- 公開日:2020/06/29
- 更新日:2025/01/24

初めて人事になったとき何から学べばよいか、どのように情報収集をすればよいか、人事に異動された方からよくご相談をいただきます。
人事は、経営の中心的業務として重要な役割を担っています。変化の激しい世のなかの動きと連動しながらも、自社の事業や戦略に合った企画を打ち出していく必要があります。そのため、「年々忙しくなっている」という声もお聞きします。
そこで本連載では、人事のなかでも、人事企画・人材開発のみなさまのお役に立ちそうなテーマを回ごとに取りあげ、ストーリー仕立てで紹介していきます。架空のキャラクターである新米人事担当の北山さんが、悩みながらも一つひとつのお題に取り組み、それに対してベテラン人事であるフクロウ先輩が解説していきます。
前回は、フクロウ先輩からリーダー層の育成について学んだ北山さん。今回はビジネススキル研修の企画方法について考えます。
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- 目次
- 登場人物のプロフィール
- プロローグ ビジネススキル研修は結果を出すのが難しい?
- 第1章 ビジネススキル研修の種類
- 第2章 スキルアップが最終目標ではないビジネススキル研修
- 第3章 使えるビジネススキルを身につける研修企画のポイント
- エピローグ ビジネススキルを使おう
- あとがき
登場人物のプロフィール

北山ともこさん
設立10年、社員300名のIT企業に勤務する、新卒入社3年目の社員。2年間は営業に所属していたが、1カ月前、関心のあった人事部へ異動したばかり。営業ではベンチャー企業を数多く担当し、持ち前の行動力で顧客からの信頼も厚かった。
趣味はカフェ巡りとアクセサリー作り。

フクロウ先輩
同社、人事10年目のベテラン社員。人事企画や社員育成のほか、組織活性などの職務も経験。特に新人育成に力を入れており、最近配属された北山さんのことも気にかけている。
なぜフクロウの姿をしているかは社長と人事部長以外知らない。

プロローグ ビジネススキル研修は結果を出すのが難しい?
フクロウ先輩「テレワークには慣れてきたかな?」
北山さん「以前よりも慣れてきました! WEBであっても、会議ができると仕事がはかどります」
フクロウ先輩「北山さんは、直接話をしながら課題解決を進めていく方が得意なのかな?」
北山さん「そのタイプだと思います。メールやチャットだと、何が言いたいかまとまらないときがあって……」
フクロウ先輩「なるほど。では、会議ではうまくいってる?」
北山さん「時々、結論がまとまらなくて時間切れになることもあります。ちょうど先月、ビジネススキル研修を受けたばかりなのに……」
フクロウ先輩「ビジネススキル研修か……どんなテーマだったの?」
北山さん「課題解決研修とプレゼン研修でした。学んだことをまだ活用できていないかもしれません」
フクロウ先輩「そうか。ビジネススキル研修……今回はこのテーマでいこう!」

第1章 ビジネススキル研修の種類

フクロウ先輩「ビジネススキル研修といっても種類はたくさんあるね」
北山さん「プレゼンや会計……最近だとデータ分析とかも注目されていますよね」
フクロウ先輩「そうだね。ビジネスパーソンとして、どこに行っても共通して使えるスキルを『ポータブルスキル』と呼ぶよ」
北山さん「ポータブルスキルで、人気があるテーマにはどんなものがあるのでしょうか」
フクロウ先輩「調査の結果、人気テーマは問題解決や課題解決、ロジカル・シンキングだということが分かったよ」

よく実施されているビジネススキル研修のテーマ
人材開発施策の特徴を把握するために、人材開発部の実態に詳しいミドルマネジャー・責任者220名に聞いたところ、現在実施しているビジネススキル研修は、「問題解決、課題解決」(58.2%)が最も多く、次いで「ロジカル・シンキング」(55.9%)、「語学研修」(45.9%)だった。今後新たに実施、あるいは強化を検討しているビジネススキル研修は、「問題解決、課題解決」(32.3%)や「ロジカル・シンキング」(22.7%)のほか、「コーチング・メンタリングスキル」(21.4%)が挙がった。


第2章 スキルアップが最終目標ではないビジネススキル研修
北山さん「ビジネススキル研修を企画するときのポイントについて教えてください」
フクロウ先輩「研修自体の設計は第1回で考えたね」
北山さん「はい、育成目標を決め、現状と比較しながら育成課題を決めることが必要でした」
フクロウ先輩「そう。だからビジネススキル研修でも同じように考えるんだ」
北山さん「どんな階層でどんなスキルが必要になるか、これまで研究されているのでしょうか?」
フクロウ先輩「さすが! 情報を活用しようとしているね! ここでは、一例としてカッツモデルを活用してみよう」

階層別に求められる能力の割合を示したカッツモデル
ロバート・カッツ氏が提唱しているモデルでは、階層ごとに求められる能力の割合が異なるとされている。テクニカルスキル(業務遂行能力)とコンセプチュアルスキル(概念化能力)は、階層ごとで求められる割合が違っているが、ヒューマンスキル(対人関係能力)は同じ割合で求められる。なお、ヒューマンスキルとは、「目的達成のために相手や集団に働きかけ、相互作用していく力」のことであり、目指す「目的」によって内容は異なる。


北山さん「スキルは段階を踏みながら、総合的に伸ばしていく必要があるんですね」
フクロウ先輩「そうなんだ。まずはどんなスキルが必要なのかを見定めることが大事だね」
北山さん「私のテレワークでの業務についても、ヒューマンスキルを磨くだけでなく、ロジカルシンキングのようなコンセプチュアルスキルを伸ばしていかないとですね……」
フクロウ先輩「他人に伝わるように話をするには、論理的にものごとを整理しながら、お互いの認識をそろえないといけないからね。いい着眼点だよ」
北山さん「頑張らないと……! ビジネススキル研修を企画するときは、スキルアップを目指すことが大事なのでしょうか」
フクロウ先輩「何のために研修を実施するか、もう一度じっくり考えてみよう」

ビジネススキル研修を実施するのは何のため?
人材育成の目的は、継続的に成果を創出するためと定義することもできる。成果を創出するには、日々の行動をブラッシュアップする必要があり、ビジネススキル研修は行動の礎となる能力といえる。
コンセプチュアルスキル(概念化能力)やヒューマンスキル(対人関係能力)は、ビジネスパーソンとして、ポータブルに必要とされるスキル。大切なのは、知っていることでも、保有していることでもなく、「使える」ことである。
そして、近年注目されている「セルフマネジメントスキル」は、日々の行動を振り返りながら、自律的に改善や成長ができる力のことを指す。
なお、専門知識や業界知識は、職場や業界特有の知識・スキルである。ビジネス環境が急激に変化する昨今、専門知識だけに偏らず、ポータブルスキルを獲得し、使っていくことが求められている。


北山さん「スキルアップを最終目標に置きがちになりますが、スキルアップで行動を変えて、成果を出し続けることが大事なのですね」
フクロウ先輩「そうなんだ。次は、使えるビジネススキルを身につけるための研修企画について解説するよ」
北山さん「早く聞きたいです!」

研修の効果測定ポイント
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第3章 使えるビジネススキルを身につける研修企画のポイント
北山さん「私が受講したビジネススキル研修は、自分で選んだコースでした」
フクロウ先輩「そうだね。ビジネススキル研修にはいくつかやり方があるよ。それぞれの階層や役職になったら必ず身に付けてほしいスキルは、階層別研修で必須受講とすることが多いね」
北山さん「例えば、新入社員にはビジネスマナーやビジネス文書、若手社員にはコミュニケーションスキルといったテーマが考えられます」
フクロウ先輩「そう! 北山さんのような中堅社員には問題解決や課題解決、リーダーならチームマネジメントなどが代表的だね」
北山さん「以前、中堅社員の育成ポイントのお話をしたときに、選択型研修という方法もあることを知りました」
フクロウ先輩「職種や個々人の課題に応じて学ぶときには、希望者に研修の機会を設ける『選択型研修』が使えるよ」

ビジネススキル研修を実施するのは何のため?
選択型研修について解説している第3回『中堅社員の役割と育成のポイントを教えてください』はこちら

フクロウ先輩「ビジネススキル研修の効果を高めるには実際にスキルを使ってみないとね」
北山さん「実際の業務で、試行錯誤しながら使ってみるという感じでしょうか……」
フクロウ先輩「もう少し効率的に身につけたいよね」
北山さん「そうですね。一人ではなかなか難しいと思うので、上司や先輩からアドバイスをもらえるとよさそうです」
フクロウ先輩「上司や先輩に、研修後のフィードバックをお願いするのも大事だね。何よりもまず人事として考えておかなくてはいけない企画のポイントは、アウトプットにつながるインプットを行うことだよ」
北山さん「アウトプットにつながるインプット……とはどういうことでしょうか」
フクロウ先輩「例えば、北山さんが先月受講したプレゼン研修を基に考えてみよう」

アウトプットにつながるインプットは何か?
例えば、プレゼンテーションは1対多の発表形式が多いが、資料を作成する必要があるか、1対1のコミュニケーションに応用するかという点、また「相手」が誰なのかという点でアウトプットが異なる。
さらにインプットにおいては、相手の前提(知識量や置かれている状況)を知ったうえで、「相手に分かりやすく伝える」ため、コミュニケーション力と、資料作成力の土台となる論理的思考力を強化することも必要となる場合がある。誰に、どのようなアウトプットをするかによって、インプットのテーマ選定の力点が異なってくる。


北山さん「日々どんな業務をしているか、人事としても理解しておく必要がありますね」
フクロウ先輩「そうなんだ。ただ職種によって業務は異なるから、学んだビジネススキルを使う場面を意図的につくることが必要な場合もあるね」
北山さん「どうやったら日々の業務でアウトプットできそうかを考える必要があるのですね」
フクロウ先輩「そう。ちなみにインプットの手法もさまざまだよ。ワーク形式もあるし、eラーニングなんかもあるね」
北山さん「レベルの設定も大事ですね。あまり簡単なものではステップアップにならないですし、難しすぎてもついていけません」
フクロウ先輩「そうだね。初級・中級・上級とレベル分けができる場合は、目標とするアウトプットと現状の差からレベルをチェックしよう」

エピローグ ビジネススキルを使おう
北山さん「ビジネススキル研修を活用するイメージがわいてきました」
フクロウ先輩「人事としては、現場での活用も支援していければ理想的だよね。そのためには一人ひとりのキャリア形成についても知っておくといいよ」
北山さん「できることが増えると、仕事でやりたいことも増えますね。私もできることをどんどん増やしていきたいです!」
フクロウ先輩「その調子だね!」

キャリア形成・動機付けの「WILL-CAN-MUST」
WILL(したいこと)-CAN(できること)-MUST(すべきこと)。
この3つが重なった仕事や取り組みが、個人のキャリア形成や動機付けに影響を与える。また、組織にとっても望ましい仕事の割り当てといえる。


あとがき
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【text:北嶋理沙】
シリーズ記事
第1回 「何かいい研修ないですか?」
第2回 「マネジャーになったことがなくても、管理職研修の企画はできますか?」
第3回 「配属後の新入社員を育成するには?」
第4回 「中堅社員の役割と育成のポイントを教えてください」
第5回 「リーダーに求められていることは何ですか」
第6回 「使えるスキルを身につける!ビジネススキル研修の企画ポイント」
第7回 「人事制度を改定すれば社員のモチベーションは上げられますか」
第8回 「昇進・昇格はどうやって決めるのですか?」アセスメントツールの活用
第9回 「教育体系と研修の効果測定について知りたいです」
第10回 「テレワーク下のコミュニケーション課題は人材開発だけでは解決できない……」組織開発のヒント
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