- 公開日:2024/11/27
- 更新日:2024/11/27
私たちリクルートマネジメントソリューションズは、60年以上にわたり人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を生かし、働く皆さんの意識・特性を多角的に捉えるチャレンジをしています。「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」(第1回・第2回・第3回)、「働く人の本音調査2024」(第1回・第2回・第3回・第4回)に続き、今回はリーダーシップに関する調査を実施しました。
学級委員、アルバイトリーダー、管理職、総理大臣、大統領など、世の中にはたくさんの「リーダー」と呼ばれる方々がいますが、良いリーダーに共通する性質というものはあるのでしょうか。また、「リーダーシップ」とは集団をまとめ、目的に向かって導いていく機能を指します。「○○さんはリーダーシップがあるね」といった発言を耳にすることがありますが、そもそも、「リーダーシップ」はある人とない人がいるものなのでしょうか。そのような問いに向き合うべく、我々は今回、「リーダーシップ」にまつわる調査を行いました。
※本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび各種属性別集計データなどを開示しています。ご希望の方は、「働く人のリーダーシップ調査2024 第1回のオープンデータ希望」と明記の上、「お問い合わせ」よりお問い合わせください。【1月8日までの期間限定】
- 目次
- あなたのリーダーシップタイプは?
- 「理想の上司」は、「調和型リーダー」が29.8%と最多
- 「直属の上司」も、「調和型リーダー」が31.4%と最多
- 「民主型リーダー」は部下からの信頼感が最も高い
- 「共創型リーダー」を上司に持つ部下は昇進意欲が最も高い
- 事業環境によってリーダーに任命される人のリーダーシップタイプは異なる
- リーダーシップには多様性がある
あなたのリーダーシップタイプは?
突然ですが、質問です。職場でのあなたを想定してみてください。
- 組織内における集団との関わり方は、「A.周囲と協力し合う」「B.自分が引っ張る」のどちら?
- 課題に対して取り組む姿勢は、「A. 維持・改善」「B.変革・拡張」のどちら?
- 迷った際の判断のよりどころは、「A.周囲の気持ち・心情」「B.ロジック・理性」のどちら?
上記の2肢×3問の組み合わせで、あなたがどういったリーダーシップタイプなのかが分かります(図表1、2)。当社の管理者適性検査「NMAT」のフレームを用いた簡易版の診断です。今回は、インターネットモニター7,405名を対象に、この診断に関連する質問をした結果をご紹介します。あなたはどのタイプでしたか?また、あなたの理想の上司のタイプや、現在の直属の上司のタイプはどれにあてはまりそうでしょうか?
<図表1>リーダーシップタイプの指標
<図表2>リーダーシップタイプの簡易版診断
「理想の上司」は、「調和型リーダー」が29.8%と最多
まずは、7,405名の回答者の「理想の上司」について見ていきましょう。
<図表3>理想の上司のリーダーシップタイプ
「理想の上司」のリーダーシップタイプは、「調和型リーダー」が29.8%と最多でした(図表3)。これはつまり、調整×維持×心情という上司が理想的だ、と回答した人が3割弱いたということです。26.7%と僅差で次点だった「安定型リーダー」も調整×維持×理性と、近い性質を持つタイプでした。この2つのタイプだけで全体の半数以上を占めていることから、周囲と協力し合い、大きな変革を起こすよりは現状を維持しつつ、適宜改善に取り組んでいく上司像が理想的だと思う人が、そうでない人よりも多いことがうかがえます。
それでは、この理想像は、回答者の年代によって異なるのでしょうか。
<図表4> 年代別 理想の上司のリーダーシップタイプ
図表4のとおり、年代別に見ても回答の大まかな傾向に違いはあまりありません。ただ、1点着目すべき点は、年代が上がるにつれて「安定型リーダー(調整×維持×理性)」、「民主型リーダー(調整×変革×理性)」などを理想的とする人の割合が上がっていることです。心情よりも理性を判断のよりどころとしてほしい人が、20代と比べて50代は多いという結果が出ました。人生において働いている期間が長くなるほど、上司のさまざまな判断に直面します。そのなかで、以前の判断との齟齬を感じることもあるでしょう。そうした際に、理性をもとに判断してくれた方が、心情で判断されるよりも、納得しやすいのかもしれません。
一方、回答者の「直属の上司」はどのリーダーシップタイプが多かったのでしょうか?
「直属の上司」も、「調和型リーダー」が31.4%と最多
<図表5>直属の上司のリーダーシップタイプ
現在の「直属の上司」のリーダーシップタイプも、「調和型リーダー( 調整×維持×心情)」が31.4%と最多です(図表5)。次点も同じく「安定型リーダー( 調整×維持×理性)」で21.6%でした。ここまでは「理想の上司」と同じ順位となっていますが、次に多いのは「理想の上司」で3位につけていた「民主型リーダー(調整×変革×理性)」ではなく、「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」でした。一番多い「調和型リーダー(調整×維持×心情)」と正反対の性質を持つ「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」が3番目に多いというのは、組織というものの面白さを感じさせる結果ではないでしょうか。「調和型リーダー」と「開拓型リーダー」では、求められる局面に違いがありそうです。例えば、事業環境がめまぐるしく変わるフェーズと、事業が安定し、着実な運営が求められるフェーズで、リーダー(上司)に任命される人は変わるのではないでしょうか。この点に関しては、後程確認することにしましょう。
それでは、上司のリーダーシップのタイプによって、部下の信頼感や昇進意欲などは異なるのでしょうか。まずは、「上司は、私の幸福を気にかけてくれる」「上司は、仕事についての知識が豊富である」など15項目の平均値(6点満点)で、上司への信頼感を見てみましょう。
「民主型リーダー」は部下からの信頼感が最も高い
<図表6>上司のリーダーシップタイプ別 回答者の上司への信頼感の得点
※参考文献(項目の出典) 繁桝江里. (2017). ポジティブおよびネガティブ・フィードバックが部下のコミットメントおよび成長満足感に与える影響: 上司に対する信頼による媒介効果の検討. 産業・組織心理学研究, 30(2), 159-169.
部下である回答者からは、「民主型リーダー(調整×変革×理性)」が最も信頼感を持たれているということが分かりました(図表6)。そして「共創型リーダー(調整×変革×心情)」「安定型リーダー(調整×維持×理性)」と続きます。時に強権的に見えかねない統率と比較し、穏健派な印象の調整の上司に信頼感を抱く部下が多いようです。
次に、回答者の昇進意欲を見てみましょう。管理職不足が懸念されることも多い昨今、部下の昇進意欲を触発する上司のリーダーシップの在り方は、1つの理想形ともいえると考えられます。「組織で評価され昇進したい」「将来は他の人々を指導し、管理職として仕事をしたい」など9項目の平均値(6点満点)で、部下の昇進意欲が高い上司のリーダーシップタイプを確認してみましょう。
「共創型リーダー」を上司に持つ部下は昇進意欲が最も高い
<図表7>上司のリーダーシップタイプ別 回答者の昇進意欲の得点
※参考文献(項目の出典) 渡邊洋子, 岩瀧大樹, & 山﨑洋史. (2018). 青年期の昇進意欲尺度作成の試み―男女差に着目して― (Doctoral dissertation, Gunma University).
上司が「共創型リーダー( 調整×変革× 心情)」の回答者は、他のタイプと比較すると昇進意欲がやや高い傾向にありました(図表7)。次いで「情熱型リーダー(統率×変革×心情)」であり、変革×心情が共通しています。上司が積極的に変革に取り組みながらも、心情をよりどころに判断している姿を見たメンバーは、リーダーという立場の面白さや親近感を感じやすく、昇進意欲が高まるのかもしれません。そのため、たとえば次世代リーダーとして育成したい若手社員は「共創型リーダー」や「情熱型リーダー」のもとに配属すると有効である可能性があります。
ここまでの結果を見ると、「理想の上司」としても上位だった、調整の性質を持つリーダーシップタイプの各種スコアが高いようです。しかし、組織において、そのようなタイプのリーダーばかり増やせばよいかというと、そうとも限らないでしょう。リーダーシップのタイプによる単純な良し悪しはなく、他のさまざまな要素との掛け合わせによって、うまく職場を牽引できるかどうかが変わってくるものと推察されます。
では、今回のレポートの最後に、「他のさまざまな要素」の1つである「事業環境」による違いを見ていきましょう。「所属している会社の外部環境の状況として、あてはまるものを1つ選んでください」という設問において、「市場の競争状態が激しい」「市場の環境変化の速度が速い」「市場の成長率が高い」に対する回答の平均値によって「事業環境変化群」と「事業環境安定群」に分け、現在の上司のリーダーシップタイプの違いを確認します。なお、「事業環境」以外による上司のリーダーシップタイプの違いに興味を持ってくださった方は、「お問い合わせ」より本調査のデータをお問い合わせいただき、個別にご確認ください。
事業環境によってリーダーに任命される人のリーダーシップタイプは異なる
<図表8>事業環境別 上司のリーダーシップタイプ
維持の性質を持つ「調和型リーダー(調整×維持×心情)」などの4タイプは「事業環境安定群」の出現率が高く、変革の性質を持つ「共創型リーダー(調整×変革×心情)」などの4タイプは「事業環境変化群」の出現率が高い傾向にありました(図表8)。事業環境が安定している組織のリーダーは維持を求められ、事業環境が変化している組織のリーダーは変革を求められるということは、腑に落ちるのではないでしょうか。このことから、事業環境によってリーダー(上司)に任命される人のリーダーシップタイプは異なるといえるでしょう。言い換えれば、現在昇進できないと悩んでいる人であっても、異なる部署や会社では必要とされるリーダーシップを持っていると捉えられるということではないでしょうか。また、管理職の育成に課題を感じている企業等にとっても、事業によって、リーダーシップを発揮しやすいタイプが異なることを鑑みれば、候補者に広がりが出てくるかもしれません。
リーダーシップには多様性がある
「リーダー」は、ともするとステレオタイプなイメージを持たれやすい存在です。しかし、リーダーシップには多様性があり、環境やメンバーの性質によって、どのようなタイプであってもリーダーシップを発揮し得ると考えられます。また、冒頭で学級委員から大統領に至るまで、さまざまな「リーダー」を列挙しましたが、そのような肩書がなかったとしても、リーダーシップを発揮する場面は多くの人にあるのではないでしょうか。そういった意味では、誰しもがリーダーだといえるでしょう。今回のレポートを契機に、自分の、そして周囲の人のリーダーシップの特徴をあらためて考え、それぞれの良さが生かせる場や向き合い方を考えていただければ幸いです。
※本調査では、広く社会に本データを活用いただきたく、回答ローデータおよび各種属性別集計データなどを開示しています。ご希望の方は、「働く人のリーダーシップ調査2024 第1回のオープンデータ希望」と明記の上、「お問い合わせ」よりお問い合わせください。【1月8日までの期間限定】
<調査概要>
執筆者
技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
研究員
大庭 りり子
2015年鉄道会社入社。不動産営業、制作進行管理、知財管理、人事等に従事。2019年国立大学法人入職。研究推進業務に従事。2023年1月より現職。
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