業務管理とは？ メリットや進め方、実施のポイントを解説

変化を続ける時代のなかで従業員を守り、企業を成長させるためには、業務の内容や進め方をマネジメントする「業務管理」が不可欠です。本記事では、業務管理の種類やメリット、実施にあたってのポイントなどを紹介します。

業務管理とは

業務管理とは、従業員がより効率的かつ正確に業務を行えるよう、業務の実態を把握して改善する取り組みのことです。業務管理を行うことは生産性の向上やコストの削減につながる他、企業の成長にも大きな影響を及ぼします。

企業によって行われる代表的な業務管理の例としては、業務フローの可視化やシステムの確立、投じられる人材・資金が適切かどうかの検証などが挙げられます。特に、ビジネスを取り巻く環境が複雑化を続ける昨今、業務管理の果たす役割はさらに重要なものになりつつあります。

業務管理が必要な理由

企業において、業務管理は主に以下のような目的で行われます。

ブラックボックス化によるミスを防ぐため

一般に、組織には規模が大きくなるほど役割が細分化され、部署間や従業員同士の連携が希薄になっていく傾向があります。その結果、やり取りの行き違いや、業務のブラックボックス化といった問題が発生することになります。

業務管理は、そんな曖昧で複雑化した業務の全体像を分かりやすく可視化し、従業員の認識を一致させて齟齬をなくすために実施されます。

生産性を向上させるため

業務の実態を詳しく把握することは、優先的に行うべき業務や、無駄な工程を見つけ出して整理するうえでも役に立ちます。

また、業務のフローやシステムが確立されれば、経験の浅い従業員でもその業務を担当しやすくなり、業務の属人化を防ぐことにつながります。このように、業務管理には業務の流れを効率化し、生産性を向上させる効果も期待できます。

業務管理を行うメリット

業務管理の実施には、以下のようなメリットが存在します。

経費の削減

無駄な業務や工程を減らす業務管理は、経費の削減に効果を発揮します。例えば、業務の実態を把握したうえで「自社で行う必要がない」と判断した場合には、外部に委託することで人件費や設備費をカットできます。

業務にかかるコストが減れば、予算にも余裕が生まれ、他の分野により多くの社内資源を割くことができるでしょう。

業務時間の短縮

業務を効率化することで、業務自体の遂行にかかる時間や、部署間の連携時に生じるタイムラグを短縮できる点も業務管理を実施するメリットです。1つの業務に費やす時間が短くなれば、空いた時間を活用して従業員は新たな業務に取り組むことができます。

顧客満足度の向上

業務管理には、問い合わせ対応のスピードや正確性の向上といったように、企業が提供するサービスの質を高める効果もあります。その結果、顧客満足度のアップも見込めます。

顧客満足度は商品やサービスに対する顧客の印象を表す指標であり、その増減はリピート率や企業の信頼性にも影響を与えるため、なるべく高く保つことが大切です。

業務管理の種類

業務管理の取り組みは、内容に応じて以下のような種類に分けられます。

タスク管理

タスク管理とは、一人ひとりの従業員が抱えているタスク（業務）を把握・調整する取り組みです。主に業務ごとの進捗状況や、各従業員に割り振られている業務量などを管理するのに適しています。

例えば、タスクごとの担当者とその進捗状況をリスト化すれば、誰のどの業務が遅れているかが一目で分かり、即座にフォローを行うことが可能です。他には、特定の従業員に業務量が偏ってしまうといった事態も避けることができます。

時間管理（タイムマネジメント）

多くの業務には期限が設定されており、スケジュール通りに進める必要があります。そのため、それぞれの業務や工程にかかっている時間を可視化し、滞りなく目標を達成できるよう管理することが大切です。

また、使える時間が限られている場合には、複数の業務を並行して進めたり、優先順位を入れ替えたりといった取り組みも効果的でしょう。こうした時間を有効に活用するための工夫はタイムマネジメントとも呼ばれ、生産性の向上に大きな役割を果たします。

案件管理

売上や顧客満足度の拡大を目指すうえでは、会社に寄せられる発注や依頼といった「案件」の管理も重要です。誰がどんな案件を抱えているかを常に把握することで、トラブルのリスクが減り、顧客とのやり取りもスムーズになります。

さらに、案件管理には売上の見通しが立てやすくなり、従業員が次にすべきことが明確になるという利点もあります。万が一担当者が動けなくなった場合でも、普段から案件のリストを共有しておけば、他の従業員へと円滑に引き継ぎができるでしょう。

顧客管理

顧客ごとの個人情報や商談内容を適切に管理することは、信頼性の確保やノウハウの蓄積につながり、営業やサービスの質の向上にも役立ちます。

特に、顧客のデータは特定の担当者ではなく部署が管理して共有することで、他の従業員も同じ顧客に対して効果的にサービスを提供することが可能となります。

従業員の健康管理

業務を担う従業員の健康を守ることは、企業にとって欠かすことのできない取り組みです。実際に、労働安全衛生法第66条では、企業に対して従業員への健康診断の実施が義務付けられています。

健康診断の他にも、日頃から面談やストレスチェックを行い、従業員の心身の状態には絶えず気を配らなくてはなりません。

業務管理を効率的に進めるポイント

ここからは、業務管理を効果的に行うためのポイントを紹介します。

定量的に数値を用いて評価する

業務管理に取り組む際は「やりっぱなし」ではなく、きちんと評価・検証を行うことが大切です。良い成果が得られた場合には取り組みを継続し、思うような成果が出なければその原因を導き出して改善を目指しましょう。

ただし、曖昧で主観的な評価基準では、業務の実態や取り組みの影響を正確に把握することが難しくなります。評価は必ず数値化し、具体的かつ客観的な基準のもとで行いましょう。

PDCAサイクルにより改善する

業務管理の効果をさらに高めたいのであれば、PDCAサイクルの実践が有効です。PDCAサイクルとは、「計画（Plan）」「実行（Do）」「評価（Check）」「改善（Action）」という4つのプロセスを繰り返すことでより良い成果を追求する思考法です。

PDCAサイクルの特徴は、最初に計画を立ててから行動し、その結果を検証して次に生かす点にあります。その分、目標達成に向けて着実に前進が可能であり、ビジネスシーンにおいても多くの場面で用いられています。

システムやツールを活用する

Excelなどを使用して行われることも多い業務管理ですが、膨大なデータをすべて人の手で管理するのは現実的ではありません。管理項目が多岐にわたる場合には、業務管理に特化したツールやシステムを導入するのがよいでしょう。

なかでも業務管理システムは、タスク管理や案件管理、顧客管理など幅広い用途に対応しているものが多く、業務のあらゆる要素を1つのシステムに集約して管理できる点が強みです。

管理職のスキルアップ

ねらい通りに業務管理が効果を発揮するかどうかは、実際の管理を手がける管理職の能力にも左右されます。万全の体制で業務管理を行いたいのであれば、まずは管理職自身のスキルアップから取り組んでみるのも1つの手段です。

特に、組織のマネジメントに関するノウハウは業務管理においても役に立つものが多いです。リクルートマネジメントソリューションズでも提供している、管理職向けの研修を受講して身につけておきましょう。

まとめ

業務のあり方を見つめ直すことで、企業と従業員、顧客に多くの恩恵をもたらす業務管理は、マネジメントのなかでも極めて重要性の高い取り組みです。これからの時代において、効果的な業務管理体制の確立はあらゆる企業にとって急務といえます。

ちなみにリクルートマネジメントソリューションズでは、マネジメントに関して、経験学習サイクルに基づいた幅広いテーマの研修を提供しています。業務管理に生かせるヒントもありますので、ぜひ活用してみてください。