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調査レポート

職場におけるフィードバック実態調査

「受け取る」「生かす」「提供する」、双方向のフィードバックが成長の鍵に

  • 公開日:2025/08/19
  • 更新日:2025/08/19
「受け取る」「生かす」「提供する」、双方向のフィードバックが成長の鍵に

職場において、他者からのフィードバックは、個人やチームの成長や成果を支える重要な要素である。良いフィードバックを受け取るためには、受け手の姿勢や働きかけも求められ、逆に提供する際には、相手への配慮やタイミングといった工夫が必要となる。今回の調査では、フィードバックの「受け取る」「生かす」「提供する」という3つの側面について、それぞれがどの程度実践されているか、また、それらがどのように成長感につながっているかを、多角的に検討した。

調査概要
上司から/同僚-部下からのフィードバックの実態
フィードバック「受け取り」の偏りと職場風土
上司/同僚-部下からのフィードバックの価値
ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバック 役立ち度との関係は?
今後、増えてほしいフィードバックの種類
良いフィードバックを呼び込み生かすために
フィードバック「提供」の難しさ
双方向のフィードバックが互いの成長につながる

調査概要

本調査は、従業員規模300名以上の企業に勤める22歳から59歳の正社員を対象に、「職場におけるフィードバックの実態と意識」について実施したものである。ここでいう「職場」とは、課やチームなど、日常的に業務上のやり取りが発生するグループを指し、「フィードバック」は、相手の業務遂行に関する行動や結果に対して、評価や改善策、意見や感想を伝える行為を意味するとして、調査回答者に伝えた。

調査はオンラインモニターに対して2025年5月に実施され、有効回答数は616名である。そのうち、管理職(部下をもつ課長クラス)が248名、一般社員(主任クラスおよび部下のいない課長クラスを含む)が368名であった(図表1)。

<図表1>調査概要「職場におけるフィードバック実態調査」

調査概要「職場におけるフィードバック実態調査」

上司から/同僚-部下からのフィードバックの実態

まず、周囲からのフィードバックの「受け取り」について、現在所属している職場の直属上司からのフィードバックと、現在の職場で、日頃一緒に仕事をしている同僚-部下からのフィードバックのそれぞれについて尋ねた。図表2は、管理職・一般社員別の回答結果を示したものである(グラフの数値〈%〉は、各項目に対して6肢のうち「6.とてもあてはまる」「5.あてはまる」「4.ややあてはまる」の選択率を合計したもの)。

<図表2>上司からのフィードバック・同僚‐部下からのフィードバック(管理職・一般社員別)

上司からのフィードバック・同僚‐部下からのフィードバック(管理職・一般社員別)

「上司からのフィードバック」では、管理職・一般社員ともに、「良い点についてのフィードバック」「悪い点についてのフィードバック」をそれぞれ5割半ばから約6割の人が得ている(管理職と一般社員の間には有意差なし)。また、「同僚-部下からのフィードバック」では、「良い点について」は約5割、「悪い点について」は4割半ばの人が得ている。「良い点について」は、管理職・一般社員ともに、「上司から」が「同僚-部下から」よりやや数値は高いものの有意差はなく、「同僚-部下から」も「上司から」と同じくらいポジティブなフィードバックを得ていることが分かる。一方で、「悪い点について」は、管理職・一般社員ともに、「同僚-部下から」が「上司から」より有意に少なく、得られている人は半数に届かない。一般社員では、「私が取り組んでいる仕事や目指したいことをおおむね把握している」「フィードバックには納得感がある」も「同僚-部下から」が「上司から」よりやや少ない。

総じて管理職・一般社員の間に統計的に有意な差が少ないなか、「同僚-部下からのフィードバックは役立っている」は、一般社員58.2%に対して管理職が66.1%と有意に高かった。管理職にとって、「同僚-部下からのフィードバック」は「上司から」と同じかそれ以上に役立つものと捉えられている。

フィードバック「受け取り」の偏りと職場風土

フィードバックの受け取りに関して、管理職・一般社員間に差がある項目は少なく(前述)、性別、職種別でも差が見られなかったが、仕事経験の高低別では顕著な差が見られた。同僚や部下に比べて「習熟度が低い」「年齢が若い」「職場経験年数が短い」の3項目(6件法)の平均値で「仕事経験」を構成(α=.75)し、群分けして比較したところ、すべての項目で仕事経験低群が高群より高く、フィードバックの受け取りには両群で差があることが分かった。

仕事経験高群に対しては、周囲からのフィードバックの必要性が低い場合も想定されるが、一方で遠慮や敬遠から、あった方がいいフィードバックがなされていない可能性もある。そこで、職場の心理的安全性の影響を検討した。「心理的安全性」は、職場では「問題点や困難な論点を提起できる」「思っていることを率直に言いやすい」など3項目(6件法)の平均値で構成(α=.88)した。

図表3は心理的安全性の高低群別に、仕事経験高群と低群のフィードバックの受け取り状況を比較したものである。心理的安全性が低い職場(低群)では、すべての項目で両群に大きな差が見られるが、心理的安全性が高い職場(高群)では、全体に選択率が高くなり、「同僚-部下から」の「良い点についてのフィードバック」を除いては、両群の有意差は見られなかった。日頃から、自分の考えや気持ちをお互いに安心して発言できると感じている職場では、仕事経験の高低にかかわらず、フィードバックを得やすいと考えられる。

<図表3>フィードバックの受け取りの偏り(仕事経験の高低別・職場風土の影響)

フィードバックの受け取りの偏り(仕事経験の高低別・職場風土の影響)

上司/同僚-部下からのフィードバックの価値

では、受け取ったフィードバックはどのように役に立っているのか。上司や同僚-部下からのフィードバックが「役立っている」と答えた人に対して、業務上の成果や自身の成長・学びに役立ったフィードバックの内容について自由記述を求めた(図表4:背景色が薄紫は管理職、薄橙は一般社員の記述)。

<図表4>役に立ったと思うフィードバックの内容や理由

役に立ったと思うフィードバックの内容や理由

「上司からのフィードバック」については内容に関する記述が多く、特に「業務の改善に関するフィードバック」と「自分の特徴や成長に関するフィードバック」が見られた。前者は、業務を改善するための、実践的かつ即時的なフィードバックが役立ったという記述が多く、後者では、自分の考えを尊重されたり、自信やモチベーションを高めたりする内容が役立ったとするケースが多く見られた。なお、記述数では「業務の改善に関するフィードバック」が「自分の特徴や成長に関するフィードバック」の約2倍と多かった。

「同僚-部下からのフィードバック」は、管理職では「マネジメントに関するフィードバック」が多く、例えば、自分では気づかない点の指摘や、解決策の提案などが役立っているとされた。また、「多様な観点からのフィードバック」や「気軽なフィードバック」については、管理職・一般社員のいずれからも多くの記述があり、「同僚-部下から」のフィードバックが、貴重な情報源として機能していることがうかがえる。

ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバック 役立ち度との関係は?

これまで、フィードバックの受け取りについての質問で、「良い点について」「悪い点について」と分けて尋ねてきた。ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックのどちらが効果的かという議論は、個別の場面・相手・タイミングなどによってその効果は異なるため、あまり意味をなさないだろう。しかし、個別場面というより全体として見たときに、受け手が、どちらがより役に立っていると感じているかには、一定の傾向があるようにも思える。

そこで図表5では、「良い点についてのフィードバックをくれる」「悪い点についてのフィードバックをくれる」それぞれの肯定的回答群をポジH・ネガH、否定的回答群をポジL・ネガLとして、4群(ポジHネガH/ポジHネガL/ポジLネガH/ポジLネガL)に分類し、それぞれの「フィードバックは役立っている」とする回答割合を比べた。

<図表5>ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックの効果

ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックの効果

4群の分布では、「上司から」「同僚-部下から」のどちらにおいても、ポジHネガH群(どちらのフィードバックも受け取っている)とポジLネガL群(どちらのフィードバックも受け取っていない)が多数派を占め、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの受け取りには相関があることが分かる(上司からr=.77、同僚-部下からr=.66)。

「役立っている」と感じる割合は、ポジHネガH群が最も高く、次いでポジHネガL群となっている。「上司から」の場合、両群に有意差はないが、「同僚-部下から」の場合は、ポジHネガH群が有意に高かった。これは、ポジティブなフィードバックだけでなく、ネガティブなフィードバックも受け取れていることが、高い役立ち感につながっていることを示唆している。

また、ポジHネガL群とポジLネガH群を比較すると、「上司から」「同僚-部下から」のどちらの場合も、前者(ポジHネガL群)の方が役立ち感は高かった。最も役立ち感が低かったのは、両者の場合とも、ポジティブなフィードバックもネガティブなフィードバックもよく受け取れていないポジLネガL群である。

総じて、ポジティブフィードバックの方が全体的に有効感は高いが、ネガティブフィードバックも有効であり、両方がそろっていることが最も効果的であることが示されている。たとえネガティブなフィードバックが中心であっても、ポジティブ・ネガティブどちらもが少ないよりは、相手にとって役に立つ可能性が高いと考えられる。

今後、増えてほしいフィードバックの種類

フィードバックの受け取りに関して、最後に、今後どのようなフィードバックが増えるといいかを複数選択形式で尋ねた(図表6)。

<図表6>増えてほしいフィードバック

増えてほしいフィードバック

最も多かった回答は、管理職・一般社員ともに「より実践的なフィードバック」で、特に管理職は50.4%と半数を超えていた。次いで「良い点についてのフィードバック」が多く「悪い点についてのフィードバック」を上回っている。ただし、「悪い点についてのフィードバック」は管理職の選択率が37.1%と、一般社員と比べて高かった。管理職が、自身では気づきにくい課題に関する情報をより多く求めていることを反映していると考えられる。

一方で、「現在不足しているもの、増えるとよいと思うものはない」と答えた割合は、一般社員では30.2%と管理職より大幅に多かった。必要なフィードバックはすでに得られているという前向きな解釈もできるが、これまでに良いフィードバック経験が少なく、防衛的になっていたり、周囲や自分への期待が低下していたりする可能性もあり、注意が必要である。

良いフィードバックを呼び込み生かすために

良いフィードバックを受け取り自分の成長につなげるには、受け手の能動的な働きかけも必要となる。図表7では、フィードバックを「求める」(項目1.と2.)ことと「活用する」(項目3.と4.)ことについて尋ねた。「求める」に関する2項目について、「5.あてはまる」「4.ややあてはまる」の合計割合を見ると、管理職の方が一般社員よりやや高いが有意な差はなかった。「フィードバックをもらえるよう、積極的に周囲に働きかけている」と回答したのは約2割~2割半で、積極的にフィードバックを求める人は多いとはいえない。

<図表7>フィードバックを生かすための能動的働きかけ

フィードバックを生かすための能動的働きかけ

フィードバックを積極的に求めない理由(図表8)としては、「職場の文化がそうでないから」などの職場の要因、「相手に負担がかかるから」などの遠慮・配慮、「課題が増えることを避けたい」といった自己防衛が挙げられた。一方、フィードバックを求めている人は、「定期的に振り返り会を設ける」など機会の設定や、「目的を明示してフィードバックを求める」といった問題や目的の共有などの工夫を行っているようである。

<図表8>フィードバックを求めない理由・うまくフィードバックを得るための工夫

フィードバックを求めない理由・うまくフィードバックを得るための工夫

「活用する」については、「もらったフィードバックのうち、どれを利用するかは、自分で判断している」と回答した割合が、管理職では49.2%、一般社員では39.4%と、管理職の方が高い。管理職はフィードバックを自分の成長のためにより主体的に扱っている可能性がある。

フィードバック「提供」の難しさ

ここまでフィードバックを「受け取る」「生かす」側面を見てきたが、次に「提供する」側面に目を向けたい。

図表9によれば、上司など目上の立場の人へのフィードバック、同僚-部下へのフィードバックいずれにおいても、管理職の方が有意に高い数値を示している。前述(図表2)の「上司からの」受け取りは、管理職・一般社員ともに5割半ばから約6割だったのに対して、「提供」は管理職へが47.6%、一般社員へが39.1%と下回った。

<図表9>フィードバックの提供

フィードバックの提供

「同僚-部下からの」受け取りは、管理職・一般社員ともに「良い点」が約5割、「悪い点」が約4割半ばであったのに対して、「提供」は管理職で約6割半ば、一般社員で約4割半ばだった。上司と部下の関係では、上司からの提供が多く、フィードバックのやり取りのバランスはやや偏っている。一般社員同士では、受け取り・提供ともに約4割半ばで、おおむね均衡しているといえる。

一方、管理職でも、「上司など立場が上の人に対しても、率直にフィードバックしている」は5割弱、「同僚-部下へのフィードバックは、相手のためを思って進んで行っている」は6割半ばであり、必ずしも多くない。一般社員ではその割合はさらに少なく、フィードバックの提供が容易ではないことがうかがえる。

その背景には、提供すること自体の難しさがあると考えられる。先行研究でも、フィードバックは常にポジティブな結果をもたらすわけではなく、パフォーマンスやモチベーションを下げる可能性も指摘されている。「良かれと思ったフィードバックが、悪い結果につながった経験がある」かという問いに対して、管理職の41.1%、一般社員の32.6%が該当すると回答した(図表10)。

<図表10>フィードバック提供の難しさ・うまくフィードバックするための工夫

フィードバック提供の難しさ・うまくフィードバックするための工夫

自由記述では、「褒めたのに素直に受け止めてもらえなかった」「率直に話しすぎて失敗した」「意図が伝わらず関係が悪化した」「結果的に退職につながった」など、印象に残る出来事が多く寄せられた。管理職・一般社員それぞれの立場の違いがあれど、似たような難しさを感じているようだ。

このような経験が、以後のフィードバック提供をためらわせることも理解できるが、一方で、それらの経験を通じて学び「相手に応じた対応」「良い点と悪い点のセット提示」「理由や改善策を明示」「敬意と信頼を示す」など、具体的な工夫をしている人も多い(管理職48.0%、一般社員35.9%が該当)。状況や相手により正解のないフィードバックだが、知見や経験をもつことで積極的な提供が可能になると考えられる。

双方向のフィードバックが互いの成長につながる

次いで、「提供」と「受け取り」の関係について分析したところ(図表割愛)、管理職・一般社員とも、積極的にフィードバックを提供している群(管理職:対上司n=144、対同僚-部下n=170、一般社員:対上司n=118、対同僚-部下n=157)は、そうでない群に比べて、「上司は良い点や悪い点についてフィードバックをくれる(良い点・悪い点いずれかで『くれる』と回答)」「同僚-部下は良い点や悪い点についてフィードバックをくれる(同上)」の割合が有意に高かった。これは、自分からのフィードバック提供が、相手からのフィードバックも促す双方向的な関係性を生み出している可能性を示唆している。

さらに、管理職・一般社員を合わせた616名のデータで、成長感を目的変数とした重回帰分析を行ったところ、図表11のとおり、フィードバックの受け取り(「上司からのフィードバック」「同僚-部下からのフィードバック」)と「フィードバックの積極的な提供」の両方が、成長感に有意に関連していた。このことからも、職場において、お互いに関心をもちフィードバックし合うことは、共に成長していくための鍵となるだろう。

<図表11>フィードバックと成長感

フィードバックと成長感

本調査では、「受け取る」「生かす」「提供する」の3つのフィードバックの側面を検討してきた。これらは相互に関連し合い、循環的な関係にある。「フィードバック=評価や指摘」とネガティブに捉えず、お互いのための双方向的な贈り物として捉えることで、個人と組織の成長と信頼関係を後押しできるのではないだろうか。

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.79 特集1「成長と信頼につながるフィードバック」より抜粋・一部修正したものである。
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技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
研究員

佐藤 裕子

リクルートにて、法人向けのアセスメント系研修の企画・開発、Webラーニングコンテンツの企画・開発などに携わる。その後、公開型セミナー事業の企画・開発などを経て、2014年より現職。研修での学びを職場で活用すること(転移)、社会人の自律的な学び/リスキリング、経験学習と持論形成、などに関する研究や、機関誌RMS Messageの企画・編集などに携わる。

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