連載・コラム
~キャリア自律を促し、リソーセスシフトを成功させる~第2回
【組織編】 「人材ポートフォリオ」の目指す姿と現状の見える化と、そのギャップを埋める取り組みとは
- 公開日:2024/10/28
- 更新日:2024/11/11
1回目:個と組織を生かす「リソーセスシフト」の考え方
2回目:【組織編】 「人材ポートフォリオ」の目指す姿と現状のギャップを埋める取り組みとは(⇦ 今回はココ!)
3回目:【個編】社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと取り組み方とは
本コラムでは、個と組織を生かす「リソーセスシフト(※)」の考え方を3回に分けてお伝えしています。2回目である今回は、組織視点での「リソーセスシフト」の考え方を解説します。
※「リソーセスシフト」とは、ヒト・モノ・カネ・情報等の経営資源を、事業ポートフォリオの転換にともなって最適な形にシフトさせていくことです。詳しくは第1回コラムで解説しています。
- ~キャリア自律を促し、リソーセスシフトを成功させる~第3回
- 【個編】 社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと、その取り組み方とは
- ~キャリア自律を促し、リソーセスシフトを成功させる~第2回
- 【組織編】 「人材ポートフォリオ」の目指す姿と現状の見える化と、そのギャップを埋める取り組みとは
- ~キャリア自律を促し、リソーセスシフトを成功させる~第1回
- 個と組織を生かす「リソーセスシフト」の考え方
- 目次
- 人材ポートフォリオとリソーセスシフト
- 1.ビジョンや戦略の実現に必要な人材の明確化
- 2.人材ポートフォリオの把握
- 3.人材ポートフォリオのAs-is/To-beを埋める取り組み~リソーセスシフト・キャリア自律~
人材ポートフォリオとリソーセスシフト
何のためにリソーセスシフトを実施するのか。それは、ビジョンや戦略を達成するためです。その達成のためのリソーセスの1つが「人材」であり、「どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるかを予測し分析したもの」が人材ポートフォリオです。
企業は、取り巻く環境や経営戦略の変化に合わせて、人材ポートフォリオを動的に管理し、採用や人材配置、人材育成の最適化を行っていくことが求められます。今回は、その具体的な取り組み方として、図表1のように「組織観点での人材ポートフォリオ転換とリソーセスシフトの位置付け」を示しながら、取り組みのポイント3点をお伝えします。
- ビジョンや戦略の実現に必要な人材の明確化
- 人材ポートフォリオの把握
- 人材ポートフォリオのAs-is/To-beを埋める取り組み~リソーセスシフト・キャリア自律~
<図表1>組織観点での人材ポートフォリオ転換とリソーセスシフトの位置付け
1.ビジョンや戦略の実現に必要な人材の明確化
必要な人材を明確化するにあたり、株主や経営層が求めている情報は「ビジョンや戦略を実現するためには、どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるか」ということです。そこで、全社員の能力を見える化することからスタートすると、想定以上に時間と手間がかかってしまった……という企業も多いのではないでしょうか(すでに能力一覧やスキルマップ等で、タレントマネジメントをされている企業は除きます)。
そこでお薦めしたいのが、「注力したい事業や戦略を推進していくために、どのような人材が必要か?」という、コア人材の特定からスタートすることです。
例として図表2をご覧ください。
- 成熟事業…業務効率化し人員を他事業にシフトさせる。
- 成長事業…人員を増強するものの質的な面においてDX人材を求める。
- 新規事業…事業開発・拡大に向けて、即戦力となる〇〇スキルを持った人材を〇人確保する。
このように、事業ポートフォリオの変化に合わせて、「現在の人材で実現できるのか」「実現できないとしたら、どのスキルを持つ人材がどれくらい必要なのか」を検討します。
<図表2>事業ポートフォリオと組織編制の現状と20XX年
この取り組みは、事業ビジョン・戦略と連動しているため、人事のなかだけでは完結せず、経営企画・事業企画・現場との連携・協働が必要な作業となります。そのため図表3のように、まずは事業部単位で将来を見据えた価値創造のためのプロセスを描き、そこから各部の位置付けや担うべき役割、獲得・強化すべき組織能力の議論につなげていくことをお薦めします。
<図表3>議論単位の検討例
2.人材ポートフォリオの把握
「ビジョンや戦略を実現するためには、どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるのか」ということが明確になると、「現状」と「ありたい姿」の人材分布の変化が、図表4の右図のように見える化されます。
コア人材の把握ではなく、全社での管理職等の役割や雇用形態のポートフォリオ転換を図りたい会社の場合においても、図表4のように、事業変化を起点に役割や雇用形態の変化を予測します。この場合の縦軸・横軸は企業によってさまざまですが、図表4の例ではオペレーション人材をAI等に置き換え、総合職はそれぞれの専門性を持ち、創造的な業務にシフトさせたいというイメージです。
<図表4>雇用形態や役割での人材ポートフォリオ転換のイメージ
いずれにしても、ビジョン・戦略を実現するためには、「どのような能力を有した人材が必要なのか」という検討から始めることが大切です。要件が定まれば、社内に該当する人材がどの程度在籍しているのかを把握でき、必要人材の過不足が明確になります。このような人材ポートフォリオを動的に管理するには、タレントマネジメントシステムを用いるのが有効です。
3.人材ポートフォリオのAs-is/To-beを埋める取り組み~リソーセスシフト・キャリア自律~
「ビジョンや戦略を実現するためには、どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるか」ということが分かると、現状とのギャップ(問題)が見えてきます。すぐにでも要件に合った人材が必要な場合は、外部から即戦力となる人材を採用するのが良いでしょう。
しかしながら、即戦力となる人材がそもそも市場に少ないケースもあります。その場合は、適性のある人材を採用もしくは社内から異動・配置させて、社内で業務経験を重ねながら育成していくことになります。
この場合は、新たに採用・異動した従業員が業務にミスマッチを感じ、早期退職となってしまわないような取り組みも必要です。職務適応や職場適応、自己適応ができるように人材要件を明確化したり、オンボーディングを支援したり、キャリア自律を支援したりと、自社の特徴に合わせて取り組みの全体像を設計しましょう。
採用・異動時は、「職務への適応のしやすさ」や「組織への適応のしやすさ」といった項目においても人材要件を指標化することが重要です。
また、能力面において配属先が求めるスキルや経験を明確化し、「職務能力」とのミスマッチを避けるだけでなく、異動者もしくは採用候補者の性格が配属先の「職場風土」に合っているかを、適性検査等で確認し適所適材を検討していきます。
中途採用者が適応し立ち上がっていくためには、採用時の的確な情報提供、組織風土のマッチングの重視、入社後の人脈づくりや定期的なフォローなどが求められます。また、入社者が新しい組織に適応し活躍していく展望を持つには、成果や成長実感を積み上げることが重要です。
<図表5>中途入社者が入社1年以内に突き当たる「3つの壁」「6つの症状」
出典:人と企業の新しい関係性を結ぶ、入社者支援のポイント(前半)—企業に入社する時、人は何につまずくのか?そのためには、周囲の関わりや仕掛けが重要な役割を果たします。「新たな組織で成果を出せた」という経験と自覚を持てるよう、内省や承認などを意図的にデザインするようにオンボーディングを支援していく必要があります。
最後に、社員にとって働きがいやキャリア実現につながったという感覚が持てないリソーセスシフトの取り組みは、結果的に早期離職につながり、組織力も低下していきます。「人材ポートフォリオ」の目指す姿と現状の見える化、そのギャップを埋める取り組みを行いながらも、個と組織を生かす取り組みになっているかを確認していきましょう。
2回目である今回は、組織観点で 「人材ポートフォリオ」の目指す姿と現状の見える化と、そのギャップを埋める取り組みについてお伝えしました。次回(3回目)は個の観点で、社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと取り組み方についてお伝えしていきます。
▼第1回目はこちら
個と組織を生かす「リソーセスシフト」の考え方
▼第3回目はこちら
【個編】社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと、その取り組み方とは
執筆者
技術開発統括部
コンサルティング部
1グループ
エグゼクティブコンサルタント
山本 りえ
1999年 サービス業
2000年 税理士・社会保険労務士事務所(社会保険労務士)
専門は労働法、企業労務問題の解決やリスクヘッジに関する制度構築・相談を担当。
2005年 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
コンサルタント兼ファシリテーターとして幅広い業種やテーマに対して変革支援を行い、プロジェクトで関わった企業数はのべ150社を超える。
- ~キャリア自律を促し、リソーセスシフトを成功させる~第3回
- 【個編】 社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと、その取り組み方とは
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