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働く人の本音調査2024 第4回

「あなたは、結果評価とプロセス評価のどちらを望みますか?」

  • 公開日:2024/10/03
  • 更新日:2024/12/25
「あなたは、結果評価とプロセス評価のどちらを望みますか?」

私たちリクルートマネジメントソリューションズは、60年以上にわたり人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を生かし、働く皆さんの意識・特性を多角的に捉えるチャレンジをしています。2023年の『一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査』(第1回第2回第3回)に続いて、今回は『働く人の本音調査2024』を実施し、働く人たちがマネジメントについてどのような希望を持ち、マネジメントの実態をどのように捉えているか、などを広く質問しました。その調査結果を数回に分けて紹介してきました(第1回こちら、第2回はこちら、第3回はこちら)。最終回の第4回は、「評価」に関するデータ分析の結果をお伝えします。あなたは結果評価とプロセス評価、個人成果評価と組織成果評価のどちらを望みますか?

※本調査に関連して、働く皆さんが自身のパーソナリティ・タイプとモチベーション・リソースを簡易に診断するツールとして「働くみんなの性格タイプ診断」をリリースしました。短時間で診断できますので、ご自身のタイプが気になる方はこちらからぜひご利用ください!

※本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび各種属性別集計データなどをオープンデータとして開示しています。ご希望の方は、「お問い合わせ」よりお問い合わせください。【11月5日までの期間限定】~受付は終了いたしました~

今回の記事では、「結果評価/プロセス評価」「個人成果評価/組織成果評価」という用語が頻出しますので、冒頭で簡単に定義します。「結果評価」とは、仕事を通じて得られた成果や目標の達成状況に対する評価です。「プロセス評価」とは、結果に至るまでの仕事の進め方や働きぶりなどに対する評価です。両者は併用されることもあります。

「個人成果評価」とは、個人であげた成果や個人の貢献度に対する評価です。「組織成果評価」とは、課やチームなどの組織であげた成果や、目標の達成状況に対する評価です。両者は必ずしも対立するものではなく、併用されることも珍しくありません。例えば、営業組織では、個人の売上目標の達成度に対して個人成果評価を行い、課の売上目標の達成度に対して組織成果評価を行い、両方を合わせて総合的に評価することがよくあります。

本シリーズ記事一覧
働く人の本音調査2024 第4回
「あなたは、結果評価とプロセス評価のどちらを望みますか?」
働く人の本音調査2024 第3回
人事施策を増やすと、従業員の会社へのエンゲージメントは高まるのか?
働く人の本音調査2024 第2回
「どんな人事異動なら、あなたは満足できますか?」
働く人の本音調査2024 第1回
「あなたはお金と機会と同僚、働くうえでどれが一番大事ですか?」
成果主義的な評価を行う会社は多いが、それに不満を抱いている人もいるかもしれない
プロセス評価を望む人にプロセス評価をすると、「会社へのエンゲージメント」が高まる
企業が組織成果評価を行うと、個人の「職場に対するコミットメント」が高まる
個人の志向や価値観が、評価基準の希望を左右する可能性がある
人事評価で重要なのは、結果の良し悪しだけではない
本音データを自身や自社についてあらためて考える契機に

成果主義的な評価を行う会社は多いが、それに不満を抱いている人もいるかもしれない

最初に、働く人たちが、「結果評価かプロセス評価か」「個人成果評価か組織成果評価か」のどちらを希望するかを分析しました(図表1)。結果としては、結果評価を望む人とプロセス評価を望む人はほとんど50%ずつ、個人成果評価を望む人と組織成果評価を望む人もほぼ50%ずつでした。

ただ、2つの選択の組み合わせを見ると、「結果評価と個人成果評価(29.5%)」「プロセス評価と組織成果評価(27.8%)」の組み合わせが、他の2つよりも比較的多いことが分かりました。つまり、個人で成果を出すタイプの人はどちらかといえば結果評価を求める傾向にあり、組織やチームで協力して成果を出すタイプの人はどちらかといえばプロセス評価を求める傾向にあるのです。

<図表1>人事評価における「結果評価/プロセス評価」「個人成果評価/組織成果評価」の希望

人事評価における「結果評価/プロセス評価」「個人成果評価/組織成果評価」の希望

希望の次に、実態を調べてみました(図表2)。「個人成果評価か組織成果評価か」に関しては、希望だけでなく実態もほぼ50%ずつでした。ところが「結果評価かプロセス評価か」に関しては、結果評価の方が68.3%と多くなっていました。プロセス評価を行う会社で働く人は、働く皆さんの希望よりも少ないことが分かります。また、2つの選択の組み合わせでは「結果評価と個人成果評価(39.8%)」の割合が高く、成果主義的な評価を行っている会社で働く人が多いことをあらためて確認できました。

<図表2>人事評価における「結果評価/プロセス評価」「個人成果評価/組織成果評価」の実態

人事評価における「結果評価/プロセス評価」「個人成果評価/組織成果評価」の実態

さらに、「希望と実態の掛け合わせ」を見てみましょう。図表3は、「結果評価かプロセス評価か」の希望×実態、図表4は「個人成果評価か組織成果評価か」の希望×実態を分析した結果です。注目すべきは、図表3で「プロセス評価を希望しているが、実態は結果評価の人」が30.8%存在することです。成果主義的な評価をする会社で働く人が多い一方で、そのことに不満を抱いている可能性のある人も多いのです。

また、「希望と実態の不一致群」が、図表3は43.8%(=13.0%+30.8%)、図表4は42.0%(=21.3%+20.7%)と、どちらも40%に達しています。つまり、自分が働く会社の評価基準に不満を抱いているかもしれない人たちが4割もいるわけです。

<図表3>人事評価における「結果評価/プロセス評価」の希望と実態

人事評価における「結果評価/プロセス評価」の希望と実態

<図表4>人事評価における「個人成果評価/組織成果評価」の希望と実態

人事評価における「個人成果評価/組織成果評価」の希望と実態

よい評価を得る人もいれば、よくない評価を得る人もいるため、評価はそもそも不満を生みがちなものです。自分が求める評価基準と、会社が用いている評価基準が異なる場合、不満はより大きくなる可能性があります。また、評価基準が不明確であることに不満を抱く人もいます。ですから、会社が「なぜ現在の基準で評価しているのか」、個人が「どのような評価基準をなぜ求めるのか」について相互に認識し合うことが、不満解消の一歩になるかもしれません。

プロセス評価を望む人にプロセス評価をすると、「会社へのエンゲージメント」が高まる

評価基準の違いは、働く人にどのような影響を及ぼすのでしょうか。結論からいえば、私たちの分析によって、「プロセス評価を望む人にプロセス評価をすると、会社へのエンゲージメントが高まる」ようであることが分かりました。

図表5は、「今の会社は魅力的な文化・風土を築いていくことができると思う」という質問項目への回答結果が、「結果評価かプロセス評価か」の希望×実態でどのような差があるかを分析したグラフです。この質問に対して高い数値で回答した人ほど、会社へのエンゲージメントが高いと考えられます。

このグラフによると、個人が結果評価を望む場合は、会社が結果評価であってもプロセス評価であっても、回答結果に差はありませんでした。ところが、個人がプロセス評価を望む場合は、プロセス評価を行う会社を「魅力的な文化・風土を築いていく会社だ」と感じる傾向が高まることが分かりました。

<図表5>「今の会社は魅力的な文化・風土を築いていくことができると思う」の回答結果が、結果評価/プロセス評価の希望×実態でどのような違いがあるか

「今の会社は魅力的な文化・風土を築いていくことができると思う」の回答結果が、結果評価/プロセス評価の希望×実態でどのような違いがあるか

実は、会社へのエンゲージメントに関する他の質問でも同じような分析結果が出ました。「今の会社にはキャリアについて何でも相談できる上司・同僚がいる」「今の会社は成長・発展していくことができる」「今の会社の社風は自分に合っていると思う」「今の会社には自分が成長できる機会や環境がある」「今の会社の理念・ビジョンに共感している」といった質問項目でも、図表5に似た傾向があったのです。

以上をまとめて結論づけると、「プロセス評価を望む人にプロセス評価を行うと、会社へのエンゲージメントが高まる傾向がある」ようです。組織には、バックオフィスなど、短期的な成果が出にくい仕事、個人成果が分かりにくい仕事がいくつもあります。そうした仕事に就く人たちは、プロセス評価を望んでいる可能性があります。皆さんの周りにも、このような「縁の下の力持ち」がいるのではないでしょうか。こうした人たちに対しては、プロセス評価を行ったり、制度上難しい場合にはプロセスに対する称賛を行ったりすることが大切かもしれません。

企業が組織成果評価を行うと、個人の「職場に対するコミットメント」が高まる

また、組織成果評価には、職場に対するコミットメントを高める効果があることも見えてきました。

図表6は、「職場の目標や成果をメンバーとともに達成したいと思う」の回答結果が、「個人成果評価か組織成果評価か」の希望×実態でどのような違いがあるかを示すグラフです。この質問に対して高い数値で回答した人ほど、職場に対するコミットメントが高いと考えられます。

このグラフによれば、個人の希望がどちらであっても、組織成果評価の方が、職場の目標や成果をメンバーとともに達成したいという思いを引き出すことが分かりました。特に、組織成果評価を希望する人たちは得点の上がり幅がさらに高くなっていました。

<図表6>「職場の目標や成果をメンバーとともに達成したいと思う」の回答結果が、個人成果評価/組織成果評価の希望×実態でどのような違いがあるか

「職場の目標や成果をメンバーとともに達成したいと思う」の回答結果が、個人成果評価/組織成果評価の希望×実態でどのような違いがあるか

実は、職場に対するコミットメントに関わる他の質問でも、同じような分析結果が出ました。「職場のメンバーの仕事や相談ごとに進んで協力したいと思う」「新人や後輩の育成に積極的に関わりたいと思う」「職場のメンバーには思ったことを率直に言い合える安心感がある」などの質問項目でも、図表6に似た傾向があったのです。

以上をまとめて結論づけると、「企業が組織成果評価を行うと、個人の職場に対するコミットメントが高まる」ようです。特に組織成果評価を望む人に組織成果評価を行うと、コミットメントは顕著に高まる傾向があります。逆にいえば、いきすぎた個人評価には、職場に対するコミットメントを下げるリスクがある可能性があります。

個人の志向や価値観が、評価基準の希望を左右する可能性がある

さらに、弊社のアセスメントで用いている4つのパーソナリティタイプ(図表7)ごとの評価基準の希望も分析しました。

<図表7>4つのパーソナリティタイプ

4つのパーソナリティタイプ

パーソナリティタイプについて図表8が「結果評価かプロセス評価か」のどちらを希望するか、図表9が「個人成果評価か組織成果評価か」のどちらを希望するかを分析した結果です。

比較的分かりやすい特徴が出たのが、「W=創造重視タイプ」と「X=結果重視タイプ」です。この2タイプは、結果評価・個人成果評価を好む傾向がありました。両タイプとも、前向きにリスクを取ってチャレンジする人たちですから、想定どおりの分析結果です。

一方、「Y=調和重視タイプ」は、プロセス評価・組織成果評価を好む傾向が出ていました。このタイプは確実さと一体感を大事にする人たちですから、これも納得感のある結果です。最後の「Z=秩序重視タイプ」は、どちらも50%に近く、ほぼ半々の結果となりました。ルールが明確になっていることを好み、合理的に判断するタイプなので、自身が手掛ける仕事の性質に合致した評価基準を求める傾向があり、このような結果になっているのかもしれません。

この結果を見ると、個人の志向や価値観が、評価基準の希望を左右する可能性があることが分かります。経営や人事が自社の評価基準を決める際は、社員の志向・価値観の偏りなども考慮した方がよいかもしれません。また、この結果は、部下の評価制度の希望と実態にギャップがあるとき、上司がその部下をどうケアすべきかのヒントになるかもしれません。

<図表8>パーソナリティタイプ別の「結果評価/プロセス評価」の希望

パーソナリティタイプ別の「結果評価/プロセス評価」の希望

<図表9>パーソナリティタイプ別の「個人成果評価/組織成果評価」の希望

パーソナリティタイプ別の「個人成果評価/組織成果評価」の希望

人事評価で重要なのは、結果の良し悪しだけではない

人事評価の結果の良し悪しは、処遇や昇進・昇格につながるだけでなく、個々人のモチベーションにも影響を与えるものです。皆さんも、芳しくない評価結果を受け取り、落ち込んだことがあるかもしれません。

今回のレポートで示された以下3つの事実から、人事評価は結果の良し悪しだけでなく、「評価基準の希望」も大切だということが確認されました。

  • 会社が用いている評価基準と、個人が希望している評価基準が一致していないことも少なくない
  • 個人の価値観が、評価基準の希望を左右する可能性がある
  • 評価基準が一致することで、エンゲージメントやコミットメントが高まる傾向がある

人事評価の結果がよくても、あまりうれしくなかった、そういう経験は今までなかったでしょうか? もしそういうことがあれば、それは評価基準のズレによるものかもしれません。人事評価にモヤモヤしている人は、あらためて「自分が大切にしている評価基準」に目を向けてみるのもよいかもしれません。また、人事担当や管理職の方は、社員や「メンバーが大切にしている評価基準」を確認してみてもよいかもしれません。双方の評価基準の希望は、必ずしも一致させることはできないかもしれませんが、お互いのズレが分かれば、そこを起点に双方が歩みよるための会話をスタートできるからです。

本音データを自身や自社についてあらためて考える契機に

これまで4回にわたり、「お金・機会・人間関係」「人事異動」「人事施策」「評価」の4テーマに分けて、『働く人の本音調査2024』の分析結果をお伝えしてきました。このシリーズは今回で最終回となります。働く人たちは、どうしても会社に対して率直に発言しにくいものです。この調査では、アンケートという限定された形式ではありますが、働く人たちが本音を答えてくれました。これらの「本音データ」を見て、働く皆さんはどういった感想を持ちましたか? 自分と似たような不満を抱えている人は少なくないのだな、と思った方、自分が働いている会社は他社と比べて意外と従業員想いなのかもしれない、と感じた方もいるかもしれません。読み終わった後、普段よりも少し広い視界で、働くことに関するご自身の希望や実態について考えを巡らせてくださっていれば幸いです。また、経営層や人事の皆さんには、自社と照らし合わせて考え、あらためて従業員と真摯に向き合う契機としていただければと思います。

調査概要

調査概要
本シリーズ記事一覧
働く人の本音調査2024 第4回
「あなたは、結果評価とプロセス評価のどちらを望みますか?」
働く人の本音調査2024 第3回
人事施策を増やすと、従業員の会社へのエンゲージメントは高まるのか?
働く人の本音調査2024 第2回
「どんな人事異動なら、あなたは満足できますか?」
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