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組織行動研究所セミナー開催報告

職場の相互フィードバックをうまく進めるポイント ─研究・調査・企業事例から読み解く

  • 公開日:2026/02/24
  • 更新日:2026/02/24
職場の相互フィードバックをうまく進めるポイント ─研究・調査・企業事例から読み解く

2025年11月14日、組織行動研究所セミナー「信頼と成長につながるフィードバック」を開催しました。本記事ではその内容を端的にお伝えします。

職場ではさまざまな場面・方法で「フィードバック」が行われてきました。昨今は1on1や多面評価などの施策の導入が進み、フィードバックの場面はさらに増えると共に多様化しています。

しかし、「パワーハラスメントと捉えられかねない」「年上のメンバーにものをいうのは気が引ける」など、さまざまな理由によりフィードバックに難しさを感じている人も少なくありません。また一方で「伝えたつもりが響かない」「励ますつもりが落ち込ませてしまった」、もう一方では「お節介な口出しをされた」「率直なコメントに傷ついた」など、話し手の意図と相手の受け止め方にズレが生じるなどの悩みを抱える方もいます。

このセミナーでは、産業や教育の分野で蓄積されてきた最新の実践と知見を基に、お互いの成長や意欲を引き出したり、組織全体の信頼関係を育んだりするためのフィードバックの在り方を探りました。


入江 崇介

講師プロフィール
入江 崇介(いりえ しゅうすけ)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 研究主幹

2002年HRR入社。アセスメント、トレーニング、組織開発の商品開発・研究に携わり、現在はリーダーシップや人事データ活用の研究に従事する。
日本学術会議協力学術研究団体人材育成学会常任理事。一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会上席研究員。昭和女子大学非常勤講師。新たな公務員人事管理に関する勉強会委員。


新規タスク習得のケースでは、具体的なフィードバックが好奇心や探索行動などをかえって阻害する
上司に「コーチングマインド」があれば、フィードバックの質が高まり、相互理解や信頼関係にも良い影響がある
フィードバック文化醸成や定着のために、日常的なフィードバックを徹底して行う
心理的安全性が高い職場は、初心者からベテランまで、皆がフィードバックを得やすい
フィードバックの難しさに直面し、なかなかフィードバックできない人も多い
職場にフィードバックを定着させるための4つのポイント

新規タスク習得のケースでは、具体的なフィードバックが好奇心や探索行動などをかえって阻害する

「フィードバック研究の現在地」を俯瞰するところから始めましょう。

フィードバックは、大きく6つの側面に分類することができます(図表1)。

<図表1>フィードバックの6つの側面

フィードバックの6つの側面

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)フィードバック研究の現在地―学術研究から実務への架け橋
Anseel & Sherf(2025)を基に作成

1つ目は「1回限りのイベントとしてのフィードバック」です。例えば、一度きりの新たなタスクを行い、「あなたは上位20%でした」などと結果を伝える際のフィードバックのことです。この場合は、ネガティブよりポジティブな方がよいといわれています。

2つ目は「新規タスク習得としてのフィードバック」です。ある業務の初心者に対して、必要なスキルを身につけてもらうために行うフィードバックのことです。このようなケースで相手の学習を促進するためには、内容が具体的でないこと、頻度が低いこと、タイムリーでないことが大切です。反対に、具体的なフィードバックは好奇心や探索行動などを阻害することが分かっています。最初の段階では、なぜできなかったか、なぜうまくいかなかったのかといったことを考えながら、楽しく取り組んでもらい、興味をもってもらうことが大切なのです。また、この段階で他者と比較すると、パフォーマンスが低下する傾向があります。

3つ目は「360度評価プログラムとしてのフィードバック」です。この場合は、コーチングやワークショップを通して行うと効果が高まります。360度評価の結果を1人で正しく読み取るのは難しく、コーチや講師の読み取りサポートが役に立つのです。また、360度評価の場合は、具体的に伝える方が行動改善につながりやすいことが分かっています。

4つ目は「職場における日常的なフィードバック」です。上司や先輩などからのフィードバックは、改善への動機づけを促進し、仕事関連の行動へのコミットメントを高めることが明らかになっています。

5つ目は「面談場面でのフィードバック」です。年次評価面談などのフィードバックでは、基本的に受け手が抵抗感を抱きがちですが、フィードバックの内容の質が高く、公平でインタラクティブであれば、抵抗感が軽くなることが分かっています。

6つ目は「創造的アイディアに関する対話としてのフィードバック」です。クリエイティブな対話では、提供者と受け手が一緒に意味づけすることで学びが進みます。また、この種のケースでは、ネガティブフィードバックがむしろ効果的で、受け手のモチベーションを高めてアイディアの改善につながる可能性があることが分かっています。

上司に「コーチングマインド」があれば、フィードバックの質が高まり、相互理解や信頼関係にも良い影響がある

次に、具体的なフィードバック研究の成果をいくつか紹介します。

フィードバック研究には「効果のバラツキ」の研究が多くあります。フィードバックは一律にポジティブな結果をもたらすわけではなく、「どのような場面で」「どんな内容を」「どんな人から(もしくは人ではない仕組みから)」行うかといったことによって、その効果が変わるのです。つまり、「時と場合」に左右されるのです。

こうしたフィードバックの特徴を体系化したのが、学校教育領域で提案された「MISCAモデル」です(図表2)。このモデルでは、メッセージ(Message)、実行(Implementation)、学習者(Student)、文脈(Context)、エージェント(Agents)の5つの要素間に交互作用(interaction)があり、フィードバックの受け手である学習者(Student)が中心だと考えます。このモデルを踏まえると、5つの要素が絡み合うことで、フィードバック効果にバラツキが出る理由がよく理解できます。

<図表2>MISCAモデル

MISCAモデル

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)フィードバック研究の現在地―学術研究から実務への架け橋
Panadero and Lipnevich(2022)Fig.5を基に作成

また、パーソナルコーチングが機能するプロセスを研究する青柳健隆氏(関東学院大学経済学部教授)は、図表3のようなモデルを提示しています。青柳氏は、コーチ自身が受け手の可能性を信じ、受け手に好奇心をもち、評価や判断をせずに、正直かつ率直に、受け手主体で接する「コーチの在り方=コーチングマインド」が極めて大切だといいます。上司は、部下一人ひとりを主人公だと考え、一人ひとりの可能性を信じ、興味をもって接してみると、フィードバックの質が高まり、相互理解や信頼関係にも良い影響があるはずだといいます。

<図表3>パーソナルコーチングが機能するプロセス

パーソナルコーチングが機能するプロセス

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)上司の「在り方」が変わればフィードバックの質は高まる
青柳健隆(2020).パーソナルコーチングが機能するプロセス:コーチの体験に基づくモデル生成 支援対話研究 6, 17-29.を基に青柳氏が作成した資料

フィードバック文化醸成や定着のために、日常的なフィードバックを徹底して行う

以上を踏まえて、企業事例を1つ紹介します。株式会社コンカーの事例です(弊社コーポレイトサイト(2025)「高め合う文化」を醸成するためにフィードバックを徹底)。全世界で1億人以上が利用し、日本でも11年連続トップシェアの出張・経費・請求書管理ソリューションを提供する会社です。コンカーは、数字のみを追い求める悪しき業績至上主義から脱却するため、2013年から、働きがい重視を打ち出すと共に、フィードバックし合う文化、感謝し合う文化、教え合う文化の3つで構成される「高め合う文化」を醸成し、このような文化や価値観に合う人材採用を心がけてきました。

具体的には、「フィードバックなくして成長なし」「No Feedback, No Concur」の合言葉のもと、全社員が約5~6時間の独自の研修を受講し、誰もが日常的なフィードバックを徹底して行っています。

8~9割は相手との関係性をつくるためのポジティブフィードバックにして、弱点や課題を指摘するギャップフィードバックは1割程度でよい、というのがコンカーの考え方です。また、上司から部下への一方通行ではなく、全方向へのフィードバックを推奨しています。こうした取り組みの芯には、「相手の成長を願う」心があります。

研修では、フィードバックを素直に受け取る力「コーチャビリティ」を伸ばすコンテンツも取り入れているといいます。耳に痛い言葉をどうやって素直に受け止めたらいいのかを知り、自分からフィードバックを求めて成長していこうという考えです。

それから、フィードバック文化醸成や定着のために、人事の皆さんは、2種類のモニタリング調査、「MVF(Most Valuable Feedbacker)」の表彰、タウンホールミーティング、パルスチェックなどのさまざまな施策を用意しています。2025年3月からは、リモートワークでの高め合う文化醸成のために、いろいろな部署の人同士で交流する「巡り会い」という新たな取り組みも始めています。

心理的安全性が高い職場は、初心者からベテランまで、皆がフィードバックを得やすい

私たちは、2025年に「職場におけるフィードバック実態調査」を実施しました。その結果の一部を報告します。

フィードバックの頻度は、「上司からのフィードバック」は、管理職・一般社員ともに5割半ばから約6割の人が得ており、「同僚・部下からのフィードバック」は良い内容は約5割、悪い内容は4割半ばの人が得ていました(図表4)。面白いのは、管理職は、一般社員よりも「同僚・部下からのフィードバックは役立っている」と感じる傾向がある(役立っていると感じる管理職66.1%、一般社員58.2%)ことです。この後のデータでもいえることですが、管理職の皆さんは、全般的に一般社員よりもフィードバックの扱いが上手な人が多いようです。

<図表4>上司からのフィードバック・同僚‐部下からのフィードバック(管理職・一般社員別)

上司からのフィードバック・同僚‐部下からのフィードバック(管理職・一般社員別)

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

図表5は、「職場の心理的安全性の高低×仕事経験の高低」でフィードバックの受け取りの偏りがあるかを整理した回答結果です。心理的安全性が高い職場の人たちは、フィードバックを受け取っている機会や納得感・役立ち感など、全体的に選択率が高くなっていました。自分の考えや気持ちをお互いに安心して発信できる職場は、初心者からベテランまで、皆がフィードバックを得やすいのだと推測できます。一方で、心理的安全性が低い職場の場合、仕事経験の低い人たちが高い人たちよりもフィードバックを常に多く得ていました。心理的安全性が低い職場は、経験を積むにつれてフィードバックを得にくくなるのです。

<図表5>フィードバックの受け取りの偏り(仕事経験の高低別・職場風土の影響)

フィードバックの受け取りの偏り(仕事経験の高低別・職場風土の影響)

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

図表6は、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの効果を調べた結果です。この結果から分かるのは、「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの両方が揃っている(ポジHネガH)と最も効果的だ」ということです。

<図表6>ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックの効果

ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックの効果

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

フィードバックの難しさに直面し、なかなかフィードバックできない人も多い

増えてほしいフィードバックは、第1位が管理職・一般社員ともに「より実践的なフィードバック」で、特に管理職は50.4%と半数を超えていました(図表7)。フィードバックを生かすための能動的働きかけは、「フィードバックをもらえるよう、積極的に周囲に働きかけている」人が2割から2割半程度と多くありませんでした(図表8)。また、「もらったフィードバックのうち、どれを利用するかは、自分で判断している」と回答した割合は管理職が49.2%、一般社員は39.4%と管理職の方が高く、やはり管理職の方がフィードバックの扱いが上手でした。

<図表7>増えてほしいフィードバック

増えてほしいフィードバック

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

<図表8>フィードバックを生かすための能動的働きかけ

フィードバックを生かすための能動的働きかけ

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

フィードバックの提供については、上司など立場が上の人に対するフィードバック、同僚・部下へのフィードバックのいずれも管理職の方が有意に高いのですが、それでも5~6割と決して高い数値ではありませんでした(図表9)。また、管理職の41.1%、一般社員の32.6%が「良かれと思ったフィードバックが、悪い結果につながった経験がある」と回答しています(図表10)。

<図表9>フィードバックの提供

フィードバックの提供

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

<図表10>フィードバック提供の難しさ・うまくフィードバックするための工夫

フィードバック提供の難しさ・うまくフィードバックするための工夫

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2025)職場におけるフィードバック実態調査

図表8~10のデータからは、フィードバックの難しさに直面し、フィードバックできない人やフィードバックをもらいに行けない人が多くいることが見えてきます。

それから、職場のなかで皆がお互いにフィードバックし合うことが、共に成長する鍵となることが窺えるデータがありました。全員分のデータで成長感を目的変数とした重回帰分析を行ったところ、フィードバックの受け取り(上司からのフィードバック、同僚・部下からのフィードバック)とフィードバックの積極的な提供の両方が、成長感に有意に関連していたのです。

職場にフィードバックを定着させるための4つのポイント

最後に、職場にフィードバックを定着させるための4つのポイントを紹介します。1つ目は、「フィードバックは相手のためであり、同時に自分のためである」という意識を醸成することです。職場の皆さんに、相手の成長や幸せのためにフィードバックしてもらいましょう。そうすることで、フィードバックされる人だけでなく、する人や目撃する人にも良い効果があります。また、自分がフィードバックすることで、相手からフィードバックが得られるようになるのです。

2つ目のポイントは「フィードバックのハードルを下げる」ことです。職場の皆さんに、良い点や改善点の指摘だけでなく、相手のありのままを伝えることや感謝や称賛も、すべてフィードバックであることを理解してもらいましょう。そうすれば、皆がフィードバックしやすくなるはずです。

3つ目は、「フィードバックし合える土壌をつくる」ことです。職場のなかで、日ごろから自分の意見や気持ちを素直に表現できる場づくりを進めてみてはどうでしょうか。フィードバックの仕組み化・日常化や、自らフィードバックを求める行動なども効果的です。

4つ目は、「フィードバックの不安を払拭する」ことです。職場内で誰からするか、どのようにするか、いつするかなどに配慮すると、フィードバックしやすくなり、受け取りやすくなるでしょう。また、フィードバックを通じた成長の実感や、フィードバックへの感謝を表明する機会を用意してもよいかもしれません。

以上の知見やデータが、皆さんのフィードバック文化の醸成に役立つことを願っています。

【Text:米川春馬】

※記事の内容および所属等はセミナー発表時点のものとなります。

この記事で引用した調査

職場におけるフィードバック実態調査

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