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サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」第3回

藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?

  • 公開日:2024/11/01
  • 更新日:2024/11/13
藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?

サイバーエージェントの創業者・藤田晋社長は、2026年に社長を退き、後継者に譲ることを宣言している。2024年現在、サイバーエージェントはその後継者の育成と選定に力を入れている最中だ。2023年、後継者育成研修の一環として、弊社の「コミュニケーションエンジニアリング研修(CE研修)」を実施し、藤田氏はその効果を高く評価した。CE研修とはどのようなプログラムで、どういった効果を発揮したのか。3回シリーズで詳しく紹介する。

第1回:藤田社長が「向こう20年、価値ある研修だった」と語った「コミュニケーションエンジニアリング研修」とは何か?
第2回:藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?
第3回:藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?(←今回)

自分を味わい、同志を味わう「自己発見・探索プログラム」
好きなことしかしない同僚が「好きなことを集中してやり遂げる仲間」に変わった
Cさんが「意外なほど部下想い」であることを全員が追体験して驚いた
自己発見・探索プログラムには「追体験に慣れる」効果もある

自分を味わい、同志を味わう「自己発見・探索プログラム」

第1回記事で触れたとおり、CE研修の「STEP1:自己発見・探索プログラム」は、後継者チーム形成につながるプログラムである(図表1)。

自己発見・探索プログラムの1日目は、参加者一人ひとりが、自分史や自らの喜怒哀楽、やりがいの源泉などを探索する。特に、自分が過去に選択を迫られたとき、何をどのように決断したかを思い出してもらう。そうやってまず、一人ひとりが自己を再発見するのだ。

そのうえで2日目は、お互いの成功体験や行動原則をめぐって交流し、各自が自らの未来のプロイメージを考える。1日目で自分のことを存分に味わったら、今度は共に学ぶ同志を味わう時間である。このとき大事なのが、「徹底的に相手の立場に立つ」ことである。相手の立場に立って、追体験するのだ。そのためにまず講師が率先して相手の立場に立ち、追体験の空気づくりをしていく。

最終の3日目は、各自がこれから一歩踏み出す課題を設定し、全員がお互いの課題をめぐって交流して終わる。こうしてお互いの生き様や考え方を見つめ合い、深く知り合うことによって、単に仲が良いのではなく、全員が心から信頼し合えるチームができ上がる。

<図表1>STEP1 自己発見・探索プログラム

STEP1 自己発見・探索プログラム

好きなことしかしない同僚が「好きなことを集中してやり遂げる仲間」に変わった

自己発見・探索プログラムを実施すると、受講者はどのように変わるのだろうか。サイバーエージェントとは別の会社の事例を使って、その効果を分かりやすく説明したい。

あるとき、私たちはA社の役員向けにCE研修を実施した。A社では、役員の1人・Bさんが、他の役員たちから問題視されていた。なぜなら、Bさんはとにかく自分の好きな業務以外はやりたがらなかったからだ。彼は「好きなことしかしない同僚」として、要注意人物になっていたわけである。

ところが、自己発見・探索プログラムを経て、Bさんは「好きなことを集中してやり遂げる仲間」に変わった。本人は別に何も変わっていない。他の役員たちの認識が変わったのである。なぜなら、Bさんが自己発見・探索プログラムのなかで、中学生時代、雨の日も風の日も、365日釣りをし続けたエピソードを楽しそうに話してくれたからだ。その話を聞いた全員が、Bさんの中学生時代の立場に立って追体験しながら、「自分は、そこまでは好きなことに集中できない。Bさんの好きなことに対する集中力はすばらしい。だから、Bさんにやりたいことを任せれば、きっと実力を発揮してくれるに違いない」と感じたのだ。Bさんは研修の最後に、これから一歩踏み出す課題として「社内システム構築にチャレンジしたい」と手を挙げ、周囲もその業務を任せることに合意した。

自己発見・探索プログラムで「お互いの生き様や考え方を見つめ合い、深く知り合う」というのは、例えばこういうことだ。こうやって、全員が心から信頼し合えるチームができ上がっていくのである。

Cさんが「意外なほど部下想い」であることを全員が追体験して驚いた

藤田社長の画像
株式会社サイバーエージェント
代表取締役 藤田 晋 氏

サイバーエージェントの事例では、例えば、後継候補者の1人・Cさんが「意外なほど部下想い」であることが分かった。Cさんはエンジニア系役員で、周囲からはテクノロジー以外のことに興味がないように映るほどのプロフェッショナルだ。ところが、Cさんは自己発見・探索プログラムのなかで、部下が離職するたびに、離職を思いとどまるような業務や職場環境を用意できなかった自分、部下を一人前のエンジニアに育てられなかった自分に腹を立てている、と告白してくれた。周囲は誰も、Cさんがそれほど部下のことを気にかけているとは思っておらず、驚いたのである。参加者の多くは、Cさんの立場を追体験して、「Cさんは、実は自分以上に部下想いなのだ」と実感したのだ。

また、別の後継候補者・Dさんは、周囲からは「少々とっつきにくい人」だと思われていたが、その原点が幼少期の複雑な家庭環境にあったことを包み隠さず語ってくれた。周囲は、この話を聞きながらDさんの立場を追体験し、驚きと感動を味わい、全員がDさんに対する認識を改めたのだ。

入社以降のエピソードを打ち明けてくれた人もいた。Eさんは創業3年目に新卒で入社し、2年目でいきなり統括責任者に抜擢された。当時は何をどうしたらよいかまったく分からず、辞めたくなったこともあったという。しかし、周囲の新卒の仲間たちが輝いているのを見て、「自分が今ここで辞めたら、新卒採用の火が小さくなるかもしれない」と思い、何とか踏ん張ったのだと語ってくれた。周囲はこのエピソードを追体験して、このような幾多の社員の頑張りがサイバーエージェントを支えてきたことを再確認した。

もちろん、後継候補者の皆さんは長年共に仕事をしてきた間柄だ。しかしそれでも、過去にこのような対話をする機会はなかった。Cさんがこれほど部下想いであることも、Dさんの幼少期のエピソードも、Eさんの若手時代の苦労も、過去の出来事としては知っていても、そこに込められた思いまでは知らなかったのだ。これは決して珍しいことではない。どの会社でも、お互いのことを意外と知らないものなのである。だからこそ、多くの会社に自己発見・探索プログラムのような場が必要なのだ。このプログラムで、徹底的にお互いの立場に立って追体験し合うことが、深く知り合うことに直結するのである。

私たちはこのように自己発見・探索プログラムを通して、言いにくいことも含めてホンネを話し合えるチーム、信頼し合って一致団結できる後継者チームづくりを3日間お手伝いした。例えば、営業出身の参加者が、「もっと元気でイキイキした会社を目指したい」と宣言したら、クリエイター出身者とエンジニア出身者が「そんな宣言をしたら、優れたクリエイターとエンジニアが来なくなる」と即座に否定した。このくらい踏み込んだコミュニケーションを当たり前に行える関係になったのだ。こうしてCE研修は、藤田社長から「事業承継をするうえでMUSTの研修だった」と評価いただいた。

自己発見・探索プログラムには「追体験に慣れる」効果もある

実は、自己発見・探索プログラムにはもう1つの効果効能がある。それは「追体験に慣れる」ことだ。本プログラムでは、お互いのことを知り合うときに追体験をする。Cさんが「意外なほど部下想い」であることも、Dさんの複雑な家庭環境も、Eさんの若手時代の苦労も、追体験することで理解が一段深まった。

こうして追体験に慣れる経験が、第2回記事で詳しく説明した「STEP2:戦略推進マネジメント・社史プログラム」で役立つのだ。自己発見・探索プログラムを経験したからこそ、後継候補者たちは徹底的に藤田社長の立場に立つことができたのである。

◆サイバーエージェント・藤田社長の後継者育成に効果を発揮した「CE研修」シリーズ

第1回:藤田社長が「向こう20年、価値ある研修だった」と語った「コミュニケーションエンジニアリング研修」とは何か?
第2回:藤田社長の立場になりきって、「社長のシャレにならない重圧を追体験してもらうプログラム」とは何か?
第3回:藤田社長の後継者チームを作る「お互いの生き様や考え方を見つめ合うプログラム」とは何か?(←今回)

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これらの事業を通じて、サイバーエージェントはデジタル領域でのイノベーションを牽引し、時代に合わせた新しい価値を提供し続けています。

※記事の内容および所属等は執筆時点のものとなります。

【text:米川青馬/監修:河島 慎

監修

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技術開発統括部
コミュニケーションエンジニアリング部
エグゼクティブコミュニケーションエンジニア

河島 慎

1975年生まれ、三重県出身、 1998年、電機メーカーへ入社、人事・総務を約8年経験。
2004年、リクルートマネジメントソリューションズへ入社。以降、コミュニケーションエンジニアとして、人材価値経営(人・組織のもつ潜在的な可能性の最大化による事業価値最大化を図る経営)実現を支援している。

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