連載・コラム
採用戦略~未来に向けた採用の在り方~ 第2回
採用ブランディングのステップ
- 公開日:2025/02/25
- 更新日:2025/03/06

社会情勢やビジネスシーンの変化により、注目度が高まっている「採用戦略」をテーマとし、3回に分けてお届けしている本コラム。第1回では、採用競争が激化する背景や、企業を取り巻く課題などについて紹介しました。
第2回となる本記事では、採用戦略の外部視点を、特に「採用ブランディング」や「ターゲットの惹きつけ」に焦点を合わせて解説します。
採用活動における外部視点の重要性
採用ブランディングとは、企業が求職者に対して魅力的に映るように、自社の価値観や文化、働く環境を発信し、ブランドを確立する活動を指します。ターゲットに応じたメッセージや採用手法を設計し、長期的に優秀な人材を惹きつけることが目的です。
採用活動で自社が求める優秀な人材を獲得するには、外部視点を取り入れた採用ブランディング、ターゲット人材の惹きつけが重要となります。どれだけ求める人材を明確に定義し、それに合わせて選考基準を設計しても、応募者にターゲット人材が含まれていなければ、求める人材は獲得できません。
単に企業の認知度を高めるだけでは不十分であり、ターゲットとなる人材が「自分に合う」と感じる採用ブランドを築く必要があります。確立すべき採用ブランドは、企業ブランドと必ずしも一致しないため、採用活動に特化したブランディングが必要です。
一般的に、企業ブランドと採用ブランドは混同されがちですが、目的が異なります。企業ブランドが、商品・サービスを通じて顧客に提供する価値をイメージするものであるのに対し、採用ブランドは求職者に対して「就職先としての魅力」を訴求するものになります。商品・サービスの価値と、採用マーケットでのブランド力は必ずしも一致しません。
また、企業ブランド、商品・サービスを魅力に感じ応募してくる人材が、求める人材とは一致しないということもあり得ます。
<図表1>企業イメージに対して応募者が抱くギャップ

前回の第1回で記載したように、商品・サービスのファンであるだけでは、自社の求める人材と一致しないことはよくあり、これはB to Cの企業で多い事象です。特に新卒採用では、将来の経営人材候補の採用という側面もあるため、経営者視点を持つ人材を期待することから、商品・サービスのファン層とは異なる人材がターゲットとなることはむしろ多いように思います。そのため、求める人材が魅力に感じ、共感するような採用ブランドの確立が求められているのです。
採用ブランディング施策の再検討
社会人経験・業界での仕事経験のない学生をターゲットとする新卒採用では、採用ブランドが大きな影響力を持ちます。ここからは、新卒採用を前提として、採用ブランディングの再検討の流れについて解説します。
ステップ1.現状分析
自社の採用ブランドの現状を把握するために、まずは自社への応募者の情報を活用することが重要です。採用マーケット全体での認知を調査・確認する前に、まずは既に接点を持っている「自社への応募学生」から得られる情報を十分に活用することから始めましょう。
「競合企業はどこか」「応募のきっかけは何か」「選考プロセスで企業イメージがどのように変化したか」「志望度の変化」「承諾や辞退の決め手」などの情報は、自社の採用ブランディング観点での強みや課題を明らかにするためにとても重要になります。
<図表2>採用活動を振り返るフレーム

ステップ2.ターゲット設定
新卒採用では、あらゆる学生から魅力的に感じてもらう必要はありません。ターゲット像を明確にしたうえで、求める人材にとって魅力的かつ共感できるメッセージを訴求することが重要です。ステップ1で現状分析が重要だとお伝えしましたが、募集段階や選考段階で応募者が何に魅力を感じていたか、という観点だけでなく、最終的に内定を出すような「自社がほしい人材」「ターゲット人材」が自社をどのように捉えていたのかが重要です。ターゲット人材が、応募時に自社をどのような企業だと認識し、何に魅力を感じていたか、選考プロセスのなかで、企業イメージは変化したのかといった観点から調査する必要があります。
ターゲットを明確にせず、幅広い学生からの認知を把握することも目的によっては有効ですが、不合格者の声に過剰に影響されると、効果的な施策の検討につながらないおそれがあります。
例えば、グローバル人材を採用したいため、海外でのキャリア形成をアピールしているなかで、ターゲットでない学生が感じたネガティブな印象に対処する必要はどれほどあるでしょうか。それよりも、ターゲットとなる学生が何に魅力を感じているか、そして彼らの「もっとこんなことがあれば」という意見を、しっかりと受け止める必要があるのではないでしょうか。
<図表3>ターゲット人材とターゲット外人材

<図表4>ターゲットの設定

ステップ3 .打ち手の検討
ターゲットとなる学生が自社をどのように捉えているかが分かったら、学生に訴求したいポイントや今後の施策について検討します。
<図表5>承認/辞退理由と事実関係の整理

まずは上記の図5のように、ターゲット人材の承諾/辞退理由のうち、事実と事実ではないことを整理しましょう。特に、事実かつ承諾理由となっているものは、メッセージとしてより訴求を強めていくような打ち手を検討します。
事実ではなく辞退理由となっているものについては、誤解を解くためのコミュニケーション施策が必要です。これが採用ブランディング上で、マイナスの影響を及ぼしている可能性が高いためです。例えば、学生が過去の情報から「長時間労働」というイメージを持っていた場合。現在はそのような事実がないのであれば、働き方改革の実施など具体的な事実情報の提示で、過去からの変化などをアピールしていく必要があります。
また、「社員が魅力的でない」「面接官が厳しい」など、学生の対応にあたった社員の振る舞いにより、情報の受け取り方に差が出てしまうこともあります。そのため、社員の対応におけるスタンスの改善、トレーニングといった打ち手も必要となってくるでしょう。
さらに、辞退する学生が将来の顧客や取引先となる可能性がある点にも注意が必要です。事実ではないマイナスイメージを持たれてしまうことは、事業にもネガティブな影響を及ぼす可能性があります。採用活動はそれほど外部との接点が大きい活動なのです。
一度持たれたイメージを変えることは一朝一夕では難しいもの。特に理系学生などは、研究室の先輩から企業イメージを聞いていることも多く、口コミの情報を信頼する傾向のある昨今の若い世代の認識を変えていくには、継続的かつ地道な施策が必要です。なかにはアピールしたい事実情報、誤解を解くための事実情報をまとめ、毎年応募者と接する社員に展開している企業もあります。
インターンシップの重要性
昨今の採用活動において、インターンシップは欠かせない施策です。文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意によるインターンシップの類型化で、インターンシップの教育的な位置づけはさらに強化されました。
インターンシップは、学生側にとってキャリア形成に役立つ教育的な意味がありますが、企業にとっては採用活動上で大きな意義を持ちます。仕事体験を通じて自社の魅力と企業文化を直接伝えられるため、学生の自社への興味や動機付けを高める機会となり、採用ブランドに影響を及ぼすからです。
インターンシップの類型化においてタイプ3に分類された、5日以上の職業体験のあるインターンシップでは、多数の学生を一度に受け入れることが難しく、参加前に選考を課す企業も増えています。そのような事前選考が必要な企業のインターンシップにもかかわらず、本選考に応募しない学生が出ていることも、現在課題となりつつあります。
このような「インターンシップに参加するも、その後応募しない」学生について、なぜ応募しないのか、選考参加を辞退する理由は何かを把握したい企業が増えています。これは、インターンシップ参加後の未エントリー者を調査することで、「事実ではない未エントリー理由」を明らかにすることができます。インターンシップに参加した学生の感想は、次年度以降の学生にも影響するため、重要な情報です。どこにギャップが発生しているか、インターンシップ施策の見直しを行うことも重要となってくるでしょう。
まとめ
あらためて、外部視点を取り入れた採用ブランディングやターゲットの惹きつけは、優秀な人材を獲得するうえで、特に新卒採用において非常に重要です。まずは自社がターゲットとする応募者が、選考プロセス全体を経て、どのような認識を持っているかを把握することが、採用戦略を描く第一歩です。
次回は、内部視点からどのようなアプローチで採用戦略を描くべきか、外部視点との連携を探っていきましょう。
執筆者

コンサルティング部
3グループ
シニアコンサルタント
馬越 かおる
1998年、株式会社人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)に入社。
営業、人事制度・組織開発コンサルタントを経て、採用領域事業の経営企画・統括、商品プロジェクトリーダーを経験。
現在は採用・新人若手領域のコンサルティング業務に従事。
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