今必要なビジネススキルとは? 第6回 管理職に必要な部下の自律を促す「コミュニケーション力」

執筆者情報
HRD・OD事業推進部
石岡 由紀子

ビジネスパーソンには、役割に応じて身につけると効果的に仕事が進むビジネススキルがあります。
元々得意なことや、仕事のなかで自然に身につけていくことができる場合もありますが、身につけるために遠回りをしたり、その過程で壁にぶつかったりすることもあります。

私たちが提供するビジネスパーソンの学び場「リクルートマネジメントスクール」では、お客様から特定の社員に何を学ばせたらいいのか、というご質問を非常に多くいただきます。

そこで本連載では、企業で働くビジネスパーソンに、求められる役割に応じて必要になるビジネススキルについてお伝えしていきます。
本連載最後になる今回は、管理職であるマネジャーに身につけてほしいスキルについてお話しします。


新任管理職が最初にぶつかる壁

連載第5回でリーダーだったAくんは、マネジャーになりました。しかし、初めて部下を持って張りきったのも束の間、着任して1カ月もたたないうちに悩みごとが増えてきました。
そんなAくんの様子を見かねて、上司である部長のBさんが声をかけてくれました。

Bさん「Aくん、少し疲れているみたいだね。何かあった?」
Aくん「心配をおかけして、すみません。ちょっと仕事が回らなくなってきてしまって……」
Bさん「そうなのか。今は、特に何に時間を取られているのかな?」
Aくん「予想以上にコンプライアンスのチェックや、メンバーの勤怠管理に時間を取られています。それから、来月の部会での方針発表の資料に、なかなか手を付けられていません」
Bさん「管理職になると、メンバーの時には見えていなかった仕事が意外とあるよね」
Aくん「そうなんです。新人のための勉強会も企画しなくてはいけないし、X社のプロジェクトも今が山場なのですが、資料作成はどうしても深夜や休日になってしまいます」
Bさん「X社のプロジェクトは、4月から部下のCさんがリーダーになったのではなかった?」
Aくん「Cさんにいきなり資料作成してもらうのは難しいと思うので、私が進めています」
Bさん「もしかして、少し仕事を抱えすぎてしまっているのかもしれないね。部下に任せられる仕事がないか、一緒に考えてみようか」

過去に弊社で行った調査から、新任管理職の5人に1人が、就任後の環境に「適応できていない」と感じていることが分かっています。

◆詳細は「マネジメント人材育成ブック【1】マネジャーになる(マネジャーへのトランジション研究)新任マネジャーのほとんどがトランジションに苦労している

管理職の役割は「人を通して仕事をすること」ですが、プレイヤーからの役割転換が上手くいかずに、悩んでしまうケースが多いようです。また、Aくんが言っていたように、管理職になると労務管理やコンプライアンス、組織の方針共有など想定以上に対応すべきことが増えていきます。上手くメンバーに仕事を渡していかないと、マネジャーしかできない仕事ができず、身動きが取れなくなってしまうのです。

昔のように年功序列でそのままポジションが上がり、先輩が上司に、後輩が部下に、という状態であれば、仕事の受け渡しもしやすかったかもしれません。しかし、今は、育児や介護による時短勤務者や非正規社員、年上の部下など、職場メンバーの多様化も進んでおり、管理職は一人ひとりに合わせてコミュニケーションを取ることが求められています。今できることばかりをアサインしてしまい、タスクごとに指示をしないと自ら動けない状態を恒常的につくったり、遠慮して要望すること自体ができなかったりすると、管理職はいつまでもプレイヤーとしての仕事を多く抱えたままです。

管理職になった際の役割や意識の転換については、多くの企業で、「新任管理職研修」を行い、そのなかで伝えているかと思います。
本稿では、それでも上手くいかない、やり方が分からないという方に向けて、あらためて「スキル」に特化してお伝えします。

リーダーのうちから身につけたい「任せる」スキル

Aくんのように仕事を「抱えすぎ」てしまう人は、まず「任せるスキル」を身につけることをお薦めします。特にリーダーや管理職が業務を手放せない場合、その影響は本人が大変になるだけでなく、メンバーが育たない、という環境をも生み出してしまいます。
そうは言われても、「まだできないことを任せたら失敗するのではないか」「自分でやった方が早いのではないか」という懸念があると思いますが、それは当然起きることとしての認識が必要です。
初めは遠回りになるし、失敗もするでしょう。それでも、長期的に見て、失敗しても任せたことがメンバーの成長につながり、組織も育っていきます。

また、メンバーを信頼して「任せること」と、「任せっぱなしで放任すること」や、「ただ仕事の指示を出すこと」も違います。仕事を任せるスキルは、仕事を上手く手放すのが苦手で困っている新任管理職の方には、最初に身につけてほしいスキルです。
任せるスキル(技術)について、こちらの3時間コースでも詳しく紹介しています。

◆任せる技術 〜自分でやった方が早い病への処方箋〜

自律を促す部下とのコミュニケーション

管理職のマネジメント業務において部下と効果的なコミュニケーションを取ることは、とても重要です。そのため、昨今はコーチングや1on1など、部下主体のコミュニケーションに注目が集まっています。
もちろんこれらのスキルを身につけていくことは管理職にとって欠かせないことですが、その前に押さえておきたいポイントがあります。それは、コーチングや1on1は「部下の自律を促す」ためのコミュニケーションであり、その前提があって初めて発揮されるものである、ということです。
つまり、仕事のアサインや、仕事の指示の出し方では自律を促すことを考慮していないのに、面談の場でだけコーチング的な関わりをすることには無理があり、かえって違和感を生み出しかねない、ということです。

1on1で陥りやすいポイントや、効果的な進め方はこちらのコラムもご参照ください。
「自律を促すコミュニケーション」への注目が高まっている背景についても記載しています。

◆「1on1ミーティング」を効果的に実施するためには「導入時に陥りがちなポイントと会話例」

1on1や日常会話などで部下の意見を聞き出すような関わり方をすることで、部下は「話しやすい上司だ」「働きやすい職場だ」と感じるかもしれません。しかし、業務をアサインする際に、部下の成長に向けて一緒に考え、なぜそのようにアサインしているかを伝えていないと、自律的な成長を促すことはできません。1on1前後も含めてのコミュニケーション設計を考えることをお薦めします。

ジョブアサイン、1on1やコーチングについてはこちらの研修コースでもお伝えしています。

◆ジョブ・アサインメント 〜自律的成長を促す!部下の強みを活かした仕事の割り当てかた〜
◆部下の成長につながる「1on1」の進め方 〜やる気を引き出し、行動からの学習を促す対話の方法〜【1日】
◆コーチング・コミュニケーションの基本 〜部下や後輩の行動が変わる〜

管理職にこそ必要な、感情に振り回されずにコミュニケーションを取るスキル

冒頭の「任せられない」例のところでもお伝えしましたが、昨今は管理職だからこそ「率直に意見できない」ということも起こっています。また、反対に部下のミスや、期待に応えられないことに感情的になりすぎ、自分でも困っている、というお話も伺います。

伝えられないことや感情的になってしまう、という自分の心の状態をコントロールして、お互いにとってより良いコミュニケーションを取る、「アサーティブ」や「アンガーマネジメント」のスキルを学ぶことは管理職にとっても同様に効果的です。

最後に

今回は管理職のスキルについて、部下とのコミュニケーションに関わるものを中心にお伝えしてきました。部下とのコミュニケーションは、昇進したばかりの頃に、管理職がつまずきやすいポイントであることが分かっています。
組織の要になる管理職には、部下育成の他にも、視座を高く持って自部署の方針を立てたり、他部署と調整して会社の全体最適を図っていったりする役割も求められます。

経営層や上司からの管理職への期待には、単に「ビジネススキル」を身につけることだけでは応えられないでしょう。その一方、他の階層と同じように、心構えやスタンスがあっても、スキルが不足していることでつまずきやすくなることも事実です。その支援となればと考え、本連載の最後は「管理職のビジネススキル」についてお伝えしました。

★管理職にお薦めの研修はこちら★
リクルートマネジメントスクールの管理職研修・マネジメント研修
バックナンバー第1回 今さら聞けない「ビジネススキル」とは何か?
第2回 新入社員に求められるのは「主体性」
第3回 若手のうちに鍛えたい「数字を使ってロジカルに伝える力」
第4回 中堅社員に高めてほしい「問題解決力」
第5回 リーダーに必要なのは「プロジェクトマネジメント力」

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