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組織行動研究所セミナー開催報告

働く人々の将来展望とキャリア自律 ~「2040年の『働く』を考えるプロジェクト」からわかった12のこと~

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  • 公開日:2026/05/11
  • 更新日:2026/05/11
働く人々の将来展望とキャリア自律 ~「2040年の『働く』を考えるプロジェクト」からわかった12のこと~

2026年2月6日、組織行動研究所セミナー【働く人々の将来展望とキャリア自律 ~「2040年の『働く』を考えるプロジェクト」からわかった12のこと~】を開催しました。

2040年は、今から14年後です。そのとき、働き方は変化しているのでしょうか。AIやロボットは、どのくらい私たちの仕事を代替しているでしょうか。「働く」ことの重要性は変わらないのでしょうか。地球温暖化はさらにひどくなっているでしょうか、それとも改善しているでしょうか。未婚率の上昇、少子化の傾向はこのままなのでしょうか。健康寿命は伸びているのでしょうか。いくつまで働くのが当たり前になるのでしょうか。皆さんにとって、未来は明るいのでしょうか。人事やキャリアコンサルタントはどのようにあるべきでしょうか。

そのような問題意識のもと、私たちは2023年から、特定非営利法人キャリアカウンセリング協会と共に「2040年の『働く』を考える」プロジェクトを行いました。本セミナーでは、このプロジェクトを通して講師の古野が考察した「12のこと」をお話ししました。本記事では、その12のことを中心に、セミナーの内容を端的にお伝えします。

※なお、「2040年の『働く』を考える」プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
2040年の「働く」を考えるプロジェクト(特定非営利法人キャリアカウンセリング協会)


講師プロフィール
古野 庸一(ふるの よういち)
組織行動研究所 主幹研究員

1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルートに入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。
キャリア開発に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、ワークス研究所にてリーダーシップ開発、キャリア開発研究に従事。2009年より組織行動研究所所長、2024年より現職。


1 官公庁の描く「あるべき社会イメージ」
2 雇う側から雇われる側へのパワーシフトが起こり、「個人側の事情を配慮した人事施策」がより増えていく
3 ワークとライフの距離は縮まり、境界線は曖昧になる
4 AIやロボットによって、仕事がどのように変わるか予想するのは難しい
5 70歳を過ぎても働くのは当たり前になっていく。歳を重ねると仕事観が変わっていき、新しい動機づけが必要となる
6 自然発生的なつながりは減少し、「意図的なつながり」をつくる時代へ
7 多様性のマネジメントは必然
8 「社会は変化するけど、自分は動かない」という人は多い
9 キャリアのための行動や学習を促進させるのは「自己理解」と「未来への関心」である
10 「明るい未来」があることが何らかの行動を促進させる
11 「明るい未来」だと思えないと、人生に満足できない
12 自己理解や未来展望形成の支援を行うことによって、キャリア行動の促進や人生満足度の向上に関与できる

1 官公庁の描く「あるべき社会イメージ」

官公庁をはじめとした多くの機関で、未来を予測する取り組みが行われています。例えば、総務省「2030年代に実現したい未来の姿」、厚生労働省・未来イノベーションワーキンググループの取り組み、文部科学省「科学技術予測調査」などがあります。

これらを読んで分かったのは、官公庁は、未来予測というよりも、現状課題や今後の技術発展などを考慮したうえで「あるべき社会イメージ」を描いている、ということです。そして、彼らはその社会イメージに沿って政策を行うのです。つまり官公庁は、「未来は予測するものではなく、創るものである」と考えているわけです。

具体的には、彼らはあるべき社会イメージとして、医療技術の発展による健康寿命の延伸、脱炭素化や資源循環の進展による持続可能社会への転換、AI・ロボットの進展による産業や仕事の変化、バーチャル空間の拡大による生活の多様化、多様性・包摂性などの自分らしさの尊重(人間尊重)、新たなつながりの創出などを提示しています(文部科学省, 2019, 「第11回科学技術予測調査」)。

2 雇う側から雇われる側へのパワーシフトが起こり、「個人側の事情を配慮した人事施策」がより増えていく

私は「2040年の『働く』を考える」プロジェクトのなかで、「視点1 人口動態」「視点2 技術の発展」「視点3 社会課題」「視点4 価値観の変化」の観点から「2040年の『働く』を取り巻く環境」について考えました。

「視点1 人口動態」に関しては、リクルートワークス研究所の『未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる』(2023)が示唆を与えてくれます。2040年に向けて、生産年齢人口は急減し(7170万人→5978万人)、65歳以上人口は微増すると予測されています(図表1)。その結果、2040年に向けて、1000万人以上の労働者が足りない状況になるといいます(図表2)。今でも人材不足ですが、より深刻化するのです。

このようなデータを受けて、リクルートワークス研究所は4つの解決策を提示しています。
(1)徹底的な機械化/自動化
(2)ワーキッシュアクト(副業、兼業、ボランティア、プロボノなどを楽しみながら行う)
(3)シニアの小さな仕事
(4)企業内のムダをなくしていく

以上の話を受けて、私が感じたのは、これからは人材不足が深刻化することで、「雇う側から雇われる側へのパワーシフト」が起こり得るだろうということです。その結果、「個人側の事情を配慮した人事施策」が増え、ワーキッシュアクトなどが多くなると考えます。

図表1:15~64歳人口と65歳以上人口の推移

図表2:労働需給シミュレーション

3 ワークとライフの距離は縮まり、境界線は曖昧になる

また、急速な人手不足を背景に、個人が行う本業以外の仕事や活動において他者への貢献や社会ニーズを満たす活動が増えるとワークとライフの距離は縮まり、その境界線が曖昧になるでしょう。

例えば、地域住民が社会インフラを自分たちで守るような取り組みです。千葉県には、道路が傷んでいる、公園の遊具が壊れているといったことを市民が自治体にレポートする「ちばレポ」という仕組みがあるのですが、今後は同じように、これまで誰かが担っていた仕事の一部を生活者が行うような例が増えるに違いありません。趣味の延長が仕事になるようなことも増えるはずです。

4 AIやロボットによって、仕事がどのように変わるか予想するのは難しい

「視点2 技術の発展」に移ります。図表3図表4は、2015年に予想されたAIやロボットなどによる「代替可能性が高い100職種」「代替可能性が低い100職種」です。10~15年後の代替可能性を予測したものですが、11年後の今、これを検証すると、当たっているものと当たっていないものとよく分からないものが混在していることが分かります。

代替可能性が高い100職種のなかには、まだ代替されていない職種、人が足りていない職種がいくつもあります。例えば、「警備員」「建設作業員」「タクシー運転者」「宅配便配達員」「ホテル客室係」などがそうです。一方で「受付係」「銀行窓口係」など、AIやロボットによる代替がかなり進んでいる職種もあります。

代替可能性が低い100職種のなかには、「アナウンサー」「俳優」「フリーライター」など、代替される可能性がある職種も見られます。「外科医」「小児科医」「内科医」などの医師の仕事は、簡単にはなくならないでしょうが、AIやロボットによって仕事内容が変わることは十分に考えられるでしょう。

このデータを見る限り、AIやロボットによって、仕事がどのように変わるか予想するのはかなり難しいようです。今、私たちが予測したところで、2040年にどの職種がなくなったり内容が変わったりするのかを当てることはできないでしょう。

図表3:代替可能性が高い100職種(50音順)

代替可能性が高い100職種

図表4:代替可能性が低い100職種(50音順)

代替可能性が低い100職種

5 70歳を過ぎても働くのは当たり前になっていく。歳を重ねると仕事観が変わっていき、新しい動機づけが必要となる

「視点3 社会課題」に関していえば、70歳を過ぎても働くのは当たり前になっていくでしょう。なぜなら、少子高齢化が一層進み、国内総生産に比して、社会保障給付費の負担がますます重くなっていくからです。高齢者に社会を支える側になってほしいという圧力は、今後強くなると考えられます。

実際、すでに70歳の就業率は年々高まっています。2010年は男性35.4%、女性20.0%でしたが、2020年には男性45.7%、女性29.4%と、男女ともに10ポイント近く増えています(総務省統計局『平成22年(2010年)国勢調査』『令和2年(2020年)国勢調査』)。今後はさらに高まることが予想できます。

一方で、50代から仕事観は大きく変わることも分かっています。高い収入や栄誉を求める人が減り、「他者への貢献」「体を動かすこと」「仕事からの体験」「生活との調和」「能力の発揮」などを重視するようになるのです(坂本貴志, 2022, 『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』講談社現代新書)。歳を重ねると仕事観が変わっていきますから、新しい動機づけが必要となります。

6 自然発生的なつながりは減少し、「意図的なつながり」をつくる時代へ

社会課題の1つが「つながりの変化」です。職場でも近隣でも、人間関係は希薄化しています。未婚率の上昇と共に、単独世帯が増加傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所によれば、単独世帯は2020年の38.0%から、2040年には43.5%に上昇すると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所, 2024, 『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』)。またひきこもり状態にある人は、現在すでに全国で約146万人に上っており、その理由の21.5%は「退職」です(内閣府, 2023, 『こども・若者の意識と生活に関する調査』)。このような状況は、今後ますます深刻化していく恐れが十分にあります。こうした状況を受け、国は2021年、内閣官房に孤独・孤立対策担当室を設置しました(現在は『内閣府孤独・孤立対策推進室』に改編)。

以上を踏まえて、これからの人事やキャリアコンサルタントに求められる役割の1つは、つながり弱者を見つけて支援する「おせっかい役」になることや、人々がすでに所属している場所の「居場所感」を醸成すること、さまざまなソーシャル・サポート(情報提供や受容・共感など)を実施することになるでしょう。このように良いつながりを生み出すことで、社員や人々の健康や幸福感を高め、キャリア形成を促進していくのです。

7 多様性のマネジメントは必然

最後に「視点4 価値観の変化」です。企業にとって、多様性のマネジメントは今後ますます必然となります。人材不足が予測されるなか、女性、性的マイノリティ、高齢者、外国人、障害者など、多様な属性の人と働くことが一般的になるからです。また、家事や介護などのさまざまな理由で100%仕事に注力できない人も増加します。さらに組織から個人へパワーシフトが起こると、個々人の価値観や事情を考慮する場面も増えるでしょう。

8 「社会は変化するけど、自分は動かない」という人は多い

私たちは、「2040年の『働く』を考える」プロジェクトに合わせて、「2040年働き方イメージ調査」を実施しました(図表5)。ここからは、調査で分かったことを5つ紹介します。

最初に紹介するのは、「社会は変化するけど、自分は動かない」という人が多いことです。図表6を見ると、それは一目瞭然です。将来予測として「増える」と答えている人はいずれも多いのですが、自分が「希望する」人は総じて少ないのです。これは困ったことです。人々の行動を促す方法を考える必要があるでしょう。

図表5:「2040年働き方イメージ調査」概要

図表6:2040年の将来予想と自身の希望の比較(ギャップが大きい順)

9 キャリアのための行動や学習を促進させるのは「自己理解」と「未来への関心」である

次に紹介するのは、キャリア自律に関するデータです。私たちは今回、キャリア自律度を「自己理解」「未来への関心」「キャリアの責任」の3つに分けて計測しました。その結果分かったのは、キャリアのための行動や学習を促進させるのは「自己理解」と「未来への関心」だということです。

図表7が示しているのは、5年後の具体的なイメージがある人の方が、キャリア自律度が高いということです。キャリア自律と未来への関心につながりがあることが分かります。図表8が示しているのは、キャリアのための行動・学習をしている人の方が、キャリア自律度が高いということです。そして、自己理解と未来への関心はキャリアのための行動・学習を促進しますが、キャリアの責任はキャリア行動・学習とは関係がないのです。

つまり、キャリア行動やキャリア学習の後押しとなるのは、自分の得意なこと、好きなこと、大事にしていることなどが分かっていること(自己理解)と、自分の将来に興味を持ち、チャレンジしたいことや今後の生き方などを考えること(未来への関心)なのです。

図表7:【キャリア自律高低別】5年後の具体的なイメージがあるか

図表8:【キャリア自律高低別】キャリアのための行動・学習をしているか

10 「明るい未来」があることが何らかの行動を促進させる

図表9は、明るい未来とキャリア自律行動について質問した結果です。このデータで特筆すべきことは、「自分の未来は明るいと思う」にYES(肯定回答)と答えた人たちは、「自分の未来のために、現在何かをしようと思う」にYESと答える割合が他よりも高く(20.1%)、NO(否定回答)と答える割合が他よりも低い(1.1%)ことです。特に、「自分の未来は明るいと思う」にNOと答えた人たちとの差は明らかです。

つまり、「明るい未来」があることが、何らかの行動を促進させるのです。このことは、今後の人事施策などを考えるうえで重要な観点の1つではないかと思います。

図表9:明るい未来とキャリア自律行動

11 「明るい未来」だと思えないと、人生に満足できない

図表10は、明るい未来と人生満足度の関係を示すデータです。このデータから分かるのは、「自分の未来は明るいと思う」にYES(肯定回答)と答えた人は、「自分の人生に満足している」にYESと答える人の割合が高く(18.4%)、NO(否定回答)の人が少ない(5.6%)ことです。「自分の未来は明るいと思う」にNOと答えた人とは対照的です。

つまり、私たちは「明るい未来」だと思えないと、人生に満足できないのです。私たちは今、何とかして未来の明るさを示すことを求められているのかもしれません。

図表10:明るい未来と人生満足度の関係

12 自己理解や未来展望形成の支援を行うことによって、キャリア行動の促進や人生満足度の向上に関与できる

以上をまとめると、人事やキャリアコンサルタントの皆さんは、人々の自己理解や未来展望形成の支援を行うことによって、キャリア行動の促進や人生満足度の向上に関与できるといえるでしょう。動物行動学者のジェーン・グドール氏は、『希望の教室』(海と月社)のなかで「行動するには希望が必要だし、行動すれば、もっと希望を生み出していける」と語っています。まずは自己理解や未来展望につながる行動を生み出すことが、希望を大きくしていくことになるはずです。

また、経済学者の玄田有史氏は『希望のつくり方』(岩波新書)のなかで、「最初は希望がないと思い込んでいた人も、丹念に時間をかけて考えていくと、奥底から自分自身の希望に出会うことも多いようなのです」「過去から現在にかけて、自分なりの物語があるとき、その物語を手がかりに未来をどう生きるのかというヒントを得ることができます」と書いています。人事やキャリアコンサルタントの皆さんには、今こそ、人々に寄り添って希望を生み出していくことが求められているのではないでしょうか。

最後にあらためて感じているのは、未来は予測するものではなく、自分たちでつくっていくものだということです。社会も会社も、そして個人も、「こうありたい」という姿を思い描きながら未来を形づくっていくものだと思います。

今は不安が高まり続ける時代ですが、不安そのものを完全になくすことは簡単ではありません。例えばお金をいくら貯めても、不安がすべて消えるわけではないでしょう。

それよりも、「明日はこんなことをしてみたい」「こんなことができたらいい」といった希望を持つことの方が、不安やストレスに向き合う力につながるのではないかと思います。希望を持つと人は動き、行動することでまた新しい希望が生まれる。そうした循環のなかで、不安も少しずつ和らいでいくのではないでしょうか。だからこそ、希望を持ち、未来を自分たちでつくっていくことが大切だと感じています。

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