用語集
リーダーシップの種類と特徴 時代に合わせたリーダー像を考える
- 公開日:2025/12/01
- 更新日:2025/12/01
リーダーシップにはさまざまな種類があり、状況や組織の課題によって求められるスタイルは異なります。リーダーシップの種類を理解することは、知識を得るだけではなく、自らのリーダー像を明確にし、組織やチームにおける適切な関わり方を設計するための基盤となります。リーダーシップの種類を整理し、現代のビジネス環境に適したリーダー像を解説します。
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リーダーシップとは

リーダーシップは、集団を導くための機能や能力、行動、あるいは影響力そのものを指します。近年は、事業環境の変化のスピードアップや従業員の多様性推進といった背景から、リーダー職や管理職に限らず、さまざまな階層のメンバーにおいてもリーダーシップを身につけることが求められています。多様な人材が集まる組織では、メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮し、相互に影響し合うことでシナジーを生み出し、組織の力を最大化することが重要だと考えられています。
リーダーシップとリーダーの違い
リーダーシップとリーダーは混同されやすい概念ですが、指す対象は異なります。リーダーシップは集団を導くための行為や能力を意味し、リーダーは集団をまとめ、目的の達成に向けて導く役割を担う人物を指します。
リーダーシップ
リーダーシップは「導くこと」を意味し、集団をまとめて目的に向かわせる機能や能力、行動、影響力を指します。リーダーとしての役割を与えられている人に限らず、あらゆる階層のビジネスパーソンに求められる力です。
リーダー
リーダーは方向性やビジョンを立案・共有し、メンバーへの具体的な指示を通じて組織を導く役割を担う人物を指します。中堅社員やチームリーダー、管理職、経営層など、組織のさまざまな階層がリーダーとして位置づけられます。
リーダーシップの種類
リーダーシップは、次の8種類に分類することができます。
▼リーダーシップの種類
- おおらかにチームを包み込む「調和型リーダー」
- 手堅い守りが強み「安定型リーダー」
- チームの力を引き出す「共創型リーダー」
- 全体を俯瞰してまとめる「民主型リーダー」
- 一丸となって立ち向かう「情熱型リーダー」
- 未開の地へ切り込む「開拓型リーダー」
- 厳しさと温かさをあわせもつ「人情型リーダー」
- 現実的な判断で導く「実行型リーダー」

▼参考
働く人のリーダーシップ調査2024 第1回
7,405人に聞いた職場のリーダーシップ論
今回は、このうち代表的な6種類(調和型・安定型・共創型・民主型・情熱型・開拓型)について解説します。
調和型リーダー (調整 × 維持 × 心情)
調和型リーダーは、周囲との協調を第一に考え、安定した組織運営を大切にするタイプです。大きな変革を一気に進めるよりも、現状を保ちながら小さな改善を積み重ねることを好みます。判断のよりどころは「心情」であり、メンバーの気持ちや職場の雰囲気を尊重して意思決定を行います。人間的な温かさや安心感を与える存在として、部下から「一緒に働きやすい」と感じられることが多いリーダー像です。
▼活躍しやすい環境
事業環境が安定している組織で力を発揮しやすく、堅実な改善を重ねる場面に適しています。
安定型リーダー (調整 × 維持 × 理性)
安定型リーダーは、協力と安定を基盤に、理性や合理性に基づいた判断を重んじるタイプです。状況が揺れ動いても感情に振り回されることなく、公平で冷静な判断を下すため、部下からは「納得感のある上司」と評価されやすい傾向にあります。「調整」と「維持」の特性を持ち、組織を穏やかに導きつつ必要な改善を行います。経験を積んだ社員ほど「心情」よりも合理性に基づいて判断する上司を理想と考えるため、ベテラン層からの支持が厚いリーダー像です。
▼活躍しやすい環境
安定した市場や変化の少ない事業環境で力を発揮しやすく、着実な改善が求められる場面に適しています。
共創型リーダー (調整 × 変革 × 心情)
共創型リーダーは、人の気持ちを尊重しながら協力関係を築き、現状に満足せず新しい挑戦に取り組むタイプです。合意形成に優れた「調整」と、挑戦的な「変革」の両面を持ち、「心情」を重視して意思決定を行います。特に部下の昇進意欲を高めやすく、若手社員が「自分もリーダーになりたい」と思える環境をつくれる点が特徴です。部下からの信頼感も高く、「理解してくれる上司」として認識されやすいリーダー像です。
▼活躍しやすい環境
変化の大きい市場環境で力を発揮し、次世代リーダーを育てる局面に有効です。
民主型リーダー (調整 × 変革 × 理性)
民主型リーダーは、協調を重視しながらも新しい変革に挑戦し、理性に基づいて意思決定を行うタイプです。調整力と変革志向を兼ね備えており、チームの合意形成を図りながら合理的に物事を進めます。部下からの信頼度が最も高いリーダー像とされ、穏やかな姿勢と冷静な判断力によって「安心してついていける上司」という印象を与えます。
▼活躍しやすい環境
変革を必要とする場面で、調和と理性を両立した判断が求められる状況に適しています。
情熱型リーダー (統率 × 変革 × 心情)
情熱型リーダーは、統率力と変革志向を持ち、人の気持ちに寄り添いながら強く組織を牽引するタイプです。自ら先頭に立って行動し、チームを鼓舞する姿勢は、変化の激しい市場で特に存在感を発揮します。「心情」を判断基準にするため、合理性だけでなくメンバーの気持ちを踏まえた判断ができ、部下に親近感を与えます。部下の昇進意欲を大きく刺激するリーダー像です。
▼活躍しやすい環境
変化の激しい市場で力を発揮し、組織を鼓舞して挑戦へ導きます。信頼感よりも、意欲を引き出す力に強みを持つタイプです。
開拓型リーダー (統率 × 変革 × 理性)
開拓型リーダーは、自らが先頭に立って強いリーダーシップを発揮し、変革を進めるタイプです。判断の基準は「理性」であり、冷静かつ合理的に物事を見極めます。調和型リーダーとは反対に、調整より統率、維持より変革、心情より理性を重視します。安定した環境よりも市場競争が激しく変化の速い場面で力を発揮します。
▼活躍しやすい環境
成長市場や競争の激しい環境において求められるリーダー像で、改革を牽引する役割を担います。
その他のリーダーシップの種類と考え方
リーダーシップには、さまざまな理論や分類方法があります。ここまで紹介した8種類に加えて、代表的な枠組として知られるのが「PM理論」と「ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ」です。異なる枠組を押さえることで、リーダーシップをより多面的に理解できるでしょう。
PM理論
PM理論とは、日本の心理学者・三隅二不二が1966年に提唱した理論で、リーダーシップを「目標達成能力(P)」と「集団維持能力(M)」の両立で捉えるのが特徴です。Pは成果を上げる力、Mは人間関係を保つ力を意味し、両者の高低によって4つのタイプに分類されます。
▼P(Performance:目標達成能力)
- 目標達成に向けた働きかけや具体的な指示で成果を出す力
- 「成果志向」の側面が強い
▼M(Maintenance:集団維持能力)
- 人間関係を良好に保ち、組織を安定的に運営する力
- 「関係性志向」の側面が強い
PM理論の4類型 | |
|---|---|
リーダーシップの種類 | 概要 |
PM型(P・M共に強い) | 成果と組織維持を両立できる理想的なリーダー |
Pm型(P強・M弱) | 成果は出せるが組織運営が弱い |
pM型(P弱・M強) | 関係性は良いが成果が不足しがち |
pm型(P・M共に弱い) | 成果も維持も弱く、リーダーには不向き |
ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ
米国の心理学者ダニエル・ゴールマンは、EQ(Emotional Intelligence Quotient)に基づく6種類のリーダーシップスタイルを提唱しています。彼は「どれか1つが理想的なスタイルなのではなく、状況に応じて使い分けることが重要だ」と述べています。
ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ | |
|---|---|
リーダーシップの種類 | 概要 |
ビジョン型リーダーシップ | 目指す方向を明確に示し、メンバーの自主性を引き出す |
コーチ型リーダーシップ | 一人ひとりの成長を支援し、特性を生かして目標達成につなげる |
関係重視型リーダーシップ | 人間関係を優先し、信頼関係を構築する |
民主型リーダーシップ | 意見を取り入れて合意形成を進め、主体性を高める |
ペースセッター型リーダーシップ | 自ら高い成果を示し、同等の水準を求める |
強制型リーダーシップ | 強制的な指示や命令を通じてチームを動かす |
「ビジョン型」「コーチ型」「関係重視型」「民主型」は、チームの育成や業績向上に効果的とされています。「ペースセッター型」「強制型」は即効性がある半面、摩擦を生みやすいため、限定的かつ慎重に活用することが望まれます。
ダニエル・ゴールマン . ハーバード・ビジネス・レビュー「EQが高業績リーダーをつくる」 . ダイヤモンド社, 2000年9月号.
リーダーシップを発揮するために必要なスキル
リーダーシップを発揮するには、さまざまなスキルが求められます。必要なスキルを身につけることで、リーダーとしての成長だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。知識として学ぶだけでなく、実践と内省を通じて定着させることが重要です。
思考・判断
リーダーシップには、困難な状況でも冷静に判断し、迅速に行動する力が含まれます。組織の課題を早期に発見し、効果的に解決へ導くことが求められます。
▼具体的なスキル
- 戦略的思考力:自社の強みを見極め、競争環境下で戦略を立案・推進する力
- 意思決定力:多様な情報を分析し、迅速かつ的確に判断する力
- 課題発見・解決能力:課題を特定し、原因究明から解決策の実行までを創造的に進める力
チームマネジメント
VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)な環境下では、チームの方向性を示しつつ柔軟に対応できる「しなやかなリーダーシップ」が求められます。
▼具体的なスキル
- 変化対応力:変化に柔軟に対応しながら、組織の方向性を示す力
- 目標設定能力:具体的で達成可能な目標を掲げ、チームの一体感と動機づけを高める力
- 業務推進スキル(専門性):専門知識や技術を生かし、プロジェクトを成功に導く力
コミュニケーション
日常のコミュニケーションを通じて信頼を築き、ビジョンや目標を明確に伝える力です。
▼具体的なスキル
- コミュニケーションスキル:信頼関係を基盤にビジョンや目標を共有し、オープンな対話を促す力
傾聴、質問、フィードバック、アサーティブ・コミュニケーションなど具体的な技術を含む
これからの時代に求められるリーダーシップ

これからの時代に求められるリーダーシップは、変化の激しい複雑なビジネス環境(VUCA時代)に適応する力です。組織のあらゆる階層で個人が主体的に関わり、多様な人材が能力を発揮できるよう、多角的で柔軟なアプローチが必要とされています。
「信頼」で人や組織を導くリーダーシップ
「信頼で導くリーダーシップ」は、リーダーにとって最も重要な行動原則といえます。リーダーの役割は管理ではなく、メンバーとの信頼関係を築き「ついていきたい」と思わせる存在になることです。信頼を得るには、まずメンバーを信頼し、傾聴などのコミュニケーションスキルを活用することが有効です。
多様性を生かす「分散型」リーダーシップ
事業環境の変化やダイバーシティ推進により、管理職だけでなく一般社員にもリーダーシップの発揮が求められています。多様な人材が集まる組織では、各メンバーがリーダーシップを発揮し、相互にシナジーを生み出すことが不可欠です。実際に、マサチューセッツ工科大学のフレームワークを用いた研修でも分散型リーダーシップが取り上げられ、組織変革への有効性が示されています。
「理論」をベースに築く自分なりのリーダーシップ
リーダーシップには多様な理論がありますが、重要なのはそれを理解したうえで自分自身のスタイルに結びつけることです。理論を学ぶだけでなく、職場の状況や自身の経験にあてはめながら実践し、自分なりのリーダー像を描けるようになることが求められます。演習や対話を通じて、行動に落とし込める具体的なヒントを得ることで、理論と実践の双方を生かしたリーダーシップが身につきます。
まとめ|リーダーシップの種類を理解し自分らしいスタイルを磨く
リーダーシップの種類を理解することは、複雑な環境で成果を上げるための第一歩です。
リーダーシップの種類の多さが示すのは、正解が1つではないこと、そして場面や相手に応じて柔軟に対応することの大切さです。自分に合ったスタイルを磨くことが、信頼関係の構築や組織の成長につながります。そして、時代に適応するリーダー像を描くためには、学び続ける姿勢が欠かせません。
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