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サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」第2回

藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?

  • 公開日:2024/10/28
  • 更新日:2024/11/13
藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?

サイバーエージェントの創業者・藤田晋社長は、2026年に社長を退き、後継者に譲ることを宣言している。2024年現在、サイバーエージェントはその後継者の育成と選定に力を入れている最中だ。2023年、後継者育成研修の一環として、弊社の「コミュニケーションエンジニアリング研修(CE研修)」を実施し、藤田氏はその効果を高く評価した。CE研修とはどのようなプログラムで、どういった効果を発揮したのか。3回シリーズで詳しく紹介する。

第1回:藤田社長が「向こう20年、価値ある研修だった」と語った「コミュニケーションエンジニアリング研修」とは何か?
第2回:藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?(←今回)
第3回:藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?

本シリーズ記事一覧
サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」第3回
藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?
サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」第2回
藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?
サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」第1回
藤田社長が「向こう20年、価値ある研修だった」と語った「コミュニケーションエンジニアリング研修」とは何か?
経営者の意思決定を追体験してもらう「戦略推進マネジメント・社史プログラム」
経営者の立場になりきってもらうため、社史と社長の言葉を徹底的に活用した
「最高品質/最大効果」がサイバーエージェントの各事業の競争の本質だという共通認識ができ上がった
お互いの持ち味を生かしたら、自分1人では考えられないような未来が実現できそうだ

経営者の意思決定を追体験してもらう「戦略推進マネジメント・社史プログラム」

今回のCE研修の中核は、「STEP2:戦略推進マネジメント・社史プログラム」にある。そのため、本記事ではSTEP2について説明する(※STEP1については、第3回記事で詳しく説明する)。

戦略推進マネジメント・社史プログラムは、社長の意思決定を追体験してもらうプログラムである(図表1)。本プログラムでは、最初の2日間でサイバーエージェントの歴史を紐解き、創業者の藤田晋社長がどのような意思決定をしたのかを追体験してもらう。そのうえで、2日目の後半から3日目にかけて、サイバーエージェントの未来を描いてもらう。こうして社長の意思決定を追体験し、社長業を体感的に理解できる3日間だ。

<図表1>STEP2 戦略推進マネジメント・社史プログラム

STEP2 戦略推進マネジメント・社史プログラム

第1回記事でも紹介したとおり、サイバーエージェントの事例では、後継候補者の参加者たちに藤田社長の過去の意思決定を追体験してもらった。このCE研修が終了したとき、藤田社長は「(このCE研修を通して)社長が1つ間違えたら大変なことになりかねない時代に、社長として舵取りすることがどれだけ難しいのか伝わったのではないかと思う」と語った。彼らはこの研修を通じて、社長のシャレにならない重圧、社長業の厳しさ、難しさ、大変さを味わったのだ。

また、藤田社長の意思決定を追体験することは、「サイバーエージェントがこれまで発展・成長できた理由」を探索することにもつながった。後継候補者たちは徹底的に藤田社長の立場に立つことで、サイバーエージェントがなぜここまでの会社になれたのか、どこに岐路があり、何が成功のポイントだったのかを再発見・再創造していったのである。

経営者の立場になりきってもらうため、社史と社長の言葉を徹底的に活用した

戦略推進マネジメント・社史プログラムの武器は、「社史」と「社長の言葉」である。私たちはサイバーエージェントのケースを作成するにあたって、社史や藤田社長の著書、インタビュー記事などを徹底的に読み込んだうえで、藤田社長にインタビューし、さらに実感を深めた。創業から現在に至るまでの重要な意思決定場面を抽出し、そのときにどのような選択肢と葛藤と決断があったのか、藤田社長はなぜその決断に至ったのか、その結果として何が起こったのかをまとめ直し、研修素材として使用した。

藤田社長の画像
株式会社サイバーエージェント
代表取締役 藤田 晋 氏

そうやって、後継候補者たちが徹底的に藤田社長の立場に立ち、その価値観や判断軸を味わって、サイバーエージェントらしい意思決定とは何かを各自があらためて発見できるようなプログラムを用意したのである。

参加者たちは、私たちが研修のために用意した社史と、重要意思決定場面の情報を使いながら、各自が「自分が社長ならどうするか」を表明し続けた。ときには、同席している藤田社長本人が輪に加わり、「自分はそのときこう考えた」「自分はそのとき腹が立った」といったことを伝え、後継候補者たちを後押ししてくれることもあった。

この3日間を通して、彼らは藤田社長のさまざまな決断が並々ならぬものだったことを体感的に理解した。例えば、サイバーエージェントは2011年頃から、スマートフォン会社へと急速に変貌を遂げた。その際、藤田社長は全事業部から200名くらいの社員を集め、ゲームやコミュニティサービスなど、スマホに関連するあらゆるビジネスを試してみる「総張り戦略」を実行した。そのうえで、収益の高いゲーム事業を新たな柱にすると決断することで、極めてスムーズにスマホシフトを実現したのだ。

この一連の意思決定を皆で追体験したとき、ある後継候補者は「今の私には、こんな大胆な変革の決断はできない。まず自分が変わらない限り、社長業はムリだ。変わったとしても、私1人で藤田社長の代わりができるとは思えない。皆に支えてもらえない限り、私は2代目社長にはなれないと分かった」とホンネを漏らした。参加者たちはこうして、藤田社長の意思決定の背景にある問題意識や考え方を深いところまで知り、自分が社長になったらどうするかをとことんシミュレーションしたのである。

「最高品質/最大効果」がサイバーエージェントの各事業の競争の本質だという共通認識ができ上がった

全参加者がこうして社長の意思決定を追体験した結果、彼らは、サイバーエージェントの競争の本質は「最高品質/最大効果」だということをあらためて発見・創造した。自分たちの最大のこだわり・強みは、最高品質/最大効果だという共通認識ができ上がったのだ。

研修を受講しているうちに、日頃の藤田社長の言動が想起されることもあった。過去に、後継候補者の1人がある案件で「(やむを得ず)質を下げて対応しましょう」と発言したことがあったのだが、藤田社長はその言葉に激怒したという。どのようなときも質を下げてはならない。どこまでもお客様に最高品質/最大効果を届けることを追求する。それが藤田社長とサイバーエージェントのこだわりなのだ。そうした考えのもと、例えばインターネット広告事業は何よりも広告効果向上を目指し続け、そのことに自負を持ってきた。

後継候補者たちは、このように重要な意思決定局面を追体験することで、藤田社長と自分たちが最高品質/最大効果を追求してきたことをあらためて俯瞰した。そして、それこそが、サイバーエージェントを成長・発展させた一番の原動力にほかならないと、あらためて理解したのである。このことを理解した以上、彼らは今後もきっと、最高品質/最大効果にこだわり続けるだろう。

また、後継候補者たちは、藤田社長が「ブレずにやり続けてきた」ことの偉大さをあらためて知った。社長には、あらゆるステークホルダーから数えきれないほどの批判や誘惑が届く。彼らは、社長がこうした批判や誘惑に惑わされずに、ブレずにやり続けることがいかに難しいかも理解したのだ。例えば、赤字続きの「ABEMA」で最高品質を追求してきたことがどれだけ大変なことだったのか、彼らは痛感したのである。

お互いの持ち味を生かしたら、自分1人では考えられないような未来が実現できそうだ

戦略推進マネジメント・社史プログラムが終わる頃には、参加者たちは「お互いの持ち味を生かしたら、自分1人では考えられないような未来が実現できそうだ」と思うようになっていた。全員で力を合わせて「最高品質/最大効果」を根本基準にしていけば、未来に立ち向かっていけるという勇気を得たのである。

サイバーエージェントは、1998年の創業以来、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを掲げている。今回の社長交代や後継者育成も、そのビジョンに欠かせないイベントの1つだ。つまり、後継候補者たちは今後一丸となって、21世紀を代表する会社を創っていくのである。その後継者チームの形成に寄与したのが、「STEP1:自己発見・探索プログラム」だ。自己発見・探索プログラムについては、第3回記事で詳しく説明する。

◆サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」シリーズ

第1回:藤田社長が「向こう20年、価値ある研修だった」と語った「コミュニケーションエンジニアリング研修」とは何か?
第2回:藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?(←今回)
第3回:藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?

◆関連するページはこちら

コミュニケーションエンジニアリング・サービスの紹介ページ
CES-PP 戦略実現のための決断・実践支援研修
リクルートマネジメントソリューションズの次世代経営人材(部長・役員層)育成ソリューション

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【事例】次期経営リーダーに生まれた当事者モード、ここから「全員経営」が始まった(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート様)

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株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントは、1998年に設立された、日本を代表するインターネット総合サービス企業です。「メディア事業」「インターネット広告事業」「ゲーム事業」「投資育成事業」の4つを柱とし、革新的なサービスを提供しています。

メディア事業では、新しい未来のテレビ「ABEMA」やライフスタイルメディア「Ameba」などを運営し、幅広いユーザーに向けてサービスを提供しています。インターネット広告事業では、多様な業界のクライアントに対して広告ソリューションを提供し、デジタルマーケティング支援を行っています。ゲーム事業では、グループ会社の株式会社Cygamesなどが手掛けるスマートフォン向けゲームを多数展開し、国内外で高い評価を受けています。さらに、投資育成事業では、将来性のあるスタートアップや成長企業に対する戦略的な投資を行い、企業の成長をサポートしています。

これらの事業を通じて、サイバーエージェントはデジタル領域でのイノベーションを牽引し、時代に合わせた新しい価値を提供し続けています。

※記事の内容および所属等は執筆時点のものとなります。

【text:米川青馬/監修:河島 慎

監修

河島の画像

技術開発統括部
コミュニケーションエンジニアリング部
エグゼクティブコミュニケーションエンジニア

河島 慎

1975年生まれ、三重県出身、 1998年、電機メーカーへ入社、人事・総務を約8年経験。
2004年、リクルートマネジメントソリューションズへ入社。以降、コミュニケーションエンジニアとして、人材価値経営(人・組織のもつ潜在的な可能性の最大化による事業価値最大化を図る経営)実現を支援している。

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