用語集
メンター制度とは? メリットや導入する際の流れ、注意点を解説
- 公開日:2024/10/28
- 更新日:2024/10/28
主に新入社員の気軽な相談相手として、先輩社員がサポートする「メンター制度」は、対象の社員だけでなく実施する企業にとっても利点の多い取り組みです。本記事では、そんなメンター制度のメリットや導入の方法について詳しく解説します。
メンター制度とは
メンター制度とは、経験の浅い社員の相談相手として先輩社員を配置し、双方向の対話を通して日々の課題解決や悩みの解消、個人の成長をサポートする社内制度のことです。慣れない環境で働く社員にとって、気軽に相談できるメンターの存在は非常に心強く、仕事への自信や安心感につながります。
また、社内コミュニケーションの活発化など、メンター制度は社員の所属する企業にもたくさんのメリットをもたらします。特に、昨今は社員の育成・定着に効果的な取り組みとして、多くの企業でメンター制度の導入が進められています。
メンター・メンティとは
メンター制度の「メンター(mentor)」とは、指導・助言を行う者という意味の言葉であり、同制度においてはサポートを行う先輩社員を指します。メンターには基本的に直属の上司ではなく、対象の社員と年齢・勤続年数の近い先輩社員が選ばれます。
一方で、メンター制度においてサポートを受ける側の社員は「メンティ( mentee )」と呼ばれます。こちらは新入社員のほか、若手社員や役職に就いて日が浅い社員などが対象となります。
OJTとの違い
OJTとは、主に職場内での実際の業務を通じて新入社員の能力を高めていく育成方法です。状況に応じて先輩社員が助言を行う点はメンター制度と似ていますが、OJTは実務に関する指導が中心であり、直属の上司が指導を担うケースもあります。
エルダー制度との違い
メンター制度と似た制度としてよく挙げられる「エルダー制度」は、先輩社員が指導担当として経験の浅い社員のスキルアップを支える制度です。
いずれも直属の上司でない先輩社員が新入社員の活躍をサポートする制度ではあるものの、エルダー制度が知識や技術の育成を目的としたOJTの一種であるのに対し、メンター制度は被支援者の抱える課題の解決に向けた良き話し相手としての支援がメインであり、業務上で関わりのない先輩社員が支援者として選定され得る点が異なります。
メンターとコーチの比較
対話や助言を通じた1対1の個別支援であるという点から、メンターは「コーチ」とも共通点の多いポジションといえます。ビジネスにおけるコーチとは、仕事に必要な能力や資質を、社員が自力で獲得できるように支援する「コーチング」を行う存在のことです。メンター制度において、メンターは必要に応じてアドバイスを行い、共に悩みや課題の解決を目指すのに対し、コーチングにおいて、コーチは相手の能力を引き出すことを目的としている点で異なります。
メンター制度が注目される理由
メンター制度が近年多くの企業で導入されている背景には、働き方の変化に伴う離職率の上昇があります。厚生労働省の発表によれば、令和2年の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で37.0%、新規大卒就職者では32.3%にのぼります。
加えて、昨今は少子高齢化の影響による労働人口の減少も大きな問題となっています。そんな現代において、企業には限られた人材のメンタルをいかにケアし、安定的な活躍や定着につなげるかが問われているのです。
メンター制度のメリット
メンター制度の実施には、メンター・メンティ・企業のそれぞれに利点があります。ここからは、メンター制度のメリットを立場ごとに解説します。
メンターになることのメリット
責任感が高まる
メンターはただ相談に応じるだけの存在ではなく、新入社員から頼られ、目指すべきロールモデルとなるポジションです。そのため、メンターの役割を務めることは、社員および社会人としての責任感の向上につながります。
コミュニケーションスキルが向上する
メンターとして新入社員の相談に応じるなかで、悩み・課題を聞き出すヒアリングの能力や、相手の立場に立って適切なアドバイスを行う力などが育まれます。
こうしたコミュニケーションスキルは社会人の基礎ともいえる能力であり、メンターとしての役割を果たすうえではもちろんのこと、日々の業務のなかでも役立つはずです。
管理職になった時に経験を生かせる
社員への助言やメンタルケアといったメンターの担う役割は、マネジャーなどの管理職の仕事と多くの点で似通っています。将来管理職になる時に備えて力をつけておくという意味でも、メンターになることは有意義な取り組みといえます。
なかでも、業務やキャリアに関する「目標設定」は、メンターと管理職に共通して求められる重要なノウハウです。詳しく知りたい場合には、以下の記事を参考にするとよいでしょう。
メンティにとってのメリット
仕事の不安や悩みを相談しやすい
新しい仕事や環境に移って間もない社員は、まだ周囲と十分に打ち解けていないこともあり、問題を独りで抱え込んでしまいやすい傾向にあります。しかし、会社が設けたメンターという明確な窓口があれば、新入社員でも不安や悩みを気軽に相談できます。
職場に馴染みやすくなる
企業は学校とは異なり、多岐にわたる年齢・立場の社員が在籍しているため、入社したばかりの社員にとっては関係を築きにくい環境です。そんな孤立しやすい新入社員にも、メンターは優しく寄り添い、スムーズに人間関係に加わる後押しをしてくれます。
また、メンターは基本的に直属の上司ではない先輩社員が務めるため、業務での関係性を超えた結びつきが生まれることも、メンティが職場に馴染むうえで大きな助けとなります。
業務や会社に対しての理解が深まる
新入社員は業務で関わる領域や社員が限定的であり、組織の全体像を把握することが難しい立場にあります。そんな会社や業務についての不明点を質問できる相手としても、すでに一定の知識と経験を持つメンターは頼りになる存在です。
企業側のメリット
離職率が低下する
早期退職の原因となる心理的ストレスや職場の人間関係の改善には、社員が不安や悩みを気軽に相談できる環境づくりが大きな効果を発揮します。
さらに、メンターとメンティのように社員同士の結びつきが強まることは、社員の会社への愛着(エンゲージメント)の向上にもつながります。こうした点から、メンター制度は人材の定着を促し、離職率を低下させるための取り組みとしても有効です。
社員の指導力向上につながる
メンター制度は良き相談相手としてのサポートを中心としているものの、一人ひとりの新入社員に適切なアドバイスを行うという経験は、そのほかの指導でも生かすことが可能です。
社員に対する指導力は、普段の業務のなかでは一部の教育担当や管理職でなければ、あまり磨く機会のないスキルです。しかし、メンター制度を導入して多くの一般社員にメンターを任せれば、社内全体で指導力の向上が図れます。
社内の風通しがよくなる
部署の垣根を越えてメンター・メンティが選ばれるメンター制度には、意見交流を活発にする効果も期待できます。制度導入によって、意見や悩みを遠慮なく話せる場が生まれれば、組織自体の風通しのよさも高まるでしょう。
メンター制度を導入する流れ
ここからは、実際にメンター制度を導入する際の一連の手順を紹介します。
メンター制度の目的を明確化する
メンター制度の導入にあたって、まずは目的をはっきりさせる必要があります。導入によってどんな効果を上げ、どんな課題を解決したいのかなど、導入目的を明確にしましょう。
また目的が決まったら、その内容を周知することも忘れてはなりません。何のための制度なのか趣旨を丁寧に説明することで、社員も納得して制度に参加できるようになります。
社内のルールや運用体制を構築する
継続的にメンター制度を運用するためには、社内環境やルールの整備が欠かせません。相談の機会はどのように設定するのか、リモートワークの場合はどうするのかなど、導入後に起こり得るさまざまな事態を想定しながら運用体制を整えていきましょう。
そのほか、メンター制度の実施には周囲の協力も不可欠なため、事前に関連する部署から合意を得ておくことも大切です。
メンターとメンティのマッチングを行う
運用体制を確立できたら、次は実際にメンターの役割を任せる社員を選んでいきます。メンターには、制度の目的や自らの役割をしっかりと理解している社員が適しています。
ただし、メンターの選定は会社側が一方的に行うのではなく、社員ごとの希望や意欲に広く耳を傾けることが重要です。また、メンターとメンティは1対1で関係性を築くため、マッチングにあたっては双方の相性も意識しましょう。
事前研修を開催する
メンター制度の目的やルールを学ぶ研修の実施も、制度の運用前に行っておきたい準備の1つです。加えて、サポート開始前にメンターとメンティが顔を合わせる機会をつくっておくと、その後の関係構築がよりスムーズになります。
メンター制度を実施する
運用が無事に開始した後は、企業側はフォローに回ります。定期的にメンター・メンティの状態をチェックし、状況に応じて制度が上手く機能するように手助けをしていきましょう。
ちなみに、対面でのフォローが難しい場合にはチャットツールの導入も効果的です。場所を問わずスピーディにやり取りができるチャットツールは、メンター同士の交流やノウハウの共有などにも活用できます。
振り返り・改善を行う
制度がスタートして一定の期間が経ったら、効果や進捗状況の検証・改善にも取り組んでいきましょう。メンターとメンティそれぞれに対して、定期的にヒアリングやアンケートを実施し、課題を見つけて解決を目指していきます。
このように絶えずフィードバックを繰り返していくことで、次第に制度の質が高まり、より効果的な運用が可能になっていくはずです。
メンター制度を導入する際の注意点
メンター制度の導入・運用にあたっては、以下のような点にも気を配る必要があります。
メンターの選定は慎重に行う
メンターは誰にでも務まるポジションではないため、適切な人材を選定することが大切です。例えば、メンティにとって業務上関わる機会の多い先輩社員がメンターになると、業務に与える影響を危惧して本音を話すことが難しくなってしまいます。
また、相性のよくないメンターはメンティに心理的なストレスを与え、かえって早期離職につながってしまう可能性もあります。メンターは本人の主体性や、メンティとの親和性を踏まえてマッチングし、状況によっては交代も視野に入れましょう。
メンターのスキル向上にも取り組む
効果的にメンター制度を運用するうえでは、メンター自身の努力に加えて企業側のサポートも重要となります。特にメンターに必要なスキルの向上は、本人の頑張りだけでは難しいため、研修やメンター同士の勉強会の開催といった形での後押しが欠かせません。
メンター自身をフォローする体制をつくる
メンターは相談対応のほかに本来の担当業務もこなさなくてはならないため、負担が大きくなりすぎないように配慮が必要です。繁忙期には業務量を適宜調整し、メンター自身が悩みを相談できる機会なども忘れずに設定していきましょう。
まとめ
働き方やビジネスを取り巻く環境が変化を続ける現代では、新入社員の意欲と能力を引き出し、自律的に考えて動ける人材へと育成することが求められます。社員の成長を精神的にバックアップするメンター制度の意義は、この先さらに大きなものとなっていくでしょう。
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