連載・コラム
働く人の本音調査2025 第1回
あなたは、どんな評価や組織風土なら年収に満足しますか? ―20代と30~50代の違いと共通点 ―
- 公開日:2025/07/29
- 更新日:2025/07/29

私たちリクルートマネジメントソリューションズは、60年以上にわたり人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を生かし、働く皆さんの意識・特性を多角的に捉えるチャレンジをしています。昨年度の『働く人の本音調査2024』(第1回、第2回、第3回、第4回)に引き続き、今年度も『働く人の本音調査2025』を実施し、働く人たちがマネジメントについてどのような希望をもち、マネジメントの実態をどのように捉えているか、などを広く質問しました。その調査結果を数回に分けて紹介します。
第1回は、年収の満足度にまつわる分析です。6月頃にボーナスを支給する会社も多く、今の時期は「現在の年収に満足しているか?」と自分に問いかける人も多いのではないでしょうか。今回の調査では「評価してほしい観点の年代差」と「組織風土との相性(組織フィット度)」が、年収の満足度と関係することが明らかになりました。とくに注目すべきは、年代によって“何を評価されたいか”が異なるという点です。20代と30~50代で、それぞれ評価に求める観点が違い、その違いが年収の満足度と関係していました。あなたは「自分の仕事が、正しく評価されている」と思えていますか? そして「今の組織風土は自分に合っている」と感じられていますか?
※本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび従業員規模別や年代別などの各種属性別集計データを開示しています。
ご希望の方は、「働く人の本音調査2025 第1回のオープンデータ希望」と明記の上、「お問い合わせ」より資料請求ください。【8月29日までの期間限定】
- 目次
- 上の年代ほど年収の満足度は高い
- 20代は「個人での成果を見てほしい」という思いが年収の満足度を左右
- 30~50代は年収の満足度を左右する観点が、20代と比べて多岐にわたる
- 組織風土との相性が良いほど、年収の満足度も高い
- 年収の満足度を高める鍵は「年代ごとの評価の実感」と「組織風土との相性」
上の年代ほど年収の満足度は高い
まず気になるのは「今の年収に満足している人」が、実際どれほどいるのかという点です。『働く人の本音調査2025』では、20~50代を対象に年収の満足度を尋ねました。図表1では、年代別に年収の満足度を比較しています。全体の傾向として「上の年代ほど年収の満足度は高い」という結果が見えてきました。
<図表1>「あなたの今の仕事や会社に関する考えについてお聞きします。選択肢のなかから最も近いものを1つ選んでください。/今の年収に満足している」の年代別の回答結果

一見すると、年齢と共に収入が上がることが影響しているようにも思えますが、調査を深掘りするとそれだけではありませんでした。「自分が評価されたい観点で評価されているか」「今の組織風土は自分に合っているか」といった納得感が、年収の満足度を左右する鍵になっていそうです。そのことを裏づけるのが、次の図表2の結果です。図表2では、評価の観点や評価の反映内容、賃金制度に関して「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致しているかどうかを分類し、年収の満足度を比較しています。表2の5つの観点に対して、いずれも「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致している場合、一致していない場合と比べて年収の満足度は高い傾向にあるようです。
<図表2>本人の希望と会社の実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較

図表2では、以下の①~⑤に対し「どちらを重視してほしいか」「実際にどちらが重視されているか」についてそれぞれ回答し、両者が一致していれば“一致群”、一致していなければ“不一致群”としています。
① 評価:挑戦 vs 安定(「A.新しいことへの挑戦」と「B.定形業務を安定的に進めること」)
② 評価:結果 vs プロセス(「A.結果」と「B.プロセス」)
③ 評価:個人成果 vs 組織成果(「A.個人成果(個人であげた成果)」と「B.組織成果(個人の成果を合算したチーム全体の成果)」)
④ 評価反映:給料 vs 仕事の機会(「A.給料(月給や賞与の増減)」と「B.仕事の機会(希望する仕事が任されたり、異動希望が叶うこと)」)
⑤ 賃金:変動 vs 安定(「A.上がりやすいが下がりやすくもある」か「B.上がりづらいが下がることもめったにない」)
また、図表2以降の年収の満足度のスコアは「あなたの今の仕事や会社に関する考えについてお聞きします。選択肢のなかから最も近いものを1つ選んでください。/今の年収に満足している」の質問に対する回答をもとに算出しています。「あてはまる」を5点「どちらかといえばあてはまる」を4点「どちらともいえない」を3点「どちらかといえばあてはまらない」を2点「あてはまらない」を1点としています。
20代は「個人での成果を見てほしい」という思いが年収の満足度を左右
次に、20~50代の年代別で、評価の観点や評価の反映内容、賃金制度に関して「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致しているかどうかを分類し、年収の満足度を比較してみました。年代別で見ていくと、20代と30~50代で傾向に違いがあり、30~50代は比較的近い傾向にありました。以下では、20代と30~50代で傾向の違いに着目しています。
図表3では、20代の回答者に対して、評価の観点や評価の反映内容、賃金制度に関して、「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致しているかどうかを分類し、それぞれの年収の満足度を比較しています。図表3では、特に「A.個人成果(個人であげた成果)」と「B.組織成果(個人の成果を合算したチーム全体の成果)」のどちらの観点で評価して欲しいかの希望と実態の一致/不一致で、年収の満足度のスコアに最も差がありました。
次に図表4では、「A.個人成果(個人であげた成果)」と「B.組織成果(個人の成果を合算したチーム全体の成果)」で、希望する評価観点に対する実態の一致/不一致別の4群に分けて、年収の満足度のスコアを比較しました。本人の希望と実態で、評価観点が「A.個人成果(個人であげた成果)」で一致している場合に、年収の満足度のスコアは2.66ポイントと最も高いことが分かりました。逆に、本人の希望が「A.個人成果(個人であげた成果)」で、実態が「B.組織成果(個人の成果を合算したチーム全体の成果)」と評価観点が不一致の場合、年収の満足度のスコアは2.39ポイントと最も低いことが分かりました。
20代では「自分の頑張りがきちんと見られているかどうか」が年収の満足度に強く関係していました。特に「個人の成果を見てほしい」という希望に対して、実際に受けている評価が「チーム成果重視」であるというズレがあると、満足度が低くなる傾向にあります。示唆されるのは、20代にとって「自分の努力や成果が周囲から評価されているかどうか」が年収への納得感に直結している可能性がある点です。この年代は、まだキャリアの初期段階にあり、自身の貢献がしっかり認識され、適切に報われているという実感を求めているケースもあります。そのため、組織側が「チーム全体で成果を上げること」を評価方針として重視していた場合、若手個人が「自分の成果が埋もれてしまっている」と感じると、不満や不安が生じやすくなります。また、個人の成果に自信がない場合、組織としての成果において自分が足を引っ張っているのではないかと懸念したり、逆に自分の上げた成果が、組織全体の成果とみなされて評価されてしまうことへのフラストレーションを感じたりするような可能性も考えられます。特に20代の社員と関わるマネジャーや人事担当の皆さんには、個人の努力をなるべく“見える化”し、適切に評価のフォードバックできているか、今一度振り返ってみていただければ幸いです。
<図表3>20代で、本人の希望と会社の実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較

※ 質問項目、“一致群”および“不一致群”の分類は、図表2と同様です。
<図表4>20代で、本人の希望「個人成果 vs 組織成果」に対する実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較

30~50代は年収の満足度を左右する観点が、20代と比べて多岐にわたる
次に30~50代で、評価の観点や評価の反映内容、賃金制度に関して「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致しているかどうかを分類し、年収の満足度と比較しています。
図表5より、30~50代では、20代と比べると、年収の満足度を左右する条件が複雑になっていきます。いずれの観点でも、希望と実態の一致と不一致がある場合、ほぼ同程度に年収の満足度に違いが出ています。また図表6の通り、30~50代では、評価の観点や評価の反映内容、賃金制度に関して、社員側の希望と会社実態の一致数の多い方が、年収の満足度も高い傾向にあることが分かります。これは、中堅・ベテラン層の社員においては、評価の観点や評価の反映内容、賃金制度などの複数の側面が互いに連動し、年収への納得感に関係するということを指します。言い換えれば、1つの要素だけが整っていても、他の要素とのバランスにズレがあれば、年収の満足度は高まりにくい可能性があるということです。
30~50代は役割が増え、キャリアの多様性が広がるなかで、年収の満足度を左右する観点が20代に比べると多岐にわたる可能性があります。本人の希望と職場の方針との「重なり」を多くつくることにより、年収の満足度も上がるのかもしれません。マネジャーや人事担当の皆さんには、こうした「重なり」の“数”に目を向ける視点を、ぜひ意識してみていただければ幸いです。
<図表5>30~50代で、本人の希望と会社の実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較

※ 質問項目、“一致群”および“不一致群”の分類は、図表2と同様です。
<図表6>30~50代で、本人の希望と会社の実態の一致数と年収の満足度のスコアの関係性

組織風土との相性が良いほど、年収の満足度も高い
年収の満足度に関係するもう1つの重要な要素が「組織風土との相性(以降、組織フィット度)」です。図表7で示しているように、ここでいう組織フィット度とは、個人のパーソナリティタイプと職場の風土や価値観の一致度合いを指します。パーソナリティタイプは、当社のアセスメントにおける分類を用いており、図表7の左側の4タイプ(象限)を指します。各象限は、上(チャレンジ)⇔下(コツコツ)、左(ウェット)⇔右(ロジカル)により分類されています。創造重視タイプは上(チャレンジ)×左(ウェット)、結果重視タイプは上(チャレンジ)×右(ロジカル)を、調和重視タイプは下(コツコツ)×左(ウェット)を、秩序重視タイプは下(コツコツ)×右(ロジカル)です。
<図表7>組織フィット度の説明

図表8は、この組織フィット度の段階別に、年収の満足度を比較したものです。20~50代で年代を問わず、組織風土に「フィットしている」と感じている人ほど、年収に満足している傾向がはっきりと表れました。たとえ給料が高くても「組織の仕事の進め方が肌に合わない」といった不一致があると、年収の満足度が大きく下がる可能性もあります。働く人が自分のパーソナリティとマッチする組織風土でこそ、報酬への納得感は高まりやすいといえるでしょう。このことは、組織側にとっても示唆に富みます。報酬制度の設計や評価の運用に加えて、社員一人ひとりのパーソナリティに応じて「文化とのマッチング」を考慮した採用、組織への配属や異動検討、そして後の組織内におけるフォローに役立つ可能性があります。マネジャーや人事担当の皆さんには、評価や処遇を考えるうえで、社員が「どのような働き方を望んでいるのか」「どのような価値観のもとで働くと満足しやすいのか」といった“個人と組織風土との相性”にも、ぜひ目を向けていただければ幸いです。年収の金額だけでは語りきれない年収の満足感を高める要素が、そこに隠れているかもしれません。
<図表8>組織フィット度別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較

年収の満足度を高める鍵は「年代ごとの評価の実感」と「組織風土との相性」
年収の満足度は「金額」だけでなく「どのように評価されているか」「自分に合った環境で働いているか」によって大きく左右されます。20代では「個人の頑張りがきちんと評価に反映されているか」がポイントとなり、30代以降では、より多面的な希望と実態の一致が求められる傾向にありました。また、どの年代においても、自身の仕事観やスタイルと組織の文化との“フィット感”が、年収の満足度を下支えする重要な要素となっていることが分かります。
今後の人事制度設計においては、こうした「年代ごとの満足の条件」や「評価の手応えを実感できる仕組み」、そして「社員一人ひとりに合った環境づくり」が、これまで以上に重要になるでしょう。画一的な制度ではなく「各年代が何を大切にしているのか」「社員と組織風土との相性はどうか」といった視点を取り入れることで、人材の定着や活躍につながる制度設計が可能になるはずです。
※本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび従業員規模別や年代別などの各種属性別集計データを開示しています。
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調査概要

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