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連載・コラム

中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?

第7回 Leading Player編 ~中堅リーダーの成長のカギは期待役割の理解~

  • 公開日:2025/06/16
  • 更新日:2025/06/16
第7回 Leading Player編 ~中堅リーダーの成長のカギは期待役割の理解~

本連載では、「中小企業の組織づくり」をテーマに、組織における階層別育成の考え方をご紹介しています。
第1回では、組織階層の変遷、昨今のフラット化からの揺り戻しで求められる階層別期待役割について取り上げました。社会人が入社してから社長になるまでに10のステージ(階層)があり、それぞれのステージで期待されている役割、期待された役割を全うするために必要なスキル、経験などをまとめた「トランジション・デザイン・モデル」についてご紹介しました。

トランジション・デザイン・モデル

第7回は、中堅社員のなかでもリーダークラスに期待される能力や役割を踏まえ、成長をバックアップする効果的な関わり方のヒントについて、ケーススタディを通じてお伝えします。

本シリーズ記事一覧
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第7回 Leading Player編 ~中堅リーダーの成長のカギは期待役割の理解~
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第6回 Leading Player編 ~中堅社員(リーダークラス)の特徴と期待される役割~
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第5回 Main Player編 ~転換キーワードは周囲への影響力~
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第4回 Main Player編 ~中堅社員の特徴と期待される役割~
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第3回 Starter編 ~新人の伸ばし方とは~
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第2回 Starter編 ~新人の特徴と期待される役割~
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第1回 上下関係のある組織とフラットな組織
(1)ケース① 「一匹狼」なリーダー
(2)ケース② 率先垂範が過度なリーダー
(3)関わり方のヒント

(1)ケース① 「一匹狼」なリーダー

前回は、以下のケースをご提示しました。「うちにもこんな中堅リーダーがいるな……」「うちの中堅リーダーとは少し違うな……」など、ご自身の職場状況を考えながらお読みいただいたのではないでしょうか。あらためてそれぞれのケースについて考えてみたいと思います。

ケース①

直属上司Aさんに、中堅社員(リーディングプレイヤー)Bさんに対する印象をききました。

中堅社員Bさんは、リーディングプレイヤーとして業績を圧倒的に牽引してくれている存在。今期課として目標の120%の売上を達成することができたが、これはひとえにBさんが業績をつくってくれたおかげといえ、業績という側面において非常に感謝している。
その一方で、【1】目標が達成できているのでまあいいかと思いつつ、Bさんの行動について気になっていることがある。
実は先日、後輩のCさんが、Bさんに「業績のつくり方を教えてほしい」と依頼したようなのだが、Bさんから「私は自分でたくさん失敗し、つらい思いや経験を乗り越えて、今の業績をつくれるようになった。【2】あなたも経験を積めば売れるようになる。それに、後輩といってもライバルだし、そう簡単にノウハウは教えられない」と言われたようだ。
Bさんはいつも営業先に直行・直帰してしまうため、実際どのように営業しているのか、直属の上司である私もよく分からない。私としてはBさんの他にも業績を牽引するメンバーが増え、営業1課全体で営業力がつくといいなと思っているが……。

ケース内でお伝えしたかった点に下線をつけてみました。

下線【1】 期待役割が伝わっているか

「リーディングプレイヤー」の階層にあたる中堅リーダーは、組織に対して大きな貢献が期待されるポジションです。実際に、ケース①のBさんは実務において組織を牽引するほどの優れた業績をあげているようです。とはいえ、中堅リーダーに期待される“組織貢献”とは、業績としての成果ばかりではありません。

リーディングプレイヤーであるBさんには、本来であれば管理職と連携してマネジメントに関与し、組織内のメンバーの成果を底上げするといった役割も求められます。しかし下線①をみてみると、上司のAさんは「目標が達成できているのでまあいいか」と妥協し、個人としての業績だけで満足してしまっています。

たとえ十分な業績を残せていたとしても、ケース①のような場合では「自分のやり方をヒントとして後輩に教える」「マネージャーと共に組織全体の働きやすさ向上に取り組む」といったリーディングプレイヤーの役割を上司がしっかりと認識し、その役割を中堅リーダーが果たせるよう確認・助言を行うことが大切です。

下線【2】 「組織成果」を意識できているか

下線【2】は典型的な「一匹狼」化してしまったリーダーの特徴であり、中堅リーダーが自らの期待役割を把握できていない場合に多くみられます。自らの努力によって築かれたノウハウを簡単には教えたくない、という心情は理解できますが、前述のとおりリーディングプレイヤーは組織全体の成果向上もミッションの1つであるため、この状態では期待役割に応えられているとはいえません。

さらに、情報共有を拒むリーディングプレイヤーには、たとえ成果を出せていても、普段どのように動いているのかが周囲からみえないという問題点もあります。担当している業務がブラックボックス化してしまっているこの状態では、万が一トラブルが起きた際の対応や、他のメンバーへの業務の引き継ぎも困難でしょう。

こうしたリーダーに対しては、「独りで結果を出せたとしても、それは期待役割とは異なる」ということを上司がはっきりと伝える必要があります。他には、リーダー自身が組織のメンバーにノウハウを積極的に共有できるような場を設けたり、リーディングプレイヤー同士が自らのノウハウを言語化して教育に生かすプロジェクトを始動させたりと、期待役割を実践する機会を組織側が用意するのも1つの方法です。

加えて、リーダーの動きがブラックボックス化している場合には、コンプライアンスや組織としてのルールに反する動きがないか監督することも大切です。日頃から状況を共有する機会を設けるなど、ブラックボックス化自体を防ぐための仕組みも併せて構築しましょう。

(2)ケース② 率先垂範が過度なリーダー

ケース②

直属上司Dさんに中堅社員(リーディングプレイヤー)Eさんに対する印象をききました。

Eさんは私の右腕として存在感を発揮してくれており、課の運営にも協力的で、大変助かっている。【3】課の運営や業績づくりについても積極的にアイディアを出すだけではなく、周囲のこともよくみて、細かな仕事まで巻き取ってくれることもあり、ありがたい存在だなと感じている。
一方で、Eさんの行動について気になっていることがある。

Eさんにはプロジェクトを任せており、企画ミーティングの前に「【4】後輩Fさんはメインプレイヤーなので、企画案づくりもどんどんFさんに任せて主体的にやらせてみてほしい」と依頼していた。後輩との関係も良好で安心していたが、先日後輩FさんにそれとなくEさんのことをきいてみたところ、こんな返答があった。
「Eさんは本当に頼れる先輩。先日の企画ミーティングの際、Eさんが事前にアイディアをまとめて持ってきてくれたため、ミーティングが短時間でスムーズに進んだ。私はEさんの案についていこうと思っている」
プロジェクトは前に進んでいるようだが、私の期待とは少し違うなと感じている。

ケース内でお伝えしたかった点に下線をつけてみました。

下線【3】 リーダーには様々な業務が集中しがち

ケース①のBさんと比較すると、Eさんにはリーディングプレイヤーとしての期待役割に対する一定の理解がうかがえます。率先して組織の役に立とうとする姿勢がみられ、周囲のメンバーに対しても目が行き届いているようです。しかし、一見理想的に思えるこうした中堅リーダーも、実際には課題を抱えている場合があります。

というのも、経験豊富で幅広い仕事に対応できるリーディングプレイヤーには多くの業務が集まりやすく、1人で多重にタスクを抱えてしまいがちです。その結果、期待に応えることを優先するあまり、本来取り組むべき業務を後回しにしたり、十分な時間を費やせずに「こなして」しまったりする可能性があるのです。

このような事態を回避するためには、組織が重視している業務や、本人の成長において重要な仕事にリーダーがしっかりと時間を確保できているかを上司が定期的に確認することが重要です。リーダーに仕事が集中しがちな場合には、状況に応じて他のメンバーに業務を振り分けることも視野に入れましょう。

下線【4】 仕事を巻き取りすぎている

リーディングプレイヤーは組織全体のサポートも重要な役割ですが、仕事の巻き取りすぎには注意が必要です。メンバーの仕事を必要以上に巻き取ってしまうことは、下線【3】でも触れた「必要な仕事に十分な時間を確保できない」原因の1つになることがあります。

今回のケース②でも、Eさんが「自分ができるから」と企画案づくりまで担当してしまうことで、他の重要な仕事に時間を割けず、後輩Fさんの成長機会も奪ってしまっている可能性が考えられます。もしくは、Eさんも「ここはFさんに任せるべき」と理解してはいるものの、「自分がやった方が早い」との考えから巻き取ってしまっているのかもしれません。

仕事の巻き取りすぎは、一見すると業務が滞りなく進んでいるようにみえることも多く、見落としがちな問題でもあります。そのため、業務がひと段落するようなタイミングで、メンバーの業務量や割り振りが適切かどうか見直す機会を設けることをお薦めします。

もし仕事の巻き取りすぎに陥っている場合には、まずはリーダー本人にヒアリングを実施して巻き取りすぎてしまう原因がどこにあるかを整理し、意見を交換し合いながら問題を解消する方法を模索するとよいでしょう。

まとめ

組織を牽引する存在である中堅リーダー(リーディングプレイヤー)は、仕事において高い能力を持ち、一定の成果をあげている層とされます。しかし、本記事で紹介したケースのように、その成果が必ずしも期待役割と合致しているとは限りません。

また、円滑に業務が進み、結果が出ているように思える組織でも、その内部には思わぬ問題が隠れていることがあります。だからこそ、上司にはリーダーの様子をよく観察し、期待役割から逸脱しないようサポートすることが求められるのです。

(3)関わり方のヒント

第6回でもご説明したとおり、弊社トランジション・デザイン・モデルでは中堅リーダーを「Leading Player=リーディングプレイヤー」の階層に位置づけ、その行動や状況を整理しています。

具体的には、周囲が関わって決める「抑える行動」「伸ばす行動」のほか、順調に成長が進んでいないときの様子を「トランジションを乗り越えられないと…」、順調に成長しているときにみられる行動を「トランジションの出口のサイン」として言語化しています。

中堅リーダーへの関わり方を模索する際は、以下のような項目を目安にしてみてはいかがでしょうか。
詳細はこちらのコラムをご確認ください。

抑える行動・伸ばす行動

いかがでしたでしょうか。
1人でも多くの方が、Leading Playerステージからさらに次のステージに向けて力を蓄え、組織への貢献を実感しながら生き生きと働くことができるように、本コラムが参考になれば幸いです。

Leading Playerステージまとめ

執筆者

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営業統括部
マーケティング営業部 3グループ
シニアソリューションプランナー

佐藤 修美

2007年リクルートマネジメントソリューションズ入社。以来、一貫して中小・中堅企業様を対象としたセクションに在籍、営業、営業マネージャー、北海道支社長を務める。人事制度構築、風土変革、マネジメント変革、オンボーディング、営業力強化、ダイバーシティ…など人材育成、組織づくりにまつわる、中小企業特有の悩みに幅広く対応してきた。担当した企業は延べ1,000社に上る。セミナーの企画運営・講師担当。

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