連載・コラム
~キャリア自律を促し、リソーセスシフトを成功させる~第3回
【個編】 社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと、その取り組み方とは
- 公開日:2024/11/11
- 更新日:2024/11/11
1回目:個と組織を生かす「リソーセスシフト」の考え方
2回目:【組織編】 「人材ポートフォリオ」の目指す姿と現状の見える化と、そのギャップを埋める取り組みとは
3回目:【個編】 社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと、その取り組み方とは(⇦ 今回はココ!)
本コラムでは、個と組織を生かす「リソーセスシフト」の考え方を3回に分けてお伝えしています。3回目である今回は、社員視点での「リソーセスシフト」の考え方を解説します。
- 目次
- 社員視点で考える「キャリア自律」とは
- 1.【MUST】 社会や組織の方向性・期待を踏まえて、自組織や自分の専門領域の未来を想像する
- 2.【CAN】 今の強みでできること、今の能力では足りないところを把握する
- 3.【WILL】 自分らしさを生かしながら、貢献したいことを考える
社員視点で考える「キャリア自律」とは
会社はビジョンや戦略を達成するために、リソーセスの1つである「人材」について「どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるか」(To-be)を導き出し、現状(As-is)との差を埋めるために、採用や人材配置、人材育成の最適化を行っていきます。
それに対して、社員は社会や会社の動向を捉えながら、自分の労働市場での価値――エンプロイアビリティを主体的に高め、他者からどのように評価され信頼を得るのかという戦略立て――セルフブランディングを行い、その実現に向けてアクションをしていきます。これも「キャリア自律」の1つの方法です。
皆さんのなかには、「長期のキャリアが描けない」「何になりたいか、今は分からない」という方がいると思います。そういう方こそ、図表1を参考に自分のキャリアを考えてみてください。今回は図表1に沿って、社員視点で捉える「キャリア自律」のメリットと、その取り組み方について、3つのポイントをお伝えします。
- 【MUST】 社会や組織の方向性・期待を踏まえて、自組織や自分の専門領域の未来を想像する
- 【CAN】 今の強みでできること、今の能力では足りないところを把握する
- 【WILL】 自分らしさを生かしながら、貢献したいことを考える
<図表1>市場価値向上型 キャリア自律のステップ
1.【MUST】 社会や組織の方向性・期待を踏まえて、自組織や自分の専門領域の未来を想像する
キャリア(career)は「道、轍(わだち)」を語源とする言葉で、一言で表すなら「生き方」です。キャリアを考えることは、過去・現在・未来とつながる人生という「道」を振り返り、自分が大事にしたいものを明確にしながら、これからどのような「道」を歩んでいきたいのかを考えることです。このように、自分の生き方を自分で決めると人生の満足度が高まります。
キャリア自律と職務満足度の研究の軌跡については、以下の記事でも詳しく解説しています。
自律的・主体的なキャリア形成に関する研究の軌跡
一方で、キャリアと聞くとキャリアアップ=昇進昇格・異動・転職などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。キャリアアップは、自分が描いた未来の「ありたい姿/なりたい姿」に近づくこと(≒成長)ですが、自分の未来をはっきりと描けないという方もいます。
こうした場合は、自分の専門領域・分野の未来を想像してみましょう。そして、「私が担当する〇〇の領域・分野・担当業務の未来は、△△が求められるので、××のような人材が活躍しそう!」と思いついたことを書き出してみるのが有効です。
具体的な内容を思いつかない場合は、所属組織が掲げている長期ビジョンを見てみましょう。組織(※)が何を実現したいのか、どんなスキルを持つ人材を求めているのかといったことが書かれているはずです。
※コラム2回目にあるように、組織長は求める人材の質・量を明確化したら、ぜひ「組織が求める能力(CAN)」を社員に示してください。それをもとに社員は自己研鑽をします。
これにより、未来に期待・要望されそうなこと、人に喜ばれそうなことがどこにあるかが見えてくるはずです。「人事領域ではHRテックが進むため、AI活用やデータ分析ができる人材が求められそう」というように、例え正解ではなくても、数多くの可能性を挙げてみましょう。重要なのは、自分がそうなれるかどうかではなく、「未来に活躍しそうな人材」を気軽に考えることです。
2.【CAN】 今の強みでできること、今の能力では足りないところを把握する
先述した「未来に活躍しそうな人材」に対して、自分の今の強みで太刀打ちできるのか、今の能力で足りないところはどこなのかを把握します。ここでのポイントは、自分らしさを把握することです。過去に自分は何を大切にしてきたのか。どういうことを経験し、どんなことを身に付けてきたのか。何ができて、何をしていると楽しいのか……などを振り返り、言語化することから始めると、自分らしさを把握しやすくなります。
そのなかでも、特に自分の「得意」や「強み」を自覚することがポイントです。「得意」とは、他の人と比べて苦労しなくてもできること。例えば、人と話すのが苦ではない、くよくよしない、フットワークよく動けるなどが「得意」にあたります。
一方、「強み」は、経験のなかで培ったスキルや知識などを指します。過去、自分が成長できた出来事を通して学んだことを棚卸ししてみたり、上司や仲間などに自分の強みを聞いてみたりすることも有効です。
経験や知識・スキルだけでなく、行動の特徴や姿勢、関係性資本(人脈)など、幅広く自分らしさを挙げることで、新たな「得意」や「強み」を発見できるかもしれません。
3.【WILL】 自分らしさを生かしながら、貢献したいことを考える
強みをキャリアに生かすには、将来のありたい姿に近づくために、今ある強みをどう伸ばすかを戦略的に考え「セルフブランディング」する必要があります。このステップでは自分を商品と捉え、自分らしさを生かしてどのような姿になりたいかを考えます。同時に、市場で求められる価値や、そのなかで自分が伸ばしていきたい能力や強み、その姿を実現することは自分にとって時間・人生を費やすメリットがあるのか、大事にしたい価値観とフィットするのかを考えましょう。
ここでのポイントは、キャリア(人生)のステージにおいて、何を大事にするのかを考え、価値観の優先順位を付けることです。仕事内容、社会的地位、処遇、ワークライフバランスなど、その時々で仕事上の大事にしたいことは変わります。ちょっと無理をしても挑戦したい時期があったり、家庭を優先させたい時期があったりするのではないでしょうか。
長期のキャリアゴールを置きながらも、中短期では目の前の機会と自分の価値観(キャリア選択の軸)に照らし合わせることが重要です。そのうえで、中短期での成長テーマと挑戦内容を決めて積極的に行動すれば、「できること」が増え、将来の選択肢が広がり、市場価値も高まります。
以上のようなステップで「キャリア自律」を考えることで、自分らしさを生かしながら人に喜ばれること――貢献領域を見つけることができます。自分のWILLが先行している人も、自分のWILLが描けない人も、社会や会社の動き(リソーセスシフトの動きなど)を捉えながら、マーケティング思考で結節点を見出すことが、エンプロイアビリティを高めることにつながります。そう考えると、リソーセスシフトとはある意味、「個と組織のありたい姿を実現するために、会社と個人が共にアクションを取ること」、といえるのではないでしょうか。
<図表2>リソーセスシフトを促す施策例
弊社には、<図表2>のように各社の状況に応じたリソーセスシフトを促すサポート施策や事例があります。
<施策・事例の一例>
A 採用要件の明確化
B 負荷軽減
C ナレッジマネジメント(マネジメント支援)
D 成果が上がるチームづくり(チーミング)
E 人的資本開示
F 適性把握
G 成長・育成支援
H 職場でのオンボーディング
I ワークエンゲージメント向上
J タレントマネジメントシステム
リソーセスシフトについて課題をお持ちの場合や、施策に興味を持たれた場合は、ぜひ弊社にお問い合わせください。
▼第1回はこちら
個と組織を生かす「リソーセスシフト」の考え方
執筆者
技術開発統括部
コンサルティング部
1グループ
エグゼクティブコンサルタント
山本 りえ
1999年 サービス業
2000年 税理士・社会保険労務士事務所(社会保険労務士)
専門は労働法、企業労務問題の解決やリスクヘッジに関する制度構築・相談を担当。
2005年 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
コンサルタント兼ファシリテーターとして幅広い業種やテーマに対して変革支援を行い、プロジェクトで関わった企業数はのべ150社を超える。
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