導入事例
仕事も人も伸ばすマネジメントへ——次世代リーダーへのトランジションを、上司が支える5カ月
KDDI株式会社
- 公開日:2026/11/02
- 更新日:2026/11/02
事例概要
背景・課題
・「人財ファースト企業への変革」という方針のもと、組織全体のマネジメントを進化させる必要があった
・今までのマネジメントは、成果創出に重きを置いており、これが圧倒的な強みとして、KDDI内で活かされてきた。年齢構成上、数年内に現在の管理職が一斉に退く構造が見えてきたこと、また、人を育てて活かすマネジメント力が求められてきたことから、マネジメントの進化が急務となった
検討プロセス・実行施策
・将来的にリーダーシップ発揮を期待する人財(受講者)と、所属長に、職場での行動変容を強化する5カ月の育成プログラムを実施。職場実践と対話を重視し、受講者が自ら現場でマネジメント力を伸ばす仕立てに
・全体を通じて、受講者と所属長に「マネージャーに求められる4つの成果」を繰り返し伝え、組織での共通言語化を図った
・所属長に受講者の成長を後押しする役割を担ってもらい、受講者は自組織以外の所属長の視点も得るために、「斜め1on1」を実施した
成果・今後の取り組み
・受講者は「マネージャーは仕事の完遂だけでなく、メンバーの協働・成長も重要視すべきだ」と、実践を通じて理解を深めた
・受講者や所属長だけではなくその上の幹部層にも好評で、「既存のリーダーにも受講させたい」という声が多く届いた
・定量分析により、所属長がメンバーと対話し成長を後押しすることで、メンバーの職場実践が高まる、ということが見えてきた
背景・課題
数年後の管理職不足を避けるため、管理職候補の育成が急務に

樋田:KDDIグループは、大きくはパーソナル事業管掌、ビジネス事業管掌、技術管掌の 3つの組織構成にて事業を展開しています。今回の取り組みは、そのうちのパーソナル事業管掌の組織で実施したものです。
今回の「リーダーシップ強化プログラム」を実施した背景には、大きく2つの課題がありました。1つ目は、要員構成上の課題です。パーソナル事業管掌では数年内に現在の管理職が一斉に退き、管理職が足りなくなる構造がすでに見えていました。数年後の管理職不足を避けるため、管理職候補の育成が急務だったのです。
人を育てて活かすマネジメント力をさらに高めたかった
樋田:2つ目は「マネジメントを進化させる」という課題です。KDDIは今、「人財ファースト企業への変革」という方針に沿って人財を確保・育成し、社員力の向上を図ることを最重要課題と定めています。
そのためには、組織全体のマネジメントを進化させる必要がありました。私たちKDDIは創業以来、成果創出のマネジメントを強みとしています。リクルートマネジメントソリューションズがマネジメントの基本として教える「マネージャーに求められる4つの成果(仕事の完遂、仕事の改善、メンバーの協働、メンバーの成長)」でいえば、「仕事の完遂」が第一の強みです。
〈図表1〉マネージャーに求められる4つの成果

今後は、それを土台にして「人を育てて活かすマネジメント力」をさらに高め、メンバーの協働やメンバーの成長、仕事の改善もマネジメントの大きな強みにしたいと考えています。人財ファースト企業への変革には、このようなマネジメントの進化が欠かせません。管理職候補を育成するにあたって、私たちは4つの成果をバランスよく追求する姿勢を持った人財を育成し、彼らにマネジメント進化の原動力になってもらいたいと考えていました。
検討プロセス・実行施策
職場実践を重視し、受講者が自らマネジメント力を伸ばす仕立てに
樋田:私たちは2024年度、「新任管理職向けメンター施策」を実施しました。これは、非管理職から管理職への役割適応を支援し、新任管理職がスムーズに立ち上がれるようにするための施策です。この施策では、リクルートマネジメントソリューションズに外部メンターとして関わってもらい、新任管理職の傾向や課題、管理職として立ち上がるうえでのつまずきやすいポイントを共に整理してきました。
そのなかで、新任管理職になってから支援するだけでなく、管理職になる前の段階から、マネジメントへの理解や職場での実践経験を積む機会が必要だと考えるようになりました。リクルートマネジメントソリューションズには、KDDIの事業や組織を理解したうえで伴走してもらえる手応えもあったため、2025年度から始める新たな施策もお願いすることにしました。それが、将来的にリーダーシップ発揮を期待する人財を対象とした「リーダーシップ強化プログラム」です。

石原:本プログラムの企画設計で心がけたことは5つあります。
第一に「職場実践」の重視です。もちろん、座学を通じてマネジメントの基礎知識を身につけてもらうことは大切ですが、それが実際のマネジメント力向上につながらなくては意味がありません。
そこで私たちは、受講者たちが計5回の研修でマネジメント知識を学びながら、その合間に学んだことを職場で実践し、本人たちが現場で自らマネジメント力を伸ばす5カ月のプログラムを組みました(図表2)。
〈図表2〉プログラムのスケジュール

所属長向けプログラムを準備し、所属長も共に成長する環境をつくった
樋田:第二に心がけたのは、受講者たちの所属長を積極的に巻き込むことです。なぜなら、組織全体のマネジメント進化のためには、所属長たちにも進化してもらう必要があるからです。特に、部下のマネジメント力向上を支援する意識をもっと高めてもらいたいと考えていました。そこで所属長に受講者の成長を後押しし、彼らの行動変容を支える役割を担ってもらいました。
具体的にはまず、本プログラムの初めと終わりに受講者・所属長・トレーナーの「三者面談」を行い、受講者の成長課題などについて目線合わせを実施。そのうえで、所属長と受講者の定期的な1on1をお願いしました。また、所属長たちが集まって、部下のマネジメント育成について意見を交わし合う「育成座談会」もプログラム期間中に2回開催し、部下支援力の向上を目指してもらいました。
石原:そして第三に、全体を通して「対話」を大切にしました。研修内では、受講者たちが学んだことをお互いに対話する時間を多く設け、また職場に戻ってからは「受講者と所属長の1on1」を定期的に行ってもらいました。この1on1では、研修で何を学んだのか、どのような職場実践をしようとしているのか、また職場実践にチャレンジした結果、何がうまくいき、何が今後の課題なのか……といったことを話してもらうようにしました。
さらに本プログラムでは、受講者がPLAに参加する直属以外の上長を自ら選んで対話する「斜め1on1」の機会もつくりました。マネジメントにも多様なスタイルや価値観、キャリアがあることを知ってもらい、さまざまな上長の視点を得てもらいたかったからです。本プログラムではこのようにして、受講者を中心にあらゆる人との対話を増やすねらいもありました。
「マネージャーに求められる4つの成果」を繰り返し伝え、共通言語化へ
石原:第四に、全体を通じて「マネージャーに求められる4つの成果」を繰り返し伝え、組織での共通言語化を心がけました。仕事の完遂に加えて、メンバーの協働、メンバーの成長、仕事の改善にも注力できるマネージャーを目指してもらうためです。また、4つの成果を出すために、部下の「動機の源泉(働くうえで個人が重視するもの、実現したいと考えること)」に着目することがマネジメントの基本である、といったことも強調して伝えるようにしました。
第五に心がけたのは、プログラムの有効性を定量的にも確認することです。きっかけは、リクルートマネジメントソリューションズから、定量的な効果検証の提案をいただいたことでした。受講者の成長や、所属長のサポートがその成長に与える影響を、研究者の専門的な視点で分析してもらえることに強い関心がありました。特に、組織行動研究所の知見を活用した分析には大きな期待があり、効果検証の観点を踏まえたアンケート設計も、リクルートマネジメントソリューションズと相談しながら進めました。
成果・今後の取り組み
幹部層から「既存リーダーにも受講させたい」という声が多く届いた
石原:私が見た限りでは多くの受講者が研修初日から大きなインパクトを受け、イキイキとしていきました。最初から目に見える変化が起きていたのです。
樋田:本プログラムを総じて言えば、受講者と所属長は「マネージャーは仕事の完遂だけでなく、メンバーの協働・成長も重要視すべきだ」ということを共通言語とし、実践を通じてそれぞれ理解を深めてくれました。受講した所属長からは「既存リーダーにも受講させたい」という声が多くあがっています。
石原:実は、私自身も受講者の1人でした。一受講者としての感想を簡単にお話しすると、マネージャーに求められる4つの成果や動機の源泉などの学びを職場で実践することで、徐々に理解を深めることができました。自分のマネジメント力を高めるためには、基本を意識しながら、自分なりにマネジメント行動を起こしてみることが大事だと分かったのです。
また、斜め1on1で特に印象的だったのは、私が思っていたよりも、所属長たちがマネジメントの失敗を重ねていたことです。私も失敗を恐れずに試行錯誤しながら、マネジメント力を高めていけばよいのだと気づくことができました。
樋田:私も石原の上司として本プログラムに参加し、彼女の職場実践を見守りました。1on1では、問いを投げかけて彼女の想いを引き出すようなコミュニケーションを心がけました。
ある受講者は職場実践として早速チームメンバーとの1on1をスタート
石原:ここからは定性的成果の具体例として、受講者の橋本、阿部と、2人の上司である小松に感想を語ってもらいます。
橋本:私が本プログラムを受講したのは、マネジメントについてちょうど考え始めた時期です。2、3年前からチームリーダーを務めており、自身の成長や今後のキャリアの方向性を見据えてマネジメント力の向上は避けて通れないと考えていましたから、この研修で腹落ちできる答えが得られたらよいと思いながら受講しました。
4つの成果を学んで、やはりマネジメントではメンバーの成長や協働も大切なのだと分かったのは大きな気づきでした。そこで私は職場実践として、早速チームメンバーたちとの1on1を始めました。彼らの考えや想いを本音ベースで知りたかったからです。また、4つの成果の枠組で自組織の課題を分析し、解決策を考えて行動に移すチャレンジにも踏み出しました。
特にありがたかったのは、期間中に小松と何度も1on1を実施して、私のマネジメント観や職場実践などについて具体的なフィードバックをもらえたことです。これまでマネジメントについて深く話す機会はほとんどなかったので、大変有意義な時間になりました。また、斜め1on1は、これまで関わりのなかった上長を2人選んで対話しました。「メンバーの成長や協働は大事だけれど、その前に仕事を完遂して目標を達成することが最低限欠かせない」といった所属長のリアルな本音を聞くことができ、これも学びになっています。

阿部:私も、マネジメントについて知り、学ぶ機会だと思いながら受講しました。やはり4つの成果が印象的で、仕事の完遂と改善、メンバーの協働と成長の4つをすべて見るのがマネジメントだと教えられたときは、「自分はまだまだマネージャーになるうえでクリアすべきことが多くある」と感じました。
小松との1on1では、私の課題がピープルマネジメントであることや、その課題をクリアするために何をしたらよいか、といったことが具体的に見えてきました。マネージャーでなくメンバーの立場でも、同僚の協働や成長について自分なりにフォローできることがあると分かり、行動に移し始めています。それから、1on1で小松から「マネジメントは積み上げではなく、掛け合わせやつながりが大事」と教えられたことも印象的でした。
斜め1on1は、以前から知っている2人の上長にお願いしましたが、どちらも私の先入観とはまったく異なるマネジメント観を持っていて驚きました。どちらかといえば2人ともクールな印象だったのですが、実際にはマネジメントに熱い想いを持っていたのです。小松も含めて、社内にさまざまなマネジメントスタイルがあることがよく分かりました。

小松:今回のプログラムは、橋本、阿部との1on1や2on1の機会を多く持てたため、彼らの思考の変化や気づきも間近で見ることができました。マネジメントは決して1人で行うものではありません。
数人のマネージャーがそれぞれの強みを活かしながら、補い合って優れたマネジメントを実現することが大事です。そのためには同僚マネージャーや部下の特徴を理解する必要があります。2人にはそのことをよく理解してもらえたのではないでしょうか。
また私自身も学ぶことが多くありました。例えば、本プログラムのなかで、リーダー育成を支援するには「アセスメント・チャレンジ・サポート(ACS)」の3つを揃えることが大事だという点は大きな気づきになりました。橋本や阿部が現時点で何に悩んでいるのか、今どのように変化しているのか、これから何にチャレンジしたいのか、といったことを総合的に見て適切なサポートをすることが、上司の育成支援なのだと分かったのです。今後も彼らの成長を見守り、サポートしたいと思っています。
定量分析から「後押しする存在が実践を最も引き出す」ことが判明
石原:さらに、リクルートマネジメントソリューションズ(組織行動研究所)の定量分析も有意義でした。なかでも最もインパクトが大きかったのは、「後押しする存在が実践を最も引き出す」ことが明らかになったことです。つまり、次世代リーダー育成の最重要ポイントの1つは、所属長などの後押しだということで、他にもデータ分析から多くの気づきや示唆を得ることができました。
樋田:以上のプログラムを作るうえで、リクルートマネジメントソリューションズはいつも私たちの良き相談相手でした。私たちの要望や意見に耳を傾け、一緒に悩み、適切なタイミングで私たちの想いの言語化や、いろいろな視点の提示をしてくれました。そのうえで、私たちによりフィットする提案を何度も行ってくれたのです。また、個性的な講師陣も好印象で、組織行動研究所の分析結果も興味深く、大変参考になりました。今後も、本施策をより良くするために力を貸してもらえたらと思っています。
シニアソリューションプランナーの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
営業統括部営業1部1G
シニアソリューションプランナー
木村朋博
私たちは人材開発を、研修を実施することそのものではなく、事業の成長を支える人と組織をつくることだと考えています。その意味で、今回のKDDI様の取り組みは非常に示唆に富むものでした。
特に印象的だったのは、成果を生み出し続ける企業だからこそ、その土台となる「人の成長」「職場でのコミュニケーション」といった、日々の業務のなかでは見えにくい価値に真摯に向き合われていたことです。受講者だけでなく所属長も巻き込みながら、成長を支える関わりやコミュニケーションを職場に広げ、その変化を丁寧に確かめようとされていました。
これは単なる次世代リーダー育成ではなく、人が育つ環境づくりへの挑戦だったように思います。人の成長が事業の成長につながることを信じ、実践されているKDDI様の姿勢から、私たち自身も多くの学びをいただきました。
取材日:2026/07/14
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KDDI株式会社
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※記事の内容および社名・所属等は取材時点のものとなります。
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