連載・コラム
未来を創るマネージャーのリアルボイス
Case3. どこにいても、チームとつながる。本部長のマネジメント術
- 公開日:2025/10/20
- 更新日:2025/10/20

近年、多様な価値観を持ったメンバー構成、少子高齢化による人手不足の深刻化、コンプライアンスに対する意識の高まりなどにより、マネジメントの難度が上がっています。
そのような環境のなかで、業績達成はもちろん、最適な業務アサインや、メンバーの意欲を引き出しながらの業務遂行など、多くの役割を担わねばならず、マネージャー層の負担が増えているといわれています。また、人事の方からはマネージャーになりたい若手が少ないというお悩みをうかがうことも。
しかし弊社の調査(※)では、マネージャー昇進後に、メンバーの成果や成長などをやりがいに感じているマネージャーが多いことが分かっています。つまり、部下から見ると大変さばかりが目にとまり、やりがいがなかなか伝わりづらい、という側面があるのかもしれません。
本連載では、組織の要としてさまざまな企業でマネージャーとして活躍している方々に、やりがいや思い、工夫されていることなどについてお話をうかがい、ご紹介していきます。
第3回となる今回は、株式会社マネーフォワード HR事業開発本部 本部長の井口 竜哉さんにお話をうかがいました。今まさにマネージャーとして悩まれている方や、将来マネジメントを担っていくかもしれない若手の方の参考になれば幸いです。
※ マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年
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- Case3. どこにいても、チームとつながる。本部長のマネジメント術
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- Case2. 若手育成を支えたのは、“横のつながり”──メンバーが育つ現場のつくり方
- 未来を創るマネージャーのリアルボイス
- Case1. 社会人3年目で挑戦。手探りのマネジメントを支えた“環境”の力
- 目次
- 人事も、ビジネスサイドも面白い。だからこそ選んだ“両輪”の道
- 1on1は「指摘の場」ではない。グッドモアの精神と、変化を拾うマネジメント
- 学びがマネジメントを支える
- 組織の成長フェーズによって変わる、マネジメントの面白さ
人事も、ビジネスサイドも面白い。だからこそ選んだ“両輪”の道
――はじめに、井口さんがマネージャーになったきっかけを教えてください。
きっかけは、前職で人事部門に異動したことでした。当時、前職の人事部門では、ビジネス部門にいた人材を採用などの人事業務に起用する動きがありました。私はエンタープライズ向けのセールスを6年ほど担当していたこともあって、会社から声を掛けてもらう形で人事に異動し、新卒・中途の採用を担当した後マネージャーになりました。
ただ、6年ほど人事に携わるなかで、やりがいを感じつつも「ビジネスサイドでもう一度やっていきたい」という気持ちも強まっていきました。そこで、人事領域のセールス経験とマネジメント経験という、自分の財産を両方生かせそうなマネーフォワードを新しいフィールドとして選び、現在に至ります。マネジメント歴は前職も合わせると、7年ほどでしょうか。

――井口さんの1日のスケジュールを拝見しましたが、マネジメントもクライアントワークもされていて、本当にお忙しそうです。HR事業開発本部の本部長を務めていらっしゃるとのことですが、どのような事業を担当されているのでしょうか。
私が所属するHR事業開発本部は、「パートナービジネス」と呼ばれる領域を担当しています。マネーフォワードの販売チャネルのうち、代理店などのパートナー企業を通じた販売ルートの収益を最大化することがミッションです。
こうしたパートナービジネスは、やはりパートナー企業と直接顔を合わせてコミュニケーションを取った方が成果につながりやすいので、月の半分以上は出張に出ています。北海道から九州まで各地を回りつつ、自宅でのリモートワークも取り入れているので、社内で過ごす日はむしろ少ない方かもしれません。
1on1は「指摘の場」ではない。グッドモアの精神と、変化を拾うマネジメント
――出張やリモートワークが多いということは、部下の方との1on1はオンラインが中心ですか?
8~9割方オンラインです。東京と大阪にいる7名の部下のうち、大阪のメンバーは週1~2回、東京にいるメンバーは週1回ペースで1on1を実施しています。東京のメンバーについては毎週金曜日の出社日に合わせて、対面の1on1を組むことも多いです。オンラインでも必ずカメラをオンにして、お互いの様子や変化を把握できるようにしています。
――1on1に際して、特に意識されていることがあればぜひ教えてください。
私個人のスタンスとしては、「グッドモア(Good more)」の精神を大切にしています。1on1って何故か「できていないことを指摘する場」になりやすいのですが、メンバーの日々の仕事ぶりを見ると、よく頑張っていることや、きちんとできていることもたくさんあります。だからこそ、9割のできていることをきちんと伝えたうえで、残りの1割をどう直していくかを一緒に考える、グッドモアの気持ちだけは崩さないようにしています。

ただ、ネガティブフィードバックが必要だと感じた時は、恐れずに言わなければなりません。ダメなことはダメと言わないと、相手はいつまでも直すべきポイントに気づくことができないからです。
実は、「ネガティブフィードバックを怖がりすぎる」という点は、マネージャーとして未熟だった頃の大きな反省点でもあります。グッドモアの心を大切にしつつ、ダメなものはダメと言う。そのバランスを、今でも心がけるようにしています。
――1on1の頻度を週1~2回にされているのは、何かねらいがあるのでしょうか。
部下のなかで起きた変化を、タイムリーに拾って対話するためです。
これまでの1on1を振り返ってみると、「今日はいい1on1だった」と手応えを感じた回は、メンバーの方から相談ごとを持ってきてくれた時でした。相談ごとというのは、その人のなかで何かしらの変化があって、動いて、ぶつかって――という経験から生まれるものだと思っています。そうした変化を「相談」という形でタイムリーにキャッチできるのが、1on1という場の大きな利点です。もちろん、他愛ない雑談で終わる週もありますが、部下の小さなサインを見逃さないためにも、週1というペースはできる限り守っていきたいと思っています。
また、メンバー同士でも1on1をしてもらっています。「上司との会話ではどうしても受け身になってしまう」という方でも、メンバー同士ならよりフラットに、小さな悩みも含めて相談しやすいはずです。ささやかなコミュニケーションから生まれるアイディアも多いはずなので、チーム内の対話をできるだけ促すようにしています。
学びがマネジメントを支える
――御社は「Talent Forward(社員の可能性をもっと前へ)」というマインドのもとで、メンバーの成長も積極的に支援されていると伺いました。これまでマネジメントやリーダーシップの研修で学ばれたことはありますか?
実際に参加した研修のなかで、強く印象に残っている学びが2つあります。1つは「YET MIND」という、「今はまだ(yet)できないだけで、次はきっとできるようになる」という考え方です。マネジメントにおいて非常に大切な視点だと思いますし、部下にフィードバックする時の指針にもなっています。

もう1つは、リーダーとしての戦略的な視点です。当時の研修のゴールは、「本部長になったつもりで、本部全体の3カ年計画を作ろう」といったものでした。本部長として考えなければならないことや、把握すべき情報を疑似体験することができました。
――研修での学びが実際に役立っているのですね。では、マネジメントについて過去や今現在苦労されていることはありますか?
やはり、今後直さないといけないと思っていることはいろいろあります。例えば、短期的にしっかり成果を上げようとした時、極力メンバーに任せたいと思いつつもフォローしすぎてしまうところは改善したいです。
あとは、“伝えたつもりで伝わっていない”こともあります。よくあるのが、「暗黙のルールの伝え漏れ」です。
例えば、ある業務で「このパートナー企業にAというアクションをしてください」と指示したとします。部署内に「Aをする時は、Bもやるものだ」という暗黙のルールがあった場合、以前からのメンバーなら細かく伝えなくても業務をこなしてくれるでしょう。ところが最近入ったメンバーは、「Aをやってください」と言われたら、「Aをするだけ」で止まってしまいます。これは相手が悪いのではなく、暗黙の前提をきちんと言語化して伝えなかったことが原因です。
だからこそ、私のチームでは週1で定例会を開いて、共通認識にズレが生まれそうなことを早めに議題に上げてもらうようにしています。うちはわりとフラットな雰囲気のチームなので、メンバーも遠慮なく意見を出してくれて、とても助かっています。
組織の成長フェーズによって変わる、マネジメントの面白さ
――井口さんにとっての、マネージャーとしてのやりがいを教えてください。
そうですね。マネージャーという立場にはさまざまなやりがいがありますが、「チームで何かを達成する喜び」は特に強く感じています。
メンバーだった頃もチームの成果は気にしていたのですが、「チームの成果がどれだけ経営にインパクトを与えられるか」を強く意識するようになったのは、マネジメントにかかわるようになってからです。チームの誰か1人が突出すればいいとは思わないからこそ、全員で成果を出せた時の達成感には格別なものがあります。
ただ、「結果を出せるチームだからマネジメントが楽しいのか」といわれると、決してそうではありません。確かに現在のマネーフォワードは中途入社の方が多く、経験と自走力を備えたメンバーが中心なので、打てば響く面白さはあります。とはいえ、今後の弊社の成長フェーズによっては、新卒の方を含めた幅広い人材を受け入れていく可能性もあります。現在の育成はオンラインが中心ですが、いずれは現場に立ち会いながらクライアントワークを教えるなど、マネジメントのスタイルを変える必要性も出てくるでしょう。
そうした組織の変化に対応していくこともまたやりがいであり、マネージャーとしての面白さなのではないかと思います。
――最後に、これからマネージャーになる方に向けて、メッセージをお願いします。
人事の領域にかかわるなかで、「マネジメントはあまりやりたくない」という声を多く聞いてきました。マネジメントが敬遠されがちな理由としては、「自分には向いていないのでは」と感じたり、「チャレンジすることが怖い」と不安になったりなど、いくつかの要因があるように思います。
ただ、そういった方の多くは、まだマネジメントの経験がなく、そこにある面白さや魅力に気づけていないだけなのかもしれません。だからこそ、まずは飛び込んでみる勇気をぜひ持ってみていただきたいです。

ちなみに、私がその一歩を踏み出して得たものは何かと聞かれると――やはり「助け合い」だと思います。これまでのキャリアを振り返ってみても、上司にフォローしてもらったり、仲間に支えてもらったりなど、助けられっぱなしの十数年間でした。自分1人でやりきったと思えることは、実はあまりありません。
マネジメントは、1人ではなし得ないことをみんなで達成していくために欠かせないものだと感じています。ぜひ勇気ある一歩を踏み出して、マネジメントならではの面白さを経験してみてください。
――本日はありがとうございました。
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