職種、転職回数、転職時期の違いに着目 中途採用者の適応に関する実態調査報告

執筆者情報
経営企画部
シニアスタッフ
荒井 理江

ビジネス環境の変化に伴い、働く個人を取り巻く環境変化が激しさを増している。仕事内容や組織が当然のように変わりゆくなか、個人はその都度、新たな環境への適応を求められていく。しかし、それは決して簡単な道のりではない。

企業組織においても、人材獲得競争が激化するなか、採用した社員の適応支援は重要課題の1つである。人は、新たな環境にどうしたら適応していけるのか。状況によってその様相は異なるため、一概にはいえない。

特に、新卒採用者の企業への適応と比較して、中途採用者の適応に関する実態を捉えた先行研究や定量調査は少ない。そこで、会社員の転職後の適応について定量調査を実施した。今回はその一部をご紹介する。


調査概要

2015年6月に、現在、日本の企業で働いており、3年以内に転職をした経験をもつ正社員513名に調査を行った。調査概要と回答者の属性分布は図表1のとおりである。

適応感の実態を捉える4つの観点

まず、彼らの適応感の実態をご紹介する。一口に適応感といっても、いくつかの構成概念に分かれる。そのため今回は、「職場への適応感」「仕事への適応感」「成果の実感」「社内キャリアの展望」という4つの観点から適応感を捉えることとした。また、各設問は、「1:まったくあてはまらない、2:あてはまらない、3:どちらかといえばあてはまらない、4:どちらかといえばあてはまる、5:あてはまる、6:とてもあてはまる」の6段階で回答を求めた。そのうち本報告では、職種別、転職回数別、転職時期別に比較したデータを紹介する。

人脈形成に苦労する技術職

まず職種別の適応感について、結果を示したものが図表2である。数値は、6段階の平均値を示している。共通の特徴としては、職場への適応を示す「職場の人とうまくやれている」が高く、社内キャリアの展望を示す「現在の会社で、自分のやりたい仕事ができそうだ」が低くなる傾向が見られた。職場への適応を感じるより、社内キャリアの展望を感じることの方が難しいことが分かる。職種別では、事務系専門職よりも、営業・販売職、技術系専門職の得点がわずかに低くなった。

では、新しい組織に適応する上で、どのような点に苦労しているのか。適応に苦労した点について複数選択で回答を求めたところ、選択率が最も高かったのは、「仕事内容」であり、特に営業・販売職と技術系専門職で、高い選択率となった(図表3)。次いで、「職場の雰囲気」が高かった。また、技術系専門職は「社内人脈の不足」の選択率の高さが特徴的であった。一般に、技術職はスキルマッチを重視して採用されることが多い。しかし、実際に仕事を進める上で、社内の関係性づくりに難しさを感じているのであれば、採用時にも組織風土へのフィットを丁寧に検討することや、入社後の人脈拡大などのフォローも有効といえる。

初めて転職した人と、転職回数が多い人には丁寧なフォローを

次に転職回数別の比較結果をご紹介する。転職の回数を重ねるごとに、適応に苦労するポイントは変化していくのだろうか。転職経験数ごとに回答者を分類して比較したのが図表4、5である。

まず、各群の適応状況については、4回以上転職した群の適応感が最も低く、その次に低いのが転職1回目の群であった。
この2群は、どのような点に苦労しているのだろうか。比較したところ少し異なる特徴が見られた(図表5)。他群と比較して転職1回目の群に特徴的であったのは、「社内人脈の不足」の選択率の高さである。転職回数が増えるごとに、選択率が減少していく傾向が見られた。一方、転職4回目以上の群に特徴的なのは、「上司との人間関係」である。1回目の群は最も低く、転職回数が増えるごとに高まる結果となった。転職が初めて、あるいは転職回数が多い社員に対しては、特に丁寧なフォローが望まれる可能性がある。転職が初めての人には社内でのコミュニケーション支援を行ったり、転職回数が多い人には人事などの第三者が上司との相性も含めて状況を丁寧に確認するなどの方法も、検討余地があるだろう。

仕事の範囲を超えた関係づくりを意識

では、中途採用者は、新しい組織に適応するためにどのような努力をしているのだろうか。
本調査では、「適応するために工夫したこと」をフリーコメントで回答してもらった(図表6)。

コメントを分類すると、大きくは対人面、対課題面、スタンス面に分かれ、そのなかでも特に対人面に関するコメントが多かった。仕事に関わるコミュニケーションを指すコメントも多くあったが、それだけでなく仕事を超えた関係づくりを挙げるコメントも多数見られた。対課題面では、仕事に積極的に取り組み、いち早く成果をあげようと心がけたとのコメントが見られ、スタンス面では、謙虚に協調を重んじるコメントが見られた。新しい組織を受け入れる謙虚な姿勢を保ちつつ、プロアクティブな行動やコミュニケーションをとることで、組織に溶け込もうとしていることが窺える。

適応感には2年目の谷間が存在

このように、人は新たな組織に参入すると、さまざまな工夫をして適応しようと努めていくわけだが、適応感を前述の4つの観点で見たとき、それぞれが同時並行的に高まっていくものなのだろうか。現在の企業に転職してからの期間別に適応感を比較したものが、図表7である。

特徴的なのは、転職後1年〜2年以内の群の得点が全般的にやや下がっている点である。特に「社内キャリアの展望」が落ち込んでいる。しかし、2年〜3年以内の群では「社内キャリアの展望」は回復している。「成果の実感」も高くなっていることから、仕事の成果を実感していくことで、社内キャリアの展望が開ける感覚を得られているのかもしれない。

本調査は残念ながら、同一の人を時系列に追いかけた調査ではないため、適応感がある人が離職せずに定着した結果である可能性もある。ただいずれにせよ、たとえ即戦力を期待して採用する中途採用者であっても、転職後2年は丁寧にフォローをしていくことが望ましいことが分かる結果である。

「一員になった」と感じた瞬間は仕事で認められたと自覚できたとき

仕事での成果の実感が適応感に非常に重要であることは、フリーコメントの回答傾向からも窺い知ることができる。図表8は、「組織の『一員になった』と感じた瞬間」について、自由記述で回答を求めた結果をまとめたものである。仕事の成果に関わるエピソードが非常に多く寄せられている。それも、単純に成果が出たという事実だけでなく、きちんと評価され褒められたことや、任せてもらえている、頼りにされていると感じられた経験などを通じ、自分が役立つ存在であると実感していくことで、適応するという感覚を得ているようである。またこの結果からは、こういった実感を促すためには、周囲の関わり方が重要であることも推察できる。

求められているのは、知識・スキルの支援と状況の定期的な把握

では最後に、中途採用者がどのような支援を求めているのかをご紹介する。図表9は、特に役に立った支援と、もっと欲しかった支援の選択率を示したものである。どちらの観点でも選択率が高かったのは「上司による定期的な定着・活躍度合いの把握と、必要なフォローの実施(上司面談など)」と、「業務を遂行する上で必要となる知識・スキルの習得機会(研修、通信教育など)」であった。スキルのインプットだけでなく、定期的なフォローが有効であることが窺える。一方、「入社前の会社や仕事に関する正確な情報提供」「入社前の社内ネットワークづくりの機会」などは「特に役に立った」と回答した比率が低く、「もっとあったらよかった」選択率が上回る結果となった。採用時の情報提供やフォローには、工夫の余地がありそうだ。

おわりに −中途採用者が活躍を実感できる支援を

中途採用者は、新卒採用者に比べて早期に立ち上がることを求められる。しかし本調査からは、彼らが新たな環境への適応に苦労し、支援を求めていることが窺えた。支援においては、留意すべきヒントがいくつか示唆された。例えば、採用時の的確な情報提供、組織風土のマッチングの重視や、入社後の人脈づくりや定期的なフォローなどである。

また、入社者が新しい組織で通用し活躍していけるという展望をもつには、成果や成長の実感を積み上げることが重要であった。そして、それには周囲の関わりや仕掛けが重要な役割を果たしていた。仕事遂行に必要なスキルをインプットし、上司や人事が定期的に活躍状況を確認しながら、「新たな組織で成果を出せた」という自覚を積み重ねられるよう、内省や承認などを意図的にデザインできるとよい。営業組織であれば、成果が見えやすいため表彰などの仕掛けを行いやすいが、他職種においても意識して設計を試みるべきだろう。

しかし、本調査結果は中途採用の適応を捉えるごく一部の情報にすぎない。本テーマについては、今後、さらなる調査・研究を行い、より発展的に議論していきたい。

本調査報告が、中途採用者の適応支援を検討する一助になれば幸いである。

※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.39特集「『適応』のメカニズムを探る」より抜粋・一部修正したものである。

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