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アルムナイ採用とは? 注目される背景やメリット・デメリットを解説
- 公開日:2025/01/22
- 更新日:2025/01/22
アルムナイ採用とは、一度退職した方を再度社員として迎える制度で、出戻り制度とも呼ばれます。単なる人材確保ではなく、ネットワーク強化やビジネス機会の創出に重きが置かれています。アルムナイ採用にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。本記事では、アルムナイ採用について以下の点を中心にご紹介します。
- アルムナイ採用が注目される背景
- アルムナイ採用のデメリット
- アルムナイ採用導入の流れ
アルムナイ採用について理解するためにも参考にして いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
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アルムナイとは
アルムナイとは、もともと「卒業生」や「同窓生」を意味する英語ですが、近年では人事領域で退職者を指す言葉として注目されています。企業がアルムナイを活用することで、人材不足の解消や即戦力の確保といった効果が期待されています。
アルムナイの語源
アルムナイ(alumni)はラテン語に由来し、養子や生徒といった意味を持つ言葉です。
1640年代頃から、英語では学校の生徒や卒業生を指すようになり、教育機関での使用が一般的でした。
そこから転じて、近年では企業の人事分野で、離職者や退職者の集まりを指す言葉として使用されています。ジェンダーに配慮した表現として、従来の「OB・OG」という用語に代わって用いられることが増えているようです。
アルムナイ採用とは
アルムナイ採用とは、一度退職した社員を再び雇用する採用手法です。ネットワーク強化や新たなビジネス機会の創出に重きを置いたものですが、採用コストの削減や即戦力の確保という点でも注目されています。
アルムナイは以前の勤務経験から社内事情や企業文化を理解しており、ミスマッチのリスクが低いことが特徴です。また、外部での経験を経て視野が広がった人材を迎えることで、企業に新たな視点をもたらす可能性があります。そのため、敢えてアルムナイ採用に特化した仕組みを設ける企業もあるといいます。
アルムナイ活用のためには、退職時に気持ちよく送り出し、その後も定期的にコンタクトを取り続ける仕組みが重要です。また、SNSを活用したアルムナイネットワークや、同窓会形式のイベントを通じて交流を続ける取り組みも、アルムナイ採用に役立てられています。
アルムナイ採用が注目される背景
アルムナイ採用が注目される背景には、少子高齢化や働き方の多様化といった社会的要因があります。これらの変化は企業の採用活動に影響を与え、人材確保の新たなアプローチとしてアルムナイ採用の活用が広がっています。
働き方の多様化
近年、フリーランスや副業、リモートワークなど、働き方の選択肢が多様化しています。このような変化により、企業は従来の正社員採用だけでなく、さまざまな働き方を許容し、柔軟な雇用形態を模索する必要に迫られています。
一方で、退職後に異なる職場で経験を積んだ元社員(アルムナイ)は、企業文化を理解しながらも新しい視点を持ち込む即戦力として期待されています。アルムナイとの継続的な関係構築は、働き方の変化に適応した人材確保の一手段として注目されています。
少子高齢化と労働力不足
少子高齢化により、国内の労働人口は減少を続けています。これにともない、多くの企業が人材不足に直面し、採用市場は売り手市場となっています。この状況下で、過去に自社で働いた経験を持つアルムナイは、即戦力としての採用が期待される重要な人材資源です。退職者とのネットワークを維持し、再雇用を積極的に進めることで、企業は労働力不足の解消やスムーズな人材育成を図れます。
さらに、外部経験を持ち帰ったアルムナイの採用は、新しい知見を企業にもたらし、競争力の向上にも寄与します。
中途採用における採用難度の上昇
採用市場では有効求人倍率の上昇が続いており、優秀な人材の獲得がますます難しくなっています。このような状況で、企業が新規応募者に頼るだけではなく、すでに企業文化を理解し、業務経験を持つアルムナイに目を向けることは、採用効率の向上に寄与します。
また、アルムナイは教育コストを抑えられる点でも魅力的と考えられています。企業がアルムナイ採用を行うことで、人材不足への対応だけでなく、採用活動の効率化や費用削減を実現できる可能性があります。この背景から、多くの企業がアルムナイを活用した採用活動を極的に導入しつつあります。
政府資料による事例掲載
アルムナイ採用について、厚生労働省では以下のような取り組み事例を紹介しています。
求人者:機械(工業用ミシンの製造・販売事業)ほか
ねらい:人材確保戦略の一環として、一旦キャリアを離れたポテンシャルの高い方に活躍してもらう
採用方法:地元の方の採用にも注力し、募集手段としてリファラル・アルムナイ採用を制度化(リファラル採用とは、自社で働いている社員などから新たに人材を紹介・推薦してもらうことで実施する採用活動のこと)
学び直しの支援を強化:スキルを高めて職責・成果の拡大につなげるため
時短勤務の取り組み:長期的に働いてもらうため、小学校6年生までのお子さんがいる場合、時短勤務(※)を認めていることをアピール
※法令の努力義務では6歳になった日以降最初の3月31日まで
アルムナイ採用のメリット
アルムナイの採用は、即戦力の確保やコスト削減といった具体的なメリットがあることに加え、企業のブランド向上や組織活性化にも寄与します。
即戦力となる人材を採用できる
アルムナイは自社での勤務経験があるため、業務内容や社風をすでに理解していることが強みです。このため、入社後すぐに活躍できる即戦力として期待されます。また、業務フローや人間関係への適応が早く、通常の新規採用よりも短期間で成果を上げられると考えられます。
さらに、外部でスキルや知見を磨いたアルムナイを再雇用することで、より高度な業務への対応が期待できる点も魅力です。即戦力人材の確保は、特に業務効率の向上を求める企業にとって重要なポイントとなっています。
採用・教育コストを抑えられる
アルムナイ採用は、求人媒体や人材紹介会社を利用する必要が少ないため、採用コストを削減できる可能性があります。また、アルムナイはすでに企業のカルチャーや業務内容を把握しているため、研修や教育にかかる時間と費用も抑えられます。このため、特に新卒や中途採用と比較してコストパフォーマンスの高い採用手法と考えられています。
限られたリソースのなかで効率的な採用活動を行う企業にとって、アルムナイの活用は魅力的な選択肢です。
社内に新しい知見や価値観を取り入れられる
外部で経験を積んだアルムナイは、新たな視点やスキルを持ち帰り、社内に新しい知見をもたらす可能性があります。これにより、企業は従来の業務プロセスや組織構造を見直す機会を得られるだけでなく、新しいアイディアや方法論を取り入れることで、競争力の強化につながります。
特にさまざまな職務経験やスキルセットを持つアルムナイは、組織の活性化やイノベーションの推進に貢献する存在として期待できます。
企業ブランディング・エンゲージメントの向上
アルムナイ採用が活発な企業は、「離職後も戻りたいと思われる会社」として認識されやすく、企業ブランディングに寄与する可能性があります。また、アルムナイとの良好な関係を維持する取り組みは、在籍中の社員に対しても「従業員を大切にする企業」との印象を与え、エンゲージメントの向上につながります。さらに、SNSなどを通じてアルムナイ採用が広がれば、外部からの企業イメージ向上にも貢献します。
採用のミスマッチを防げる
アルムナイは、以前に自社で働いた経験を持つため、企業文化や業務内容を十分に理解しています。そのため、採用時のミスマッチが起こりにくく、再雇用後の定着率が高いとされています。これにより、採用や離職に伴うコストを抑えられるだけでなく、組織の安定性も高まります。
また、アルムナイは自ら再雇用を希望する傾向にあり、企業との相性の良さが担保されている点も利点です。
アルムナイ採用のデメリット
アルムナイ採用はさまざまなメリットをもたらす一方で、導入や運用に伴う課題も存在します。企業がそのデメリットを理解し、適切に対応することが成功の鍵となります。
社内環境整備が必要になる
アルムナイを再雇用する際には、社内の受け入れ環境を整える必要があります。アルムナイは再雇用時に「どのように思われるのか」といった不安や後ろめたさを抱くことがあり、そのままでは業務に影響を与える可能性があります。これを解消するために、歓迎の姿勢を示す体制づくりや、アルムナイと既存社員の交流機会を設けるなどの工夫が求められます。
また、アルムナイネットワークを管理し、情報発信や懇親会の企画を行う担当者の設置も重要です。このような体制整備は、運用コストや時間がかかるため、企業側の負担として考慮する必要があります。
既存社員の退職へのハードルが低下する
アルムナイ採用が存在すると、「退職しても戻れる」という安心感から、現職の社員が退職を検討がちになる場合があります。この心理が働くと、離職率が高まりかねません。結果的に、企業全体の定着率が低下し、人材の流出につながるリスクがあります。
既存社員のむやみな退職を防ぐには、アルムナイとして再雇用されるためには一定の条件が必要である旨を明示し、制度を無条件に利用できるものではないことを従業員に周知することが大切です。具体的には、在職中の成績やスキル要件を明確にし、制度の利用に一定のハードルを設けるという方法があります。
スキルギャップが生じる可能性がある
アルムナイのスキルや経験が、現在の企業のニーズに合致しない場合があります。
退職後の期間が長い場合、業界のトレンドや業務プロセスが変化しており、アルムナイが持つ知識やスキルが時代遅れになっている可能性も否定できません。
また、再雇用時のポジションが以前とは異なる場合、スキルセットの不足から期待される成果を発揮できないリスクがあります。これを防ぐには、アルムナイの再雇用にあたり、スキルや経験の現状をしっかりと評価し、必要に応じて研修を実施するなどの対応が求められます。
アルムナイのスキルや経験のギャップを埋めるための対応にはコストや時間がかかるため、企業側の負担として考慮する必要があります。
アルムナイ採用を導入する際の流れ
アルムナイ採用を成功させるには、具体的なルール設定や社内体制の整備、退職者との関係構築など、綿密な準備が必要です。以下に導入の流れを解説します。
復職条件を明確にする
アルムナイ採用を導入する際、最初に復職条件を明確化することが重要です。
例えば、
- 一定期間以上の勤続経験
- 特定の役職経験
- 特定の退職理由(懲戒解雇など)にあてはまらないこと
など、具体的な条件を設定することで、採用基準が明確になり、既存社員の納得を得やすくなります。
復職条件の設定では、過度に広い範囲を対象とせず、一定の条件を設けることで、制度が形骸化するのを防ぐことにつながります。これらのルールを社内で周知することで、社員の離職を助長しない仕組みづくりをしていきましょう。
アルムナイ採用の周知
アルムナイ採用を機能させるには、退職者だけでなく在職中の社員にも制度の存在を周知することが必要です。退職時の面談で再雇用制度の概要を説明し、希望する場合の流れを明確に伝えることで、復職への心理的な障壁を下げることになります。また、社内外に制度を広く周知するため、WEBサイトやメール、説明会の活用もお薦めです。
このような情報提供を通じて、アルムナイとの継続的な接点を確保することが重要です。
定期的な交流の場を設ける
アルムナイとの関係を維持するためには、定期的な交流の場を設けることが効果的です。例えば、懇親会や同窓会形式のイベントを開催することで、企業文化や社内の現状をアルムナイに伝える機会が生まれます。
また、SNSグループやメルマガ配信を活用し、情報共有を図ることもお薦めです。退職者に自社の近況や採用情報を届けると共に、アルムナイのキャリア形成を支援する姿勢を示すことができます。
退職者との関係維持方法を構築する
退職者との良好な関係を維持するには、専任の担当者を設け、適切な連絡手段を確立することが求められます。アルムナイ向けポータルサイトやコミュニケーションツールを利用し、定期的な情報提供や相談対応を行ってみましょう。また、アルムナイのキャリアアップや再雇用の事例を共有することで、関係性を深めるきっかけをつくれます。
このような取り組みが、退職者との接点を保ち、将来的な再雇用の可能性を高めることにつながります。
社内の受け入れ体制を整備する
アルムナイが復職後スムーズに業務を進められるよう、社内の受け入れ体制を整えることが不可欠です。例えば、再雇用者向けの研修プログラムや復職後のキャリアプランを設定することで、業務環境への適応をサポートしましょう。
また、既存社員とのコミュニケーション機会を設け、チームの一体感を醸成することも重要です。さらに、復職後の処遇や評価基準を透明化することで、既存社員との間に不公平感が生じないよう配慮する必要があります。
アルムナイ採用に関するよくある質問
ここでは、アルムナイ採用に関するよくある質問と回答をご紹介します。
アルムナイ採用を導入した企業事例を教えてください
アルムナイ採用は、さまざまな業界で実践され、それぞれの課題に応じた成果を上げています。例えば以下のような事例があります。
【金融業界】
退職者との関係構築を強化するためにアルムナイイベントを開催し、現役社員とアルムナイが直接交流できる場を設けているケースがあります。これらのイベントでは、最新の事業状況や企業の方向性を共有し、アルムナイが復職を前向きに検討するきっかけを提供しています。また、イベント参加者同士のネットワーキングを通じて、キャリアの再評価や新たな視点の獲得にもつながっています。
【製造業】
アルムナイ専用ポータルを活用し、退職者に求人情報や社内ニュースを定期的に発信することで、退職後の接点を維持しているケースがあります。このような取り組みは、復職希望者の心理的なハードルを下げるだけでなく、復職後の適応をスムーズにするための準備にも寄与しています。再雇用を希望するアルムナイのスキルや経験を把握し、最適なポジションに配置する体制を整えることで、高いパフォーマンスを発揮できるような環境を提供しています。
【介護業界】
業界内での転職が比較的頻繁に行われる特性を生かし、アルムナイ採用が積極的に展開されています。退職者を対象にアルムナイネットワークを構築し、退職時に登録を促すことで、復職者の確保に成功しているケースがあるようです。さらに、復職希望者が迷うことなく戻れる仕組みを整えるため、求人情報を提供するだけでなく、復職後のキャリア支援プログラムを用意している点も特徴的です。
これらの事例から分かるように、アルムナイ採用は業界ごとの特性や課題に合わせた戦略的なアプローチが鍵となります。継続的な交流や情報発信、復職者の受け入れ体制の整備が、アルムナイ採用の成功を左右する重要な要素といえるでしょう。各企業が独自の工夫を凝らしながら、優秀な人材を効率的に確保し、組織力を高める手段としてアルムナイ採用を活用しています。
アルムナイ採用を導入する際のポイントはありますか?
アルムナイ採用の導入には、退職前後の従業員との良好な関係構築が重要です。退職理由が育児や介護、配偶者の転勤といった前向きなものであれば、将来的な再雇用の可能性が高まります。そのため、従業員の退職時には円満に送り出し、復職を歓迎する姿勢を明確に伝えることが大切です。
また、退職後もアルムナイとの接点を維持するために、交流ネットワークや専用ポータルの運営、定期的なイベント開催などを行い、関係性を保つ工夫が求められます。
さらに、雇用形態の多様性を担保することもポイントです。フルタイムだけでなく、リモートワークやパートタイム、短期契約など柔軟な働き方を用意することで、アルムナイが復職を検討しやすくなります。これにより、企業はアルムナイが持つ専門性や経験を生かしながら、急な人材ニーズにも迅速に対応できます。
こうした取り組みが、アルムナイ採用を活性化させ、企業の競争力強化に寄与します。
おわりに
ここまでアルムナイ採用についてお伝えしてきました。アルムナイ採用の要点をまとめると以下のとおりです。
- アルムナイ採用が注目される背景として、少子高齢化や労働市場の競争激化による人材不足の深刻化が挙げられる。企業は即戦力であるアルムナイを再雇用することで、採用効率の向上や組織活性化を図っている
- アルムナイ採用を成功させるには受け入れ体制の整備や既存社員との公平性調整が必要。また、退職率増加やスキルミスマッチのリスクもあり、運用には慎重な対応が求められる
- アルムナイ採用導入する際は、復職条件の設定、周知活動、退職者との交流、社内体制整備を段階的に進める。退職者との継続的な関係構築と柔軟な雇用形態の提供が重要
アルムナイ採用ではルールづくりやアルムナイネットワークの構築も重要ですが、再雇用時の適切な部署への人材配置も重要です。過去に在籍していた人材だからと適性の把握をおろそかにせず、互いにとってよい会社づくりを目指しましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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