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人材ポートフォリオとは? 重要性が高まる理由や、作成する際に参考になる情報を紹介
- 公開日:2014/04/18
- 更新日:2025/03/10
人材ポートフォリオとは企業が事業戦略を達成するために、どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるかを予測し分析したものです。採用、人材開発、配置、評価、モチベーションマネジメントなどを行う基礎情報として用いられます。派遣社員や請負会社、個人事業主など、広い雇用・労働形態をも視野に入れ、人材のポートフォリオを考えることが一般的となっています。
また、最近では「人的資本経営」への注目度が高まるにつれ、自社の人的資本を整理するためにも、人材ポートフォリオの重要性は高まってきています。人材ポートフォリオを作る際は、「人材タイプ」などのアセスメントサーベイで提供される情報が参考になります。
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人材ポートフォリオとは
人材ポートフォリオとは、経営戦略や事業戦略に基づいて、企業内の人的資本(社員やスタッフ)の構成を可視化・分析するツールや考え方のことです。
- 場所:人材がどこに配置されているか(部署、地域、プロジェクトなど)
- 種類:人材の職種や専門スキル、特性、役割など
- 規模:人数や経験年数、スキルの深度など
以上3つの要素を組み合わせ、社内の人的資本を可視化し、採用・育成・評価に役立つ有効な人事マネジメント手法です。適材適所を実現し、経営戦略に基づく中長期の人材マネジメントに欠かせないものとして注目されています。
動的な人材ポートフォリオとは
動的な人材ポートフォリオとは、経営環境や戦略の変化に応じて人材の採用・配置・育成を最適化する仕組みです。2020年に発表された経済産業省の「人材版伊藤レポート」では、新たな事業機会に対応するために多様で高度な人材を取り入れる重要性が指摘されています。しかし、経済産業省が行った「人的資本経営に関する調査」によると、「動的な人材ポートフォリオ」に関する取り組みの進捗状況は、6点満点中で平均が3点を下回る結果となりました。多くの企業ではこの取り組みに十分に着手できていないのが現状です。
人材ポートフォリオの重要性が高まる背景
人材ポートフォリオの重要性が高まる背景には、どのような理由があるのでしょうか。以下の3点について詳しく解説します。
人材版伊藤レポート「人的資本経営」への注目
人材版伊藤レポートとは、経済産業省が2020年に発表し、2022年にアップデートされた報告書で、企業の持続的成長と価値創造を目指す「人的資本経営」の重要性を提唱しています。人的資本を「スキル」「知識」「ノウハウ」など従業員の能力として捉え、これを投資対象とする考え方が中心です。2023年から上場企業に人的資本の情報開示が義務化されるなか、経営戦略に基づき必要な人材を可視化・最適化する「動的な人材ポートフォリオ」の重要性に注目が集まっています。
「ISO 30414」の日本への適用
「ISO 30414」とは、2018年12月に国際標準化機構(ISO)によって制定されたマネジメントシステム規格で、「社内外に対する人的資本の情報開示の国際的ガイドライン」を指します。この規格によって企業が自社の人的資本を可視化し、国際基準に沿った情報開示を行い、世界中のどの企業の人的資本であっても同じように把握することが可能になりました。
急速なビジネス環境の変化への対応
ビジネス環境の急速な変化や予測不能な時代(VUCA)に対応するため、企業は人材の調査・分析を通じて適材適所を実現する必要があります。この過程で、個々のスキルや働き方を最適化し、組織全体の成果を高めるためのマネジメントツールとして、人材ポートフォリオの活用が重要視されているのです。
人材ポートフォリオ作成の目的
人材ポートフォリオの作成目的は、社内の人的資本を見える化し、それを人材マネジメントに活用して経営目標の達成を図ることにあります。人材ポートフォリオの作成目的である3つのポイントについて解説します。
適材適所の人材配置
社員の経歴やスキル、強み、課題などを明確にすることで、適切な人材配置に活用できます。社員が自身の能力を最大限発揮できる環境で働くことができれば、モチベーションが向上し、生産性の向上も期待できるでしょう。
従業員に合わせたキャリア支援
現在、労働に対する価値観は多様化しています。マネジメントスキルの習得を目指す人、専門性を深めたい人、幅広い経験を積みたい人など、キャリアの志向や考え方は人それぞれ異なります。そのため、企業には従業員の志向に応じたキャリア形成支援が求められています。従業員の適性や志向を把握できれば個々の希望に沿ったキャリアパスを提案でき、さらにキャリアステップを予測することで、将来の事業戦略の立案にも役立つでしょう。
採用や人材育成への活用
現在いる人材を分析すれば、社内にどのような社員がいるのか、またどのような人材が不足しているのかを把握できます。人材の過不足が明らかになれば、効率的な採用活動や計画的な人材育成が可能になるでしょう。
人材ポートフォリオの作り方
人材ポートフォリオを作成する際は、企業目標の達成を目指し、上層部や管理職と十分に話し合いながら、従業員全体を分類することが重要です。運用開始時期から逆算し、早めに作業を進めましょう。作り方次第で人事マネジメントの方向性が大きく変わるため、慎重な計画が求められます。ここでは人材ポートフォリオの作り方について、以下の4ステップで解説します。
1.自社の目的を明確化する
人材ポートフォリオ作成時には、経営目標達成に必要な人的資源を客観的に可視化し、「目的を明確にする」のが重要です。経営戦略に基づき、自社の強みや弱みを分析して「軸」や「必要人数」を設定し、一貫性のある人材配置を検討する必要があります。経営戦略を反映しないと企業の方向性が曖昧になるため、目標を整理したうえで作成を進めるとよいでしょう。
2.自社に必要な人材や職種のタイプと人員数を定義・分類する
人材ポートフォリオを作成する際には、事業内容や経営計画に基づき必要な人材タイプや職種を定義します。人材タイプの分類は「個人・組織」「創造・運用」の2軸と4象限で行います。全従業員を対象とし、信頼できるデータや適性検査の結果を活用して、主観を排除した客観的な分類を行うのが重要です。定義・分類によって従業員を適切に活用し、経営目標達成を目指す体制を整えられるでしょう。
3.定めたタイプを自社の従業員に当てはめる
人材ポートフォリオを作成する際は、理想と現状のギャップを確認します。各領域にどの従業員を配置すべきかを検討し、現状を可視化して人材の過不足を明らかにしましょう。
また、現在の配置だけでなく将来的な課題や成長目標を考慮し、必要な人材タイプや人数を見極めれば、適切な人材配置や育成計画を立てられるでしょう。このような人材ポートフォリオを動的に管理するには、タレントマネジメントシステムを用いるのが有効です。
4.現状と理想のギャップを解消する方法を検討する
人材ポートフォリオ作成時には、現状と理想のギャップを埋めるための具体的な対策を検討します。採用、育成、配置転換などを通じてミスマッチを減らし、従業員の特性を最大限に生かしましょう。人材過剰の場合でも安易に自削減するのではなく、適性や意欲を生かす施策を講じます。さらに、リスキルや異動、外部人材の活用、M&Aなども視野に入れ、迅速かつ柔軟な対応をすることで競争力を強化できるのです。
人材ポートフォリオを作成する際の注意点
人材ポートフォリオを適切に作成する時に注意すべき3つの重要なポイントを解説します。
従業員に優劣をつけることを目的としない
人材ポートフォリオは、従業員を分類する際に優劣をつけるためのものではありません。人材ポートフォリオの目的は、組織全体の人材構成を可視化し、適材適所を実現することです。優劣をつけてしまうと、分析の正確性を欠くだけでなく、不満やタイプの偏りを招く恐れがあります。客観的な視点を重視し、従業員一人ひとりの適性を生かす分類を心がけましょう。
今だけでなく中長期的な視点を持つ
人材ポートフォリオは、全社的な視点を持って多角的に分類する必要があります。そのため、時間や費用がかかることを前提に計画を立てるべきです。事業戦略や人事戦略に大きな影響を与える重要なツールであるため、短期間で完成させるのではなく、検証を重ねながら中長期的に作成・運用していきましょう。また、将来の事業展開や人材育成を見据え、柔軟にアップデートできる仕組みを取り入れる必要があります。
従業員の意見や考えを考慮する
人材ポートフォリオは、企業側が一方的に従業員を分類するものではありません。従業員の意見や希望を考慮する必要があります。データに基づいた配置であっても、従業員の意向が無視されればモチベーションの低下や離職につながる恐れがあります。適材適所を実現するためには、定期的なヒアリングを行い、従業員の希望や理想のキャリアパスを反映させることが不可欠です。また、こうした取り組みによって従業員との信頼関係が構築されれば、長期的な組織の安定と成長につながるでしょう。
おわりに
人材ポートフォリオとは企業が事業戦略を達成するために、どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるかを予測し分析したものです。採用、人材開発、配置、評価、モチベーションマネジメントなどを行う基礎情報として用いられます。派遣社員や請負会社、個人事業主など、広い雇用・労働形態をも視野に入れ、人材のポートフォリオを考えることが一般的となっています。
また、最近では「人的資本経営」への注目度が高まるにつれ、自社の人的資本を整理するためにも、人材ポートフォリオの重要性は高まってきています。人材ポートフォリオを作る際は、「人材タイプ」などのアセスメントサーベイで提供される情報が参考になりますので、以下もぜひご覧ください。
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