連載・コラム
博士と助手が解明!多様なメンバーの力を引き出し生かす、両輪のコミュニケーション【前編】
部下の目の色が変わる関わりとは
- 公開日:2026/02/09
- 更新日:2026/02/09
多様な働き方や価値観が当たり前になった昨今、管理職の悩みは尽きません。「どのように部下と向き合えばいいのか」「一人ひとりに合わせた関わり方とは何か」——そんな疑問に向き合うため、人・組織を研究する博士と、素直で一生懸命なアザラシ助手が、コミュニケーションのコツを前後編に分けて解き明かしていきます。

悩みの尽きない管理職
助手 博士、最近よく耳にする“多様性”って何ですか? ボクにも分かるように、簡単に教えてください!
博士 平たくいうと、いろいろな人が一緒にいる状態を意味するのじゃ。
助手 一緒にいることで新たなアイディアは生まれそうですけど、いろいろな部下を率いる管理職の方は大変そうですね。
博士 恐ろしく大変じゃ。異なる楽器を持つ演奏者に、最大限のパフォーマンスを要求する指揮者のようなものじゃからのお。指揮者自身が扱ったことのない楽器を奏でる演奏者も、育成対象になる。すると、何が起きると思う?
助手 ——人間関係の摩擦が起きると思います。
博士 そのとおりじゃ。実際に、管理職からはこんな声が上がっておる。
- 何が若手社員のモチベーションとなるのか、分からない
- 部下のコンディションを把握すべきだが、どこまで踏み込んでいいか分からない
- 年上の部下に遠慮して言いたいことが伝えられない
助手 眉を八の字にして悩む、管理職の顔が浮かびます。唯一の正解なんてなさそうですし。
博士 唯一の正解はないじゃろうが……解決策はある。——そう、“多様なメンバー自身”のなかにあるんじゃ!
助手 楽器が多様であれば、調律の仕方も多様ということですね!
博士 (生意気にも音楽の例えを被せてきおった)——メンバーのなかにある答えを掴む、「両輪のコミュニケーション」について、前編と後編に分けて解説するから、心して聴くように。前編は、両輪のコミュニケーションの概要について解説し、後編は実践ステップを説明する。
助手 博士、お願いします!
現代の管理職に求められること
博士 まずは、今の管理職に求められていることから解説する。会社からの期待や要望がつかめないと、管理職もどこに向かっていいか分からんからな。
助手 会社からの期待は、成果を上げることに尽きるんじゃないですか?
博士 羊羹よりも甘い考えじゃな。管理職に求められていることは、大きく分けて3つある。
1つ目は、高い成果と新価値創造じゃ。現代は、変化・競争・複雑性が激しく、現状を維持するだけでは、生き残れない時代である。そのため、組織の現在を支えながら、未来を創ることが必要となり、組織の要である管理職には、「短期的成果」と「長期的価値」が同時に求められるんじゃ。
助手 あの博士、ちょっと難しいです……。
博士 平たくいうと、すごい結果を出しながら、新しいアイディアも生み出すということじゃ。
助手 ふむふむ。2つ目は何ですか?
博士 2つ目は、多様化する人材の活用じゃ。平たくいうと、いろいろな特技や考えを持つメンバーを、チームの中でうまく生かすことじゃな。アルムナイ採用や定年延長、副業解禁により、管理職は、年代や雇用形態、就業感が多様な人材をマネジメントする必要がある。多様化する人材に対し、画一的な関わりだけでは、組織のパフォーマンスは最大化できん。そこで、メンバー個々人に合わせた関わりがこれまで以上に求められておる。
助手 いろいろな考え方や働き方を持つ人が増えているから、上司はメンバー一人ひとりに合わせて向き合わないといけないんですね……。
博士 3つ目は、コンプライアンス遵守じゃ。言わば、法律や会社のルールをきちんと守ったうえで、仕事を進めようという取り決めじゃな。以前はマスメディアを通じてしか情報の拡散はされなかったが、SNSの普及により、個人が直接情報を発信できるようになった。企業としては、不適切な情報が瞬時に広範囲に拡散されるリスクが増大したわけじゃ。管理職本人がコンプライアンスを遵守することは当然として、メンバーへの周知徹底も求められておる。
助手 要は、“ちゃんとしましょう”ということですね!
博士 要約のしすぎだが、間違ってはいない。3つをまとめると、「現代の管理職は、自身とは異なる年代や就業感のメンバーに、コンプライアンスを遵守させたうえで、メンバー個々人に合わせた関わりをとおし、高い成果と新価値創造の同時実現を求められている」わけじゃ。
助手 熟語が多すぎて、混乱します!(*_*)

博士 今の管理職は、決められたルールのなかで、高い成果を出しつつ新たなアイディアを生み出すために、年齢や働き方が違うメンバーそれぞれに合った関わり方が求められる。これでどうじゃ?
助手 さすが博士!ボクにも理解できました!
博士 言葉だけでも、管理職の負担がいかに大きいかが分かるじゃろ?実際に、管理職が過重負荷状態になっている企業は少なくない。大事なことは、期待される役割を理解したうえで、“何に注力すべきか”を見極めることじゃ。時間は有限だから、すべてのことはできん。注力すべきことと捨てることを決める必要がある。
助手 注力すべき仕事って、どうやって見極めればいいんですか?
博士 いろいろな見極め方があるが、ここでは、参考情報として、リクルートマネジメントソリューションズが調査した、“管理職に最も期待しているテーマ”を紹介しよう。
<図表1>管理職に最も期待されることはメンバー育成であり、この期待は人事も管理職も共通
人事担当者へ Q 管理職にどのようなことを期待していますか。お勤めの会社で、管理職に最も期待しているテーマを以下から選択してください。(3つまで)
管理職層へ Q管理職としてあなたが重要だと考えている役割は何ですか。以下から選択してください。(3つまで)

出所:リクルートマネジメントソリューションズ【調査レポート】マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年
博士 見て分かるとおり、“メンバーの育成”への期待は、人事担当者、管理職層ともに、最も高くなっているんじゃ。
助手 つまり……管理職が、自ら動くメンバーを育てることができれば、そのメンバーはルールを守りつつ自力でチャンスをつかみ、成果とアイディアを生み出すということですね。
博士 夢物語に聞こえるかもしれないが、当の管理職も入社当時から今のように仕事ができていたわけではない。上司や先輩から育成されて、今の管理職があるんじゃ。
両輪のコミュニケーション
助手 じゃあどのような関わりをすれば、自律的なメンバーを育成できるのですか?
博士 それが、両輪のコミュニケーションじゃ。両輪のコミュニケーションとは、メンバーの思考や気づきを“引き出す”コーチングスキルと、メンバーの言動が周囲に与えている影響を“伝える”フィードバックスキルの2つを活用すること。2つのスキルを活用してメンバー個々に合わせて関わることで、メンバーの意欲や能力を引き出すのじゃ。
<図表2>引き出す・伝える両輪のコミュニケーション

助手 コーチングスキルとフィードバックスキルで、両輪なんですね!
博士 そのとおり。大事なことは、引き出すコーチングスキルと、伝えるフィードバックスキルが、セットであることじゃ。
<図表3>コーチングスキルとフィードバックスキル
| 定義 | 特徴 | 効果 |
|---|---|---|---|
コーチング | 相手の意欲や能力を | メンバーの思考や |
|
フィードバック | 相手が周囲に与えて | メンバーの言動が |
|
助手 なぜ片輪走行ではダメなんですか?
博士 コーチングスキルだけでは、メンバーが自身では認識できていない強みや改善点に気づけず、当該メンバーは、成長の機会を失う。一方のフィードバックスキルだけでは、メンバーが自身で考え判断する機会を奪ってしまう。メンバーの主体性が削がれることは明白じゃ。
助手 自ら考え動くメンバーとは程遠い存在になってしまいますね……。
博士 そうじゃな。両輪のコミュニケーションが必要だと分かり、不足しているスキルを身に付けることができれば問題はない。問題は、管理職が良かれと思って片輪走行している場合じゃ。
助手 そんなことあるんですか?
博士 沢山ある。メンバーの自己肯定感を育むためにコーチングスキルしか活用しない管理職や、メンバーに最短で成果を出してほしいがためにフィードバックスキルのみ活用する管理職が挙げられる。
助手 どの管理職の方にも、利き腕がありそうですしね。
博士 管理職が、両輪のコミュニケーションをどちらも活用できたうえで、「このメンバーの、今のタイミングでは、こちらのスキルを重点的に活用する」と意図的に関われると、自律的なメンバーの育成に繋がるんじゃ。

両輪のコミュニケーションは、すべてのメンバーが求めている
助手 両輪のコミュニケーションが必要なことは分かりました! このコミュニケーションは、特にどの年代に求められているのですか?
博士 結論からいうと、全年代じゃな。それでは、リクルートマネジメントソリューションズが実施した調査を引用しよう。
新入社員が管理職(上司)に期待することの第1位は、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」で、第2位は、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」じゃった(リクルートマネジメントソリューションズ|新入社員意識調査2025より)。この点からも分かるように、管理職は、コーチングスキルを生かしてメンバーの意見に耳を傾け、フィードバックスキルを用いて丁寧に指導することが求められておる。
助手 「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」は、ティーチングスキルだと思いました。ただ、教わったことを実践した後にフィードバックも欲しいので、きめ細かいティーチングとフィードバックを合わせて丁寧な指導と呼ぶのかもしれませんね。
博士 上司に対して、「丁寧な指導を望みます」なんて、儂の時代じゃ口が裂けても言えんかった……。
助手 メンバーが結果を出しつつ、新しいアイディアを生み出すためには、必要な関わりなんだと思います。ボクも、今以上に丁寧な指導を博士に望んでいますし。
博士 ……(儂が擦り切れるわ)。
<図表4>上司に期待すること(最大3つまで複数選択/n=713)
Q:あなたが上司に期待することは何ですか?
助手 そういえば、先ほど全年代って言っていましたけど、新入社員以外も両輪のコミュニケーションが有効なんですか?
博士 そのとおりじゃ。メンバーが一人前になり、創意工夫を凝らしながら自らの目標を達成するステージでは、部下なりの工夫をコーチングで引き出し、部下が行き詰まった際は、フィードバックをして打開策を一緒に見つける必要がある。下記のとおり、メンバーのステージが上がるにつれ、両輪のコミュニケーションがより重要となるんじゃ。
<図表5>メンバーのステージにおける関わり方のイメージ

助手 確かに全年代ですね。ボクも両輪のコミュニケーションを身に付けたいです!
博士 (その前に、こぼさない食べ方を身に付けてくれ)
後編に向けて
助手 博士のおかげで、今の管理職は、決められたルールのなかで、高い成果を出しつつ新たなアイディアを生み出すために、両輪のコミュニケーションを意識してメンバーそれぞれに合った関わり方が求められているということが分かりました!
博士 そうじゃ、コーチングでメンバーの意欲を引き出し、フィードバックでメンバーの成長を促すことが、自律的なメンバーの育成に繋がる。
助手 それは分かりましたけど、両輪のコミュニケーションをどのように活用すれば、多様なメンバーの力を引き出し、生かすことができるのでしょうか?
博士 その答えは、「両輪のコミュニケーションの実践ステップ」と題して、後編で詳細に解説する。
助手 えっ、前編と後編に分けるなんて、聞いてません!

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多様性という言葉が世の中に浸透してきた昨今、高い成果を要望される管理職には「あらゆるメンバーを活躍させる関わり」が求められます。本セミナーでは、多様なメンバーの力を引き出し活かす、両輪のコミュニケーションのポイントをお伝えします。
執筆者

サービス統括部
HRDサービス共創部
パーソナルディベロップメントグループ
シニアソリューションアーキテクト
星野 翔次
ベンチャー企業・商社勤務を経て、2013年に現在の株式会社リクルートに入社。 管理職として、部下がパフォーマンスを最大限発揮できるコミュニケーションを追求。 最近では、コーチングサービスを提供する部門にて、部長職の育成やコミュニケーション変革に携わっている。民間企業や官公庁、教育機関等、延べ300組織を支援。
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