人事になったら知っておきたい10のこと 第3回 「配属後の新入社員を育成するには?」

初めて人事になったとき何から学べばよいか、どのように情報収集をすればよいか、人事に異動された方からよくご相談をいただきます。
人事は、経営の中心的業務として重要な役割を担っています。変化の激しい世のなかの動きと連動しながらも、自社の事業や戦略に合った企画を打ち出していく必要があります。そのため、「年々忙しくなっている」という声もお聞きします。

そこで本連載では、人事のなかでも、人事企画・人材開発のみなさまのお役に立ちそうなテーマを回ごとに取りあげ、ストーリー仕立てで紹介していきます。架空のキャラクターである新米人事担当の北山さんが、悩みながらも一つひとつのお題に取り組み、それに対してベテラン人事であるフクロウ先輩が解説していきます。

前回は、フクロウ先輩からマネジャー育成について学んだ北山さん。今回は新人育成について考えます。


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登場人物のプロフィール

北山ともこさん

北山ともこさん
設立10年、社員300名のIT企業に勤務する、新卒入社3年目の社員。2年間は営業に所属していたが、1カ月前、関心のあった人事部へ異動したばかり。営業ではベンチャー企業を数多く担当し、持ち前の行動力で顧客からの信頼も厚かった。
趣味はカフェ巡りとアクセサリー作り。

フクロウ先輩

フクロウ先輩
同社、人事10年目のベテラン社員。人事企画や社員育成のほか、組織活性などの職務も経験。特に新人育成に力を入れており、最近配属された北山さんのことも気にかけている。
なぜフクロウの姿をしているかは社長と人事部長以外知らない。

プロローグ
「配属後の新人育成にどのように関われるでしょうか」

5月下旬、北山さんとフクロウ先輩は、新入社員育成の今後について話し合っていた。

フクロウ先輩「新入社員が配属されて1カ月が経とうとしているね。今年は採用人数を増やして、配属部門も多かったけど、部門によって状況はさまざまだね」

北山さん「開発部門は配属後も部内研修が多いということもあってか、今は意欲的に取り組んでいると報告を受け、安心しました。私が心配しているのは、営業部門とスタッフ部門に配属された新入社員です」

フクロウ先輩「特にスタッフ部門は初めての新入社員配属だからね。まだ上司や育成担当者も戸惑っている様子だったね」

北山さん「営業部門も今年度から営業体制が変わったので、これまでどおりにはいかないと思います。配属後の新人育成にどのように関われるでしょうか」

フクロウ先輩「今日は、部門へ配属された新入社員の育成支援について考えてみよう」

第1章
新入社員が壁にぶつかるタイミング

フクロウ先輩「北山さんは、営業部門に配属された頃、どんな新入社員だったの?」

北山さん「ゴールデンウィークが明けて、いよいよ仕事が本格的に始まった時期は、イメージしていた仕事と違うこともあり、少し元気がなかったのを覚えています。憧れていた営業の仕事とは違って、成果を出すまでにはいくつものステップがあるんだと知りました」

フクロウ先輩「結果を出さなきゃ、と焦っていたんだね」

北山さん「結局、夏頃まで何も成果が出ないままで……。久しぶりに会った友人が楽しそうに仕事について語るのを聞いて、さらに落ち込んでしまいました」

フクロウ先輩「周りの上司や先輩は心配していただろうね」

北山さん「あまりにも元気がない私を見た営業部長が話を聞いてくださって、『確かに結果が出るまでには、いくつも複雑なステップがあるように感じるだろうけど、実は始まりはシンプル。すべてはお客様の話をよく聴いて、質問して、理解することから始まっているんだよ』とアドバイスをくださり、ようやく焦りがなくなりました」

フクロウ先輩「会社によって研修期間や配属時期、仕事内容などが違うから、みんなが同じ状況になる訳ではないけれど、似たような経験をしている新入社員はいるよね。どんな時期に新入社員が悩みやすいか、傾向を確認しておこう」

入社1年目の典型的なモチベーション曲線新入社員が壁にぶつかりモチベーションが落ちやすくなると予想される時期は2つある。

1つ目は配属2〜3カ月後のタイミング。
仕事を一生懸命頑張るものの、期待していた仕事とのイメージギャップが生じるなどして、なかなか成果が出ずにミスしたり注意されたりすることが増え落ち込んでいく頃。配属が早い企業はゴールデンウィーク後から、6月頃に配属がある企業は、夏休みの前後にフォローが必要な場合がある。

2つ目のタイミングは、配属半年以降で、1年目の後半。
任される仕事も増え始め、成果が期待されながらも、焦りと不安を感じがちな時期。目先の業務をこなすことで一杯になり、すべて自分でやらなければと抱え込んでしまうこともある。その結果、周囲への働きかけができなくなっていくことで、悩みや問題を自分のなかで膨らませ、ますます業務が回らなくなるケースもある。

北山さん「新入社員と話をしましたが、確かに期待していた仕事内容や、予想していた自分のパフォーマンスとギャップがあり、落ち込んでしまったという声がありました」

フクロウ先輩「新入社員を取り巻く環境の変化も確認しておこう」

第2章
「新入社員育成」を取り巻く環境の変化

フクロウ先輩「新入社員が社会に出て仕事をするなかで、どんなことに困るだろうか」

北山さん「世代間ギャップは大きいと思います。昔はこうだった、と言われても、今は環境が違うのに……と心のなかで思っていました。それから、学生まではあまり電話を使っていませんでしたが、仕事では使わないといけません」

フクロウ先輩「固定電話だと、誰からの電話か分からずに緊張するよね」

北山さん「あとは、『何でも質問をしてね』とよく言われますが、皆さん忙しそうなので、なかなか声をかけられないこともありました」

フクロウ先輩「そうだね。環境の変化が新入社員と上司・育成担当者とのギャップを生み出しているかもしれないね」

「新入社員育成」を取り巻く仕事・職場の変化

北山さん「新しい技術が次々と生み出される時代なので、仕事が複雑で、正解がなく、スピードが求められるのはひしひしと感じます」

フクロウ先輩「職場のみんなも忙しくなってきているから、即戦力が求められるし、育成が機能しなくなりやすい環境といえるね」

北山さん「今年の新入社員の数名は、入社時研修の振り返りで『はじめから正解を求めてしまい、最初は苦労した』『目的やゴールなど先が見えないことは手をつけにくかった』と話をしていました。壁にぶつかってしまう新入社員の背景にはどんなことがあるのでしょうか」

「新入社員」世代の経験の変化今のビジネス環境で働いていくためには、失敗から学ぶ経験(できない自分に向き合い克服する)、正解のない問題に対処する経験(自分で考え抜く、結果が出るかが分からなくても動き続けながら改善していく)などが必要になってくる。しかし昨今の新入社員は、経済の変化、教育の変化、ITの進化などによって、入社するまでにこのような経験を積みにくくなっている。
自分がチャレンジしたいことをやりきった経験はあっても、意に沿わないこと、苦手なこと、正解がないこと、先が分からない不確実なことなどを、不安や葛藤を抱えながら、自分で何とかしていく経験を積める場が減っているのである。

フクロウ先輩「なかなか質問ができないとき、『こんなことも分からないのかと思われるかもしれない』と思ったことはないかな?」

北山さん「はい……『ダメ出しされるかも』と思うと不安が先に立ってしまい、なかなか相談できなかったことがあります」

フクロウ先輩「そうすると、新入社員の本音が見えない上司や先輩からは、受け身であると捉えられてしまうことがあるね。さらに注意が増えて、指示ばかりの指導育成に陥りやすくなってしまう」

北山さん「フクロウ先輩に教えていただいた調査では、新入社員が上司に期待することも載っていましたね」

2019年新入社員調査 今年の新入社員は何を求めているのか?
個性を大事にする新入社員の生かし方


2019年の新入社員研修受講者(1178名)に「上司に期待すること」を聞いたところ、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」「好き嫌いで判断をしないこと」「よいこと・よい仕事をほめること」の4項目の上昇率(10年間の比較)が著しい一方、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」「周囲を引っ張るリーダーシップ」「仕事がバリバリできること」がポイントを落とし続けている。


「個性を大事にする新入社員の生かし方」についてもっと知りたい方はこちら

北山さん「新入社員世代の特徴を理解しつつも、一人ひとりの話に耳を傾けたり、状況を確認したりすることで、構造的に人が育ちにくい現状を打開する一歩になるかもしれません」

「職場での『心理的安全性』に関する実態調査
チームリーダー516人に聞く、心理的安全性の必要性や効能」はこちら

第3章
配属後の新入社員育成を支援するポイント

フクロウ先輩「今回のお題は、新入社員が各部門に配属された後、人材開発としてどのような支援をするか、だったね」

北山さん「年間計画はすでに立てており、新入社員向けには月に2回の新入社員同士の定例会と1月に振り返り研修を予定しています。育成担当者向けには、先日育成ガイダンスを行いました。今後は月に1回、育成担当者の定例会を予定しています」

フクロウ先輩「それから、新入社員向けには人事面談を定期的に実施する予定だね」

北山さん「はい、そこで新入社員の本音が聞けるといいのですが……」

フクロウ先輩「これから新入社員がどんなことで困りそうか考えてみよう」

新入社員の成長を阻む4つの壁新入社員が直面する『成長を阻む4つの壁』に対応した関わりをし、仕事を通じて良質な経験を積めるよう、意図して環境を整えることが重要である。

北山さん「上司や育成担当者には、新入社員の置かれている状況を理解しながら仕事をアサインしたり、日々会話をしたりしてもらうよう、今後の定例会で伝えていきたいですね」

フクロウ先輩「付け加えるとしたら、直属の上司や育成担当者が忙しいときでも、同じ職場の先輩がサポートできるよう、『職場ぐるみ』での育成ができるよう工夫するといいね」

北山さん「そうですね。同じ職場の先輩にただ質問をするだけでなく、相談をしてみることで仕事の知見も広がりそうです」

フクロウ先輩「新入社員のフォローについてはどうだろうか」

北山さん「新入社員が、仕事や配属された職場で感じている不満や不安を早期に解消できるよう促したいですね。定例会や研修を通して、仕事の振り返りをしてもらいながら、悩んでいることを共有して考える時間を設けたいです」

フクロウ先輩「実際には、仕事を着実に覚えていくなかで自信につながることもある。『仕事の基本』についても復習できるといいね」

北山さん「振り返り研修は、ビジネスマナーや仕事の段取りについて復習できるように設計したいと思います」

エピローグ
新入社員は1年間、会社・職場ぐるみで支援を

北山さん「今回、フクロウ先輩と話をしていて、自分の新入社員時代を思い出していました」

フクロウ先輩「ほほう? どんなことを思い出していたの?」

北山さん「励ましてくれた先輩も仕事を根気強く教えてくれた上司も、期待をして難しいオーダーをしてくれたお客様も、みんなで育ててくれていたんだ……と今更ながら気づきました」

フクロウ先輩「そうだね。育成する側は、本音が分からなかったり、意図が伝わらなかったり、もどかしく思うときもある。けれど、きっと成長してくれると期待をして、仕事を任せているんだね」

北山さん「この1年、新入社員や育成担当者に頼ってもらえる人材開発の担当者になりたいです」

フクロウ先輩「それは嬉しい宣言だね! 期待しているよ」

あとがき

人事関連の情報収集ツールはさまざまです。書籍や雑誌、WEBなどの各メディアでは、人事業務の知識から最新のトレンドまで情報が日々アップデートされています。

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【text:北嶋理沙】

シリーズ記事第1回 「何かいい研修ないですか?」
第2回 「マネジャーになったことがなくても、管理職研修の企画はできますか?」
第3回 「配属後の新入社員を育成するには?」
第4回 「中堅社員の役割と育成のポイントを教えてください」
第5回 「リーダーに求められていることは何ですか」>

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