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デザイン思考とは? 注目されている背景やメリット・注意点を解説

  • 公開日:2025/05/26
  • 更新日:2025/05/26

近年、ビジネスやプロダクト開発の現場で「デザイン思考」が注目されています。デザイン思考は、ユーザーのニーズや課題を深く理解し、創造的な解決策を導く手法として、導入する企業や事例が増えています。しかし、デザイン思考を導入する際に、どこから始めるべきなのか、またどのようにして成果を測るのか、といった点については、まだ明確に理解されていないことも多いです。この記事では、デザイン思考の基本的な考え方から導入メリット、注意点までを分かりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。

デザイン思考の概要

デザイン思考は、ユーザーの視点に立って課題を解決するアプローチです。ここではその定義や特徴、他の思考法との違いについて分かりやすく解説します。

デザイン思考とは

デザイン思考は、ユーザー中心のアプローチを採用し、創造的に問題を解決する思考法です。このアプローチは、創造性を活用して複雑な問題に取り組み、解決策を生み出すことを目的としています。デザイン思考は、共感を重視し、ユーザーのニーズや体験を深く理解することから始まります。問題を解決するためのアイディアを生み出し、実行可能なソリューションを提供するために、反復的なプロセスを活用します。

デザイン思考の特徴

デザイン思考の特徴は、従来の問題解決手法と異なり、ユーザーの視点を第一に考える点にあります。具体的には共感を基に、ユーザーの隠れたニーズを探ることに重点を置きます。また、問題を解決するために多くのアイディアを出し、試行錯誤を繰り返しながらより良い解決策を見つけ出します。

他の思考法との違い

デザイン思考は、問題解決や革新を追求するためのアプローチであり、ここではアート思考、ロジカルシンキングと異なる点について説明します。

アート思考との違い

アート思考とデザイン思考の大きな違いは、「誰視点」で物事を考えるかにあります。アート思考は主に「自己視点」での表現が中心です。アーティストの個人的な感覚や感情を表現することに重点を置き、観客の反応よりもアーティスト自身の意図や創造性を重要視します。アート思考では、感覚や直感に基づき、自由な発想で新たな視点を提供することが目的となります。
一方、デザイン思考は「ユーザー視点」を重視する問題解決アプローチです。ユーザーのニーズや課題に共感し、その解決策を提案することに焦点を合わせています。つまり、アート思考が自己表現を追求するのに対し、デザイン思考は他者(ユーザー)のために実用的なソリューションを生み出すことが目的です。デザイン思考では、ユーザーの視点から問題を見つめ、それに対する具体的な解決策を導きます。

ロジカルシンキングとの違い

ロジカルシンキングは、物事を論理的に分析し、原因と結果を明確にする思考法です。問題解決に必要な情報を体系的に整理し、論理的な筋道を立てて解決策を導くことに重点を置いています。デザイン思考とは異なり、ロジカルシンキングは理論に基づいて問題を解決しようとします。
対照的に、デザイン思考はユーザーの体験を重視し、直感的なアイディア出しとユーザーへの共感を中心に進められます。デザイン思考は創造的な解決策を生み出し、定義した問題を多角的な視点から掘り下げるプロセスを重要視します。そのため、デザイン思考はロジカルシンキングの理論的アプローチとは異なり、ユーザーに即した具体的な解決策を追求します。

デザイン思考がビジネスで注目されている背景

デザイン思考は、従来の手法では解決できない複雑な課題に対して効果的なアプローチを提供し、急速に変化する環境で解決策を生み出すため、ビジネスの現場で注目されています。

従来のアプローチの限界

従来の問題解決方法では、特に複雑で変化の激しい市場環境に対応することが難しい場面が増えてきています。伝統的なアプローチでは、問題の根本的な理解やユーザーの本当のニーズを捉えることが十分にできず、技術革新のペースについていけないことが多くあります。これに対しデザイン思考は、ユーザー中心の視点を取り入れたアプローチを取ることで、従来の方法では解決できなかった問題に対処しやすくなるとされています。

市場の変化

現代の市場環境は急速に変化しており、ユーザーのニーズも短期間で変わります。デザイン思考は、ユーザーの声を積極的に取り入れて問題解決を行うため、変化の激しい市場で競争優位性を維持するために必要な手法となっています。特にデザイン思考では、「共感」や「反復的なテスト」を通じて迅速にユーザーのニーズを把握した対応が可能になるとされています。

技術の革新

現代社会では、技術的革新が急速に進んでおり、企業は新たな技術を迅速に取り入れることが求められています。しかし、従来のモノ中心、テクノロジー中心のものづくりでは、技術革新を市場ニーズに適応させる柔軟性に欠ける場合が多くあります。このような背景から、デザイン思考は単に技術を追求するのではなく、ユーザーの体験を最優先に考えるため、技術革新を効果的に活用しつつ、実際のニーズに応じた解決策を提供する点で注目されるようになりました。

DX推進

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業がデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを革新し、競争優位性を確立することを目指します。近年、DX推進が企業成長のカギとされるなか、経済産業省は企業がDXを実現するためのガイドラインを発表しています。このレポートでは、企業がデジタル技術を活用して競争力を高めるために、技術革新と共にビジネス戦略の見直しが求められていることが強調されています。そのなかでデザイン思考がDX文脈で注目されるようになりました。デザイン思考を通じて、企業はユーザーに対して価値を提供し、競争優位性をさらに強化できるとされています。

VUCA時代

VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)時代において、従来の「モノ消費」中心のビジネスモデルでは、ユーザーのニーズに応えることが難しくなっています。現代では、物質的な消費から体験や価値を重視する「コト消費」へのシフトが進んでおり、企業は新たな価値創造やビジネスモデルを構築するための柔軟性と創造性が求められます。デザイン思考は、こうした変化に対応し、ユーザー体験を中心に据えた価値提供を行うための重要なアプローチとして注目されています。各企業はVUCA時代を生き抜くための戦略的な手法としてデザイン思考を活用しています。

デザイン思考導入によるメリット

デザイン思考を企業に導入することで、組織全体のイノベーションと創造性が向上し、ビジネスの競争力を高められます。問題解決における新たな視点を提供し、実際のユーザーのニーズに基づいた価値を創出する手段として注目されています。

イノベーションと創造性の強化

デザイン思考において、単に既存の枠組内での改善にとどまらず、ユーザーが本当に求めているものを見つけ出すことで、革新的な製品やサービスの創出に繋がります。競争が激化する現代においては、単なる製品やサービスの提供ではなく、ユーザーの隠れたニーズを満たすことが、差異化された価値を生み出し、イノベーションを促進します。

アイディア提案の促進

デザイン思考は、組織内のアイディア提案を促進する手法としても有効です。従来の業務運営においては、アイディアが一部の人々からのみ出されることが多いですが、デザイン思考はチーム全員の意見を反映させ、アイディアの多様性を生み出します。全社員が創造的な提案をしやすい環境が整い、より幅広い視点での問題解決が期待できます。

ニーズに合った製品・サービスの開発

デザイン思考を導入すると、「質問する」「思考する」「提案する」といったスキルが求められます。このプロセスを習慣として取り入れることで、これらのスキルを効果的に鍛え、向上させることが可能になります。「質問する」ことでユーザーの本音や潜在的なニーズを明らかにし、「思考する」ことで問題解決のアプローチを深め、「提案する」ことで実行可能な解決策を生み出します。このようにして、ユーザーのニーズにマッチした製品やサービスを開発し、市場での競争力を高めることができるとされています。

組織内の共感と意見受け入れの促進

デザイン思考は、組織内での共感力を高め、異なる意見を受け入れる文化をつくり上げます。多様な意見を尊重し、すべてのメンバーが参加できるような環境を整えることで、組織全体の協力体制が強化されます。特に、部門を超えたチームでの連携が進むことで、組織全体に一体感が生まれることが期待できます。

デザイン思考の5段階プロセス

デザイン思考は、創造的な問題解決の手法として企業や組織で広く活用されています。そのプロセスは、共感、定義、概念化、試作、テストという5つの段階で構成され、ユーザー中心のアプローチに基づいています。この5段階のプロセスを実行することで、効果的な解決策を見つけられます。

①共感

デザイン思考の最初のステップは「共感」です。この段階では、ユーザーのニーズや課題を深く理解することが重要です。観察やインタビュー、調査を通じて、実際の利用者が抱える問題や感情を知り、彼らの視点を取り入れます。共感を得ることで、ユーザーが真に求めているものを把握し、その後のプロセスに役立てられます。

②定義

次のステップは「定義」です。共感を通じて得られた情報を基に、解決すべき課題を明確に定義します。この段階では、ユーザーが直面している表面的な問題だけでなく、潜在的なニーズや隠れた課題にも焦点を合わせ、解決の優先順位を決めます。ユーザーが今は気づいていない「実は必要だと感じていること」を見逃さないことが重要です。これにより、問題の本質が明確になり、その後のアイディア出しや解決策に向けた共通の方向性も定められ、効果的なソリューションに繋がります。

③概念化

「概念化」の段階では、定義した課題を解決するためのアイディアを生み出します。このプロセスでは、さまざまな角度から自由に発想し、創造的な解決策を生み出します。アイディアを量産することに重点を置き、批判や評価を避けて、できるだけ多くのアイディアを出して視野を広げることが重要です。フレームワークを活用したり、ブレインストーミングを行うなど、さまざまな手法を取り入れて、結果的により良い解決策を見つけることを目指します。この段階では、発想の幅を広げることが、最終的な成功に繋がります。

④試作

「試作」の段階では、アイディアを実際の形にすることが求められます。ここでは、完成度を重視せず、まずは迅速に試作品を作成し、その後試行錯誤を重ねながら改善を加えていきます。試作品作成を通じて、アイディアの実現可能性を検証し、ユーザーにとってカギとなる機能を明確にできます。重要なのは、失敗を恐れずさまざまな実験を行うことです。不完全な試作品でも可視化することで、新たな改善点が浮き彫りになります。うまくいかない場合は再度アイディアを出し、改善策を見つけることが可能です。

⑤テスト

「テスト」の段階では、試作で完成した試作品を実際のユーザーに試してもらい、フィードバックを得ます。この時点で、仮説がユーザーのニーズに合致しているか、また見落としていた課題や不足がないかを確認します。試作品を通じて、「ユーザーが抱える本当の課題やニーズを解決できているか」や「新たな問題が浮き彫りになったか」を検証することが重要です。さらに、「共感」段階では気づかなかったユーザーの潜在的な意識や本音を発見することもあります。テスト後はフィードバックを共有し、何度も改善を重ねて、最終的にユーザーが満足する完成形を目指します。デザイン思考では、このサイクルを短期間で繰り返すことで、より優れた結果を導き出します。

デザイン思考に使えるフレームワーク

デザイン思考では、問題解決のためにさまざまなフレームワークを活用します。以下では、デザイン思考でよく使用されるフレームワークを紹介します。

共感マップ

共感マップは、ユーザーの思考や行動を6つの視点から整理するフレームワークです。次の項目に基づいてユーザーを深く理解できます。

  • 見ているもの
  • 聞いていること
  • 考えていること・感じていること
  • 言っていること・行動
  • 痛み・ストレス
  • 欲しいもの

SWOT分析

SWOT分析は、事業環境やビジネスを4つのカテゴリーに分けて深掘りするフレームワークです。

【事業環境マップの4カテゴリー】

  • 業界
  • トレンド
  • マクロ経済
  • 市場

【SWOT分析】

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

市場環境やビジネスを細かく分析し、各要素にあてはめていきます。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルの要素を9つに分類して整理するフレームワークです。

【ビジネスモデルキャンバスの9要素】

  • 顧客セグメント
  • 価値提案
  • チャネル
  • 顧客との関係
  • 収益の流れ
  • リソース
  • 主要活動
  • パートナー
  • コスト構造

各要素を1枚の紙に整理し、ビジネスモデル全体を俯瞰できるようにします。

デザイン思考の注意点

デザイン思考は革新的な問題解決手法として有用ですが、実践する際にはいくつかの注意点があります。実行する前にこれらの課題を認識しておくことが、有意義な結果を得るために重要です。

観察できないものに対して共感する力が必要

デザイン思考では、ユーザーのニーズや問題を深く理解し、共感することが肝心ですが、すべてのニーズや感情を観察できるわけではありません。例えば、ユーザーが言葉にしない深層の感情や隠れたニーズには、共感の力が求められます。このため、ユーザーインタビューやフィードバックの質を高め、彼らの真の感情や要求を引き出す技術が必要です。共感を通じて得られるインサイトが、より的確なアイディアや解決策を生むためのカギとなります。

ゼロベースで物事をつくるには不向き

デザイン思考は既存の問題に対して創造的な解決策を見出す手法であり、完全にゼロから新しいものをつくり上げるアプローチには不向きな場合があります。新しいアイディアや製品を開発する際には、過去の経験やデータを基に、課題解決に役立つ既存の要素を組み合わせることが適しているといえます。

時間とリソースの確保が必要

デザイン思考は段階的で反復的なプロセスを通じて進行します。そのため、時間とリソースの確保が不可欠です。各ステップでアイディアを試作し、テストを繰り返す必要があるため、計画的に進行し、適切なリソースを投入することが重要です。特に、実験とフィードバックを繰り返す試作段階では、十分な時間と労力をかけてユーザーの反応を細かく評価することが、成功への近道となります。

まとめ

デザイン思考は、既存の課題解決や新規事業の創出において有効な手法です。ユーザー中心のアプローチを採用し、創造性と柔軟性を生かして解決策を生み出すことが可能です。特に、事業の成長や改善を目指している企業にとって、デザイン思考は効果的なツールとなるでしょう。変化の激しい市場環境において競争力を高めるために、デザイン思考を取り入れてみることをお薦めします。

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