連載・コラム
中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
第1回 上下関係のある組織とフラットな組織
- 公開日:2025/01/10
- 更新日:2025/01/10

皆さんの組織にはどのような役職の方がいらっしゃるでしょうか。
「部長、課長はあるけれど、係長、主任といった役職はない」「部長も課長もない」など、さまざまなケースがあるかと思います。スタートアップ企業の場合、階層が3階層程度……ということも珍しくありません。そもそもピラミッド構造ではなく、フラット化しているという企業もあるでしょう。
ところが、いざ組織運営をしてみるとフラット組織の運営難度は非常に高く、あらためて階層別組織の良さが見直されているように感じています。
そこで本連載では、「中小企業の組織づくり」をテーマに、組織における階層別育成の考え方についてお伝えします。御社の育成・組織づくりの参考になれば幸いです。
第1回は、組織階層の変遷を振り返りながら、階層別期待役割についてご紹介します。
- 中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
- 第3回 Starter編 ~新人の伸ばし方とは~
- 中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
- 第2回 Starter編 ~新人の特徴と期待される役割~
- 中小企業はどのように組織づくりをしていけばよいのか?
- 第1回 上下関係のある組織とフラットな組織
- 目次
- (1)組織階層の変遷 ピラミッド組織/フラット組織とは
- (2)求められる階層制と組織を機能させるための期待
- (3)階層が期待役割を発揮できるように促す組織づくり
- (4)成長を10の役割ステージに分けて考えるトランジションモデル(階層別期待役割)
(1)組織階層の変遷 ピラミッド組織/フラット組織とは
「組織のフラット化」というキーワードを聞いたことがあるでしょうか。フラット組織とは、階層が少なく平坦な組織形態を指し、かつて階層があることが好まれていた日本の企業でも、徐々にフラット組織が求められるようになってきました。
あらためて、皆さんの組織にはどのような役職があるでしょうか。部長、課長はあっても、係長、主任といった役職が最近めっきり少なくなったな、と感じている方もいらっしゃるかもしれません。起業間もない新興の企業だと、階層が3階層程度……という企業も見かけます。
組織形態にはそれぞれメリット、デメリットがあります。階層が多い組織は、組織を統制しやすいというメリットがある一方、承認の段階が増えるので意思決定に時間がかかる、職場のなかでの「上下関係」が多くなることで下の階層から意見が出にくい、といったデメリットも生じます。このようなデメリットが昨今の時代に合わないと考えられるようになり、フラットな組織づくりが目指されるようになりました。
意思決定のスピードが上がる、組織の風通しが良くなるといったことはフラット組織のメリットです。一方でフラットになったことによって、例えば、新しく入ってきた人に先輩として手本になる、指導育成に関わるといったことを期待しにくくなる、というデメリットも存在します。
フラット組織が増えてきた揺り戻しとして、やはりしっかり階層をつくって、期待した階層の役割を果たしてほしい、という企業がまた徐々に増えてきたように感じます。


(2)求められる階層制と組織を機能させるための期待
ある企業の事例を見てみましょう。
フラット組織を目指しマネジメント層をつくらない会社がありました。若い方からするとフラット組織は魅力的に映ったようで採用もうまくいっていましたが、数年経って「やはり組織の統制が利かない……」と管理職の任命を行い、階層を新たに設けました。
フラット組織は、人数が少ないときは良いのですが、社員数が増えていくと徐々に統制が取りにくくなっていきます。マネジメントを利かせ、多くの人数を統制しながら戦略を推進しやすいのは、階層があるピラミッド型の組織です。
また、フラット組織では特に、メンバーそれぞれの自律が求められますが、新入社員や、入社年次の浅い中途入社の社員の全員が自律しているという状態は、あまり現実的ではありません。組織のなかで必要な人に適切な指導や支援をしっかり行っていかなければ、フラット組織のメリットが生かせず、逆に立ち行かなくなってしまいます。
会社というのは一見、それぞれが任された業務(タスク)をきっちり果たしていれば、事業が前に進むように感じてしまいますが、「職場における周囲の人に感じる不満」をイメージしてみると「任されたタスクを、しっかりやってほしい」ということだけではありません。
「先輩社員なのに後輩の面倒を全然見てくれない」
「マネジャーが私の将来や成長をちゃんと考えてくれているのか分からない……」
こんな不満や不安を社内で感じたことはないでしょうか。このような不満や不安は「先輩として」「マネジャーとして」という「階層に見合った期待役割を果たしてほしい」という期待があることの裏返しともいえるでしょう。周囲の方を見渡してみて、果たしてほしいことを整理していくと、階層に求められる期待が実は結構多いということに気がつきます。


(3)階層が期待役割を発揮できるように促す組織づくり
「上下関係をつくることで窮屈な組織にしたくないけれど、組織として統制は取りたい」
「コンプライアンス上、組織としてしっかり管理したいけれど、意思決定のスピードは緩めたくない」
なんとか良いところを両立させたいものですが、なかなか難しいと感じている方もいるのではないでしょうか。
「組織は戦略に従う」という言葉があるように、戦略が進みやすい組織をつくっていくというのが原則的な考え方ですが、組織の形態はさまざまで、その形態の特徴としてメリット・デメリットはどうしても生まれてしまいます。
しかし、このような組織のデメリットとなる点は、マネジメントで補うこともできます。確かに上下関係をつくると下の人は上の人に対してものを申しにくくはなりますが、マネジメント層の“関わり方”がフラットであるということや、普段から信頼関係を築いているといったことが担保できれば、風通しの良い組織をつくることは可能です。
マネジャーだけでなく、リーダークラスの社員が後輩指導を役割として担うことができれば、さらに人も組織も成長が加速することができます。
組織の形態も大切ですが、それぞれの階層が期待役割を発揮できるように促すことも組織づくりには重要なのではないでしょうか。


(4)成長を10の役割ステージに分けて考えるトランジションモデル(階層別期待役割)
ビジネスパーソンの成長を10の役割ステージに分けた、弊社作成の「トランジションモデル」というものがあります。
さかのぼると、お客様から「『役割転換不全』が起きているのだけれどどうしたらいいのだろう?」とご相談を受けたことがこのモデル作成の発端でした。
「役割転換不全」とは、例えば「プレイヤー業務ばかりしている課長がいる」「部長に任命したのに課長と同じことをしていて、大課長になっている」といった、企業が直面していた課題のことです。
このような現象の原因や解決策を考える手がかりとして、当時600社を超える多くの企業様に、社内の「階層」についてのアンケートやインタビューを実施しました。
この結果から、社会人が入社してから社長になるまでに10のステージ(階層)があるということが分かりました。そして、それぞれのステージで期待されている役割、その期待された役割を全うするために必要なスキル、経験なども併せてまとめていき、「トランジションモデル」が完成しました。


なお、ステージを上がることを「トランジション」と呼んでいますが、各ステージの定義の他、トランジションが進んでいる兆し、トランジションがうまくいかないときの状態、トランジションを起こすために周囲がどう関わったらよいのかなども併せてまとめています。
本コラムシリーズではこのトランジションモデルをご紹介しながら、それぞれの階層に期待される役割と実践へのつなげ方のヒントをお伝えしていきます。
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執筆者

営業統括部
マーケティング営業部
佐藤 修美
2007年リクルートマネジメントソリューションズ入社。以来、一貫して中小・中堅企業様を対象としたセクションに在籍、営業、営業マネージャー、北海道支社長を務める。人事制度構築、風土変革、マネジメント変革、オンボーディング、営業力強化、ダイバーシティ…など人材育成、組織づくりにまつわる、中小企業特有の悩みに幅広く対応してきた。担当した企業は延べ1,000社に上る。セミナーの企画運営・講師担当。
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