用語集
キャリア自律とは? キャリア自律に企業が取り組むメリットや施策について解説
- 公開日:2021/03/19
- 更新日:2025/04/14
雇用環境の変化や多様な働き方の広がりにより、企業が社員の「キャリア自律」を支援する重要性が増しています。社員が主体的に成長することで、生産性向上や人材定着につながるメリットもあります。本記事では、キャリア自律の定義や企業が取り組むメリットに加え、効果的な支援策について詳しく解説します。
「キャリア自律」とは
キャリア自律とは、働く個人が自らのキャリアについて主体的に考え、自らのキャリアに責任を持ち、自らキャリア形成に取り組んでいる状態のことを意味します。この概念が注目される背景には、終身雇用の崩壊やジョブ型雇用の普及に加え、雇用の流動化やテクノロジーの進化が挙げられます。
高度成長期の日本企業においては、主に企業側が異動・配置・昇進・昇格・転勤を決めていました。 個人からすると、自らのキャリアを考えても、本人の希望通りにならないことも多かったため、自らのキャリア形成について企業側に依存する傾向にありました。 しかし現在は、企業を取り巻く環境の不確実性や不透明さが増し、企業側で個人のキャリアに責任を負うことも難しくなりました。個人にとっても自分のキャリアが会社に依存している状態が安心・安全ではなくなっていることから、キャリア自律の必要性が増してきたのです。企業の方針や環境に依存するのではなく、自身のスキルや経験を磨きながら、キャリアの選択や成長を能動的に進める姿勢が求められています。
企業だけでなく、個人が主体的にキャリア形成に取り組むことが、今後の働き方において重要な要素となるでしょう。ここでは、キャリア自律の意味を深掘りし、類似する概念である「自律」と「自立」の違いについて詳しく解説します。
「キャリア自律」とは、何のためにどのような行動をすることなのか
「キャリア自律」とは、組織の変化や個人のキャリア形成において、自らの意思でキャリアを切り拓く姿勢を指します。これは、単に個人が自由にキャリアを選択することではなく、企業や社会と協調しながら、自己成長を続けることを目的としています。具体的な行動としては、自分の強みや価値観を明確にし、それに基づいてキャリアビジョンを描いて、自分にとって適切な選択をしていくことです。そのビジョンを実現するために、必要なスキルや知識の習得を進めます。業務を通じた学習だけでなく、外部の研修やオンライン講座を活用することも有効です。さらに、社内外のネットワークを活用し、視野を広げることも大切です。異なる業界や職種の人との交流を通じて、新たなキャリアの可能性を見出すことができます。
キャリア自律をどのように実践していくのか
キャリア自律を実践するためには、まず自分自身の強みや価値観を理解し、キャリアの方向性を明確にすることが重要です。これには、自分のスキルや経験を振り返り、今後どのようなキャリアを築きたいのかを考える自己分析が欠かせません。次に、目標達成のためのスキルアップが求められます。仕事を通じて実務経験を積むだけでなく、外部セミナーやオンライン講座を活用し、継続的に学ぶことが重要です。また、異なる業界や職種の人との交流を通じて、新たな視点を得ることで、キャリアの選択肢を広げることができます。加えて、組織内外のネットワークを生かし、成長の機会を増やすことも有効です。積極的に情報を収集し、自ら機会をつかみにいく姿勢こそが、キャリア自律を実現する鍵となるでしょう。
「キャリア自律」が重視されるようになった背景
近年のビジネス環境の変化にともない、企業だけでなく個人もキャリア形成に主体的に関与する「キャリア自律」が求められるようになった背景をご紹介します。
終身雇用制度の見直しと成果主義の浸透
かつての日本企業では、終身雇用と年功序列制度が一般的でしたが、グローバル化や経済の変動により、安定した雇用形態を維持することが難しくなりました。その結果、企業は実力主義や成果主義を導入し、従業員のスキルや実績に基づいた評価を行う傾向が徐々に強まっています。これにともない、1つの企業に依存せず、自らのキャリアを主体的に築く必要性が生じました。
定年延長と多様なキャリア形成の必要性
定年延長により、長期間働き続けることが可能になる現代において、多様なキャリア形成の重要性が増しています。1つの職業人生にとらわれず、ライフステージや興味に応じたキャリアの選択肢が求められています。自己成長を意識し、スキルを磨き続けることはもちろん、柔軟な思考で新しい職務に挑戦することが大切です。さらに、再教育や研修の機会を活用し、さまざまな分野で活躍できる力を身につけることが、長期的に充実したキャリアを築くための鍵となります。
専門性と多様性を重視するジョブ型雇用への注目
AIや自動化技術の進展により、単純作業の多くがシステム化され、労働者にはより専門性や付加価値の高い業務に注力することが求められるようになりました。ジョブ型雇用は、職務内容に応じたスキルや専門性を重視する採用形態であり、欧米企業を中心に広がっています。日本企業においても、特定の職務に特化した人材を採用・配置する動きが強まっています。これにより、従業員は企業内外で市場価値を高めるために、自ら学び続ける姿勢が求められるようになりました。
多様な働き方の広がり
テクノロジーの進化や会社の制度の変化により、フルリモートワーク、フレックスタイム制、副業・兼業など、多様な働き方が選択できる時代になりました。個人が自身のキャリアを考えたうえで、働き方を主体的に選択することが求められています。
社員の「キャリア自律」に企業が取り組むメリット
企業が社員の「キャリア自律」を支援することで、従業員のモチベーション向上や組織全体の成長につながるといったメリットがあります。
従業員のエンゲージメントと生産性の向上
企業が社員のキャリア自律を支援することで、従業員は自身のキャリア形成に主体的に関与できるようになり、仕事への目的意識が高まります。自ら学び、スキルを磨く機会を得ることで、自分の成長が企業の成果につながる実感を持てるようになります。この結果、エンゲージメントが向上し、積極的に業務へ取り組む姿勢が生まれ、生産性の向上にも寄与します。企業側も適切なサポートやフィードバックを行うことで、より活気のある職場環境を築くことができます。
人材の定着率向上と採用力強化
人材の定着率向上と採用力強化は、企業の成長において重要な要素です。定着率を高めるためには、従業員の働きがいを向上させる施策が必要です。具体的には、適切な評価やキャリア支援、柔軟な働き方の導入などが効果的です。また、企業文化や価値観に共感できる従業員を採用することも重要で、採用プロセスにおいて透明性や公平性を確保することが信頼を築きます。これにより、優秀な人材を引きつけ、長期的に定着させることが可能となり、企業の競争力を強化することができます。
組織の柔軟性とイノベーションの促進
キャリア自律を支援することで、従業員は自ら学び挑戦する意識が高まり、その結果組織全体の柔軟性が向上します。新しい知識やスキルを積極的に取り入れる文化が醸成され、多様なアイディアが生まれやすくなります。また、自律的にキャリアを築く環境では、個人が新しい業務領域やプロジェクトに関わる機会が増え、イノベーションが促進されます。企業はこれを後押しする制度や仕組みを整えることで、組織の持続的な成長を実現できます。
「キャリア自律」を促進する3つの要因
企業が「キャリア自律」を促進するためには、従業員が主体的にキャリアを形成できる環境を整えることが重要です。
キャリア教育の導入
キャリア自律を促すには、従業員が自身のキャリアプランを自由に考え、選択できる環境が不可欠です。企業がトップダウンで決めるのではなく、従業員の希望や適性を尊重しながら成長の機会を提供することが大切です。例えば、定期的なキャリア面談を実施し、個人の目標や興味に応じたプロジェクトやキャリア研修の機会を提供することで、主体的なキャリア形成を支援できます。従業員の意思を尊重することで、働きがいが向上し、エンゲージメントの強化にもつながります。
明確なキャリアパスと評価制度の整備
明確なキャリアパスと評価制度の整備は、従業員のモチベーション向上に直結します。キャリアパスを明確にすることで、従業員は自分の成長の方向性を理解し、目標に向かって努力しやすくなります。また、評価制度が公正で透明性があることは、従業員の信頼を得るために重要です。評価基準が明確であれば、どのような成果が求められるのかが分かり、仕事への意欲が高まります。これにより、組織全体の生産性や従業員満足度が向上し、結果的に企業の成長にもつながります。
マネジメント層のキャリアサポート力向上
従業員のキャリア自律を支援するためには、マネジメント層の役割が非常に重要です。上司や管理職が適切なキャリアサポートを行うことで、部下は成長機会を得やすくなります。そのため、マネジメント層には、キャリアコーチングやフィードバックのスキルを高める研修を実施し、部下のキャリア形成をサポートできる環境を整えることが必要です。従業員一人ひとりの強みを引き出し、適切なアドバイスを行うことで、組織全体の成長を促進できます。
キャリア自律を社員へ促す施策
企業が適切なサポートを提供することで、社員の成長と組織の活性化につながります。
キャリア開発の機会を提供する
企業は従業員にキャリア開発の機会を提供することが重要です。研修やメンターシッププログラムなど、個々の成長を支援する仕組みを整備することが、モチベーション向上や人材の定着に寄与します。また、キャリアパスを明確にし、目標に向かって成長できる環境を提供することで、企業全体の競争力強化が期待できます。
キャリアに関する対話を促進する
上司や同僚との対話を通じて、キャリアについて考える機会を増やすことも重要です。1on1ミーティングやフィードバック面談を活用し、社員が自身のキャリアビジョンを上司に相談できる環境を整えることで、キャリア自律の意識が高まります。また、定期的なキャリア面談を実施し、短期・中期・長期のキャリア目標を明確にすることで、成長のロードマップを描きやすくなります。
職務・ポジションの情報を開示する
社員が自分のキャリアパスを考えるうえで、社内の職務やポジションの情報が不足していると、適切な選択ができません。そこで、社内の異動情報や各ポジションに求められるスキル・経験を公開し、社員が自身のキャリアの可能性を把握できるようにすることが重要です。社内公募制度を導入することで、社員が積極的にキャリアアップを目指しやすい環境を構築できます。
キャリアの希望を伝える機会を設ける
社員が自身のキャリアの希望を会社に伝えられる場を用意することも、キャリア自律を促進するポイントです。例えば、定期的なキャリア申告制度を設けることで、社員の希望や興味を把握して、適切な異動や研修の機会を提供できます。また、管理職との面談やアンケートを活用し、社員のキャリア志向を企業が積極的にキャッチすることが重要です。
リスキリングを推進する
キャリア自律を支えるためには、社員が新しいスキルを学び、成長できる環境を提供することが不可欠です。デジタルスキルや専門知識の習得を支援するために、eラーニングや外部研修の受講支援制度を導入すると良いでしょう。また、スキル習得の成果を評価し、キャリアの発展につなげる仕組みを整えることで、社員の成長意欲を高めることが期待できます。
まとめ
企業が社員のキャリア自律を支援することで、従業員のモチベーション向上や組織の成長が期待できます。そのためには、キャリア形成の機会を提供し、管理職が適切にサポートできる環境を整えることが重要です。また、職務情報の透明化やリスキリングの支援を通じて、社員のスキル向上を促すことも必要です。これらの取り組みを続けることで、企業全体の生産性向上や新たな価値創出につながるでしょう。
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