたいです」

「教育体系と研修の効果測定について知りたいです」

初めて人事になったとき何から学べばよいか、どのように情報収集をすればよいか、人事に異動された方からよくご相談をいただきます。
人事は、経営の中心的業務として重要な役割を担っています。変化の激しい世のなかの動きと連動しながらも、自社の事業や戦略に合った企画を打ち出していく必要があります。そのため、「年々忙しくなっている」という声もお聞きします。

そこで本連載では、人事のなかでも、人事企画・人材開発のみなさまのお役に立ちそうなテーマを回ごとに取りあげ、ストーリー仕立てで紹介していきます。架空のキャラクターである新米人事担当の北山さんが、悩みながらも一つひとつのお題に取り組み、それに対してベテラン人事であるフクロウ先輩が解説していきます。

前回は、フクロウ先輩から昇進・昇格について学んだ北山さん。今回は教育体系や研修の効果測定をテーマに理解を深めていきます。

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登場人物のプロフィール

北山ともこさん

北山ともこさん
設立10年、社員300名のIT企業に勤務する、新卒入社3年目の社員。2年間は営業に所属していたが、1カ月前、関心のあった人事部へ異動したばかり。営業ではベンチャー企業を数多く担当し、持ち前の行動力で顧客からの信頼も厚かった。
趣味はカフェ巡りとアクセサリー作り。


フクロウ先輩

フクロウ先輩
同社、人事10年目のベテラン社員。人事企画や社員育成のほか、組織活性などの職務も経験。特に新人育成に力を入れており、最近配属された北山さんのことも気にかけている。
なぜフクロウの姿をしているかは社長と人事部長以外知らない。


人事担当者向け研修ラインアップ

プロローグ 「教育体系は研修をただ一覧化したものではないのですね!?」

フクロウ先輩「北山さん、どうしたの? 元気ないね」

北山さん「フクロウ先輩! 先ほど、教育体系を見直す会議に参加したのですが、あんまり討議に入っていけなくて……」

フクロウ先輩「そうだったんだ」

北山さん「教育体系は研修をただ一覧化したものではないのですね!?」

フクロウ先輩「そうだね、もっと奥深いものさ」

北山さん「今日は教育体系について教えてください!」

フクロウ先輩「もちろんさ!」


育成体系設計コンサルティング

第1章 教育体系とは?

フクロウ先輩「教育体系というと、どんなものをイメージする?」

北山さん「そうですね……どの階層がどんな研修を受けるかが一目で分かる一覧みたいなものをイメージしていました」

フクロウ先輩「それは『研修』の体系だね。まずは教育体系がどんなものかを知っておこう」

教育体系とは?


教育体系とは、企業の組織力や社員の能力を高めるために必要な教育の全体像となるもの。教育体系は、求める人物像や組織像、人材育成方針(※1)、人材育成・開発体系(主にOff-JTと呼ばれる研修メニューなど)で成り立っている。
求める人物像や組織像は、戦略推進を支援するために経営理念や企業ビジョンを踏まえた上で明確にすること、人材育成・開発体系は、人事制度との整合性や職場での実践への繋ぎを検討する必要がある。

教育体系を作成することで、社員に人材育成に対する姿勢や考え方を示し、成長イメージを伝えることができる。また、経営や人事にとっては長期的な定点観測が可能となり、企業の人材開発上の課題が明確になりやすい。

※1 人材育成方針:人材開発方針とも呼ばれる。目指す人材像・組織像の実現に向けた、人材開発への取り組み方を示したもの。例えばゼネラリストの育成を目指すか、スペシャリストの育成を目指すかなど。本人の資質・意欲を重視(採用重視)するか、教育や機会の提供、組織内でのかかわりを重視(教育重視)するか、といったようなさまざまな観点から検討する。企業風土や企業固有の価値観(特に人材観・教育観)が礎となっている。

■教育体系の全体像

教育体系の全体像

北山さん「教育体系は企業の採用のWEBサイトに掲載されていることがありますね。就活していたころ、チェックしていました!」

フクロウ先輩「そうだね。社員だけでなく、就職希望者や取引先など社外のステークホルダーに対して、自社がどのように人材育成に取り組んでいるか説明するためにも使えるね」

北山さん「教育体系のポイントはどんなところにあるのでしょうか」

フクロウ先輩「研修の企画の仕方は以前学んだね」

北山さん「はい! 対象となる受講者の育成目標を確認することがポイントでした」

フクロウ先輩「そうそう! 同じように、教育体系でも『求める人物像』を明確にすることが大事だよ」

北山さん「先ほどの会議でも、求める人物像から見直す予定となっていました。教育体系が見直される背景にはどんなことがあるのでしょうか」

フクロウ先輩「顧客ニーズの高度化・多様化などの外部環境の変化によって事業戦略が変わったり、管理職候補の不足、新人や若手の早期離職、人員構成の歪みといった内部環境の変化の影響だったり、会社によってさまざまだね」

北山さん「教育体系は作ったら終わりではなく、よりよく活用されるように運用していきながら、内外環境の変化に合わせて再構築していく必要があるのですね」

第2章 教育体系を検討するポイント

北山さん「求める人物像の明確化のほかに教育体系を見直すポイントはあるのでしょうか」

フクロウ先輩「もちろんあるよ! 北山さんは、どんな経験を積めば物事を学習できると思う?」

北山さん「そうですね……例えば他人から教えてもらったことを自分でやってみて、失敗経験を積みながら学習していく、というイメージです」

フクロウ先輩「そうだね! 北山さんの言うとおり、いろいろな経験を積んで人は学んでいくよ。解説をみてみよう」

人は何から学ぶのか


以下は人の学習機会に関する研究(Lombardo&Eichinger)から導き出された、学習効果のフレームである。Off-JT(※2)のような「公的な学習機会」を中心に考えるのではなく、OJT(※3)のような「実際の仕事経験」と周囲からのフィードバックのような「他者との社会的なかかわり」を織り交ぜることで、学習の効果を高められるという考え方である。

なお、学習の70%は仕事上の経験によって起こるとされている。研修の機会を最大限に生かすため、研修で学んだことを実践・活用できるように研修を企画するのが望ましい。

※2 Off-JT:Off-the-Job Trainingの略称。階層別研修などの企業研修のように、職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習
※3 OJT:On-the-Job Trainingの略称。日常の業務を通じて必要な知識やスキルなどを身に付けられるよう、意図的・計画的に指導すること

■効果的な学習機会


効果的な学習機会

北山さん「新米の人事担当としては研修中心に考えてしまいがちでした……。実際の仕事での経験と他者とのかかわりで学んだことを活用してもらうようにしていかないとですね」

フクロウ先輩「そうだね。もちろん、研修について詳しく知っておくことも人事担当としては重要なことだよ」

研修の種類


求める人物像などをもとに、どのような対象者に、いつ、どのような研修機会が必要かを検討し、以下の例のような育成の体系を決めていく。

■研修体系の例

研修体系の例

研修の種類は対象者や対象者の選定方法、目的などによりさまざまに分類される。
研修の代表的な種類として、「階層別研修(教育)」と「職種別研修(教育)」の2種類が挙げられる。階層別研修とは、階層別に実施される全社共通の教育のことであり、全社の人材開発施策の基盤となっていることが多い。職種別研修は、主に部門別に実施される専門スキル開発を目的とした教育のことである。顧客に価値提供するにあたって各部門(職種)の専門スキルを上げていくことが必要とされるため、部門別に教育予算を持ちながら企画していくことが多い。

階層別研修や職種別研修のほか、昨今は個々人の自律的な成長を支援する学習機会として、学習テーマやレベルを自分で選ぶことができる「選択型研修」が注目されている。

■階層別研修と職種別研修

階層別研修と職種別研修

北山さん「新入社員研修や管理職研修は階層別研修。営業研修やマーケティング研修は職種別研修ですね」

フクロウ先輩「そう! 役職ごとに細かく階層別研修を実施している企業もあれば、新入社員や管理職といった特定の階層だけ一律で階層別研修を実施して、ほかの階層は選択型研修で個々人の自律学習を促す企業もあるよ」

北山さん「それだけ、教育体系はその会社特有の求める人物像や人材育成方針によって異なるということですね」

フクロウ先輩「そう! だんだんイメージできてきたみたいだね」


育成体系設計コンサルティング

第3章 研修の効果を測るには?

北山さん「教育体系について、だんだん理解が深まってきました」

フクロウ先輩「今日の会議で特に分からないことはどんなことだった?」

北山さん「部長から研修の費用対効果についてどのように考えているか?という質問が出たのですが、研修の効果をどうやって測るのでしょうか」

フクロウ先輩「いい質問だね。教育体系を見直す上で外せない観点だよ」

研修の効果を測定する


研修の評価は、ドナルド・L・カークパトリックの4段階評価法が世界的に定着しており、研修の効果は4つに分類される。

レベル1は受講者の満足度であり、研修受講後に実施するアンケートなどで測定される。
ただ、満足しただけでは不十分であり、研修内容への理解が深まっているかどうかが効果のレベル2となる。期間を置いて研修内容に関するテストなどを実施することが多い。

さらに、理解しただけではなく、実際に行動できるかをレベル3としている。職場での行動を上司や部下、同僚から多面的な評価を受けることで客観的に測ることができる。

最後のレベル4は業績に対する効果である。業績そのものに対する研修の影響度を測定するのは難しいものの、研修の受講者群と非受講者群を比較する方法や、業績と関連の高い先行指標(KPI)を測定することで効果を推定する方法がある。

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北山さん「受講者の満足度は研修アンケートでよく集計します」

フクロウ先輩「そうだね。研修内容によっては効果を測定しやすいものとそうでないものがあるね」

北山さん「例えば、ロジカルシンキングのようなスキル研修は理解度をテストするなど、測定しやすいですね」

フクロウ先輩「どのような測定方法が使われているか、みてみよう」

よく使われる研修効果の測定方法


社員の人材開発にかかわる管理職415名にアンケート調査を行い、「特に効果検証に力を入れている研修」を1つ選んでもらい、研修内容と測定方法を尋ねた。研修内容は、オープンスキル(状況に応じて適応的に発揮されるスキルで、効果が測定しにくい)を主に扱うか、クローズドスキル(ルールや手順が1つに定められており、効果が測定しやすい)を主に扱うかによって分類した。

結果、受講者本人へのアンケートが最も多く使われており、オープンスキル(73.7%)、クローズドスキル(70.6%)であった。次いで受講者以外(上司・部下・同僚・顧客)へのアンケート(同48.0%、 47.5%)が多いことが分かった。

■研修で行う内容と測定方法<%>

研修で行う内容と測定方法<%>

詳しくは「人材開発担当の声から知る研修効果検証の実態

北山さん「研修を企画するときに、どのように効果測定するのかを準備しておくといいですね」

フクロウ先輩「そうだね。加えて、どうやったら受講者の学びや行動変容につながるかを考えて研修を企画できるといいね」

よく使われる研修効果の測定方法


マネジャー層を対象とした変容学習のトレーニング効果を検証し、学習から職場実践に至る過程を確認したところ、以下のような視点を持って研修を企画することにより、職場での実践につながることが分かった。

●「研修の目的理解」 が「研修への参加意欲」に影響を与えており、研修実施前のガイダンスを工夫することを通じて、研修への参加意欲を高めることが重要である可能性が示唆された。

●研修実施時の実践意欲に影響を与える要因を統計的に検証したところ、研修実施中の「研修内容の適合度」が、実践意欲に有意な影響を与えており、受講者の現実に即して学習内容を意味づけることができるかが重要になる可能性が示唆された。

●研修が終了してから、職場実践を開始するか否かに影響する要因を統計的に分析したところ、「実践意欲」と「周囲からのかかわり」が、職場実践の有無に対して有意に影響を与えており、職場実践を促す周囲からのかかわりを促したり、研修中に実践意欲を高めたりする仕掛けが重要になる可能性が示唆された。

北山さん「次は自分が担当している新入社員研修の効果検証について考えてみたいです!」

フクロウ先輩「お、いいね! その調子だね!」

あとがき

人事関連の情報収集ツールはさまざまです。書籍や雑誌、WEBなどの各メディアでは、人事業務の知識から最新のトレンドまで情報が日々アップデートされています。新たな手法やツールは武器になるため押えておくことは重要ですが、流行に左右されることなく、自社の目指す姿や教育体系、風土に合ったものを見極めることが重要です。

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【text:北嶋理沙】
シリーズ記事第1回 「何かいい研修ないですか?」
第2回 「マネジャーになったことがなくても、管理職研修の企画はできますか?」
第3回 「配属後の新入社員を育成するには?」
第4回 「中堅社員の役割と育成のポイントを教えてください」
第5回 「リーダーに求められていることは何ですか」
第6回 「使えるスキルを身につける!ビジネススキル研修の企画ポイント」
第7回 「人事制度を改定すれば社員のモチベーションは上げられますか」
第8回 「昇進・昇格はどうやって決めるのですか?」アセスメントツールの活用
第9回 「教育体系と研修の効果測定について知りたいです」
第10回 「テレワーク下のコミュニケーション課題は人材開発だけでは解決できない……」組織開発のヒント

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