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「管理職」のネガティブイメージを払拭し、未来のリーダーを育てる

管理職になりたくない中堅社員への処方箋

  • 公開日:2025/05/19
  • 更新日:2025/05/30
管理職になりたくない中堅社員への処方箋

現在、多くの人事担当者が抱える悩みの1つである「管理職になりたくない中堅社員」。この背景には、時代の推移と共に管理職に求められるスキルが変化してきたことが影響しています。そこで本コラムでは、中堅社員が「管理職になりたくない」と感じている背景をひもとき、有効なアプローチ方法を解説します。

はじめに – なぜ管理職が敬遠されるのか?
管理職の多様性推進 – 役割を“分ける”ことで負担を軽減
柔軟な人事制度の運用 – 複線的な制度運用で管理職と専門職の行き来を可能に
中堅層の早期育成 – 役割認識とスキル開発の強化
1つ上のステージの業務を疑似体験し、自らの強みや課題を知る
まとめ

はじめに – なぜ管理職が敬遠されるのか?

かつて、日本企業において管理職への昇進は、経済的安定や社会的ステータスの象徴でした。しかし、バブル崩壊以降の成果主義の導入、働き方改革の推進、多様な価値観の浸透により、管理職の役割は大きく変化しています。

現在では、管理職に求められるスキルが高度化し、業務負荷も増加しています。その結果、多くの中堅・若手社員が管理職への昇進・昇格を敬遠する傾向が強まっています。弊社が2024年に実施した「昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査(※)」によると、「管理職になりたくないという人が多い」との回答が、現在感じている問題として28.5%、今後高まりそうな問題としても28.5%と、いずれも高い割合を示しました。

(※本調査については、下記コラムにて詳しく考察しています。
昇進・昇格制度の現状:管理職志向の変化と対応策【前編】
昇進・昇格選考の運用:管理職層に求める要件の変化と評価手法の実態【後編】

最近では、時に「管理職は罰ゲーム」とさえ称されるほど、その“負担”にフォーカスが当てられており、企業の人事担当者も管理職候補の不足に直面していることがうかがえます。

<図表1>昇進・昇格に関連して感じている問題(複数選択/n=207/%)

Q:昇進・昇格に関連して、現在どのような問題を感じていますか?また、今後高まりそうな問題は何ですか? それぞれあてはまるものをすべてお選びください。

昇進・昇格に関連して感じている問題

出所:リクルートマネジメントソリューションズ(2024)昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査

本稿では、この問題に対する企業の対策として、「管理職の多様性推進」「柔軟な人事制度の運用」「中堅層の早期育成」という3つの視点から考察します。

管理職の多様性推進 – 役割を“分ける”ことで負担を軽減

現在の管理職の役割は多岐にわたりますが、その多くは以下の2つに集約されるといえます。

  1. 業務の進捗管理・戦略立案(コトの管理)
  2. 職場の協働促進・人材育成(ヒトの管理)

従来はこの両方を1人の管理職が担っていましたが、これらすべてが得意だと言い切れる人は、そう多くはいないのではないでしょうか。そのため最近では、これらの役割を管理職同士で分担する企業も出てきました。

また、管理職同士ではなくとも、専門知識の高いベテラン社員に若手の育成を任せるといった権限委譲を進めたり、キャリアカウンセラーなど外部識者の力を活用したりすることで、管理職の負担を軽減させ、その役割をより柔軟に再設計することも有効です。このように管理職の役割を“分ける”ことで、「こうあるべき」という従来の管理職像の固定観念を崩し、多様な人材が管理職を担える環境を整えることができます。

また、こうした管理職の役割を“分ける”取り組みは、結果として、管理職像の多様化を進めることになります。社内広報などを通して管理職の魅力を発信し、「私でもできるかも」と昇進をポジティブに捉える社員を増やすことが重要です。

柔軟な人事制度の運用 – 複線的な制度運用で管理職と専門職の行き来を可能に

続いてのポイントは、柔軟な人事制度の運用です。
昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査2024では、約66%の企業で複線型の人事制度を採用していることが分かりました(図表2)。2016年に実施した同調査でも、複線型人事制度は同程度の割合で採用されていますが、専門職制度を採用している企業はそのうちの半分以下でした。2024年と比較すると内訳が大きく変わっています。

しかし、実際に企業人事の方にお話を伺うと、「制度は整えたが、実際には異動がしにくい」「管理職から専門職への転換がネガティブに捉えられる」といった声はよく聞くものです。

<図表2>専門職制度・複線的運用の有無(単一選択/2024年:n=207 2016年:n=102)
Q:貴社の昇進・昇格制度はどのように運用されていますか? 最もあてはまるものを1つお選びください。

① 専門職制度はあるが、実際に専門職となる者は少なく、単線的な運用に近い状態である
② 専門職制度があり、複線型の人事制度として運用されている
③ 専門職制度はなく、管理職層は部下を持つ組織長のみである
④ 専門職制度はないが、部下を持たない管理職層がいるなど複線的に運用されている

専門職制度・複線的運用の有無

出所:昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査2024|昇進・昇格制度の現状:管理職志向の変化と対応策【前編】図表2

実際に複線型を機能させていくためには、「管理職はあくまで組織の目標達成のための一時的な役割」と捉え、事業や組織の置かれた状況に応じて、管理職と専門職とが行き来しやすい仕組みを整えると有効です。管理職から専門職に転換する際に「降格」といったネガティブな印象を与えないよう、処遇やキャリアパスを明確にすれば、管理職に対する心理的ハードルを下げることもできるでしょう。

中堅層の早期育成 – 役割認識とスキル開発の強化

さて、ここまで「管理職になりたくない」という問題に対して、「これなら自分にもできそうだ」「管理職になるのも悪くなさそうだ」といった組織風土をつくっていくことの大切さをお伝えしてきました。では、将来の管理職候補者である中堅層には、どのような施策が有効でしょうか?

企業の人事担当の方に中堅社員の特徴を伺うと、「目の前の業務に手一杯で、広い視野を持ちにくい」「安定志向で、自身の業務の範囲外の仕事をしたがらない」といった声が上がります。その一方で、自身のキャリア開発について、「自分が所属している組織・会社に限定することなく、柔軟で自律的なキャリア形成をしていきたい」という意識を持っているようです。

こうした特徴を踏まえて、3つのアプローチ(図表3)が有効だと考えます。

<図表3>中堅社員育成3つのアプローチ

中堅社員育成3つのアプローチ

アプローチ③では、キャリア研修やキャリア面談など、自律的なキャリア形成を支援する施策が多くの企業で導入されています。特に中堅期は「キャリアの展望不安」に直面するタイミングとして知られており、中堅期において、これまで自分の中に積み重ねてきたものを自覚し、将来のキャリアについて複数の展望を形成するこが重要です。
一方で、役割拡大やスキル開発といったアプローチ①、②の観点からは、実業務のなかで開発していくことが望ましくあるものの、昨今の企業を取り巻く環境は“失敗をさせにくい”状況でもあり、思い切った権限委譲や仕事のアサインがしにくいことも事実です。そこで有効な手法として考えられるのが、アセスメント研修です。

1つ上のステージの業務を疑似体験し、自らの強みや課題を知る

アセスメント研修とは、管理職候補者の能力を評価しながら、実践的な学びを提供する研修手法です。一般的には、実際の業務に近いシミュレーション演習(架空の企業のケーススタディを用いた、個人ワークやグループディスカッション、ロールプレイなど)を通じて、アセッサーと呼ばれる社外の第三者が、研修受講者の能力を多面的に評価します。

この手法の最大の特徴は、「安全な環境で1つ上のステージの役割を体験できる」ことです。通常の業務では、失敗が直接業績に影響を与えるため、大胆な意思決定やリーダーシップの発揮が難しいこともあります。しかしアセスメント研修では、リアルな状況設定のもとで、主人公の立場に求められる行動を試すことができるため、自らのアウトプットやふるまいを通して、強みや課題を認識することができます。

弊社が提供するアセスメント研修では、単なる評価にとどまらず、「振り返り」や「受講者同士からの学び合い」「フィードバック」を重視しています。研修では、受講者全員が「同じ」ケース設定のもとさまざまなワークに取り組みますが、出てくるアウトプットや研修中のふるまいは、百人百様。そのため、自分の特徴を他者と比較しながら振り返ることになり、このプロセスを通じて、自身のリーダーシップスタイルや意思決定のクセを理解し、次のステップに向けた成長のヒントを得ることができるのです。

このように、アセスメント研修は、単なる管理職候補者の選抜ツールではなく、「1つ上のステージの役割を体感し、納得感を持って次のキャリアを考える」ための場としても機能します。企業が管理職候補者の不足に悩むなか、こうした機会を通じて、中堅層が管理職の役割に対して前向きなイメージを持つことが、長期的な人材育成の鍵となるでしょう。

まとめ

今回は、中堅社員が管理職を敬遠する背景と、そんな中堅社員への有効なアプローチ方法についてご紹介しました。弊社では2025年4月に、中堅リーダー向けのアセスメント研修の利便性を高めるリニューアルを行っています。管理職になりたくない中堅社員が多い今こそ、こうした取り組みを通じて、未来のリーダーを育てていきませんか?

中堅社員向けの研修一覧は、中堅社員研修特集ページをご覧ください。

プレスリリース
中堅リーダー向けアセスメント研修R&C-Z 専用システム(Assessment Base)に搭載しリニューアル提供開始|人材育成・研修のリクルートマネジメントソリューションズ

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中堅リーダー評価・育成のためのアセスメント研修「R&C−Z」 | 人材育成・研修のリクルートマネジメントソリューションズ

執筆者

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研究員

佐藤 亮一

大手製薬会社での営業を経て、2012年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。営業担当として顧客接点を担い、主に1000~3000名規模の企業における、人・組織課題の解決を支援。2022年に開発部門へ異動し、2025年より現職。アセスメント研修領域の開発や販売促進・結果活用支援等に携わる。

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