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導入事例

「適材適所」から「適所適材」へ。ポスト任期制×360度サーベイで挑む自社流のジョブ型雇用

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社

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  • 公開日:2025/12/15
  • 更新日:2025/12/15

事例概要

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背景・課題

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社では、事業分社化を契機に長年の積み重ねで固定化された組織の在り方等を見直し、「適材適所」から「適所適材」への転換に取り組むことになりました。労働人口の減少や事業環境の変化を踏まえ、役割起点で最適任者を選ぶジョブ型への移行と、3年ごとに管理職が最適任かを確認するポスト任期制の導入を決定。特にマネジメント層は組織への影響力も大きく、求められる役割も高度化していることから、支援と成長機会の提供に加え、定期的な最適任者配置の確認が不可欠と考えられました。

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検討プロセス・実行施策

360度サーベイ導入にあたっては、部課長が自身のマネジメントを世の中の水準と比較できる点を重視し、PRO-MOAを採用しました。プレ導入ではサーベイの回答と結果フィードバックの体験、そして運用上の負荷を確認し、信頼性の高い結果が得られたことから本実施へと拡大。約500名を対象にサーベイとフィードバックセッションを行い、部課長同士が悩みを共有する場も設けました。HRBPとも連携し、多様な要望に応えながら全社一斉実施を完遂しました。

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成果・今後の取り組み

360度サーベイは部課長から高い評価を得ており、客観的な気づきや行動改善のきっかけになりました。フィードバックセッションでは悩みを共有し合うことで安心感が生まれ、部下側の回答率の高さからもニーズの強さが確認できました。また、HRBPからは実際の肌感との傾向一致が指摘され、組織開発への活用可能性も広がっています。今後は再編を見据え、当社らしい人事制度として継続的に運用していく方針です。

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背景・課題

再編をきっかけにジョブ型雇用とポスト任期制を導入し、適所適材にシフト

新井様の画像

新井:パナソニックグループは、2022年4月から事業会社制(持株会社制)による新体制へ移行しました。パナソニックは5社に社内分社しましたが、そのうちの1社が、白物家電製品を中心に手掛ける「くらしアプライアンス社」です。

新体制移行後はグループ統一の人事制度ではなく、各社がそれぞれのマーケットに合わせ、独自に制度を整備するようになりました。

長い歴史を持つ当社では、その積み重ねが良くも悪くも組織に「重さ」を生んでしまう場面があります。2022年の分社化は、そうした状況を見直す大きなきっかけでした。この節目に、経営・人事・HRBPが一体となって人や組織のあり方を問い直し、「何を残し、何を変えるのか」を率直に議論したのです。こうした検討を経て、2023年度に「ジョブ型人材マネジメント」へ移行し、2025年度からは「ポスト任期制」を導入しました。いずれも、事業環境の変化に応じて強い組織へ進化するための挑戦です。

変革の根底にあるのは、「適材適所」から「適所適材」へのシフトです。労働人口が減少するなか、従来の「人に仕事をあてる」やり方では、ビジネスの最前線で戦い抜くことは難しくなります。経営・事業戦略からバックキャストする形で組織を設計し、そこに必要なポスト(役割)とジョブ(仕事・スキル)を定義し、最適な人を配置するスタイルへの転換は不可欠でした。

組織変革において、特に重要なのがマネジメント層です。たとえば、挑戦心ある優秀な若手がいても、上司が十分に支援できなければ、メンバーの力は発揮されず、最悪離職し、組織力は減退します。マネジメントの影響力はそれほど大きいのです。一方で、近年のマネージャー業務は著しく複雑化・高度化しています。プレイングの側面を持ちながら、多様なメンバーをまとめ、これまで以上に広い役割が求められている。だからこそ、「マネジメントをどう支援していくか」という視点が欠かせないのです。

そのポストに本当に最適任者が就いているのか確認する仕組みが必要

新井:「ポスト任期制」は、全ポストの任期を3年と定め、3年ごとにそのポストに最もふさわしい任命者を確認する仕組みです。誤解されがちですが、3年ごとに必ず異動させるわけではありません。成果や適性を踏まえ、継続が妥当であれば同じポストを担うケースも多く想定しています。重要なのは、既存の配置を前提とせず、求める役割から考えて「最適任者を選ぶ」という視点を組織として持ち続けること。この仕組みによりマネジメント層の力を最大限に引き出し、組織全体の活性化につなげるねらいがあります。

この制度を機能させるためには、マネージャーを「パフォーマンス(成果)」と「コンピテンシー(質)」の2軸で見ることが不可欠でした。そこで必要だと考えたのが、今回導入した「360度サーベイ」です。ポスト任期制は主に「3年間の成果」を確認する機会ですが、短期的な数字が良いだけで周囲が納得するリーダーとは限りません。「周囲から見てマネジメントができているか、振る舞いが伴っているか」。この「質」を担保するには、360度サーベイによる多面的な評価が必要でした。

また、当社はパナソニックグループの一員として「人を大切にする会社」であり続けたい。欧米の仕組みをそのまま入れるのではなく、会社と個人はパートナー関係であるという価値観に基づいた、当社らしいジョブ型制度にしたいという強い思いがあります。だからこそ、配置転換の可能性だけを示すのではなく、360度サーベイという「気づきと成長の機会」を同時に提供し、マネージャーが自律的に成長できる環境を整えることを大切にしているのです。

検討プロセス・実行施策

「部課長が自分のマネジメント能力を世の中一般と比較できること」がPRO-MOA導入の決め手

新井:360度サーベイの導入にあたり、様々な選択肢を検討しました。その中でリクルートマネジメントソリューションズのPRO-MOAを選んだ一番の決め手は、部課長が自分のマネジメント能力を世間一般と比較できる点でした。

私たちは今、「変革型リーダー」を強く求めています。「今の自分は、世の中の変革型リーダーの中でどの位置にいるのか」「自分の強みは何か」「今後どのような能力が必要なのか」。これらを部長・課長たち自身が把握できるサーベイを使いたかった。戦略人事の観点でも、事業や組織フェーズによって求められるリーダー像は変わるため、自社のリーダーが世の中の水準と比べてどこに位置しているか把握することは非常に重要です。PRO-MOAはそのような期待に応えてくれるサービスだと感じました。

本導入に先立ち、人事と1部門を対象としたプレ導入を試行しました。運用プロセスや対象者(被観察者)の負荷、社内コミュニケーションなどを事前に確かめるためです。実際に回答した部長からは「マネジメントを振り返る際に使いやすい」といった前向きな声が寄せられました。また、私たち人事が抱いていた部課長の印象と結果が大きくずれることもなかったため、信頼性の高いサーベイであることも確認できました。

あとは正直なところ、価格の手頃さも魅力でした。数百名規模の全社実施となれば、コストはやはり無視できないポイントですから。また、担当の方とのやりとりがスムーズだったことも後押しになりました。プレ導入時から伴走してくれているという安心感があり、「楽しかった」と感じるほど、組織改善への期待が膨らんだ準備期間でした。

山口様の画像

山口:私は、プレ導入時は担当外でしたが、前任の話や本実施での気づきから、リーダーシップスタイルの組み合わせが可視化される点は非常に価値があると感じています。

誰がどのようなスタイルを発揮しているのか、部長と課長の組み合わせでどう強みが出やすいのかが見えるのは、現場支援において本当に有効です。特に、部長のスタイルが良い意味で課長に影響するケースが見えるのは大きな発見でした。部長のスタイルを課長がどう受け取り、どのような行動につながっているのかが立体的に分かり、組織として次はどのように支援をすべきかの検討に役立っています。

約500名の全部長・課長を対象にPRO-MOAを一斉実施

新井:プレ導入の成果を踏まえ、2025年5~6月には約500名の全部長・課長を対象とした本実施へと進みました。単に結果を返すだけでなく、読み方のレクチャーや、今後のリーダーシップ開発を考える「フィードバックセッション」も併せて実施。セッション後半では、部課長同士が結果や日頃の悩みを率直に語り合う時間を設けましたが、これが想定以上に応募が多く、現場ニーズの大きさに驚きましたね。

山口:そうですね。任意参加にもかかわらず、余裕をもって設定した席数が満席になる回もあったほどです。現場には「結果の読み方を知りたい」「今後のマネジメントに生かしたい」という強いニーズがあったのだと実感しました。

また、サポートの手厚さとスピード感にも満足しています。正直に申し上げて、500名規模の一斉実施は簡単ではありませんでした。例えば「他のグループ会社のメンバーにも回答してもらいたい」などの様々な要望に、HRBPと連携して可能な限り応えていく必要があったからです。タイトな準備期間をほとんど計画通りに乗り切れたのは、リクルートマネジメントソリューションズの協力のおかげです。

成果・今後の取り組み

誰よりも部課長たち自身が、360度サーベイのような仕組みを必要としていた

山口:部課長の取り組みに対する評価は全体的に高く、「客観的かつ定量的な評価がもらえて嬉しかった」「振り返る良い機会になった」などの声が多く寄せられました。自身の漠然とした自己認識が客観的な数値やフィードバックで可視化され、「やっぱりそうだったんだ」と納得感を持てたという声も複数届いています。

良い点を確認できて安心したという声もあれば、厳しい指摘に落ち込んだという感想もありますが、それらを含めて自身のマネジメントを見つめ直すきっかけになったようです。多忙ななかでも報告書にしっかり向き合い、「振り返る時間がとれて良かった」と言ってくれる部課長が多かったのは印象的でした。

フィードバックセッションの評判も良く、「レポートの読み方が分かった」「仲間と悩みを共有できて嬉しかった」「同じ悩みを持つ人がいると分かって安心した」といった声が数多く届きました。マネジメント層は日頃、悩みを共有できる相手が限られており、「何から手をつけたらいいのか分からない」という戸惑いを抱えがちです。グループワークを通じて他の部課長のリアルな声を聞き、気づきを交換できたことは、結果を見るだけでは得られない価値となったのではないでしょうか。単なる振り返りで終わらず、「次につながるヒント」や「安心感」が生まれる場になっていたのがとても良かったです。

新井様の画像

新井:あらためて感じたのは、マネジメント層が「自分がどう見られているのか」を本気で知りたがっているという点です。部下の価値観や働き方が多様化するなかで、マネージャー自身が「自分のスタイルは世の中の水準と照らしてどうなのか」「部下や上司から実際どう見られているのか」という悩みを抱えています。

1on1などで本音を引き出すことは簡単ではありませんし、ハラスメントへの意識が高まるなかではなおさらです。そうした背景があるからこそ、360度サーベイはマネジメント層の大きな支えになると実感しました。

山口:評価面では、PRO-MOAが「プロブスト法」を採用していることもプラスに働きました。一般的によく見られる、5段階形式でどの程度できているか/できていないかを問う形式ではなく、提示されたキーワードを選ぶだけで人物特徴を捉えられるため、回答する側として他者を評価している感覚が少なく、忖度も生まれにくい仕組みだと思います。

今回、私自身も回答し、最初は多少戸惑ったものの、直感でキーワードを選べばよいと分かり、自然と答えられるようになりました。その結果、全体としてメリハリの利いたフィードバックが返ってきており、多くの部課長にとって良い振り返り材料になったと思います。自己認知と周囲の評価にギャップがありショックを受けた方も一定数いましたが、それだけ率直で飾らないフィードバックが得られたのではないでしょうか。

新井:フリーコメントにも忌憚のない率直な意見が含まれていました。厳しいですが、結果を受けて行動改善が必要な部課長もいました。そういった意味でもフィードバックセッションはやってよかったですし、改善と成長に向けて一歩を踏み出す貴重な場にもなったはずです。

複数の人事データと連携させ、組織変革をより実効的なものへ

山口様の画像

山口:回答率がほぼ100%と、部下たちが非常に積極的に回答しているのが印象的でした。部下にとっても、上司に意見を届ける貴重な機会となったようです。部下側にも360度サーベイへのニーズがあることが確認でき、その意味でも有意義な取り組みでした。

また、HRBPからは「人事評価やエンゲージメントサーベイで見えていた課題感と、360度サーベイの傾向が重なる部分が多い」との所感が寄せられています。複数のデータの見え方が一致している点から、信頼性をもって受け取ってもらえていると感じています。

新井:PRO-MOAの結果は、人事データとしても貴重であり、今後は人事評価やエンゲージメントサーベイといった他の指標と組み合わせて活用していくことが欠かせません。エンゲージメントサーベイは、働きがいや組織状態などが複雑に絡み合った結果です。一方、今回の360度サーベイはその要因の一つである「上司・マネジメント」にフォーカスしているため、エンゲージメントの背景を理解する大きなヒントになると、人事内でも話題になりました。「ここはマネジメントの影響かもしれない」「組織開発にも生かせる」といった声が上がっており、活用の幅は広がっています。今後は、こうした複数のデータを統合して読み解き、人事基幹データの1つとして継続的に活用していきたいです。

2026年度にはグループ再編があり、新たな仲間と改めてパナソニック株式会社としてスタートを切ることとなります。PRO-MOAの位置づけや運用スタイルの再設計は必要になりますが、マネジメントが変革の中心であるという考えは変わりません。新体制だからこそ、経営陣や事業部長、HRBPと対話を重ね、事業の実態に根ざした「当社らしい人事制度」をより実効的なものにしていきたい。今回の360度サーベイで生まれた気づきや前向きな空気を、次のフェーズにつなげていきたいですね。

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ソリューションプランナーの声

奥﨑の顔写真

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
営業統括部 営業1部3グループ
ソリューションプランナー
奥﨑 由貴奈

昨今の日本を取り巻く環境では、少子高齢化による労働力不足と急速な事業環境の変化により、「限られた人材でいかに組織力を最大化するか」が喫緊の課題となっています。マネジメント層においては、従来の年功序列的な昇進システムでは対応しきれない複雑な経営環境に直面しており、真の意味での「人材配置の最適化」の実現が求められています。

くらしアプライアンス社様の取り組みで最も印象的だったのは、「人を大事にする会社であり続ける」という企業理念と、環境変化に先駆けた事業成長のための最適な人事施策を見事に両立されている点です。3年ごとのポスト任期制と360度サーベイをセットで導入するという先進的なアプローチにより、「多くのマネージャーに成長してほしい」という温かい想いを実現されています。

約500名という大規模導入でありながら、ほぼ100%の回答率を実現された実行力も素晴らしく、組織全体で「より良いマネジメントを創り上げよう」という前向きな風土が醸成されているのだと感じます。

2026年度のグループ再編という新たな変化が控えるなかでも、人材基盤の強化に真摯に取り組まれる姿勢に深い感銘を受けております。今後も弊社の持つ知見とノウハウを結集し、全力で支援させていただきます。

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研究員の声

坂本の顔写真

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
サービス統括部 HRMサービス推進部 サービス開発グループ
主任研究員
坂本 佑太朗

近年、日本企業では管理職ポストの固定化と管理職層の候補者不足という2つの問題が顕在化しています。長期間同じ人物がポストを占めることで若手の昇進機会が限られると共に、管理職というキャリアを敬遠する傾向も強まっています。変化の激しい時代に、マネジメント層の流動性と育成をいかに両立させるかが、多くの企業に共通するテーマとなっています。

くらしアプライアンス社様は、この課題に対してポスト任期制と360度サーベイ(PRO-MOA)を組み合わせるという先進的なアプローチを実践しています。ポスト任期制により組織の流動性を高めつつ、360度サーベイを通じて管理職自身の気づきと成長を支援。約500名規模での導入ながら高い回答率と満足度を得ており、サーベイ結果は人事基幹データとしても活用が進められています。

本事例は、360度サーベイを人事情報として活用しつつ、育成の契機として機能させることで、まさに「適所適材」を制度的に実現することを試みている好例です。変化の時代におけるマネジメント層の刷新と成長を両立させる、有効な示唆を与える取り組みといえるでしょう。

取材日:2025/09/16

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企業紹介

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社様のロゴ

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社

人々のくらしの根幹をなす「食」「家事」「美容・健康」の3事業領域を中心に、100年以上にわたり育んできたくらしに寄りそう力で、人と地球の未来に続く、感動の商品とサービスを創造し、くらしの質を豊かにすることを目指している。あらゆる分野の知見と技術を掛け合わせ、家電業界にイノベーションを起こし、パナソニックのブランドをさらに輝かせながら、より良い未来に向けた挑戦を加速していく。

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