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管理職の多忙さと健康

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  • 公開日:2026/04/06
  • 更新日:2026/04/06
管理職の多忙さと健康

近年、「管理職になりたいと思う人が少なくなっている」という複数の調査結果が示され、その理由として「責任の重さ」や「労働時間の長さ」などが挙げられることが少なくない。管理職をめぐる問題はさまざまな形で指摘されているが、本稿では特に「多忙さ」と「健康」に焦点を絞り、持続可能な管理職の働き方を考えるための前提情報を提供する。

管理職の多忙さ
管理職にかかる負荷の高さ
役割ストレスという視点
管理職の仕事の質的変化
管理職の健康
持続可能性への打ち手

管理職の多忙さ

管理職の仕事が「せわしない」ものであることは、50年以上前から指摘されている。例えば、カールソン(1951)*1やスチュワート(1967)*2によると、「管理者は、多くの人々との接触で時間を費やし、対面でのコミュニケーションを好み、自部署メンバーばかりではなく他部署の人や他社の人や経営の上層部との接触にも多くの時間を割き、活動は小刻みで断片的である」ことが明かされている。また、ミンツバーグ(1993)*3では、経営者の仕事の特徴として「活動は多様で断片的、口頭でのコミュニケーションが多く、他部署や社外、経営上層部との接触が多い」ことが挙げられている。

多くの人とのコミュニケーションや断片的な活動に象徴されるせわしなさにとどまらず、多様な役割、責任を担っていることも管理職の特徴である。例えば、ミンツバーグ(2011)*4では、図表1のように管理職の役割が整理されている。また、坂爪(2020)*5では海外の研究を参照し、一般社員と直接関わる課長のようなフロントライン管理職について、もともとの日々の仕事を指示し、モニタリングし、コントロールするというパフォーマンス監督に加え、1980年代後半頃から予算管理や人的資源管理の運用など、幅広いビジネス上の責任を担うようになったという指摘がなされている。

<図表1>管理職の役割

さらに、日本においてはバブル崩壊後の人件費削減などを契機として、管理職がプレイヤーの仕事も行う、「プレイングマネジャー」化が進んだともいわれている。例えば、リクルートワークス研究所(2020)*6によると、プレイング業務を行っている管理職の割合は87.3%と報告されている。もともと多様な役割・責任を担う管理職が、さらに多くの仕事を抱える状態となっているのだ。プレイング業務を行う理由として選択率が高いものには、「業務量が多く、自分もプレイヤーとして加わる必要がある」など、管理職自身の努力では解決が難しいものが並んでいる。

また、労働政策研究・研修機構のヒアリング調査*7には、「マネジメント業務が多く、時間不足となり、自身のプレイング業務ができない」ことを課題として挙げる管理職の事例が複数紹介されている。プレイング業務に大きなマインドシェアを割いている、あるいは割かざるを得ない管理職も少なからず見られるようだ。

管理職にかかる負荷の高さ

弊社調査(2024)*8では、「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」という質問に対し、人事担当者で64.0%、管理職で61.3%が「よくあてはまる」あるいは「ややあてはまる」を選択していた。管理職自身も、人事担当者も、いずれも主観的には管理職の負担を大きなものと捉えていると考えられる。

また、労働時間に目を向けると、小倉(2009)*9では、一般社員と比較し管理職は労働時間が長いことが示されている。一般社員の労働時間との比較には注意を要するが、管理職としての適性、あるいはプレイヤーとしての業績など、さまざまな基準で選抜された管理職が手がけるにもかかわらず長い労働時間を伴う仕事になっていることには留意すべきだろう。

また、昨今では、働き方改革による一般社員の労働時間削減のしわ寄せで、労働基準法上の上限規制が原則として適用されない管理監督者による業務の巻き取りが行われているという指摘がなされることもある。坂本(2025)*10では、管理職の労働時間は減少しているものの、一般社員と比較するとその幅が小さいと指摘されている(図表2)。

<図表2>役職別週労働時間の変化

せわしなく、担う役割が多様なだけでなく、労働時間も長いということで、管理職の仕事は負担の高いものとなっている。

役割ストレスという視点

役割に伴うストレスについては、カーンら(1964)*11の「役割過重」「役割葛藤」「役割の曖昧さ」の観点が参考になり、よく用いられる。

まず、前述のように、管理職はさまざまな役割と仕事を担っている。結果として、「一度にたくさんの種類の仕事をしなければならない」などといった「役割過重」の状態となる。

また、課長を例にとれば、「経営や部長といった上位者とメンバーとの間で板挟みになる」などといわれることがあるが、管理職はさまざまなステークホルダーの間に立ち、それぞれのニーズの間で折り合いをつけるような仕事が少なくない。それによって、「ある人からは良いとされたことが、他の人からは良くないと言われることがある」などといった「役割葛藤」が生じる。

加えて、多様なステークホルダーと仕事をするなかでは、お互いの役割や責任が明確でないこともある。新しい仕事を立ち上げる際に、はじめは手続きや役割が明確ではないこともある。結果として、「自分の責任範囲がはっきりしない」「どこまでを自分の判断で意思決定してよいか分からない」などといった「役割の曖昧さ」も生じがちだ。

これらの役割ストレスは管理職に限ったものではないが、管理職を対象とした研究でも、田尾(1986)*12では疲労感、岩田(2013)*13ではうつ反応との関係が指摘されている。

程度の差はあれ、このような役割ストレスが管理職にとって所与のものとなるかは議論が分かれるところかもしれないが、例えば、田尾(2005)*14では、経営環境が複雑になるなか、管理職に求められる責任は大きくなり、ストレスはより一層増すものであり、それに対峙する管理者を生かす工夫として、ストレス管理が人的資源管理上必要だという指摘がなされている。

管理職の仕事の質的変化

管理職の仕事は、役割の広がりだけでなく、環境変化によっても難度が向上している。日本経済団体連合会(2012)*15では、管理職が求められる役割を十分に果たせない理由として、「ビジネスの複雑化・高度化」「フラット化等による組織構造変化」「雇用形態や働き方に対する意識の多様化」「短期的な業績・結果志向の強まり」「コンプライアンス等に関する管理実務の増大」が挙げられているが、これらは今にも通ずるものである。

マネジメントの定義として、よく用いられるものにクーンツとオドンネル(1955)の「他者を通じて事を成す」*16がある。また、リーダーシップ研究において代表的な2つの軸として、ハルピンとワイナー(1957)*17の「構造づくり」と「配慮」がある。これらに照らすと、「ビジネスの複雑化・高度化」「短期的な業績・結果志向の強まり」「コンプライアンス等に関する管理実務の増大」などは、「事を成す」「構造づくり」の難度を高めるものである。一方、「フラット化等による組織構造変化」「雇用形態や働き方に対する意識の多様化」などは、「他者を通じて」「配慮」の難度を高めるものである。

人の側面に着目すると、近年では管理職には「メンバーに対する配慮」がますます求められるようになっている。「上意下達」ではなく対話を行うことや、「リーダーは、まず相手に奉仕し、その後相手を導く」というサーバント・リーダーシップ(グリーンリーフ,1977)*18の重要性が指摘されたりする。このような変化は望ましいものであろう。サーバント・リーダーシップについては、池田・黒川(2018)*19などで、職場に及ぼすポジティブな効果が日本でも示されている。一方、管理職にとっては負担を増す要因となっている。例えば、鈴木(2025)*20では、管理職がサーバント・リーダーシップを発揮する上では、「従業員のニーズ充足に力を注ぐあまり、個人的目標やワーク・ライフ・バランスを犠牲にする」「従業員のニーズや成長と対立する優先事項との間で葛藤や軋轢に遭遇する」といった困難があることを指摘する海外の研究が紹介されている。

管理職の健康

管理職の健康については、田中・小林(2020)*21の内容を中心に紹介する。

まず、歴史的には管理職は現業の労働者の安全と健康を管理・監督する立場であり、自身は危険にさらされることなく、また、裁量度が高くストレスが低いとされ、健康であり、産業保健活動の主要な対象ではなかったとされている。

一方、主観的健康感、糖尿病通院割合、高血圧症通院割合、喫煙状況、飲酒状況について、職業間の差は小さく、管理職が他の職業と比べて健康状態が良いという顕著な傾向は確認されなかった。学歴や裁量の大きさなどが類似した側面が多い専門職との比較においては、特に男性では高血圧、喫煙、飲酒について健康指標が悪い傾向も確認されている。

また、日本の男性管理職の死亡率は図表3のとおり、おおむね低下傾向にある他の職業とは異なり、1990年代から大きく上昇している。男性管理職の2015年の自殺率は46.9(人口10万人対)で、事務職と比較するとリスクが4.7倍というデータも示されている。国際比較の観点では、1995年まで日本の管理職・専門職の死亡率はイングランド/ウェールズ、スイス、フィンランド、フランスと同じ水準で推移していたが、2000年以降に急上昇し、日本のみ高い水準となったことなどが示されている。

<図表3>管理職とその他の職業の年齢調整死亡率の経年変化

(男性30〜59歳,全死因,1980〜2010年)

他にも、加島・高橋(2025)*22では、日本の男性管理職を対象とした研究で、管理職昇進直後はメンタルヘルスを向上する効果と悪化させる効果との双方がバランスしているが、向上する効果が時間と共に減衰し、昇進2年後にメンタルヘルスが悪化するという報告がされている。

これらは、管理職の健康に対して、継続的な支援が必要なことを示すものである。

持続可能性への打ち手

「管理職の持続可能性」という言葉には、2つの含意がある。1つ目は、「管理職が、健やかに働き続ける」ことである。もう1つは、「管理職のパイプラインが継続すること」である。

「管理職になりたくない人が77%」*23など、管理職になりたい人が少ないというさまざまな調査結果がクローズアップされることがあるが、適切なスパン・オブ・コントロールとされる管理職1人に対してメンバー5~8名を配置する組織を考えると、必要な管理職の割合は組織のなかで2割程度となる。適性を抜きで考えれば、「管理職になる人が不足している」とは言い切れない。また、管理職経験者を対象とした調査*24では「管理職になってよかった」と思う人の割合が8割程度というものなどもあり、管理職の仕事の魅力が語られることもある。

一方で、本稿で紹介したとおり、管理職は多忙であり、それによって健康を損なっているという実態もある。坂爪(2020)や小林(2024)*25の指摘にあるとおり、管理職を取り巻く問題は構造的・複合的なものであり、解決のためにはトップマネジメントや人事による手当てが欠かせない。

また、問題に対する打ち手は、さまざまな領域の知見からの考察、技術の応用が欠かせない。例えば、アドラーとベンブナンフィッチ(2012)*26による心理学の研究では、過度のマルチタスクは生産性を下げるという知見が得られているが、それは管理職の役割の多様性を再考するきっかけとなろう。また、本誌vol.80(2025年11月)*27で紹介したSHIFT社のAIエージェントによる1on1の取り組みのように、新たな技術により、管理職の役割の一部を代替することもできる。

本稿が「管理職の持続可能性」について考える素材となれば幸いである。

*1 Carlsson, S. (1951) . Executive behaviour: a study of the work load and the working methods of managing directors. Stockholm: Strömbergs.

*2 Stewart, R. (1967) . Managers and their jobs. Macmillan.

*3 ヘンリー・ミンツバーグ(1993).『マネジャーの仕事』奥村哲史・須貝栄(訳)白桃書房.

*4 ヘンリー・ミンツバーグ(2011).『マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』池田千秋(訳)日経BP.

*5 坂爪洋美(2020).管理職の役割の変化とその課題―文献レビューによる検討.日本労働研究雑誌, No.725, 4-18.

*6 リクルートワークス研究所(2020).プレイングマネジャーの時代.

*7 独立行政法人労働政策研究・研修機構(2022).資料シリーズNo.254管理職ヒアリング調査結果―管理職の働き方と職場マネジメント.

*8 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2024).マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年.

*9 小倉一哉(2009).管理職の労働時間と業務量の多さ.日本労働研究雑誌, No.592,73-87.

*10 坂本貴志(2025).働き方改革で労働時間が減った人はだれか―労働時間の上限規制導入後の日本人の働き方の変化を探る.

*11 Kahn, R. L., Wolfe, D. M., Quinn, R. P., Snoek, J. D., & Rosenthal, R. A. (1964). Organizational stress: Studies in role conflict and ambiguity.

*12 田尾雅夫(1986).中間管理者における役割ストレスと疲労感.心理学研究, 57(4), 246-249.

*13 岩田一哲(2013).中間管理職における過労自殺の先行要因に関する実証的研究―ストレス研究との関係から―.日本労務学会誌, 14(2), 52-70.

*14 田尾雅夫(2005).管理職の役割変化とストレス.日本労働研究雑誌, No.545, 29-39.

*15 一般社団法人日本経済団体連合会(2012).ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応.

*16 Koontz, H., & O'Donnell, C. (1955). Principles of management: An analysis of managerial functions. McGraw-Hill.

*17 Halpin, A. W., & Winer, B. J. (1957). A factorial study of the leader behavior descriptions. Leader behavior: Its description and measurement, 39-51.

*18 Greenleaf, R. K. (1977). Servant leadership: A Journey into the Nature if Legitimate power and Greatness. Paulist Press.

*19 池田浩・黒川光流(2018).サーバント・リーダーシップの波及効果と職場活性化.日本リーダーシップ学会論文集(1), 24-30.

*20 鈴木智気(2025).サーバント・リーダーシップは持続できない?―SLの実践におけるリーダーの自己養生的アプローチについての探索的研究.日本労働研究雑誌,No.781, 50-64.

*21 田中宏和・小林廉毅(2020).管理職の健康―他職種との比較,時代的変遷,今後の課題. 日本労働研究雑誌, No.725, 82-98.

*22 Kashima, R., & Takahashi, M. (2025). Causal effects of promotion to managerial positions on mental health and satisfaction in Japanese male workers. International Archives of Occupational and Environmental Health, 98(1), 79-98.

*23 株式会社日本能率協会マネジメントセンター(2025).77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?

*24 日経BP(2025).管理職「なってよかった」8割!でも部下から罰ゲームと言われる訳.

*25 小林祐児(2024).『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』集英社インターナショナル.

*26 Adler, R. F., & Benbunan-Fich, R. (2012). Juggling on a high wire: Multitasking effects on performance. International Journal of Human-Computer Studies, 70(2), 156-168

*27 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2025).従業員の本音をAI が引き出すことでエンゲージメントを向上. RMS Message, Vol.80, 33-34.

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.81 特集1「『持続可能な管理職』という考え方」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

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研究主幹

入江 崇介

2002年HRR入社。アセスメント、トレーニング、組織開発の商品開発・研究に携わり、現在は人事データ活用や、そのための測定・解析技術の研究に従事する。
日本学術会議協力学術研究団体人材育成学会常任理事。一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会上席研究員。昭和女子大学非常勤講師。新たな公務員人事管理に関する勉強会委員。

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