用語集
等級制度とは? 3つの種類と仕組み、導入のメリット・デメリットを解説
- 公開日:2025/11/10
- 更新日:2025/11/10
等級制度とは、社員の仕事や能力に応じてランク(等級)を分け、給与や評価に反映させる仕組みです。
社員一人ひとりの役割や成長を正しく評価し、組織運営をスムーズに進めるうえで欠かせない制度です。
等級制度の基本的な考え方から、職能・職務・役割という3つの種類、それぞれのメリット・デメリットまで解説します。
等級制度とは?人事制度の骨格をなす仕組み

等級制度は人事制度の中核を担う重要な枠組です。
各等級は評価制度と密接に連動し、給与や賞与、役職などの処遇を決定する際の客観的な基準として機能します。
等級ごとに求められる要件を明確に定義することで、従業員の目標設定やキャリア形成を支援し、組織全体の成長を促す役割も果たします。
等級制度が目指す3つの目的
等級制度には、次の3つの目的があります。
- 給与や役職といった従業員の処遇を決定する際に、客観的で公平な基準を設ける
- 企業が求める人材像や各等級で期待される役割を明示し、従業員が目指すべき目標を具体的に示す
- 企業が昇格要件を定義することで、従業員の自律的なキャリア形成を促し、成長への意欲を高める
制度設計においてこれらの目的を明確にすることで、等級制度は従業員一人ひとりの納得感を高め、組織全体の活性化にもつながります。
等級制度2種類の違いとメリット・デメリット
等級制度には2つの種類があり、それぞれに異なる特徴やメリット・デメリットがあります。
企業の組織風土や人材戦略に合わせて、制度を選ぶことが重要です。
制度名 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
職能資格制度 | 能力やスキルに応じて等級を決定 | 長期的な人材育成に向いている | 成果との連動が弱く、年功序列になりやすい |
職務等級制度 | 職務内容に応じて等級を設定 | 業務成果を重視できる | 柔軟性に欠け、組織変更や人事異動に対応しづらい |
①職能資格制度|ゼネラリスト育成に適した日本型
職能資格制度は、能力やスキルに応じて等級を決める仕組みで、特定の職務に限定せず、幅広い業務への対応力を評価します。
日本型の雇用慣行と相性が良く、大企業や製造業で多く採用されています。
メリット
- 業種・職種を問わず導入しやすい
- ゼネラリストを長期的に育成できる
- 経験や勤続を重視するため、帰属意識が高まりやすい
デメリット
- 成果との連動が弱く、年功序列になりやすい
- 評価基準が曖昧になりやすい
- 定期昇格が前提となり、人件費が高騰しやすい
例:
IT業界:技術者が「基本情報技術者」や「応用情報技術者」の資格を取得することで、昇進や給与が決まる。
金融業界:ファイナンシャル・プランナー(FP)などの資格取得により、給与や職位が向上。
医療業界:医師が専門資格を取得することで、専門分野の上級職に就ける。
会計業界:公認会計士(CPA)や税理士資格を持つことで、高い職位に昇進。
製造業:品質管理技術者や機械設計技術者など、特定の技術資格が昇進や職位に影響。
②職務等級制度|専門性を高める成果主義型
職務等級制度は、従業員が担当する職務の内容や難易度に応じて等級を決定する制度です。
勤続年数や年齢といった要素ではなく、業務の責任や範囲に基づき等級を定める点が特徴です。
「同一労働・同一賃金」の原則に基づき、詳細な職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)を用いて評価するため、主に外資系企業や専門職に適しています。
メリット
- 職務の内容に応じた公平な評価が可能
- スペシャリストの専門性を生かしやすい
- 属人化を防ぎ、人件費を抑制しやすい
デメリット
- 職務記述書の作成・運用に手間がかかる
- 職務が固定化され、異動や配置転換が難しくなりやすい
- 柔軟な人事運用には不向きな側面がある
等級制度の作り方|設計から導入までの5ステップ

等級制度を効果的に機能させるには、目的の明確化から運用ルールの整備まで、段階的に設計を進めることが重要です。
制度の選定や等級数の設定、評価基準や給与との連携などを丁寧に構築することで、組織に合った制度運用が可能になります。
①等級制度の目的と方針を決める
等級制度の設計は、「なぜ導入するのか」「導入によってどのような組織を目指すのか」といった目的と方針の明確化から始まります。
自社が抱える問題や解決したい課題を洗い出し、等級制度を通じて「どのような会社になりたいか」という将来のビジョンを明確にすることが重要です。
検討時の観点は、以下のとおりです。
- 現状の課題を把握する:昇進基準が不明確で不公平感がある、業務成果と処遇が結びついていない、キャリアの見通しが立てにくいなど
- 目指す組織像を定める:主体的に行動できる人材を増やす、成果に応じて報いる仕組みを作る、キャリアの道筋を明示する
- 制度全体との整合性を意識する:評価制度や報酬制度と連動した設計とすることで、一貫性と運用のしやすさを確保する
- 客観的な現状分析を行う:従業員意識調査やヒアリング、離職率や等級分布などのデータをもとに、改善ポイントを洗い出す
この段階で制度の目的と方針をしっかりと定めることで、後の設計・導入フェーズにおいて一貫性と納得感のある等級制度を構築しやすくなります。
②自社に合った等級制度を選ぶ
制度選定時には、以下の観点を総合的に検討すると効果的とされます。
- 自社の人事課題や育成方針に合っているか
- 経営方針や組織文化と整合しているか
- 導入コストや運用負荷が現実的か
- 職種や部門ごとにハイブリッド運用が必要かどうか
等級制度を設計するうえで、自社の方針や組織特性に合った制度を選定することが、その後の運用のしやすさや制度の定着率を大きく左右します。
単一の制度に絞る必要はなく、職種や部門によって組み合わせる設計も可能です。
選定時の主な検討ポイントは下記のとおりです。
- 導入の目的と制度の特性が合っているか:人材育成が目的なら職能、専門性の強化なら職務、柔軟な組織運営なら役割
- 自社の組織風土や将来ビジョンとの整合性があるか:トップダウン型か、自律型組織か、事業の成長フェーズなども考慮する
- 制度ごとのメリット・デメリットを十分に理解しているか:既に把握した3制度の特性を比較し、目的とずれていないかを確認
- 複数制度を併用する必要があるか:全社に役割等級制度を導入し、専門職には職務等級制度を適用するなど
③適切な等級の数を設定する
等級制度の種類を決めたら、次は階層ごとの等級数(ランク数)を決定します。
多すぎても少なすぎても運用に課題が生じる可能性があるため、組織の規模や人員構成に合った適切な数が必要です。
設計時に押さえておきたいポイント
等級の数が多すぎる
- 等級間の違いが不明瞭になる
- 昇格のスピードが速まり、評価が形骸化しやすい
等級の数が少なすぎる
- 同じ等級内で能力差が生じやすい
- 評価や処遇に対する不公平感が出やすい
等級数の目安(参考値)
層 | 推奨等級数 |
|---|---|
一般職層 | 3〜4段階 |
管理職層 | 2〜3段階 |
制度を形だけにせず、現場でも使いやすく、キャリアの節目が明確になる等級設計を意識することがポイントです。
④各等級の定義と評価基準を定める
等級制度を機能させるには、各等級に求められる要件や評価基準を具体的に設定することが欠かせません。
定義が曖昧なままだと、評価や昇格に対する納得感が得られず、制度が形骸化してしまいます。
- 等級ごとに求められる内容を整理する:役割・期待成果・必要なスキルや行動特性などを明文化し、誰が見ても判断できる基準にする
- 評価の公平性と目標設定のしやすさを両立する:基準が明確になることで、上司・部下間の認識のズレが減り、従業員が自ら成長目標を立てやすくなる
- 評価基準の設計方法を検討する:すべての職種で共通の基準にするのか、職種ごとに個別で設けるのかを見極め、運用負荷とのバランスを取る
「何ができれば次の等級に上がれるのか」を明らかにすることが、制度への信頼と、自律的な成長意欲の醸成につながります。
⑤給与連携と運用ルールを決定する
等級制度を設計したら、給与や処遇とどのように連動させるか、また制度全体の運用ルールをどのように構築するかを検討します。
現行制度からのスムーズな移行と、実運用に向けた準備が重要です。
取り組むべきポイントは次のとおりです。
- 給与や処遇との連携方法を設計する:等級ごとの昇給幅・賞与配分・役職との対応関係などを整理し、現行制度との差異を明確にする
- 事前にシミュレーションを実施する:設計した制度を実際の従業員データにあてはめてみることで、評価基準や処遇の整合性を確認できる
- 運用体制を整える:制度導入後は、評価者研修・被評価者研修などを通じて、制度の理解と定着を図る
制度は設計のみで完結するものではありません。
給与連携と運用支援の仕組みまで含めて整えることで、初めて現場に根付いた仕組みとして機能します。
導入前に知っておきたい、等級制度の失敗例と対策
等級制度は組織運営の軸となる重要な仕組みですが、制度の特性や設計ポイントを十分に理解せずに導入すると、かえって運用上の課題を引き起こす恐れがあります。
制度ごとに生じやすい課題を事前に把握することで、導入前の準備や制度設計の質を高めることができます。
【失敗例:職能資格制度】評価基準が曖昧で、社員の不満が溜まる
職能資格制度では、能力やスキルの蓄積をもとに等級が決まりますが、評価基準が曖昧なままだと昇格理由や評価根拠が不明確であるという不満が生じやすくなります。
評価基準が曖昧なまま運用されると、次のような問題が起こります。
- 昇格・昇給に対する不公平感が生まれる
- 評価が属人的になり、信頼を失う
- 成果よりも年次や印象が重視されるようになり、やる気が低下する
【対策】評価基準の明確化とフィードバックの徹底
納得感のある評価を実現するためには、「何をどう評価するのか」を明文化し、全社で共通認識を持つことが重要です。
対策として有効な取り組み
- 等級ごとの評価基準を明確化:期待されるスキル・役割・成果を言語化し、全員に共有
- 360度評価を導入:上司だけでなく、同僚・部下など多方面からの評価を取り入れて客観性を強化
- クラウド型人事評価システムを活用:評価内容や過程を一元管理し、透明性を担保
- 評価者研修を実施:判断基準の統一と、評価スキルの底上げを図る
- フィードバックの定期実施:単なる結果報告ではなく、「成長に向けた具体的アドバイス」として伝える
【失敗例:職務等級制度】制度の設計・運用が負担になり形骸化する
職務等級制度は「職務内容」に応じて等級を決定しますが、職務記述書の作成や更新には膨大な手間がかかります。
実務とズレが生じやすく、制度が現場に馴染まないケースも少なくありません。
制度が形骸化する主な要因
- 職務記述書の作成・改訂に時間がかかりすぎる
- 実際の業務と職務定義が乖離し、評価が機能しない
- 等級の設計が細かすぎて運用が煩雑になる
【対策】段階的な導入とITツールの活用
現場に根づく制度にするには、スモールスタートやIT活用を通じて運用負荷を軽減することがポイントです。
対策として有効な取り組み
- 段階的に導入する:一部の職種や部門から開始し、運用課題を洗い出して改善
- 制度導入前にシミュレーションを実施:実際の従業員データをもとに評価・処遇を試算し、矛盾を事前に発見
- クラウド型評価ツールを導入:職務情報の一元管理・更新・共有を効率化
- 等級数は適切に設定:過多・過少を避け、管理職:2〜3段階、一般職:3〜4段階を目安に調整
- 設計・運用担当者へのサポート体制を整備:制度設計だけでなく、導入後の運用支援・研修も計画的に行う
まとめ:明日から始める、等級制度導入の第一歩
等級制度は、社員を公正に評価し、人材を育てるための大切な仕組みです。
自社の方針に合わせて「職能」「職務」「役割」の3タイプから最適なものを選び、「何のために導入するのか」という目的を明確にしてから、具体的な等級数や評価基準などを設計します。
制度は一度作ったら終わりではなく、定期的に見直しと改善を続けることが、会社の成長につながります。
リクルートマネジメントソリューションズでは人事制度を通じて実現したい目的を明確にした上で、コアとなる等級・評価・賃金・育成制度を設計し、その後の運用・定着まで一貫して支援します。人事制度に課題を抱えている方はお気軽にご相談ください。
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