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働く人の本音調査2024 第2回

「どんな人事異動なら、あなたは満足できますか?」

  • 公開日:2024/07/31
  • 更新日:2024/11/06
「どんな人事異動なら、あなたは満足できますか?」

私たちリクルートマネジメントソリューションズは、60年以上にわたり人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を生かし、働く皆さんの意識・特性を多角的に捉えるチャレンジをしています。2023年の『一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査』(第1回第2回第3回)に続いて、今回は『働く人の本音調査2024』を実施し、働く人たちがマネジメントについてどのような希望を持ち、マネジメントの実態をどのように捉えているか、などを広く質問しました。その調査結果を数回に分けて紹介します。第1回はお金・機会・人間関係にまつわる分析でしたが、第2回の分析テーマは「人事異動」です。どんな人事異動なら、あなたは満足できますか?

※本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび各種属性別集計データなどをオープンデータとして開示しています。ご希望の方は、「お問い合わせ」よりお問い合わせください。【8月30日までの期間限定】~受付は終了いたしました~

自分の希望に沿った異動をしている人は少ないが、直近の異動に満足している人は半数近い
本人の希望と志向をきちんと考慮すれば、異動満足度は高まる可能性が高い
異動先の人間関係が良ければ、異動満足度はやはり高まる
本人が意図しない異動がキャリア形成のターニングポイントになる可能性がある

自分の希望に沿った異動をしている人は少ないが、直近の異動に満足している人は半数近い

最初に、異動回数を勤続年数別に見てみましょう(図表1)。入社9年目までに、半数以上が何らかの異動を経験しています。入社10年以上の場合、実は約3割は一度も異動を経験していませんが、一方で4回以上異動した人も30%を超えています。異動回数には個人差があることが分かります。

<図表1>あなたの勤務先の会社における異動(組織や仕事、職種の変更)の回数を教えてください

あなたの勤務先の会社における異動(組織や仕事、職種の変更)の回数を教えてくださいの回答図表

図表2は、定期的な異動希望を示しています。年代に関係なく、定期的な異動を求める人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)は25%ほどにとどまっており、求めない人(「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」)が40%を超えています。全体的にいえば、定期的な異動を希望している人は、希望していない人に比べて少ないようです。

<図表2>あなたは、どれくらいの頻度で定期的な異動(組織や仕事、職種の変更)をしたいと思いますか

あなたは、どれくらいの頻度で定期的な異動(組織や仕事、職種の変更)をしたいと思いますかの回答図表

図表3は、直近の異動に自身の希望が考慮されていたかどうかのデータです。図表2と同様に希望がある程度叶えられた人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)よりも、叶わなかった人(「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」)の方が少し多い結果になりました。

面白いのは、図表4です。直近の異動にある程度満足している人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)が50%近くに達しています。つまり、定期的な人事異動をあまり希望しておらず、自分の希望もそれほど叶えられていないにもかかわらず、直近の異動には満足している人がけっこう多いのです。「異動する前は気乗りしなかったのに、実際に異動してみたら意外と良かった」という人が一定数存在するわけです。いったいなぜでしょうか?

<図表3/4>あなたの直近の異動は、ご自身の希望が考慮されていましたか/あなたの直近の異動は、満足できるものでしたか

あなたの直近の異動は、ご自身の希望が考慮されていましたか/あなたの直近の異動は、満足できるものでしたかの回答図表

本人の希望と志向をきちんと考慮すれば、異動満足度は高まる可能性が高い

では、どんな人が人事異動に満足しているのでしょうか。さまざまな角度から確認しましょう。図表5は、本人の異動希望と異動満足度の関係性を示したグラフです。本人の希望が完全に叶えられた異動(「あてはまる」)の満足度が、突出して高くなっています。ある程度叶えられた異動(「どちらかといえばあてはまる」)は、「どちらかといえば満足」の出現率が高いです。当然ながら、本人の希望が通れば、本人は満足するわけです。ただ一方で、本人の希望が叶わない場合でも(「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」)、異動にある程度は満足している人(「満足」「どちらかといえば満足」)が20%近くいることにも注目すべきです。本人の希望が叶わなくても、異動に満足する人は一定数いるのです。

<図表5>本人の異動希望と異動満足度の関係性

本人の異動希望と異動満足度の関係性の回答図表

では、本人の異動希望が通らなかった人たちは、どんなときに異動に満足するのでしょうか。ヒントの1つは、図表6にあります。これは一人ひとりの回答を分析して、10種類のモチベーション・リソースのうちの上位3位までを割り出し、現在の仕事内容とフィットしているかどうかを調べ、さらに異動満足度との関係性を確認したデータです。このデータから分かるのは、本人のモチベーション・リソース上位3位が仕事内容にフィットしているほど、異動満足度が高いということです。つまり、異動先の仕事内容が本人の志向(モチベーション・リソース)とマッチしていると、異動満足度が高まる傾向があるのです。

<図表6>モチベーション・リソース上位3位とフィット数、異動満足度の関係性

モチベーション・リソース上位3位とフィット数、異動満足度の関係性の回答図表

図表6のような志向(モチベーション・リソース)と異動満足度の関係は、本人の異動希望があまり叶わなかった人(図表3の質問に「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」と回答した人)にも一定程度は見られました。つまり、本人の異動希望を叶えられない場合でも、志向を考慮した異動を実現できれば、異動満足度が高まる可能性が十分にあるのです。また、異動後に上司や人事が本人をフォローし、仕事内容と志向のフィット感を向上させることができれば、マネジメントによって満足度を高めていける可能性もあります。会社や人事は、本人の異動希望をいつでも実現できるわけではありませんから、こうしたことも踏まえておいた方がよいでしょう。(なお、モチベーション・リソースについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をお読みください。)

異動先の人間関係が良ければ、異動満足度はやはり高まる

第1回レポート「あなたはお金と機会と同僚、働くうえでどれが一番大事ですか?」では、職場の人間関係が良好であれば、個人の成長意欲や貢献意欲を高められる可能性があることが分かりました。それなら、職場の人間関係が良ければ、異動満足度も高まるのではないでしょうか。この仮説を検証してみましょう。

結論からいえば、異動先の人間関係が良ければ、やはり異動満足度が高まる傾向にありました。仮説は当たっていたのです。図表7は上司との相性と異動満足度の関係性、図表8は共通の話題・趣味で一緒に盛り上がれる上司・同僚の存在と異動満足度の関係性、図表9はキャリアについて何でも相談できる上司・同僚の存在と異動満足度の関係性を示したデータです。

いずれも「あてはまる」の満足度が突出して高く、「どちらかといえばあてはまる」の満足度も比較的高いです。この傾向は、本人の異動希望があまり叶わなかった人(図表3の質問に「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」と回答した人)にも一定程度は見られました。人間関係が良好な職場、上司に気軽に相談できる職場なら、異動後に満足して働ける傾向にあるのです。

<図表7>上司との相性と異動満足度の関係性

上司との相性と異動満足度の関係性の回答図表

<図表8>共通の話題・趣味で一緒に盛り上がれる上司・同僚の存在と異動満足度の関係性

共通の話題・趣味で一緒に盛り上がれる上司・同僚の存在と異動満足度の関係性の回答図表

<図表9>キャリアについて何でも相談できる上司・同僚の存在と異動満足度の関係性

キャリアについて何でも相談できる上司・同僚の存在と異動満足度の関係性の回答図表

本人が意図しない異動がキャリア形成のターニングポイントになる可能性がある

最後に、成長機会と異動満足度の関係を示します。図表10からは、今の会社に自分が成長できる機会や環境があると感じている人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)ほど、異動満足度も高いことが分かります。

<図表10>自分が成長できる機会や環境と異動満足度の関係性

自分が成長できる機会や環境と異動満足度の関係性の回答図表

これまでのデータを踏まえると、「異動する前は気乗りしなかったのに、実際に異動してみたら意外と良かった」という人が一定数存在する理由も推察できます。それは、本人の異動希望が叶えられなかったとしても、異動先の仕事内容が志向とマッチしていたり、異動先の人間関係が良かったり、異動先に成長機会があると感じたりすれば、異動満足度が高まるからなのです。

こうした現象と理論的に関係するのが、ジョン・D・クランボルツの「計画された偶発性理論」です。クランボルツの調査では、ビジネスパーソンとして成功した人の8割は、本人の予想しない偶然の出来事がターニングポイントになっていました。その調査をもとに、クランボルツは「予期しない出来事からキャリアが形成される」「偶然起こった出来事に対して、本人の行動や努力で新たなキャリアが形成される」「ただ待つのではなく、広い視野を持ちチャンスをものにするための行動が求められる」と主張しました。

クランボルツによれば、本人が意図しない異動、予期しない異動が、キャリア形成のターニングポイントになる可能性が十分にあります。その際に重要になるのが、上司や人事や同僚の関わりです。異動後に、上司や人事や同僚が本人をフォローして、異動の意味づけを行ったり、異動満足度を高めたりすることが、ポジティブなターニングポイントを創出する後押しになるかもしれないのです。人事異動を成長機会として積極活用することをお薦めします。その際、さまざまな面から異動満足度を高めることが役に立つでしょう。

調査概要

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