- 公開日:2024/09/13
- 更新日:2024/09/18
トランジション・デザイン・モデルとは、組織における人の成長を「役割転換」というテーマから体系化したモデルです。
日本の多くのビジネスパーソンは、社会人として組織の一員となり、経験を積むにつれて期待される役割が変化していきます。これらの期待役割の変化を正しく認識し、役割転換(トランジション)をはかることで、ビジネスパーソンとして成長していきます。
リリースした2010年当初から現在に至るまで、弊社トランジション・デザイン・モデルは業界・業種、そして従業員規模を問わず多くのお客様からご支持いただいています。
不確実性の高い昨今においても、人材育成を考える際の普遍的な「ものさし」としてより多くの企業にお役立ていただきたいと考え、本連載をスタートしました。
第4回の今回はLeading Playerと呼ばれるステージについて紹介いたします。
Leading Player/主力ステージとは――組織業績と周囲のメンバーを牽引するステージ
チームの中で、主戦力としての期待が大きいのがLeading Playerです。業績などで大きな成果を上げ組織に貢献することはもちろん、管理職の右腕としてチームをまとめるリーダーとして周囲に良い影響力を発揮することが期待されます。そして、このステージからは「個人」から「組織」という観点が、新たに期待役割として加わります。
- 目次
- トランジションのプロセスとは
- ①トランジションの入口のサイン
- ②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
- ②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
- ③このステージで一般的に求められるスキル
- ④トランジションを促進する経験
- ⑤トランジションの出口のサイン
- まとめ
トランジションのプロセスとは
ビジネスパーソンがトランジション(役割転換)を果たし、新たな役割を担えるようになっていくために必要なプロセスを5つの観点から捉えています。
①トランジションの入口のサイン
新たな役割に向けて意識や行動を変える必要性を自覚するきっかけを指します。
②トランジションの核心となる意識・行動
各ステージでパフォーマンスを発揮するために、特に変えなくてはいけない意識や行動を指します。この意識や行動には、それまでの役割ステージのときと比較して、“伸ばす”べきものと“抑える”べきものの両方があります。
③このステージで一般的に求められるスキル
各ステージで期待される役割を担うために、必要なスキルを身につけることを指します。
④トランジションを促進する経験
各ステージで求められる期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルを自分のものにしていくための経験学習を指します。
⑤トランジションの出口のサイン
各ステージでパフォーマンスが出せるようになり、自信が生まれている状態を指します。
ここでは本人の自覚と、周囲からの見られ方の変化との双方が含まれます。
①トランジションの入口のサイン
主任・係長・リーダー・チーフなどの肩書がついたとき、組織やチームのリーダー的な立場の仕事を与えられたとき、その人はLeading Playerステージの入口に立っていると考えることができます。
②-1トランジションの核心となる“伸ばす”意識・行動
Leading Playerステージで積極的に意識し、取り入れるべき行動は以下のとおりです。
Main Playerステージと比較すると1段上の行動が求められることが分かります。
②-2トランジションの核心となる“抑える”意識・行動
逆に、Leading Playerステージで抑えるべきありがちな意識や行動として以下が散見されます。
トランジションを乗り越えられないとどうなる……?
「個人」だけでなく、「組織」としての観点も期待されることが、1つ前のステージであるMain Playerステージとの大きな違いです。
組織の中のリーダーということは、当然一番難しい業務や業績を担うことになります。
仕事の量・質ともに求められることから、仕事の生産性を高め、難度の高い要求に応えるための専門性を磨く必要もあります。
だからといって、個人業績を上げることだけに集中し、チームへの情報還元やメンバーの業績達成の支援を怠るのは、Leading Playerとしての期待に応えられているとは言えません。
チームを牽引する期待があるにもかかわらず、チームやメンバーのことに関心が向かないと、「あの人は自分のことしか考えていない」などと、リーダーとして期待されなくなってしまいます。
また、これまで以上に多くの仕事や難度の高い仕事が割り当てられたとき、業務の生産性や品質を高められずにいると、リーダーとしては不十分という評価になってしまいかねません。
さらに、後輩指導を任されているのに、後輩が考えるべき仕事まですべて自分で巻き取ってしてしまうと、後輩がいつまでたっても育たず自律しない可能性が出てしまいます。もしくは、自分のやり方が最適だと思い込むことによって、後輩の意見や個性を潰してしまい後輩のモチベーションを下げてしまう恐れもあります。
これらのことが散見されると、上司や周囲から、「リーダーとしては任せきれないところがあるな」という目で見られてしまいかねません。では、そうした状態になるのを防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。
③このステージで一般的に求められるスキル
Leading Playerに求められるスキルについて、考えるスキル・実行するスキル・人を動かすスキル・自己をコントロールするスキルの4つのカテゴリーに分類することができます。
Leading Playerに求められる3つの役割とそれに付随する必要なスキルについて解説していきます。
1つ目の役割は、前述のとおり個人の仕事において量・質ともに高い水準で仕事を遂行するという役割です。この役割を担うべく、例えば顧客からの幅広い要望に対応するためには、自分の担当業務における専門性を高める必要がありますし、仕事の生産性を高めるためには、職場全体の課題に目を向け解決していく力が必要となります。
また、より大きな成果を上げるためには、多くの人を巻き込み、起こり得るトラブルを予測しコントロールしながら遂行する力が求められます。
2つ目の役割は、上司である管理職の右腕としての役割です。Leading Playerステージになるとマネジャーに意見を求められる機会や、マネジャーの代わりにメンバーに指示を出す機会が増えます。マネジャーに近い視界で物事を考え、判断することができるよう、社内外の動向や組織の状態を把握しておき、自分なりの意見を持っておくことが求められます。
3つめの役割は、組織の潤滑油となりチーム全体の士気を高め、必要なサポートを行う役割です。
職場のあるメンバーが困っているときに、すぐに手を差し伸べてしまうと、メンバーがいつまで経っても育ちません。メンバーが自力で乗り越えることができるよう、サポートをしたり、チームのメンバー全員が目標を達成できるように、全員で知恵を絞るよう投げかけたりする力が求められます。
これらの力が身につくことで、上司から「チームのこの部分が特に気になるんだけど、どう思う?」と相談を受け、メンバーから「自分の今後のキャリアについて相談に乗ってもらえませんか?」と相談されるなど、上からも下からも頼りにされる存在となります。
④トランジションを促進する経験
ここまで、Leading Playerステージでの期待役割を担うために必要な意識・行動・スキルについて解説してきました。ここからはLeading Playerステージで必要な意識・行動・スキルを自分のものとして習得するために必須の経験について解説していきます。(※)
(※)70:20:10のフレームワークとは、ビジネスパーソンの成長を促す経験の特性として70%の現実の仕事経験、20%の人間関係における経験、10%の計画された学習経験(研修など)を指し、人材育成施策をデザインする中核となる考え方です。
前述のスキルと同様に、ここでは3つの主な期待役割を担うために必要な経験について解説していきます。
まず1つ目の、「量・質共に高い水準で仕事を遂行する役割」を担うためには、プレッシャーの高い業務や、組織の業績に大きな影響を与える業務を任せることで、より高いレベルでの成果が求められる環境に配置することで必要な経験を積むことができます。
そして、2つ目の「上司の右腕としての役割」については、一部の権限を与え、緊急時に代理で判断や指示を行う経験を積ませることが有効です。また、定期的に所属事業や組織について意見を述べる機会を設けたり、上司の代わりに上位者の集まる会議に参加させたり、計数管理やスケジュール管理を任せたりすることも効果的です。
最後に、3つ目の「組織の潤滑油となりチーム全体の士気を高め、必要なサポートを行う役割」については、期初に組織目標を立案する際に「どのようなチーム体制にしたいか」「チームとして何を達成したいか」を考える機会を与えることや、日常において所属メンバーの成長課題について上司と議論することが有効です。
⑤トランジションの出口のサイン
自分のこと以外に、他メンバーや組織の業績に関心が向き、職場で上司の考えも踏まえて自分で判断・指示を出せるようになり、メンバーの状況について、上司よりも自分の方が詳しいと思えるようになると、Leading Playerステージはクリア!といってもよさそうです。
まとめ
一人前として高い成果が求められるMain Playerステージに対して、Leading Playerステージは、より範囲の広い成果が求められるステージといえるでしょう。視野が広がり会社のことがいろいろ見えてくるタイミングのため、どうしても会社や上層部への不平不満を感じやすい時期でもあります。
しかし、現場の最前線にいるLeading Playerが持っている自社の課題感はある意味、今後の事業の成長にとって必要な意見や課題である可能性もあります。
それらを一個人としての不平不満にとどめてしまうか、あるいは数字以外にもレベルの高い仕事を行うことで発言に説得力を持たせるような影響力を持ち、建設的な意見として上申していけるかは、Leading Playerステージの人にとっての大きな分岐点となります。
また、メンバー個々人が生き生きと活躍し、組織としての成果やシナジーを生むためにはLeading Playerが期待役割を発揮し、上司とタッグを組めるかが鍵になります。
本人としてはやるべきことや見る範囲が増え、苦労も多いことでしょうが、このステージで身についた力は本人の今後のキャリアにおいて、とても大きな財産となります。
上司の方はどうか、部下であるLeading Playerステージの力を信じて任せていただきたい、と思います。
1人でも多くの方が、Leading Playerステージからさらに次のステージに向けて力を蓄え、組織への貢献を実感しながら生き生きと働くことができるように、本コラムが参考になれば幸いです。
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