ボストンコンサルティンググループ Managing Director & Partner
高部 陽平氏
高部:私の認識では、デジタルとトランスフォーメーションはもう切り離せなくなりました。IoT/モバイル、ビッグデータ、AI/機械学習の登場によって、業務遂行を人からデジタルへ置き換えることが可能となったからです。いまやデジタルは、事業・組織を横断するマネジメントイシューそのものです。ビジネスモデルの決定、マーケティング戦略、オペレーション戦略、データ戦略、そしてビジョン策定。すべてにDX、つまりデジタルが欠かせません。いま皆さんが取り組んでいる新規事業創出も例外ではなく、デジタルを知らなければ、新規事業を生み出せない時代になったのです。
私たちは、DX成功のポイントを、価値創出の基礎編「DX1.0」と応用編の「DX2.0」に分けて考えています。DX1.0は、「e2e(部門横断・クロスファンクション)」「X(エクスペリエンス=カスタマージャーニーやエンプロイ―ジャーニー)」「Agile(業界首位が1年で変わるデジタル界の動きについていく機敏さ)」の3つで、DX2.0は、「eco-system(他社との連携)」「@scale(成功手法の全社展開や自動化)」「Innovation & Disruption(事業開発やビジネスモデル変革)」の3つとしています。
特に企業が意識しなければならないのは、「構造的なアジリティ」です。構造的なアジリティを高めるために、経営・組織のあり方を変えながらDXを進める必要があります。具体的には、デジタル推進部門と既存組織の両者が交じった「デジタル推進の現場」をつくり、混成チームが率先してDXを推進していくのです。大企業では、このプロセスが必須です。
最後に、デジタル事業開発を企画する段階の12のキー要素を紹介します。最初の「パーパス」「マーケット」「競合」「アラインメント」は、従来の事業開発と同じ要素です。次の「投資ケース」「ビジネスモデル」「Go-to-Market戦略」「チーム構築」は、従来から変化した要素です。最後の「フリクション(構造的な摩擦への着目)」「Why Now(なぜいまかを徹底して見ること)」「プロダクト」「エコシステム」は、DX時代に新たに登場しました。この12のキー要素に着目することが、デジタル事業開発の成功率を高めるはずです。