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ポータブルスキルとは? 意味や必要とされる理由、具体例を解説
- 公開日:2024/11/05
- 更新日:2024/11/05
ビジネスパーソンが持つスキルのうち、異動や転職によって業界や職種が変わっても発揮できるスキルのことを「ポータブルスキル」といいます。当記事ではポータブルスキルの具体例や、社員のポータブルスキルを高める方法についてご紹介します。
ポータブルスキルとは
ポータブルスキルとは、あらゆる業界や職種に持ち運びできるビジネススキルのことです。具体的には対人スキルやスケジューリング能力、課題解決力といった、どの業界においても役立つ職務遂行上のスキルが該当します。
ポータブルスキルはビジネスの基礎力ともいえるスキルであることから、日々の業務はもちろん、転職市場でも有用です。VUCAと呼ばれる不透明な時代だからこそ、どのような職場でも必要とされるスキルとして注目を集めています。
テクニカルスキルとの違い
テクニカルスキルは、特定の業界・職種の遂行に必要な専門性の高いスキルです。例えば、営業職なら交渉力やマーケティング技術、企画職なら市場理解やデータ分析のノウハウなどが挙げられます。スキルの習得には経験や時間を要することや、スキルが高いほど即戦力性として評価されやすいことから、中途採用では特に重視される能力といえます。
アンポータブルスキルとの違い
アンポータブルスキルは、特定の業務や職種でのみ使えるスキルです。具体的には、自社専用ソフトの操作スキルや、自社商品についての専門知識、自社独自の風土に支えられたコミュニケーションスキルなどが挙げられます。特定の業務内での専門性を高めるためには必須となるノウハウですが、別業務では活用しにくい点がデメリットです。
ポータブルスキルが注目されている理由
先の見えないVUCAの時代においても柔軟に対応できる「ポータブルスキル」は、仕事を進めるうえで不可欠なスキルとして注目されています。
対人スキルや問題解決能力、リーダーシップといったポータブルスキルは、職種や立場を問わず必要とされる能力です。よって現職における業務ではもちろん、転職や異動によって仕事の環境が変わった場合でも生かすことができます。
また、どのような現場でも活躍できる人材を見極める指針として、ポータブルスキルを採用基準に取り入れている企業も増えています。ビジネスの現場において汎用性の高いポータブルスキルを重視する傾向があるからこそ、注目度も高まっているといえるでしょう。
ポータブルスキルの要素
厚生労働省の定義によると、ポータブルスキルは大きく9つの要素に分けられています。うち5つは仕事のし方に関するスキルであり、残る4つは人との関わり方に関するスキルです。それぞれの要素について詳しく見てみましょう。
仕事のし方
仕事のし方とは、課題解決力をはじめとする「仕事の進め方に関するスキル」のことです。仕事の段取り力と言い換えることもできます。厚生労働省の定義では、仕事のし方に関するスキルは「現状を把握する力」「課題を洗い出して設定する力」「計画を立案する力」「課題を遂行する力」「予期しない状況への対応力」という5つに分類されています。
現状の把握
仕事のし方に分類される1つ目のスキルは、現状を把握するスキルです。ビジネスでは、まず現状がどうなっているのかを把握する力(リサーチ力)が求められます。なぜなら、適切な情報収集と分析を経て現状を把握しない限り、適切な「次の一手」を考えることができないからです。社内での役割が広がると、高度なリサーチ力が求められるようになるため、若手のうちから身につけておきたいスキルといえるでしょう。
課題の設定
2つ目は課題を設定するスキルです。ビジネスにおけるプロジェクトの遂行に際し、適切な課題や目標を設定できる能力を指します。
ビジネスにおいては、自分なりに問題意識を持ち、改善策や課題を洗い出す姿勢が必要になります。また、どのような事業やプロジェクトにおいても、現状をより良くしていくには「現状を把握し、あるべき姿を描いて、課題を設定する」というステップが欠かせません。以上の理由から、課題を設定する力もポータブルスキルの1要素として重視されています。
計画の立案
3つ目は計画を立案するスキルです。昨今のビジネス市場では、言われたことを言われたとおりにやるのではなく、自律的に業務に取り組む人材が重用される傾向にあります。よって担当業務や課題をこなすにあたり、具体的にどのような流れで進めるかを考えるプランニング力が重視されます。
課題の遂行
4つ目は課題を遂行するスキルです。ビジネスにおいて自身または上司からの課題がある場合、適切かつスケジュール内にこなす必要があります。課題の遂行に向けたスケジュール管理スキルや、業務の進行の妨げになる事柄への対応力、業務上のプレッシャーのなかでもパフォーマンスを発揮できる精神力などが課題の遂行力として評価されるでしょう。
状況への対応
5つ目は状況への対応スキルです。ビジネスではプロジェクトの想定外の遅延やお客様からのクレームなど、さまざまなトラブルが発生します。そういった予期せぬ状況に対処する際の臨機応変さや、周囲に適切な指示を出すリーダーシップなどが該当します。
人との関わり方
ポータブルスキルを構成するもう1つの要素が、「人との関わり方」に関するスキルです。一般的には対人スキルに分類されるものであり、社内外の人々とのコミュニケーション能力や、部下のマネジメント能力などが該当します。ポータブルスキルを構成するそれぞれの要素について詳しく見てみましょう。
社内対応
1つ目は、社内対応スキルです。社内には経営陣や同僚といった立場の異なる人材がおり、業務を進めるにあたって各々と効果的なコミュニケーションを取る必要があります。立場の異なる人々と合意形成を図ることができる対応力や、信頼関係を築けるコミュニケーション能力があれば、どのような職場においても活躍しやすいでしょう。
社外対応
2つ目は、社外対応スキルです。対外的な関係者と円滑な関係を結ぶ能力が該当します。合意形成を図り、双方が納得感を持って利害を調整できるコミュニケーション能力があれば、売上アップや顧客層の増加、ブランド力の向上をねらえます。
上司対応
3つ目は、上司への対応スキルです。具体的には、仕事の進捗を適宜正確に伝えるスキルや、業務の課題を分析して提案するスキルなど、上司と意思疎通を図るスキルが該当します。
部下マネジメント
4つ目は、部下のマネジメントスキルです。チームメンバーの育成スキルや、部下を適材適所に振り分けるスキル、業務の進捗を維持しながらモチベーションアップも図るチームマネジメントスキルなどが該当します。
▼参考
“ポータブルスキル”活用研修講義者用テキスト(人材サービス産業協議会)
ポータブルスキルの具体例
前述したとおり、ポータブルスキルは仕事の段取りに役立つスキルと、コミュニケーション能力を中心とした対人スキルという2つの要素で構成されています。
また、ポータブルスキルをさらに具体化すると、仕事の段取りに役立つスキルは問題解決能力・情報収集力・論理的思考力の3つ、対人スキルはマネジメント能力とコミュニケーション能力の2つに分類することが可能です。各スキルの特徴や伸ばし方について、簡単に見てみましょう。
問題解決能力
問題解決能力は、直面した問題や課題への対応スキルです。問題を解決するには、課題をまず定義し、要因を洗い出し、問題を解決するためのアプローチを考えて実行に移すというステップを踏む必要があります。このような段階を自ら実行でき、問題の定義やアプローチのブラッシュアップを経てより良い解決を導きだす力が、問題解決能力です。実務はもちろん、研修でもノウハウを学ぶことができます。
情報収集力
情報収集力とは、社内外にある膨大な情報のなかから、今必要な情報を正確に選び取る能力です。情報を鵜呑みにしない姿勢や、複数のソースを確認して情報の精度を高める意識、新聞やニュースを通して時勢をキャッチしておく習慣などが、情報収集力の向上につながるでしょう。
論理的思考力(ロジカルシンキング)
論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、感情的にではなく論理的に捉える考え方です。ロジカルシンキングを身につけると、因果関係を分析する力や原因を特定する力が磨かれることから、問題解決能力の向上につながります。
マネジメント能力
マネジメント能力とは、人材・資源・資産といったリソースを管理し、最適化していくスキルのことです。意思決定をする力、後進を育成する力、これから取り組む業務のビジョンやフローを明確にする力、リスク管理力などが含まれます。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、周囲と円滑に連携するための対人スキルです。自分の持つ情報やアイディアを正確かつ分かりやすく伝える力や、信頼関係を構築する力、不明点を質問できる力などが挙げられます。
企業がポータブルスキルに着目するメリット
ポータブルスキルはテクニカルスキルと比べて数値化が難しい能力ですが、現代において欠かせないビジネススキルといえます。企業としてポータブルスキルに着目し、採用・育成に取り入れることで、以下のようなメリットを得ることが可能です。
活躍人材の採用につながる
ポータブルスキルはどのような業界にも通用する、汎用的なビジネススキルです。人材の採用に際して、テクニカルスキルだけでなくポータブルスキルにも着目することで、将来的に長く活躍できる人材を採用しやすくなります。
適切な人員配置ができる
テクニカルスキルだけでなくポータブルスキルにも着目した場合、チームビルドのうまい人やトラブルへの円滑な対応力がある人といった「組織の課題解決に役立つ戦力」を、適材適所に配置することが可能です。数値化できない強みも生かした人材配置を行えるようになる点が大きなメリットといえるでしょう。
効果的な社員の育成ができる
問題解決能力やマネジメント能力といったポータブルスキルは、どの業界においても活用できる汎用性の高いスキルです。ポータブルスキルを学ぶ研修を計画的に実施することで、VUCAの時代に活躍できる人材を育成しやすくなります。ポータブルスキルの研修を内製化することが難しい場合は、中堅社員向けの外部研修を活用する方法もお薦めです。
社員のポータブルスキルを高める方法
全社員のポータブルスキルを高めることができれば、現場の業務がより円滑に進みやすくなるだけでなく、組織力の向上も期待できます。組織的にポータブルスキルを磨く方法としては、研修の導入や評価制度の見直しが効果的です。
外部の研修を導入する
社員のポータブルスキルを迅速に底上げしたい場合は、研修の導入がお薦めです。特に外部研修であれば、ポータブルスキルのノウハウが社内にない場合であっても速やかに教育制度を整えることができます。
厚生労働省の研修資料やツールを活用する
研修制度をすぐに整えることが難しい場合は、厚生労働省の研修資料やツールを活用して、ポータブルスキルを学ぶ意識を社内に定着させることから始めましょう。例えば厚生労働省は、ポータブルスキルの概要や現場での活用方法がイメージできる研修動画とテキストを公開しており、誰でもダウンロードすることが可能です。ポータブルスキルの測定ツールも用意されているので、社員の現状把握に活用することもできます。
▼参考(厚生労働省)
ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法
人事評価制度に取り入れる
ポータブルスキルを人事評価の項目に設定することで、目標設定やフィードバックを通してポータブルスキルの向上につなげることができます。ポータブルスキルが評価に反映される環境であれば、ポータブルスキルへの関心や、スキルアップの意識付けもねらいやすくなるでしょう。
まとめ
ポータブルスキルの具体例や、社員のポータブルスキルを高める方法についてご紹介しました。
人材の流動化が進む昨今において、ポータブルスキルはテクニカルスキルと並んで重視される能力です。組織的にポータブルスキルの浸透を図ることで、市場の変化にとらわれない、柔軟性のある組織づくりを目指すこともできます。弊社では、ポータブルスキルの習得に役立つさまざまな研修サービスをご提供していますので、外部研修の導入をお考えの方はぜひ下記リンクもご覧ください。
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