課題解決に向けて何をすべきなのか 思考力を鍛える〜なぜ、問題解決はうまくいかないのか〜

昨今、企業の人事教育担当の方から、ビジネススキルの中でも思考法に関するもの、例えば「論理的思考力」や「問題解決スキル」といった切り口でご相談いただくことが増えてきています。

背景として、事業をとりまく社内外の環境が絶えず変化し、複雑化する中で、一律の「正解」が存在せず、常に「最適解」を求めて考え続けることが求められていること、また、スキルとしての思考フレームなどの有効性・有用性について、あらためて広く認識されつつあることも理由の一つと考えられます。

特に、ここ最近、一つの事故、判断ミスが企業の存続を根底から揺るがしかねない事件が相次いでおり、場当たり的な対処ではなく根本的な原因究明や、問題解決が求められています。

今、企業が問われていることは、日頃から社員一人ひとりが、いかに職場の問題や課題について考えているか、課題解決に向けて何をすべきなのかを、組織としてどう共有しているか、ではないでしょうか。
そのためには「共通言語」としての論理的思考力が重要となってくるのです。

今回の特集では、代表的な問題解決・意思決定のための思考法の一つである「TM法」のご紹介とあわせ、基本的なビジネススキルとしての「問題解決のための思考法」について取り上げてみたいと思います。


「問題」と「課題」について

「問題」と「課題」、私たちはこの2つの言葉を日常の場面でもよく使いますが、「問題解決」を考えるにあたり、ここではまず、「問題」と「課題」について定義することから始めたいと思います。

問題とは

辞書(広辞苑)を引いてみると、「問題」を、4つの意味から定義しています。

1.問いかけて答えさせる題。解答を要する問い。
2.研究・論議して解決すべき事柄。
3.争論の材料となる事件。面倒な事件。
4.人々の注目を集めている(集めてしかるべき)こと。
出典:広辞苑

日本語は広義であることが特徴ですが、ビジネスの現場では、多くは次のように定義されます。

「問題とは現状(実際の姿)と目標(あるべき姿)との差異」

つまり、私たちは、定めた目標(あるべき姿)と現状(実際の姿)の間に差異(ギャップ)が生じると、その状況を問題だと認識するのです。

問題の2つの種類

一つの事象について、ある人は、“これは問題だ”と主張し、他の人は“別に問題ではない”というようなことはよくあります。例えば「人口減少化」問題が新聞でよく取り上げられますが、多くの人が問題だと思う一方で、あるデータによれば、約2割の人が「別に問題だと思わない」と答えています。
それはどういうことを表しているのでしょうか。

実は、「問題」には次の2つの種類があります。

1.あるべき姿(目標)が明確に定まっており、共有できている場合
2.あるべき姿(目標)が人・状況により異なる場合

1のケースは、目標が組織・集団の中で明確に共有されているが、現状がその目標との間に差異を生じている時です。このケースでは、組織・集団内の誰もが問題を認識します。

2のケースは、組織・集団のメンバー間で、目標(あるべき姿)が定まっていない時です。
メンバー一人ひとりが描く目標(あるべき姿)が異なれば、人により問題の認識も異なります。
先に取り上げた「人口減少化」の問題も、国力の低下や年金問題の深刻化から、大きな問題である、と考える人もいれば、地球全体の規模で考えれば、人口が急増している現代にあって、一国の人口減少をさほど問題視する必要はない、と考える人もいます。
つまり、そもそものあるべき姿(目標・基準)が異なるために、問題の捉え方が異なってくるのです。

一方、ビジネスの現場でも、環境が大きく変化し続けている状況では、いったん定めた目標も、常に見直しが求められます。つまり、環境変化を捉え、それをふまえて新たに目標を設定し直すことにより、「問題」も変化するのです。

課題とは

一方、「課題」を辞書(広辞苑)で引くと「題・問題を課すること。また、課せられた題・問題」とあります。「問題」も「課題」も“解決”という言葉を伴うことから、「課題」とは次のように定義できます。

「課題とは、問題を解決するために、行動を起こすことを意志表明したもの」

問題は、主体的に解決する意志を持って行動を起こすことによって解決に向かいます。
それが、課題形成する、課題化するということです。

なぜ、問題解決はうまくいかないのか

問題解決にはプロセスがある

私たちが、富士山の頂上を目指して登る時、例えば5合目までは車で行き、6合目、7合目、そして8合目・・・と順にプロセスを踏んで登ります。なぜなら、ヘリコプターでも使わない限り一気に頂上まで登ることはできないからです。しかし、私たちは日頃、問題を解決したい時、何故か“一気に”結論にたどり着きたい、解決したい、と考えがちです。しかし、問題解決においての“ヘリコプター”はありません。

問題解決にはプロセスがあり、私たちは意識するかしないかは別にして、ほぼ下図のようなプロセスを踏んでいるのです。

(あるべき姿・目標・基準に照らして)
1.現状(状況)から問題を認識する→問題発生
2.現状分析、課題の明確化→課題形成
3.目指すべき目標・ゴールを設定する
4.実行計画の策定
5.計画を実行する
6.結果を検証し、ナレッジ化する


【問題解決のプロセス】

私たちが問題解決にあたるとき、意識してこのプロセスを踏むことは通常ありません。それゆえに、登山のようにプロセスを順序よく踏んで、頂上(結論)に至るのではなく、各プロセスを行ったり来たりしているのが現状です。
ところが、「問題解決に優れた人」は、実は、意識してこのプロセスを踏んでいるのです。

問題解決上のよくある問題

ビジネスの現場は常に問題解決の連続であり、しかもこれらの問題は、常にうまく解決できるとは限りません。問題解決スキルを高めることは、人材育成・能力開発の重要なテーマの一つですが、企業の人事担当の方からは、例えばこんな声をよくお聞きします。

・表面的な理解にとどまり、分析が甘い
・ビジネス環境や状況は常に変化しているのに、自ら問題・課題を見つけられない
・指示された課題をこなせば済んだと思っている
・仕事のスピードが遅い、結論が出るまでに時間がかかる
・なぜそのような結論に至ったのか、説明を聞いてもよくわからない

・・・などなど

問題解決がうまくいかない理由

問題解決に思考プロセスがあるとすると、こうした問題は、思考プロセスのどこで起きているのでしょうか。また、何故こうしたことが起きるのでしょうか。

問題解決の思考プロセスをたどると、多くは問題認識から課題形成へのプロセスと、課題から何らかの結論(目標・ゴール・実行策など)を導き出すプロセスに問題があるように思われます。また、そもそも、問題を認識するプロセスや視界が大きく関係している場合もあります。

私たちは情報、経験、知識を活用して、結論を導き出しますが、その過程で“考える(思考)”という行為を行っています。問題解決がうまくいかない原因の一つは、例えていえば、この思考過程に“思考の雲”がかかっているから、ということがいえます。

・問題を認識できない
 →雲の中で周りが見えなくなっている。自分の立ち位置がわからなくなっている

・現状分析、課題形成ができない
 →事実や情報をもとに考える筋道がわからず、思考の雲の中で迷ってしまう

・結論が出るまでに時間がかかる
 →結論を出すための筋道(手順)を持っておらず、思考の雲の中をさまよう

・結論の理由・根拠がわからない
 →結論を出すための筋道(手順)を持っておらず、説明を求められてもその根拠・理由が説明できない。つまり、相手から見ると、思考過程がブラックボックス化している

“思考の雲”に例えて言えば、まさにこのようなことが、思考過程で起きていると言えるのです。


【思考プロセスにかかる“雲”】

問題解決のスキルとしての論理的思考

羅針盤としての論理的思考

“思考の雲”に迷わされずに周りの状況が正しく認識できる/自分の立ち位置がわかる/“思考の雲”の中を迷わず進むことができる/どのような思考過程を経てその結論に至ったのかを、誰でも理解できるよう、明確に説明できる・・・。そのための手立てはないのでしょうか。

雲の中を進む飛行機のレーダー、大海を進む船舶の羅針盤、などに相当するツールとして、“思考の雲”の中を迷わず進むためのツールがあります。それが「論理的思考」をベースとしたものです。
論理的思考とは、主に次の3つのKey Wordで言い表せます。

1.「より深く」考える、「より広く」考える
2.分けて考える
3.筋道を立てて(“軸”を意識して)考える

論理的思考とは、言い換えれば「ステップ」を踏んで考えていくことといえます。
また、先に述べた問題解決の最初のプロセスは“問題を認識”し、そして“課題を形成する”でしたが、この段階で、より深く考え、より広く考えて、問題認識〜課題形成を行わないと、その後のプロセスでせっかくステップを踏んで考えても、有効な結論にたどり着くことが難しくなります。

現象面だけ捉えて問題を抽出し、その解決を図って終わりとする。つまりその現象の起こった根本的な原因まで踏み込んで考え、問題形成しない。あるいは、問題形成〜課題解決において、企業の内部事情だけしか考えず、顧客の視点で考えない。CSR(企業の社会責任)やコンプライアンスの視点が欠如してしまう・・・。最近よく起きる企業の不祥事も、問題認識〜課題形成の段階に問題がある、といっても過言ではありません。
まさに、論理的思考の最初の第一歩は「より深く、より広く考える」ことにあるのです。

プロセスに応じた論理的思考のツール

問題解決の各プロセスに有効な、論理的思考のツールはそれぞれ異なります。
問題形成、課題形成のプロセスでは、より深く、より広く思考することが必要になります。
また、その後の課題から結論を得るプロセスや、計画化のプロセスでは、分けて考え、筋道を立てることがより重要となります。

問題解決に強くなるための早道は、論理的思考をベースに組み立てられた、問題解決のプロセスに応じたツールを活用することです。そのツールを組織・集団のメンバー全員で共有することが出来れば、組織としての問題解決の効率化にも繋がります。

次に、一例として、代表的な問題解決・意思決定のための思考法の一つである、TM法についてご紹介いたします。

TM法(問題解決・意思決定のための思考法)とは

TM法とは合理的、論理的思考による問題解決・意思決定の手法の一つであり、私たちが仕事の上でよく直面する問題を4つの状況に分けて、それぞれを解決するための一定の思考手順としてまとめたものです。


【仕事上で直面する問題状況と、対応する思考手順】

ここでは例として「原因分析の手順」をご紹介いたします。
私たちは日常、原因を究明すべきさまざまな問題に直面します。例えば、今年に入って急にA支店の売上が落ちた、とか、あるいは、ある製品について、品質上のトラブルが発生した・・・など、さまざまなテーマが考えられます。

通常、私たちはトラブルに直面した時、次のような行動をとりがちです。
たとえば、
・トラブルの原因を深く究明せずに、その場しのぎの対策を講じて済ませてしまう
・優先順位も考えず、想定される原因のすべてに対して対策を講じようとする

当然のことながら、根本的な原因が究明されないままだと、再び同様のトラブルに見舞われる可能性があります。また、原因究明を誤り、思いつくままに対策を講じると、それがまた新たなトラブルを生むこともあります。このような事例は最近でも、幾つか散見されます。

原因分析のプロセス(手順)とは、
A.実際に起こっているトラブルの事象(=発生事実)と、
B.本来、同様のトラブルが起きる可能性があるにも関わらず、実際には起きていない事象(=非発生事実)
を比べて、その違いや、変化点を考え、真の原因を究明していくという、効率的な原因究明の思考手順をまとめたものです。


【例:原因分析の手順】

論理的思考力を強くする

論理的思考法の有効なツールの一例として「TM法」について少し触れましたが、本項ではどうしたら論理的思考力を強化することができるのか、考えてみたいと思います。

・論理的思考法を学んだものの、なかなか身につかない
・実際の現場でいざ使おうと思っても、使いこなせない

論理的思考力を「強化する」「うまく使いこなす」ためには、基本的なポイントとして、以下の2点が挙げられます。

1.常に意識する
2.繰り返し使う

“常に意識する”とは、各思考のステップに従って、「より深く、広く考える」「分けて考える」「筋道を立てて考える」ということを意識して行なうことであり、問題に直面したときに、すぐ行動に移るのではなく、ちょっと立ち止まって“意識して”考えてみる、ということです。
また、思考力を鍛えるということは、まさに筋力トレーニングと同じで、学んだフレームや思考手順などのツールを「意識して」「繰り返し」使ってみることで、ようやく自分で「使える」スキルになるといえます。
「習い、慣れて、習慣化する」 それが思考力向上のポイントなのです。

現在のような変化の激しい状況下では、ただでさえ目の前のことに追われがちです。日頃から「意識して考える」ことをしていなければ、いざ根本原因や、本質的な課題を考えようとしても、単なる対処療法の範囲にとどまってしまう可能性があります。
最近、ニュースでたびたび取り上げられる多くの事件・事故も、「何が問題なのか」「自社では同様のリスクを抱えていないのか」といった視点から捉えようとする人と、そうでない人では、結果として問題解決力に大きな差がついてしまうのです。

社会や企業を取り巻く環境の変化につれ、組織や個人に対する今日的要請も常に変化しています。
将来を見通し、時代の要請に応えていくためには、まず一人ひとりが先人の智恵ともいうべき「思考法」を身につけ、常に主体的に考える姿勢が望まれます。「思考法」のトレーニングはまさにそのスタートラインともいえるでしょう。

弊社の提供するさまざまなトレーニングプログラムが、個人が力を発揮するうえでのベースとなる能力開発に役立つものであり、ひいては個人の成長支援につながるものとして、皆様のご期待にお応えできれば誠に幸いです。

※以下に思考法に関する各種プログラムについて、ご参考までに挙げてみました。ぜひあわせてご参照ください。

【思考法・コンセプチュアルスキルに関するプログラム】
※下記は「リクルートマネジメントスクール」のサイトへ遷移します。

問題解決・意思決定手法を学ぶシンキングマネジメント法(TM法)【通い2日】
ロジカルシンキングのノウハウ・ドゥハウ(問題解決に必要な3つの思考法と3つのツールを身につける実践的ロジカルシンキング研修)【通い2日】
使える!ロジカルシンキング 〜“わかりやすさ”のための3つの基本思考〜【3時間】
プロジェクトマネジメント標準 10のステップ【通い2日】


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