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交渉力とは? 成果を引き出すスキルと実践のコツを解説
- 公開日:2025/11/04
- 更新日:2025/11/04
交渉力とは、相手を言い負かすための技術ではなく、対話を通じて双方が納得できる結論へ導くための力です。
自分の意見を一方的に押し通すのではなく、相手の立場を理解したうえで、互いにとって最適な着地点を見つけることが求められます。
その結果、関係性を損なうことなく、ビジネス上の成果につなげることができます。
本記事では、交渉力の基本的な考え方から、ビジネスの現場で生かすためのスキルや実践のコツ、トレーニング方法までを解説します。
交渉力とは

交渉力とは、立場や利害関係の異なる相手と話し合いを通じて、双方が納得できる結論を導き出す力です。
ビジネスやマネジメントにおいては、プロジェクトの進行や組織の目標達成を支える重要なスキルとされています。
一方的に自分の要求を押し通すのではなく、相手の状況や優先事項を理解したうえで、双方にとって現実的かつ実行可能な合意点を見つけることが求められます。
交渉力には、大別すると勝者と敗者が生まれる「ゼロサム型」とお互いが長期的にwin-winな関係となる「協創(統合)型」の2つがあります。
本記事で取り上げる交渉力とは、後者の「協創型」の交渉を通じて、長期的な信頼関係と成果を両立させるスキルを指します。
交渉力がある人に共通する特徴
交渉力がある人、または交渉に必要な力は以下のとおりです。
交渉力がある人に共通する特徴
- 自分本位な主張は避ける
- 必要な場面で適切に断ることができる
- 相手の考えや意図を正確に理解する
- 冷静さを保ち、感情に流されない
一般的に「交渉力」とは、相手と対立するのではなく、共に納得できる着地点を探る「協創(統合)型」のスキルを指す場合が多いです。
そのため、特定の業務に限らず、幅広い人間関係に応用できる重要なソフトスキルといえるでしょう。
自分本位な主張は避ける
交渉力のある人は、自分の要求を通すだけでなく、お互いが利益を得られる「複数の選択肢」を探す視点を持っています。
自分の都合だけを押し付ければ、相手は防御的になり、交渉は「ゼロサムゲーム(奪い合い)」に陥りがちです。
その一方で、交渉上手な人ほど「相手にとってのメリットは何か?」「何を大切にしているのか?」を深く理解しようと努めます。
この「相手視点」を持つことが、単なる妥協点ではなく、より創造的な解決策を生み出し、長期的な信頼関係の土台となります。
必要な場面で適切に断ることができる
長期的な関係を築けるビジネスパーソンは、交渉において「NO」と言うことができます。
交渉で「NO」と伝えることに、ためらいを感じる人も少なくありません。
しかし、交渉における「NO」は関係の終わりではなく、健全な境界線を引くための重要なサインです。
安易に「YES」と答えることは、一時的な回避策にはなりますが、自分自身の立場、さらには会社の立場を弱めてしまう可能性があります。
交渉上手な人は、不利な立場・条件となる場面でしっかりと「NO」を伝えると同時に、「ここまでならできます」といった代替案を提示することができます。
即座に代替案を提示できなくとも、「一度検討させてください」など、無理なことには簡単に「YES」と言わない引き出しを持っています。
こうしたスキルは、一定の経験が必要ですが、社内でグループワークを行うなど、日常から意識的に取り入れていくことが大切です。
相手の考えや意図を正確に理解する
交渉力がある人は、お互いのゴールを正確に把握しています。
交渉を円滑に進めるためには、相手の発言や態度を表面的に捉えるのではなく、なぜそのような言動を取っているのか、背後にある理由や意図を客観的に分析し、相手が解決してほしい本当の課題を見極められるようにしましょう。
例えば、交渉相手が値引きを打診してきたとき、本来は値引きが目的ではなく、「上司を説得する材料がほしい」というような、隠れた本音があるかもしれません。
このような視点を持つことで、相手の立場を尊重しつつ、双方が納得できる合意点を見つけやすくなります。
冷静さを保ち、感情に流されない
交渉の場で不利な条件を提示されたり、相手が高圧的な態度を取ったりすると、感情的になってしまうことがあります。
しかし、交渉力が高い人は、湧き上がる感情を一時的な反応として客観視し、感情に支配されることなく冷静な判断力を保ちます。
重要なのは、相手や自分に対して怒る(=感情をぶつけ返す)のではなく、冷静に気持ちをコントロールし、二次的なトラブルを防ぐことです。
そのために、「相手を言い負かそう」という発想から離れ、「この問題をどう解決するか」という視点に切り替えます。
相手と自分は、対立する敵ではなく、課題を共に解決するパートナーなのだと捉え直します。
常にお互いに助け合い、課題解決に取り組むという客観的な立場に立てる冷静さこそが、無用な対立を避け、建設的な解決策を探すための土台を築きます。
交渉を成功に導くための実践的コツ
交渉は、交渉前・交渉中・交渉後の各フェーズが連動する一連のプロセスです。
このプロセス(準備・実行・フォロー)を意識して実践することで、交渉力を着実に高められます。
【交渉前】成功に向けた土台づくり
交渉は、事前準備が成果を大きく左右します。
交渉の土台となる事前準備を、3つのステップで整理します。
1.相手を徹底的にリサーチする
相手の立場や関心事、過去の事例や意思決定の傾向など、可能な限り情報を集めます。
事前リサーチを丁寧に行い、相手理解の解像度を上げたうえで、何が問題・課題で、どのような提案が響くかを仮説化しておきます。
2.ゴールを定めておく
今回の交渉におけるゴールを明確化します。
その際、以下を事前に整理しておくと交渉がスムーズになり、必要な場面で「NO」を伝える判断基準としても有効です。
- MUST(最低ライン): 絶対に譲れない条件
- WANT(理想ライン): できれば実現したい理想の条件
- 交渉材料(交渉カード): WANT実現に向けて、こちらが譲歩可能な条件
3. 複数のシナリオを想定する
相手が提案にどう反応するかを複数パターンで予測し、対応策を事前にシミュレーションしておきます。
不測の事態でも感情的にならず冷静に対応する助けとなるため、可能であればロールプレイングで検証しておくと有効です。
【交渉中】落ち着いた対話と信頼構築
交渉中は、相手の反応や場の空気に流されず、落ち着いた姿勢を保つことが重要です。
冷静さを保つことで、自分の主張や相手の意図を見失わずに交渉を進めることができます。
以下のポイントを意識しましょう。
● 事前準備を振り返る
交渉中も、自分がまとめた「譲れない条件」と「妥協できる条件」を確認し、焦らず自分のペースで話を進めます。
● 相手の話をしっかりと聴くことに専念する
相手の話を最後まで聴き、立場や背景を理解することで、単なる主張のぶつけ合いを避けられます。
● 自分の主張は結論から論理的かつ簡潔に伝える
自分の考えや主張は、まず結論を簡潔に伝え、その後に理由や具体例を要点を押さえて説明します。
PREP法などの会話の型を事前に決めておくと有効で、必要に応じて練習しておくことをお薦めします。
● 常に準備した「ゴール」へ立ち戻る
交渉の進行中も、ゴールを確認しながら脱線せずに進めます。
交渉中は話が脱線し、結論が決まりにくくなることがあります。
その都度、MUST(最低ライン)とWANT(理想ライン)を確認し、冷静に軌道修正できるようにしましょう。
【交渉後】合意内容の整理と次へのつなぎ方
交渉は、合意で終了するものではありません。
双方がwin-winの関係を維持できるよう、丁寧なフォローが重要です。
具体的には、以下のアクションを実践しましょう。
1.合意内容を「見える化」し、認識を合わせる
合意内容をメールや議事録に記録し、双方が同じ認識を持っていることを確認します。
これにより、後から認識のズレが生じるリスクを防ぐだけでなく、「話を整理してまとめる人物」という印象を与え、相手からの信頼も高まります。
2.関係を「育てる」一言を添える
事務的な連絡だけでなく、「〇〇様のおかげで、非常に建設的な話し合いができました。ありがとうございました」といった感謝の言葉を添えます。
合意内容の確認に加え、相手への感謝やフォローの一言を添えることで、関係性の維持・強化に役立ちます。
このような姿勢が、次の協力関係をよりよいものにしていきます。
実践的な交渉力を高めるための基礎スキル

交渉力を高めるための基礎スキルは以下のとおりです。
- 相手の話を聴き、整理する力
- 柔軟に物事を捉える対応力
- 解決に向けた思考と構築力
- 伝わるプレゼンテーション力
優れた交渉力は、単なる駆け引きのテクニックだけでなく、相手の話を整理し、柔軟に対応し、解決策を構築し、それを相手に伝える力によって成り立ちます。
これらのスキルを意識することで、相手との信頼関係を築き、納得感のある合意を導くことができます。
相手の話を聴き、整理する力
交渉の出発点は、相手を深く理解することです。
相手の話をただ聴くだけでなく、立場や意図、悩みの背景や本当のニーズを丁寧に把握しましょう。
「つまり、〇〇ということですね?」と確認して認識を合わせたり、「なぜその点にこだわるのですか?」と質問したりするなど、対話を整理する力が求められます。
話を聴き、整理する力は、交渉におけるすべての土台となる重要なスキルです。
柔軟に物事を捉える対応力
交渉の場では、予期せぬ展開や新たな情報に直面することも少なくありません。
あらかじめ用意した戦略や計画に固執することは、1つのプランしか知らない旅行ガイドのようなものです。
例えば、雨の場合は屋内中心の観光に切り替え、晴れているならテラスのあるレストランでランチを楽しむ、といった具合に、状況に応じて考え方を柔軟に切り替える能力が求められます。
新しい情報を常に取り入れ、その情報をどのように活用できるかを意識することで、柔軟な対応力を養うことができます。
解決に向けた思考と構築力
交渉では、単に意見をぶつけ合うのではなく、双方のニーズを満たす解決策を探ることが求められます。
そのためには、問題の本質を見極め、論理的に筋道を立てて考える力と、既存の枠組にとらわれずに新たな解決策を構築する創造的思考力が必要です。
普段からフレームワークにあてはめて考えたり、主観だけでなく複数の視点から検討したりするなど、意識的なトレーニングを積むことで養うことができます。
伝わるプレゼンテーション力
優れた提案も、相手に「実行したい」と思わせる伝達力がなければ意味がありません。
論理的な根拠を示すだけでなく、誠実さや相手への配慮を感じさせる伝え方を意識しましょう。
また、話術による伝達技術を磨くことはもちろん、数字や事例など具体例を準備する事前の配慮も重要です。
必要であれば、簡単な資料を用意し、視覚的に伝える工夫も取り入れましょう。
こうした小さな工夫を積み重ねることで、交渉は単なる会話の場から、実行につながる建設的な場へと変化します。
課題解決のための思考プロセス・スキルを習得する課題解決研修
相手に分かりやすく伝える実践的なスキルを習得するプレゼンテーション研修
交渉力を高めるための交渉力研修
交渉力は一朝一夕で身につくものではなく、実践的な経験と訓練を通じて少しずつ磨かれていきます。
研修や日常の練習を通して、相手の立場に立つ力や自分の交渉スタイルを客観的に見直してみましょう。
ロールプレイで交渉を実践的に学ぶ
交渉力を高めるには、ロールプレイを取り入れた実践的な練習が有効です。
比較的取り入れやすいため、普段の業務や日常生活のなかでも実践してみましょう。
・本番を想定してシミュレーションする
社内で上司や同僚に顧客役をお願いし、実際の交渉をシミュレーションしてみることで、話し方や対応のポイントがより具体的に見えてきます。
・必ずフィードバックをもらう
練習後にフィードバックを受けることで、自分では気づかなかった課題や改善点に気づきやすくなります。
・立場を交換して視点を変えてみる
立場を逆にして顧客役を演じることで、相手の心理や立場を想像しやすくなります。より実践的な対応を意識して練習してみましょう。
事例分析から学ぶ交渉の成功と失敗
交渉力を高めるには、これまでの成功事例や失敗事例を振り返ることが重要です。
蓄積したパターンを、自分のスキルとして落とし込むことを意識しましょう。
・振り返りを行う時間をつくる
うまくいった理由や、逆にうまくいかなかった原因を振り返ることで、自分自身の交渉スタイルを客観的に見つめ直すきっかけになります。
・成功事例は再現性がないか分析する
成功事例からは、相手に響きやすい伝え方や状況に応じた解決策のヒントが見えてくるかもしれません。
次も成功できるように、どのように再現するかを分析することが重要です。
・失敗事例は防ぎ方を分析する
失敗事例からは、思わぬ落とし穴やコミュニケーションのズレが明らかになるかと思います。
何が足りていなかったのか、もし次に同じ場面になったらどう防ぐかを主軸に分析してみましょう。
まとめ
交渉力は、相手を言い負かす技術ではなく、対話を通じて双方が納得できる解決策を導く力です。
相手の立場や意図を理解し、冷静かつ柔軟に対応しながら、自分の意見もしっかりと伝えることが求められます。
こうしたスキルは一朝一夕では身につきませんが、実践的な練習や事例分析を重ねることで、少しずつ磨かれていきます。
信頼関係を築きつつ成果を引き出せる交渉力を育てるために、日常やビジネスのなかで意識して取り組みましょう。
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