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アルムナイ制度とは? 注目される背景やメリット・デメリット、成功のポイントを解説

  • 公開日:2025/11/10
  • 更新日:2025/11/10

アルムナイ制度とは、一度退職した従業員(アルムナイ)を再び雇用したり、退職後も良好な関係を築いたりする戦略的な人事施策です。
単なる「出戻り制度」にとどまらず、即戦力人材の確保や採用・教育コストの削減、さらには退職者とのネットワークを通じた新たなビジネス機会の創出も期待されています。
「アルムナイ制度とは何か?」という基本から、注目される社会的背景、導入のメリット・デメリット、具体的な導入ステップ、そして制度を成功に導くための重要なポイントまでを解説します。

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アルムナイ制度とは

アルムナイ制度とは

アルムナイ制度とは、企業の退職者を「卒業生」として捉え、退職後も継続的な関係を築く仕組みです。
経験を積んだ元社員を再び迎え入れるカムバック採用や、社外でのビジネス協業などを通じて、企業との新たな接点を生み出します。
この制度は、企業文化を理解した人材の確保に加え、社外ネットワークの強化にもつながる取り組みとして注目されています。

カムバック採用(出戻り制度)との違い

アルムナイ制度は、カムバック採用(出戻り制度)と混同されることがありますが、目的や対象範囲には明確な違いがあります。

  • カムバック採用
    育児や転職などで退職した元社員を再び雇用することで、即戦力を確保する「採用手法」
  • アルムナイ制度
    再雇用にとどまらず、退職者とのネットワークを生かして、より広範な「関係構築」を目指す取り組み

項目

カムバック採用(出戻り制度)

アルムナイ制度

目的

即戦力人材の再雇用

退職者との関係構築と多面的な価値創出

対象者

再雇用を希望する元社員に限定

自社の元社員すべて(再雇用に限らない)

特徴

戦術的な「採用手法」

長期的な「関係構築戦略」

【「アルムナイ」が使われる理由】
従来は「OB(男性)」「OG(女性)」という性別に基づく表現が一般的でしたが、現在は企業が性別を問わず使える表現として「アルムナイ(alumni)」を広く使用するようになっています。
ダイバーシティ&インクルージョンを尊重する企業姿勢を示す言葉選びとしても注目されています。

アルムナイ制度が注目される背景

社会的・経済的な4つの観点から、アルムナイ制度が注目される背景を解説します。

アルムナイ制度が注目される主な背景

  • 働き方の多様化と人材の流動性向上
  • 少子高齢化に伴う労働力不足
  • 中途採用市場における採用難度の高まり
  • 政府による人的資本経営の推奨(経済産業省・厚生労働省の事例)

働き方の多様化と人材の流動性向上

近年では終身雇用の価値観が薄れ、転職を通じてキャリアを築くことが一般的になりつつあります。
さらに、フリーランスや副業といった正社員以外の形で企業に関わる道も広がっています。
そのため、一度退職した人材であっても、再び何らかの形で企業と協働する可能性が高まっているのです。

少子高齢化に伴う労働力不足

日本では生産年齢人口の減少が進んでおり、さまざまな業界で人手不足が深刻化しています。
こうした状況のなかで、優秀な人材の確保は企業の成長に直結する経営課題となっています。
すでに能力や人柄が分かっているアルムナイは、貴重な即戦力人材として企業にとって魅力的な存在です。

中途採用市場における採用難度の高まり

有効求人倍率は高止まりを続けており、特に優秀な人材の獲得競争は激しさを増しています。
そのため、従来の求人媒体やエージェントを活用した採用手法だけでは、望ましい人材と出会うことが難しくなっています。
このような状況において、アルムナイ採用は競合が少なく、自社に適した優秀な人材へアプローチできる有効な手段です。

政府による人的資本経営の推奨(経済産業省・厚生労働省の事例)

経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート2.0」では、多様な人材獲得手段の1つとしてアルムナイ制度の活用が言及されています。
また、厚生労働省も企業の取り組み事例としてアルムナイ採用を紹介しています。
こうした国の方針のもと、「人的資本経営」の一環として、退職後も含めた人とのつながりが企業資産として注目されているのです。
参照:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~(実践事例集)」

アルムナイ制度のメリット

アルムナイ制度には、採用力の強化や企業文化の活性化などのメリットがあります。

アルムナイ制度を導入する主なメリット

  • 即戦力となる人材を採用できる
  • 採用・教育コストを抑えられる
  • 社内に新しい知見や価値観を取り入れられる
  • 企業ブランディング・エンゲージメントの向上
  • 採用のミスマッチを根本から防げる

即戦力となる人材を採用できる

アルムナイは、企業文化や業務フロー、人間関係をすでに理解しているため、入社後すぐに戦力として活躍できる可能性があります。
さらに、他社で培った新たなスキルや視点を持ち帰ってくれることもあり、即戦力としての価値は一層高まります。
オンボーディング(受け入れ研修)にかかる時間も短縮でき、スムーズな立ち上がりが期待できます。

採用・教育コストを抑えられる

アルムナイ制度の活用は、求人広告費や人材紹介手数料といった外部コストが発生しにくい点がメリットです。
また、一から社風や業務を教える必要がないため、教育・研修にかかるコストも大幅に抑えられます。
さらに、面接回数の削減など、採用プロセスの効率化も実現しやすくなります。

社内に新しい知見や価値観を取り入れられる

一度社外に出たアルムナイは、客観的な視点から自社の強みや課題に気づきをもたらしてくれることがあります。
他社で得たノウハウやビジネスモデルを活かし、新たな視点から実際の業務への還元や、既存のやり方にとらわれない柔軟な発想が、社内のイノベーションを後押しする場面も期待されます。

企業ブランディング・エンゲージメントの向上

「再入社したくなるほど良い会社」という印象は、採用市場における企業の魅力を高める効果があります。
また、アルムナイが復帰する姿を見た在籍社員にとっても、企業が人材を大切にしているという安心感を得られるでしょう。
さらに、アルムナイとの良好な関係は、SNSなどでのポジティブな発信にもつながり、企業の評判向上にも寄与します。

採用のミスマッチを根本から防げる

すでに就業経験のあるアルムナイは、社風や業務内容への理解があるため、入社後のギャップが生じにくい傾向があります。企業側も人柄やスキルを把握しているため、期待とのズレが少なく、結果として早期離職が起こりにくくなります。

アルムナイ制度のデメリットと対策

アルムナイ制度は多くのメリットをもたらす一方で、運用にはいくつかの課題やリスクも伴います。

アルムナイ制度を導入する主なデメリット

  • 既存従業員の不満やモチベーション低下のリスク
  • 安易な離職を助長する可能性
  • 退職後のスキルギャップやカルチャーフィットの問題
  • 関係維持のためのコミュニケーションコストの発生

それぞれのデメリットに対する対策も併せてご確認ください。

既存従業員の不満やモチベーション低下のリスク

アルムナイが好待遇で復帰した場合、長く在籍してきた社員が不公平に感じてしまう可能性があります。
特に「自分より後に入った人が上司になる」といった状況では、人間関係に軋轢が生じることもあるかもしれません。

【対策】
処遇や役職の決定プロセスを透明化し、誰もが納得できる評価基準を設けておくことが望まれます。

安易な離職を助長する可能性

「辞めても簡単に復職できる」といった誤解が広がると、退職のハードルが下がり、離職を軽く考える風潮が生まれてしまう懸念があります。
結果として、組織全体の定着率が低下し、人材の流出が進む可能性があります。

【対策】
「復職には一定の条件がある」と明確にルール化し、社内全体に周知しておくことが大切です。

退職後のスキルギャップやカルチャーフィットの問題

退職後に業界や技術が変化していると、本人のスキルが低下している可能性があります。
また、長期間離れていた場合には、本人の価値観が変化し、企業文化とのズレが生じている可能性に注意が必要です。

【対策】
選考時に現在のスキルを正確に見極め、必要に応じて情報提供や研修の機会を設けることが求められます。

関係維持のためのコミュニケーションコストの発生

退職者ネットワークを維持するためには、イベントの企画や情報発信など、継続的な運営コストが発生します。
専任の担当者を配置する場合、人件費に加え、システムやツールの導入・運用費も必要になるケースがあります。

【対策】
自社のリソースに応じて、費用対効果を意識しながら無理のない範囲で施策をスタートすることが現実的です。

アルムナイ制度を導入する5つのステップ

アルムナイ制度を導入する5つのステップ

アルムナイ制度を効果的に運用するためには、計画的なステップで準備を進めることが重要です。

導入から運用までの5つのステップ

  1. 制度の目的と復職条件を明確にする
  2. 退職者との関係維持方法を構築する
  3. 制度の対象者(在籍者・退職者)へ周知する
  4. 社内の受け入れ体制と公平な評価基準を整備する
  5. アルムナイ専用の採用フローを設計する

1.制度の目的と復職条件を明確にする

アルムナイ制度を導入する際は、まず目的を明確にすることが出発点となります。
制度を通じて何を達成したいのかを定義することで、社内の方針や運用方針にも一貫性が生まれます。

【制度導入の目的の例】

  • 即戦力の再確保
  • 将来の幹部候補の獲得

併せて、復職対象となる人材の条件も明確にしておきましょう。
基準を設定することで、対象者の選定がスムーズになります。

【対象者の条件例】

  • 勤続3年以上
  • 特定の役職経験者

また、懲戒解雇など制度の対象外となる退職理由についても、あらかじめ基準を設けておくとスムーズです。

2.退職者との関係維持方法を構築する

アルムナイとの関係を継続的に保つには、連絡手段としてFacebookグループや専用アプリなど、どこを基盤にするかを決めておく必要があります。

また、定期的なイベントの開催やニュースレターの配信などを通じて、どのような情報を発信し、接点を維持していくかを設計しておくことが求められます。
さらに、運用は誰(人事部、現場など)が担当し、どの頻度で実施するのかといった役割分担も明確にしておくと運営しやすくなります。

3.制度の対象者(在籍者・退職者)へ周知する

アルムナイ制度を効果的に運用するためには、退職時の面談(オフボーディング)の段階で、アルムナイネットワークの存在と登録方法を丁寧に案内しておくとよいでしょう。
在籍社員には、社内ポータルや社内報を通じて、制度の意義や目的を分かりやすく伝えておくことが重要です。
併せて、復帰したアルムナイの活躍事例などを紹介することで、制度に対するポジティブな印象を浸透させる工夫も有効でしょう。

4.社内の受け入れ体制と公平な評価基準を整備する

アルムナイを受け入れる際は、配属予定部署のマネジャーやメンバーに対して、復帰に至る経緯や期待される役割を事前に共有しておくことが望まれます。
また、既存社員との間で不公平感が生じないよう、客観的な事実に基づいた給与や役職のルールを整備しておくことがポイントです。
復帰後のキャリアパスや相談窓口などをあらかじめ用意しておくことで、アルムナイのスムーズな再適応をサポートしやすくなります。

5.アルムナイ専用の採用フローを設計する

通常の中途採用とは別に、アルムナイ向けには簡略化された選考プロセスを設けておくと、より効率的な運用が可能になります。
例えば、書類選考や一次面接を免除したり、リファレンスチェックを省略したりといった対応も検討される場面があるかもしれません。
面談の際は、スキルや実績の確認よりも、「復帰後にどのような形で貢献していくか」といったビジョンや貢献イメージのすり合わせに重きを置くとよいでしょう。

アルムナイ制度を成功に導く重要なポイント

アルムナイ制度を生かすには、制度設計と併せて、退職時以降の関係づくりも大切です。

アルムナイ制度を成功に導く重要なポイント

  • 「円満退職」を促すカルチャーとオフボーディング
  • 企業や事業の魅力を退職後も発信し続ける
  • 多様な働き方の選択肢(時短・リモート等)を用意する

「円満退職」を促すカルチャーとオフボーディング

従業員の退職時の体験は、後の関係性に大きな影響を及ぼします。
円満な退職を実現することで、将来的な再接点の可能性が広がります。

  • 退職理由を丁寧にヒアリングし、感謝の気持ちと共に送り出す姿勢を大切にする
  • 「将来的な復職を歓迎する」というメッセージを添えて、前向きな印象で終える
  • 退職手続きを形式的に済ませるのではなく、貢献への称賛をしっかり伝える

企業や事業の魅力を退職後も発信し続ける

退職後も企業に誇りや親しみを持ち続けてもらうには、情報発信の工夫が重要です。
継続的な接点が、アルムナイとの信頼関係の維持につながります。

  • 事業の成長や社会貢献など、ポジティブなニュースを定期的に届ける
  • プレスリリースや新サービス情報、メディア掲載などの共有を通じて関心を維持する
  • アルムナイ限定イベントの開催などにより、経営層から直接ビジョンを語る機会を設ける

多様な働き方の選択肢(時短・リモート等)を用意する

ライフステージの変化により離職した人材が、柔軟に復帰できる環境を整えることで、アルムナイの再雇用を現実的な選択肢にすることができます。

  • 育児や介護など、それぞれの事情に応じた働き方を許容する
  • フルタイムに限らず、時短勤務やパートタイム、業務委託といった多様な関わり方を提示する
  • 柔軟な制度設計が、企業の魅力向上やアルムナイからの信頼感につながる

まとめ:アルムナイ制度は、退職者を「資産」と捉える未来志向の経営戦略

アルムナイ制度は、退職者を「資産」として捉え、継続的な関係を築く未来志向の人事戦略です。
採用コストの削減や即戦力の確保といったメリットがある一方で、既存社員への配慮や制度設計を丁寧に行わなければ逆効果となる可能性もあります。
在籍中から退職後まで一貫して良好な関係を保ち、「いつでも仲間である」というカルチャーを育てる姿勢が、制度成功の鍵を握ります。

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