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コンプライアンス研修とは? 研修の目的やテーマ例、効果的に行う方法を解説

  • 公開日:2024/12/02
  • 更新日:2025/11/04

コンプライアンス研修とは、社員のコンプライアンス意識を高めるための研修です。この記事ではコンプライアンス研修の概要や、コンプライアンスが重視される理由、具体的な研修の流れについてまとめました。

コンプライアンス研修とは

コンプライアンス研修とは、社員一人ひとりのコンプライアンスへの意識を高めると同時に、社会人としての倫理観や社会的責任感を養うための研修です。

コンプライアンスとは

コンプライアンス(compliance)とは「法令遵守」を意味し、ビジネスシーンにおいては、「企業が法律や条例といった社会的なルールを守る」ことを指します。
昨今はコンプライアンスに含まれる「社会的なルール」はさらに広義になっており、法令に加えて企業としてのモラルも含まれるようになりました。

コンプライアンス違反の事例とリスク

コンプライアンス違反は、企業が長年築いてきた信頼を一瞬で失う要因になり得ます。
実際にどのような違反が起こり得るのか、その事例とリスクを以下に示します。

【法令違反】
企業活動には多くの法律が関係しており、それらを遵守しない場合、法的責任だけでなく企業の信頼にも大きな影響が及ぶおそれがあります。

違反区分

具体的な違反行為

独占禁止法違反

価格の取り決め、談合行為、取引先の排除や囲い込み

不正競争防止法違反

機密情報の持ち出しや流用、類似製品の不正販売、不正な営業活動

労働基準法違反

長時間労働の強要、未払い残業代、各種ハラスメント、不当な契約終了

個人情報保護法違反

個人データの漏えい、不正な利用・共有、管理体制の不備

金融商品取引法違反

インサイダー取引、相場操作

下請法違反

下請企業への不当な価格設定や返品要求、支払い遅延

【社内規定違反】
社内規定や業務手順は、組織としての一貫性やリスク管理に深く関わる要素です。
小さな違反が大きな問題に発展することもあるため、日常の業務でも注意が求められます。

違反区分

具体的な違反行為

情報セキュリティ違反

情報漏えい、パスワードの不適切管理、不正アクセス

不正会計

粉飾決算、資金の流用や着服

贈収賄

公務員や取引先への不適切な接待・金品提供

ハラスメント行為

職場での立場を利用した威圧・嫌がらせ行為

内部統制違反

手続きの不備、監査や承認の仕組みが機能していない状態

【企業倫理違反】
法律違反ではない場合でも、社会からの信頼を損ねる行動は企業の存続に影響する可能性があります。
倫理的な判断が求められる場面では、社会的責任を意識した行動が必要です。

違反区分

具体的な違反行為

環境への配慮不足

法令を守らず有害物質を排出、適切な処理を怠る

人権侵害

差別的な対応、強制労働、児童労働

製品・サービスの不誠実対応

欠陥情報の隠蔽、リコールの遅れ

虚偽広告

過剰な表現、根拠のないキャッチコピー

消費者保護の軽視

無理な勧誘、契約内容の不明瞭さ、不当な解約条件

反社会的勢力との関与

暴力団との取引や資金の提供

コンプライアンス研修が重要視される理由

多くの企業がコンプライアンス研修を重視する理由は、企業としての社会的責任を果たし、信頼を維持するためです。

昨今の企業活動では、自社の利益の追求だけでなく、次世代や地域社会に責任を持つことが求められています。

このCSR(企業の社会的責任)という考え方が普及したことから、前の章でも紹介したような不祥事や情報漏えい、ハラスメントといったコンプライアンス違反は世間からより厳しい批判を受けやすくなりました。
このような社会的信頼の失墜を防ぐためには、社員がコンプライアンス意識を持ち、体現していくことが欠かせません。

東京商工リサーチの「コンプライアンスに関するアンケート」調査によると、コンプライアンスに関する研修を行っている大企業は66.90%にのぼっており、今後もコンプライアンス遵守に向けた取り組みが進んでいくことが予想されます。

コンプライアンス研修の目的

コンプライアンス研修の主な目的は、法令遵守の意識を組織に浸透させることにあります。併せて、「法令や社内規則の共有」「コンプライアンス違反によるリスクの抑制」「企業価値の向上」なども目的の1つです。以下、詳しく目的をみていきましょう。

法令や社内規則の共有

コンプライアンスとは「法律をはじめとする社会的なルールを守ること」ですが、法律は定期的に改正されることから、コンプライアンスの知識も適宜アップデートしていく必要があります。コンプライアンス研修を定期的に実施すれば、社員に情報共有を行うことができる他、社内規則や価値観を浸透させやすくなります。

コンプライアンス違反によるリスクを抑制する

社内でコンプライアンス違反が起こった場合、社会的信用の低下や取引の停止に加え、企業に長期的な損失をもたらす可能性があります。研修によってコンプライアンスについての意識を浸透させることで、コンプライアンス違反によるリスクを抑制しやすくなるでしょう。

企業価値を向上させる

企業価値の向上には、顧客や株主、投資家といったステークホルダーからの信頼を獲得することが欠かせません。コンプライアンス研修の実施を通して、「企業倫理面でも良好な経営を続けている企業である」ということを周知すれば、顧客や取引先からの信頼も得やすくなり、結果的に企業価値の向上にもつながります。

コンプライアンス研修に取り入れるテーマ例

コンプライアンス研修で扱うことができるテーマは、法律やモラル、メンタルヘルス、ハラスメントなど多岐にわたります。今回は弊社が提供している「実践コンプライアンス研修シリーズ」のプログラム内容に沿って、コンプライアンス研修に取り入れたいテーマ例を紹介します。

コンプライアンス領域

実践コンプライアンス研修シリーズのコンプライアンス領域では、「そもそもコンプライアンスとは何か」という基礎をはじめとして、コンプライアンス違反の例や、階層別の対処法について扱っています。

具体的な内容としては、近年の企業の不祥事例や、労働法・特定商取引法・派遣法・著作権法・景品表示法といった企業経営に不可欠な法令知識、SNSの取り扱いをはじめとする情報セキュリティのノウハウなどです。

管理職に対しては上記の基礎知識に加え、管理職に求められるリスクマネジメントのノウハウや、コンプライアンスに関する具体的なリスク例と対処法などをテーマとして取り上げています。

メンタルヘルス領域

実践コンプライアンス研修シリーズのメンタルヘルス領域では、職場におけるメンタルヘルスの基礎知識や対処法について扱っています。

具体的なテーマ例は、職場のストレスに関する実際のケースの紹介や、「自分が職業生活におけるストレスを抱えているかどうか」に気づいてもらう簡易調査の実施、業務上のストレスと付き合っていくためのセルフケア方法の提案などです。

管理職に対しては上記に加え、メンタルヘルスの判例や、部下の心の変化にいち早く気づいて改善を図るラインケアの演習なども扱います。

ハラスメント領域

実践コンプライアンス研修シリーズのハラスメント領域では、主に管理職クラスに向けて、職場におけるハラスメントの基礎やハラスメント対策のポイントを扱っています。

具体的なテーマ例は、多様化しているハラスメントの現状紹介や、ハラスメントそのものが企業にもたらすリスクの注意喚起、ハラスメントに抵触しない対人ノウハウなどです。お互いの多様性(ダイバーシティ)を尊重する組織づくりを目指している場合は、ハラスメントがダイバーシティの浸透を妨げやすいことや、ダイバーシティ経営に向けたハラスメント対策のコツなどを取り上げてもよいでしょう。

階層別の研修内容

全員に同じコンプライアンス研修を実施しても、十分な効果は得られません。
研修を「自分事」として捉えてもらうには、新入社員、中堅社員、管理職といった、それぞれの立場や役割に即した内容設計が重要です。

新入社員向け

学生から社会人へと立場が変わる新入社員には、社会人としての意識改革を促すことが肝心です。
研修では、社会人の常識として、新入社員が身につけておくべき以下のようなコンプライアンスの基本を学びます。

  • SNS利用時の注意点と情報漏えいのリスク
  • メンタルヘルスや報連相(報告・連絡・相談)の重要性
  • 違反時の影響を具体的な事例で学ぶことで当事者意識を育てる

中堅社員向け

組織の要である中堅社員は、プレイヤーから、チームを導くリーダーへと役割を転換する時期にあります。
この段階での研修には、次のような目的と内容が求められます。

  • 組織の価値観や行動規範の再確認
  • 部下育成・チーム運営のなかで起こるハラスメントや倫理的ジレンマの対処法
  • 判断に迷う場面への対応力を高めるケーススタディ

役割の変化に合わせた実践的な内容にすることで、より深い学びにつながります。

管理職向け

管理職の判断や行動は、組織全体に大きな影響を与えます。
管理職1人のコンプライアンス意識の欠如が、企業の信頼や経営基盤を揺るがすこともあります。
管理職向けでは、以下のスキルと意識の習得が重要です。

  • 法令理解とリスクを早期に察知する危機管理能力
  • 部下との信頼関係を築く対話力・傾聴力
  • 心理的安全性の高い職場づくりのためのリーダーシップ

特に新任管理職には、「責任の重さ」と「期待される行動」の両面を自覚し、具体的な行動に落とし込む研修が必要不可欠です。

コンプライアンス研修の流れ

コンプライアンス研修を実施する際は、まず社内のコンプライアンス意識の現状を把握してから研修内容の設計に進むという流れがお薦めです。具体的なステップをみてみましょう。

企業のリスク状況を把握する

まず、社員のコンプライアンスについての理解度や、実際に行動に移せているかどうかをチェックします。併せて、コンプライアンスに関する社内ルールがきちんと整備されているかどうかを確認しておくとよいでしょう。組織全体で「コンプライアンスを遵守しよう」という意識を継続的に持つためには、コンプライアンスに関するルールが社内でいつでも確認でき、かつ適宜更新されていく環境が必要だからです。

研修内容を決める

自社のリスク状況をもとに、「どの階層の社員に、どのようなタイミングで、どんなインプットを行うのか」を分析し、研修内容を決めます。特に若手と管理職クラスでは、現場で求められるコンプライアンス意識の幅が異なることから、研修内容を分けて設定するとよいでしょう。

カリキュラムを策定して研修を実施する

対象者や時期、研修の方向性などを決めたら、具体的なカリキュラムを策定します。併せて、実施する研修の優先順位も決めましょう。研修内容の優先順位としては、コンプライアンス違反が起こった場合の影響が大きいテーマや、自社で顕在化しつつあるコンプライアンス違反に関するテーマから取り扱うとよいでしょう。

例えば、公式SNSが炎上してしまったことがある場合は情報セキュリティのテーマを、パワハラについての相談がある場合はハラスメントに関するテーマを優先的に取り上げることで、早急かつ根本的な意識改革を目指すことが可能です。

振り返りと理解度の確認を行う

コンプライアンス研修を実施した後は、参加者からのフィードバックをもとに研修内容を見直します。「コンプライアンス違反の事例が分かりにくかった」「SNSの運営方法について、もっと具体的な例が欲しかった」など、実際に研修を受けた人から意見をもらうことで、改善を図ることが可能です。また、アンケートや面談を通して研修を振り返ってもらうことで、学んだ知識をさらに深めることもできるでしょう。

コンプライアンス研修を効果的に行う方法

最後に、コンプライアンス研修を効果的に行うための5つのポイントをご紹介します。

役職に応じた目標を設定する

1つ目のポイントは、社員の役職や立場に見合った具体的な研修目標を設定することです。
これは先ほど別の章でも触れたとおり、研修効果を高めるうえで重要な視点です。
例えば新入社員向けなら「コンプライアンスの基礎とSNSの運営の際に気をつけるべきリスクや責任を学ぶ」、中堅社員向けなら「部下の育成の際にハラスメントとなりやすい対応を学ぶ」というように、対象者に合った目標を設定します。
「コンプライアンス意識を培う」という目標を具体化することで、研修の効果を高めることが可能です。

定期的に研修を実施する

2つ目のポイントは、定期的に研修を実施し、知識をアップデートしていくことです。
コンプライアンスで扱う社会的なルールは普遍的なものではなく、社会の情勢に応じて変化していきます。ハラスメントに対する意識の変化や法改正の知識を学ぶことで、時代に合わせたコンプライアンス意識を培うことができます。

社内規則も並行して整える

3つ目のポイントは、コンプライアンスに関する社内規則や相談窓口を整えることです。
社員にコンプライアンスの知識があっても「実際に何をしてはいけないのか」「困った時はどこに相談すればいいのか」が企業全体に共有されていない場合、対応が遅れてしまうリスクが高まります。
具体的な違反行為や罰則、相談先の周知をしていくことで、コンプライアンス研修で得た知識がより浸透しやすくなるでしょう。

eラーニングを活用する

4つ目のポイントは、eラーニングを取り入れて研修の実効性を高めることです。
時間や場所にとらわれずに受講できるため、業務の合間など各自の都合に合わせた学習が可能です。
集合研修に比べてコストや運営の負担も抑えやすく、全社的な教育を効率的に展開できます。
また、小テストなどを通じて受講者の理解度を可視化できるため、学習の定着状況を確認しやすい点も特長です。
対面研修と併用することで、さらに効果的な運用が期待できます。

効果測定を行う

5つ目のポイントは、研修の実施後に効果を測定し、内容の見直し・改善につなげることです。理解度テストやアンケートを通じて参加者の反応や学習状況を可視化することで、研修の目的がどの程度達成されているかを確認できます。
また、評価結果を踏まえて内容や伝え方を調整していくことで、研修の質を継続的に向上させることが可能になります。

まとめ

コンプライアンス研修の概要や、コンプライアンスが重視される理由、具体的な研修の流れについてご紹介しました。

「社会の一員として法令やモラルを守ろう」というコンプライアンス意識が組織に根付けば、企業価値の向上はもちろんのこと、経営リスクの抑制にもつながります。弊社は、コンプライアンスを題材とするさまざまなサービスを提供していますので、興味がある方は下記リンクもぜひご覧ください。

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